いすゞ・ビッグホーン
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いすゞ・ビッグホーン | |
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目次 |
[編集] 概要
いすゞ・ビッグホーン(BIGHORN)は、かつていすゞ自動車が製造、販売していたSUV。車名の由来はロッキー山脈に生息するオオツノジカから採られたもの。1981年より販売開始。形式名については後述する。
日本における、乗用車のコンポーネントを流用したSUVの草分けだが、当初は装備も貧弱なうえ、貨物登録のみで商品力が弱く、国内マーケットには理解されないまま、販売が伸び悩んだ。
また、フロントマスクがあまりにもレンジローバーの意匠と似ていたため、英車礼讃の評論家に「プアマンス・ローバー」と巷間影口を叩かれ、イメージが低下した時期もあった(いすゞはこの後、1983年発表の大型バス、「いすゞ・キュービック」でもフランスのベルリエ(後のRVI ルノー トラックス)・PR100のフロント周りをそっくりいただき、またしても大変な批判を浴びることになる)。
その後、三菱・パジェロとトヨタ・ハイラックスサーフの躍進によりSUVブームが起こるが、ビッグホーンは常に2車の後塵を拝する存在に甘んじた。
初期のUBS52系は、乗用車系の容量不足のフロントサスペンションとドライブトレーンに起因する耐久性の低さが大きな問題であったが、サスペンションの設計変更を行い、エルフのエンジンとドライブトレーンを流用したUBS55系以降はその弱点を克服し、ライバル達を凌駕するほどになった。
メディアへの露出が増えてるようになると、ごく自然なドライビングポジションや、軽快でクセの無いハンドリング、そして、クロスカントリーカーとしての悪路走破性など、ライバル達を上回る素性の良さが認められ、次第にマーケットに受け入れられていった。
一方、開発費不足から、室内の改良までは手が回らず、販売台数が伸びたことで、居住性や利便性への不評は、逆に増える結果となった。しかし、次期モデルのUBS69系の設計が始まることもあり、本来改良すべき点はそのまま捨て置かれ、また評判を下げることになった。この点はいすゞの悪しき体質であり、乗用車など、他のモデルでも、適切な次期に改良を行わず、マーケットにそっぽを向かれてしまった例が数多く存在する。
1980年代末から、SUVを持たないメーカーやGMグループ各社に対して、いすゞのOEM車の主力として、ホンダ(アキュラを含む、ホンダ・ホライゾンとして販売)、スバル (スバル・ビッグホーン)、GM(シボレー・トゥルーパー)、オペル(モントレー)、ホールデン(ジャッカルー)、ボグゾール(?)へ供給された。
いすゞの乗用車事業撤退後は主力車種となるが、2002年のSUV事業撤退に伴い、日本国内向けの製造は終了となった。
その後はいすゞやGM系海外メーカー向けなどの輸出専用車として製造されていたが2003年に輸出向けも製造終了となった。
[編集] 歴史
[編集] 初代
いすゞ・ビッグホーン | |
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初代 |
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販売期間 | 1981年9月 - 1991年12月 |
ホイールベース | ショート 2300 mm ロング 2650 mm |
ボディータイプ | ソフトトップ(幌) メタルトップ |
ボディーバリエーション | 2ドア ソフトトップ 2ドア バン/ワゴン 4ドア ロングのみ バン/ワゴン |
以下のデータは | 最終型90年2月のロング2.8DTスペシャルエディションbyロータス5MT ()はショート2.8DTイルムシャー |
型式 | Q-UBS55FW(Q-UBS55CW) |
全長 | 4470 mm (4120 mm) |
全幅 | 1650 mm (1650 mm) |
全高 | 1815 mm (1820 mm) |
ホイールベース | 2650 mm (2300 mm) |
トレッド(前/後) | - mm/- mm |
最低地上高 | 220 mm |
室内長 | 1700 mm |
室内幅 | 1365 mm |
室内高 | 1255 mm |
車両重量 | 1760 kg (1690 kg) |
乗車定員 | 5名 (4名) |
車輛総重量 | 2035 kg (1965 kg) |
最低回転半径 | 5.9m (4.8m) |
60km/h定時走行燃費 | -km/L |
駆動方式 | 4WD |
エンジン型式(かたしき) | 4JB1-T |
エンジン形式(けいしき) | 縦置き 水冷 OHC 直列4気筒 インタークーラー付直接噴射式ターボディーゼル |
燃料供給装置 | 分配型燃料噴射ポンプ式 |
エンジン最大出力 | 115ps/3600rpm |
エンジン最大トルク | 24.0kg/2300rpm |
パワーウェイトレシオ | 15kg/ps |
クラッチ形式 | 乾式単板ダイヤフラム |
使用燃料・タンク容量 | 軽油・83L |
スプリング サスペンション・前 |
縦置きトションバー ダブルウィッシュボーン |
スプリング サスペンション・後 |
1/4半楕円リーフ リジッド |
ショックアブソーバー | 筒型複動式 |
タイヤ | 205/80R16 |
ステアリングギアボックス | パワーアシスト付ラック&ピニオン |
ブレーキ・前 | ベンチレーテッドディスク式 |
ブレーキ・後 | ディスク式 |
パーキングブレーキ | 機械式後2輪制動式(後ディスク兼用) |
先代モデル | なし |
OEMモデル | シボレートゥルーパー |
車台が共通の車種 | ファスター/ファスターロデオ ロデオ</bt>アミーゴ/ミュー |
同クラスの車種 | 三菱・パジェロ トヨタ・ランドクルーザーワゴン (70ライト系 後のプラド) |
2代目 (写真はどちらも米国向けのトゥルーパー。どちらも国内向けではUBS26GW相当) |
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販売期間 | 1991年12月 - 2002年10月 |
ボディタイプ | 3ドア ショート ステーションワゴン 5ドア ロング ステーションワゴン |
以下のデータは | ロングの3.1DTイルムシャー5MT ()はショート3.1DTのLSの5MT |
型式 | KD-UBS69GW |
東京地区車輛本体価格(税別) | \2821000 |
全長 | 4660 mm ( mm) |
全幅 | 1835 mm |
全高 | 1840 mm |
ホイールベース | 2760 mm |
トレッド(前/後) | mm / mm |
最低地上高 | 215 mm |
室内長 | 2550 mm |
室内幅 | 1495 mm |
室内高 | 1245 mm |
車両重量 | 1990 kg |
乗車定員 | 7名 |
車輛総重量 | 2375 kg |
最低回転半径 | 5.8m |
60km/h定時走行燃費 | -km/L |
駆動方式 | パートタイム4WD |
エンジン型式(かたしき) | 4JG2-T |
エンジン形式(けいしき) | 縦置き 水冷 直列4気筒 インタークーラー付過流室式ターボディーゼル |
ボア×ストローク | - mm×- mm |
総排気量 | 3059cc |
圧縮比 | - |
エンジン最大出力 | 125ps(91.94kw)/3600rpm |
エンジン最大トルク | 28.0kg・m(274.59N・m)/2000rpm |
燃料供給装置 | 分配型燃料噴射ポンプ式 |
使用燃料・タンク容量 | 無鉛レギュラーガソリン <軽油> |
タンク容量 | 82L |
クラッチ形式 | 乾燥単板ダイヤフラム [3要素1段2層式トルクコンバーター] |
スプリング/サスペンション・前 | 縦置きトションバー/ダブルウィッシュボーン |
スプリング/サスペンション・後 | コイル/4リンク リジッド |
ショックアブソーバー | 筒型複動式 |
タイヤ | 245/70R16 |
ステアリング形式 | パワーアシスト付ラック&ピニオン |
ブレーキ・前 | ベンチレーテッドディスク式 |
ブレーキ・後 | ドラムインベンチレーテッドディスク式 |
パーキングブレーキ | 機械式後2輪制動式 |
先代モデル | いすゞ・ビッグホーン UBS52・55(初代) |
姉妹車、OEM | スバル・ビッグホーン ホンダ・ホライゾン アキュラ・SLX |
同クラスの主な車種 | ランドローバー・ディスカバリー 三菱・パジェロ トヨタ・ランドクルーザープラド 日産・パスファインダー |
この表は自動車のスペック表テンプレートを使用しています |
[編集] 装備・主要諸元
エンジンについては、変遷があるが、足回りについては、前輪がトーションバースプリング・アッパーIアームのダプルウィシュボーンで、後輪がリーフスプリング・リジッドである。4WD機構も副変速機を持つオーソドックスなパートタイム式である。
- ロングボディー : 4470×1650 (1760)×1815 (1845)mm,括弧内はイルムシャー。バンパー形状の違いにより全長が、タイヤ外径の違いにより全高が若干異なる。全幅はオーバーフェンダーの有無による。
- ショートボディー : 4120×1650 (1760)×1815 (1845)mm,括弧内はイルムシャー。バンパー形状の違いにより全長が、タイヤ外径の違いにより全高が若干異なる。全幅はオーバーフェンダーの有無による。
- 車両重量 : 初期のワゴン・ロングは、1550kg程度であったが、最終モデルでは各部の強化と装備の追加により1820kgへと増大している。
- ルーフ形状 : スペシャルエディション・バイ・ロータスにキックアップルーフ(後半のみハイルーフ)が存在する。
[編集] 変遷
- 1981年9月ロデオ・ビッグホーンとしてデビュー。
ロデオはいすゞのピックアップトラック、ファスターの4WD版の名称。
エンジンは、73psのC223ディーゼルエンジンと105psのG200ガソリンエンジンの2種類で、どちらも直列4気筒。
ボディのバリエーションはショートとロング、2種類のホイールベースと、ソフトトップ、メタルトップ(バン)の組み合わせで4種類、全て2ドアで貨物登録(4ナンバー)であった。
ノンターボのディーゼル、ガソリンエンジンともに、117クーペと同じもので、かなり非力であった。
- 1984年1月非力を改善する為、ディーゼルエンジンにターボチャージャー装備のC223-T(87ps)を追加。しかし、ターボ化によって後にミッションとデフにトラブルが多発することとなり、これはUBS55へ代わるまで続いた。
また、後席の居住性を改善したワゴン(乗用登録、5ナンバー)が追加される。
- 1985年6月今まで2ドアモデルしか無かったが、ロングボディーに4ドアを追加。ガソリンエンジンを4ZC1に変更。燃料タンク容量を50→83Lへ拡大。マニュアルトランスミッションを5速に変更。
- 1987年1月フロントのデザイン変更。ワイドトレッド化とサスペンションの大幅改良。ソフト・ハードの二種類のサスペンションとさらにLSグレードにアジャスタブルショックアプソーバーを採用。
- 1987年10月イルムシャー(イルムシャーチューンの足回りとレカロシートとモモステアリング)と後のスペシャルエディション・バイ・ロータスの布石となる、エクスポート(北米向けのラグジュアリースペック)を追加。
- ディーゼルエンジンをエルフで評判の良い、2.8Lの「直噴」4JB1-T(110ps)に変更。排ガス値の関係で小型貨物登録(4ナンバー)となる。
同時に、やはりエルフ系のマニュアルトランスミッションとデフを流用し、容量をアップ。 - ひかりものを廃した外観や、205R16のタイヤサイズがかもし出す欧州テイスト(ジェミニ効果も手伝った)などで話題となるが、室内の使い勝手や居住性(ステッキ型の駐車ブレーキ、フルモードでは無いエアコン、吹き出し位置の悪いヒーター、すきま風など)は手付かずのままで、客層を広げた分、逆に評判を落とす結果となった。
- ディーゼルエンジンをエルフで評判の良い、2.8Lの「直噴」4JB1-T(110ps)に変更。排ガス値の関係で小型貨物登録(4ナンバー)となる。
- 1988年6月イルムシャーR追加。ワイドタイヤとオーバーフェンダー、ブラッドレイ・アルミホイールを装備したモデル。全幅が1700mmを超え、登録は普通貨物(1ナンバー)。
- 1988年11月イルムシャーG,S追加。Gはそれまで輸出専用だった4ZE1、4気筒2.6Lガソリンエンジンを搭載。登録は普通乗用(3ナンバー)。Sは大量のEGRによってNoX値を下げ、小型乗用登録(5ナンバー)としたモデル。
ディーゼルエンジンは全てインタークーラー付きの4JB1-T(115ps)となる。イルムシャーはオーバーフェンダーを装着し車幅10cm広がる。 - 1989年11月スペシャルエディション・バイ・ロータス追加。エクスポートとイルムシャーG廃止。
- 1990年5月ロングボディーワゴンに4速AT追加。
[編集] 2代目
[編集] 装備・主要諸元
エンジンについては、変遷があるが、足回りについては、前輪がダプルウィシュボーントーションバースプリングで、後輪が4リンクコイルスプリング式リジットである。4WD機構も副変速機を持つオーソドックスなパートタイム式がメインで、1995年のマイナーチェンジで、トルク オン デマンド(TOD)と呼ぶトルクスプリット4WDが追加された。
- ロングボディー : 4660 (4750)×1745 (1835)×1845mm,全幅の括弧内はオーバーフェンダー付き車。全長の括弧内は1998年のマイナーチェンジでバンパー形状の変更を受けたもの。
- ショートボディー : 4230 (4290)×1745 (1835)×1835mm,全幅の括弧内はオーバーフェンダー付き車。全長の括弧内は1998年のマイナーチェンジでバンパー形状の変更を受けたもの。
- 車両重量 : イルムシャーRS(5MT)の1,780kgからロータスSE(ディーゼル7人乗り)の2,170kgまで。
- タイヤサイズ : 標準装着のタイヤサイズは245/70R16の一種類。ホイールはPCD139.7 6H オフセット+38 ハブ径100mm。
- シート : 定員はロングが2列5名または3列7名(購入時に選択できる。ただし選択できない例外有り)。ショートは初期は4名だったが、5名に変更された。ロータス系はアームレスト付きのキャプテンシート、イルムシャー系はレカロシートを装着。ロータスSEでは革シートが標準またはオプションで選択できた。1995年5月のマイナーチェンジで、レカロシート装着車以外はフルフラットにすることが可能となった。
- ABS : 初期のBASICでは選択できなかったが、オプション設定された。後に標準装備。4センサー3チャンネル制御。
- エアバッグ : 1996年8月のマイナーチェンジで追加された。フルサイズの両席エアバッグがオプション設定。後に標準となる。
- バックドア : 7対3の分割横開き式のバックドア。
- インスツルメントパネル : 1995年5月のマイナーチェンジ前は、いすゞ独特の操作系だったが、それ以降は一般的な操作系に変更された。いずれにしても2DINの機器は取付できない。
[編集] 変遷
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- グレードは、ロータス、イルムシャー、LS、BASICが有り、ロータスとイルムシャーはそれぞれチューナーによりチューンされた足回りを設定した。ロータスはキャプテンシート等ラグジュアリーに振ったもので、イルムシャーはロールを抑えた固い足回りとレカロシートと、ロールを抑制するスタビライザーの機能を無効化し悪路での路面追従性を高めるスタビライザークラッチを装備したスパルタン仕様であった。
- ハンドリングバイロータス:ロータスチューンの足回りを持つ。しなやかにロールする足回り。内装関係ではキャプテンシートを装備。後に本革シートを装備した、ロータスSEが追加される。外装関係では、メッキモール関係とヘッドライトワイパーアンドウォーシャー。
- イルムシャー:イルムシャーチューンの足回りを持つ。スポーティーカー顔負けの固い足回りと悪路では後輪の追従性をよくするスタビライザークラッチを装備。内装関係ではレカロシートを装備。外装関係では、ヘッドライトワイパーアンドウォーシャー。
- LS:必要な装備のみに絞った廉価グレード。後に特別仕様車のLS FIELDSTARが商戦毎にでることとなり、XSプレジールにつながる。
- BASIC:パワーウィンドーすら省略したベースグレード。
- イルムシャーRS:ガソリンエンジンとショートボディーを組み合わせたホットモデル。チーム青柳がパリダカールラリーに参戦し、1994年マラソンクラスで優勝した。
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- エンジンはディーゼルとガソリンの2種類。ディーゼルエンジンは、排ガス対策の為、前モデルの直噴式から副室式のインタークーラーターボディーゼルで、機械式の燃料噴射ポンプを採用し、125PS(エンジン形式4JG2)。ガソリンは、クロスカントリー車両としては初のV6 DOHCで、200PSの出力を発生した(エンジン形式6VD1)。
- 主力は、ディーゼルエンジンで、ガソリンエンジンはロータスと、イルムシャーRS(ショートボディーのホットモデル)でしか選択ができなかった。(ガソリンエンジンとマニュアルトランスミッション(MT)は、イルムシャーRSでしか選択できなかった)
- UBS25DW:UBSはビッグホーンの車両形式で小型ボンネットトラックを表す。25は、6VD1型ガソリンエンジン、DWはショートボディー。この形式は、イルムシャーRSしか存在しない。
- UBS25GW:25は6VD1型ガソリンエンジン。GWはロングボディーを表す。ロータスしか存在せず、オートマチックトランスミッション(AT)のみ。
- UBS69DW:69は4JG2型ディーゼルエンジン。DWはショートボディーを表す。ロータスにはショートボディーは存在しないので、この形式のロータスは無い。
- UBS69GW:69は4JG2型ディーゼルエンジン。GWはロングボディーを表す。最量販タイプ。
- 1995年ビッグマイナーチェンジを受ける。ディーゼルエンジンが電子制御の燃料噴射ポンプに改められている。本当はここで、後述のコモンレール式直噴エンジンとしたかったようだが、ゼクセルの開発の遅れにより妥協した模様。そのためか、同クラスのトヨタのランドクルーザー・プラドの1KZ-TEより登場が遅れている。
- 1997年7月にフィリーを日産からOEM供給を受ける。その結果ディーセルのいすゞにも関わらず販売する乗用車の中で、最もハイパワーなエンジンは日産製のQD32/ZD30を搭載したファーゴフィリーとなる。
- オーバーフェンダーを装着したモデルを用意(イルムシャー、XSプレジール)。オーバーフェンダー装着車は、他社の様にホイールのオフセットを変更して安易に対応せず、車両側の取付面をホーシング等の長さを延長し対応した。そのため、純正ホイールのオフセットはノーマルフェンダー車と変わらない。
- XSプレジール(廉価グレード)を追加。
- BASICを廃止。
- インパネをデザイン変更。
- サイドアンダーミラーを車両前方も確認できるように変更。(前モデルとの識別ポイント)
- TOD(トルク・オン・デマンド)と呼ばれるトルクスプリット4WD機構をロータスSEに設定。1996年8月にイルムシャー2、XSプレジール2というTODを設定したグレードが追加された。
- ディーゼルエンジンを従来の機械式燃料噴射ポンプから大気圧センサーまで備えた電子制御式燃料噴射ポンプに変更し、ターボチャージャーも最適化した。その為125PSから135PSへパワーアップし、黒煙が殆ど発生しなくなった。
- シフトオンザフライと呼ばれる走行中に2WDと4WDを切り換えできる機構を装備した。(一部グレードにはオプション設定)。
- ロータス:オーバーフェンダー無し。キャプテンシート標準装備。ロータスSEは、本革シートはオプションとなるが、TODを標準装備。
- イルムシャー:オーバーフェンダーとレカロシートを標準装備。
- XSプレジール:オーバーフェンダーを標準装備。エアコンがマニュアルエアコンであったり、ガラスが無着色ガラスである等の廉価版。
- LS:オーバーフェンダー無し。最廉価モデル。
- 1998年フロントマスクのフェイスリフト実施。ディーゼルエンジンをDOHC・コモンレール式燃料噴射ポンプ(4JX1)へ変更。ガソリンエンジンの排気量アップ(6VE1)。登場から7年半で、モデルサイクルの長いクロスカントリー車ではあっても本来ここで、フルモデルチェンジを実施するべきだが、いすゞの株価が額面割れするなど、この当時の業績は危機的状況下にあったことからマイナーチェンジにとどめざるを得なかった。
- フロントのデザイン変更。(グリル、ヘッドライト、フロントバンパー)
- ディーゼルエンジンは、コモンレール式直噴エンジンとなり、160PSとなる。バランサーシャフトが追加され振動が減少した。下手なガソリンエンジン車より走行性能は高い。
- ガソリンエンジンは、3.5Lに排気量アップし、230PSにパワーアップした。ダイレクトイグニッション式となる。
- イルムシャーは廃止された。その変わりとして、プレジールにレカロシートとスポーツサスペンションのオプションが設定された。
- XSプレジールはプレジールと名称変更された。TODを搭載したものはプレジール2となる。ガソリンエンジンが選択できるようになった。(マニュアルトランスミッションとの組み合わせもできる)
- UBS26DW:26は6VE1型ガソリンエンジンを表す。ショートボディー。
- UBS26GW:26は6VE1型ガソリンエンジンを表す。ロングボディー。
- UBS73DW:73は4JX1型ディーゼルエンジンを表す。ショートボディー。
- UBS73GW:73は4JX1型ディーゼルエンジンを表す。ロングボディー。
[編集] 2001年モデル
2001年ビッグホーン最後の改良が行われた。
- ガソリンエンジンはコンピューターの高性能化(32ビット化)、燃焼タイミングの最適化、触媒の改良などにより、排出ガスをさらにクリーンにした。この結果、低排出ガス車認定制度に基づく「良-低排出ガス(平成12年基準排出ガス25%低減レベル)」を達成。
- グレード展開を、従来の5グレードから、最上級グレード「ロータスSE」、量販グレード「プレジールII」、新規設定のお買得グレード「フィールドスター」の3グレードに集約。
- ボディカラーの新色として、「サテンゴールドメタリック」「パールホワイトマイカ」の2色を採用。
- ロータスSEに、木目調パワーウィンドウベゼル(フロント/リア)を採用し、ステアリングのホーンベゼル及びインパネの木目部分と併せて、高級感・一体感を演出した。また、本革シートを標準装備。
- 前席のシートバック形状、シートクッション形状と材質を見直し、ホールド性の向上と、長距離運転時の疲労軽減を図る。
- ガソリン車にオートクルーズを標準設定し、高速道路走行などでのイージードライブを可能にする。
- <目標販売台数> ビッグホーンシリーズ全体で 300 台/月
(1)グレードの展開
- ロータスSE スタイリッシュな18インチタイヤ + アルミホイールの採用や、高級感のある本革シートの標準化により、プレステージ&ラグジュアリー性を高めた最上級グレード。
- プレジールII 充実した装備、オーバーフェンダーによるスポーティなイメージを持つ、量販グレード。
- フィールドスター 取り回し易いナローボディと実用面での十分な装備を備える、お買得感の高いグレード。ディーゼル車にのみM/Tの設定あり。
(2)エンジン/メカニズム
- 《ガソリンエンジン (6VE1型、V6、3.5L)》
- ガソリンエンジンにコンピューターの高性能化(32ビット化)、燃焼タイミングの最適化を施すと共に、触媒の改良により、排出ガスのクリーン化を実現した。この結果、低排出ガス車認定制度に基づく「良-低排出ガス(平成12年基準排出ガス25%低減レベル)」 を達成した。
- イオンセンシング式イグニションシステムを採用し、各気筒毎の燃焼状態を直接検知、最適な点火時期の設定を実現した。
- 電子制御スロットルを採用し、自然でリニアなアクセルワークを実現した。
- 4速オートマチックトランスミッションをフルレンジ電子制御化し、発進から高速走行にいたるまでの滑らかな変速を実現した。
- エンジンヘッドカバーの一部デザインとカラーリングを変更した。
- ロックアップクラッチに、低速時におけるスリップ制御を採用し、燃費の向上を図った。
- ロータスSEの場合で、7.4km/L から 7.6km/L (10・15モード)に向上した。
- 《ディーゼルエンジン (4JX1‐TC型、直4、3.0L)》
- ディーゼルエンジンのスキッドプレート部の遮音版を大型化すると共に、吸音材を追加することにより、エンジン音の静粛化を図った。
(3)内外装
- ボディカラーの新色として、「サテンゴールドメタリック」、「パールホワイトマイカ(有料色)」の2色を採用した。
- ロータスSEに、木目調パワーウィンドウベゼル(フロント/リア)を採用し、ステアリングのホーンベゼル及びインパネの木目部分と併せて、高級感・一体感を演出した。
- ロータスSEに、本革シートを標準設定した。
- 前席のシートバック形状、シートクッション形状と材質を見直し、ホールド性の向上と、長距離運転時の疲労軽減を図った。
(4)仕様・装備
- ガソリン車にオートクルーズを標準設定し、高速道路走行などでのイージードライブを可能にした。
- ラゲッジルーム内に加えて、シガーライター下部にもアクセサリー用電源ソケット(ふた付)を追加設定し、予備電源需要に対応した。
- 前席側カップホルダーを大型化し、使い勝手の向上を図った。
- 後席のアームレスト先端部分に2個分のカップホルダーを追加設定した。
- 紫外線をカットするUVカットガラスを採用した。(フィールドスターのバックドアを除く)。さらに、ロータスSE及びプレジールIIのリアドア/リアクォーター/バックドアガラスには、エアコン効果を高めるUVカット機能付熱反射ハーフミラーガラスを採用した。
- バックドアガラスの曇り防止の熱線(リアデフォッガー)を、右側ドアに追加設定(従来は左側ドアのみ)し、雨天・寒冷時の視界確保を図った。
- ロータスSEに、スタイリッシュな18インチ大径タイヤ + アルミホイールを標準装備した。(プレジールIIにもメーカーオプションとして設定)
- ロータスSEのサイドステップ後端を、後輪の巻き上げによる泥掛かりを防止する形状に変更した。
[編集] 3代目ビッグホーン(実現せず)
なお、よく噂された3代目ビッグホーンへのフルモデルチェンジについても触れておきたい。
モデルチェンジ時期は1999年~2000年に行うことを想定して開発が進められ、本来なら1998年に行われたビッグマイナーチェンジの代わりに行うはずであった。 噂の域は出ないものの、フルモデルチェンジの内容は次のとおりだと言われていた。
- エクステリア
大幅に大型化され、全長4,800㎜以上、全幅1,800㎜以上、ホイールベース2,800㎜以上のディメンションに、トヨタランドクルーザー100クラスを狙った高級SUVとしてデザイン開発が進められていた。なお、スケッチについては1999年開催の東京モーターショウで配布されたいすゞのモーターショウパンフレットに実はその一部が掲載されており、そのスケッチを見るとフロントマスクはコンセプトカーVX2やピックアップトラックD-MAX的。全体のフォルムはランクル100にレンジローバーのテイストとAXIOMのようなスタイリッシュさが加味されたものであった。バックドアは、伝統の観音開きから跳ね上げ式に変更されたと思われるデザインであったし、背面スペアタイヤは床下に収納式に変更されたと思われる。
- メカニズム
シャシー・サスペンションには、D-MAXのフレームに、4ダブルウィッシュボーン化されたものを予定していた。実際にコンセプトカーVX2において、4輪ダブルウィッシュボーン化を実現して、実用化に向けて開発が進められていたようである。 エンジンは、3代目初期型には直噴ガソリンV6 3,500ccと直噴ディーゼルV6 3,000ccを搭載し、2年後自社製ガソリンV8 4,000cc以上のエンジンを追加搭載する予定であった。 しかし、フルモデルチェンジを行わなかった理由としては、会社の業績不振というよりもビッグホーンが最大の市場とするアメリカ市場において、SUV力とする親会社GMの商品とバッティングし、出来の良いビッグホーンを開発・投入されるとGM場を侵されるとの判断から、GMの意向によりフルモデルチェンジが行えなかったようである。
[編集] 関連車両
エンジン等のコンポーネントや、プラットフォームを共有する車両が存在する。
- いすゞ・ビークロスは、イルムシャーRSをベースとしたSUVスペシャリティーカー。車両形式UGS25DW。エンジンは6VD1だが、ヘッドカバーがマグネシウム製で、点火系がダイレクトイグニッションに変更され出力が向上(215ps 28kg-m)、駆動系はビッグホーンのショートボディーには無いTODが採用されている。
- ミュー・ウィザードは、UBS69GWのフレームに海外仕様の5ドア版のミューのボディーを架装したもの。車両形式UCS69GW。4JG2ディーゼルエンジンのみ搭載。ただしビッグホーンとの差別化の為かインタークーラーは付かない。ボディー以外の足回りはUBS69GWそのものである。
- いすゞ・ウィザードは、ミュー・ウィザードのフルモデルチェンジ版で、エンジンは6VD1と4JX1を搭載する。
- いすゞ・ミューは、初代ビッグホーンから派生した。初代の車両形式は、UCS17DWとUCS55DW。モデルチェンジ後は、ウィザードのショートボディー版となる。エンジンはいすゞ・ウィザード同様に、6VD1と4JX1を搭載する。
- いすゞ・アクシオムは、アメリカ合衆国のみで販売された。6VE1を搭載する。ロングボディーのみ。映画スパイキッズに登場する。
[編集] エンジン
[編集] ディーゼルエンジン
- C223 : 直列4気筒ディーゼルエンジン(OHV),総排気量2,238cc,ボア×ストローク:88.0mm×92mm,圧縮比21.0,最高出力87ps/4,000rpm,最大トルク18.7kg-m/2,500rpm,ターボチャージャー付き,このエンジン搭載車の車両形式は52となる。
- ターボ無しの場合の諸元 : 最高出力73ps/4,300rpm,最大トルク14.2kg-m/2,400rpm
- このエンジンは元来乗用車用。そのため高回転型となっている。
- 4JB1 : 直列4気筒直噴式ディーゼルエンジン(OHV),総排気量2,771cc,ボア×ストローク:93.0mm×102mm,圧縮比17.5,最高出力110(115)ps/3,600rpm(括弧内はインタークーラー付き)最大トルク23.0(24.0)kg-m/2,300rpm,燃料供給装置:分配型燃料噴射方式,ターボチャージャー付き,インタークーラーを後に追加する,このエンジン搭載車の車両形式は55となる。
- 4JG2(機械式) : 直列4気筒渦流室式ディーゼルエンジン(OHV),総排気量3,059cc,ボア×ストローク:95.4mm×107mm,圧縮比20,最高出力125ps/3,600rpm,最大トルク28.0kg-m/2,000rpm,燃料供給装置:分配型燃料噴射方式,インタークーラーとターボチャージャー付き,EGR,このエンジン搭載車の車両形式は69となる。
- 4JG2(電子制御式) : 直列4気筒渦流室式ディーゼルエンジン(OHV),総排気量3,059cc,ボア×ストローク:95.4mm×107mm,圧縮比20,最高出力135ps/3,600rpm,最大トルク30.0kg-m/2,000rpm,燃料供給装置:電子制御燃料噴射方式,インタークーラーとターボチャージャー付き,EGR,このエンジン搭載車の車両形式は69となる。
- 4JG2(機械式)の燃料噴射ポンプを大気圧センサーまで備えた電子制御式に改めたもの。ターボチャージャーも最適化されている。
- 4JX1 : コモンレール式直噴直列4気筒DOHC16バルブディーゼルエンジン,総排気量2,999cc,ボア×ストローク:95.4mm×104.9mm,圧縮比19,最高出力160ps/3,900rpm,最大トルク34kg-m/2,000rpm,燃料供給装置:電子制御燃料噴射方式,インタークーラーとターボチャージャー付き,米国キャタピラー社との共同開発による小型直噴ディーゼル用新型高圧燃料噴射システム(HEUI方式:Hydraulic Electric Unit Injector)でエンジンオイルを利用して最大1,400気圧まで燃料を加圧し超高圧で直噴。エンジン本体は、4JG2をベースに主にヘッド部分を変更し作られている。エンジンオイルをコモンレールの加圧に使用している為、粘度は指定通りのものを使用する必要がある。また、エンジンオイルのフィルターを2組持つ,EGR,酸化触媒コンバータ,バランサー付き。,このエンジン搭載車の車両形式は73となる。
[編集] ガソリンエンジン
- G200 : 直列4気筒,最高出力105ps,このエンジン搭載車の車両形式は13となる。
- 4ZC1 : 直列4気筒OHCガソリンエンジン,総排気量1,994cc,最大出力105ps/5000rpm,最大トルク16.6kg-m/3000rpm,このエンジン搭載車の車両形式は12となる。
- 4ZE1 : 直列4気筒OHCガソリンエンジン,総排気量2,559cc,ボア×ストローク:92mm×95mm,圧縮比8.5,最高出力120ps/5,000rpm,最大トルク20.0kg-m/2,600rpm,このエンジン搭載車の車両形式は17となる。
- 6VD1 : V型6気筒DOHC24バルブガソリンエンジン,総排気量3,165cc,ボア×ストローク:93.4mm×77mm,圧縮比9.8,最高出力200ps/5,600rpm,最大トルク27.0kg-m/3,600rpm,燃料供給装置:電子制御燃料噴射方式,可変吸気コントロールバルブ,レギュラーガソリン,このエンジン搭載車の車両形式は25となる。輸出向けにはSOHC版が存在する。
- コスワースによって 12,000回転まで許容し最高出力500psまでチューンされ、オペル・カリブラに搭載された。DTMでシリーズチャンピオンになる。※Vのバンク角が75°となっていて、比較的小型化されている。このエンジンは元々オペルに輸出する為に(一般の量販車用)作られたが、不採用となった。
- ウィザードとビークロスに搭載する6VD1は、ダイレクトイグニッション化され、215psまで出力が向上している。
- 6VE1 : V型6気筒DOHCバルブガソリンエンジン,総排気量3,494cc,ボア/ストローク93.4mm×85mm,圧縮比9.4,最高出力230ps/5,600rpm,最大トルク32.0kg-m/3,000rpm,燃料供給装置:電子制御燃料噴射方式,可変吸気コントロールバルブ,レギュラーガソリン,このエンジン搭載車の車両形式は26となる。
- 6VD1のストロークを増大し、排気量を拡大。ダイレクトイグニッション方式。途中で、さらに点火プラグを利用したイオンセンス式イグニッション機構により最適な燃焼制御を図るものに変更。
- 2005年現在、D-MAXに搭載。
- GM製V6 2.8L,3.4L : 初代のモデル末期にUSA向けに設定された。OHV式。
[編集] トランスミッション
- 2代目
- 1991年
- マニュアルトランスミッション :
- オートマチックトランスミッション : ディーゼルはアイシン製AW30-40LE型オートマチックトランスミッション。ガソリンはボルグワーナー製4L30-E型オートマチックトランスミッション。
- 1998年
- マニュアルトランスミッション : アイシン製AR-5型トランスミッション
- オートマチックトランスミッション : ディーゼルはアイシン製AW30-40LE型オートマチックトランスミッション。ガソリンはボルグワーナー製4L30-E型オートマチックトランスミッション。それ以前の型と形式は同じだがエンジンのパワーアップに伴い改良されている。
- 1991年
[編集] メカニズム
- TOD : 電子制御トルクスプリット4WDシステム。TOD(Torque On Demand)は米国ボルグワーナー社の登録商標。
後輪駆動をベースに必要なトルクを前輪へ最大50:50まで伝達するシステム。電磁式で制御する。ただし、4Lでは50:50で固定されるが、4Hでは固定するモードが無い。(同様な機構の日産のオールモード4×4では、4Hでロックできる。また、こちらは油圧式。)
- リアスタビライザークラッチ : 悪路での路面追従性を増す為に、高速走行時の安定した走りを生むリアスタビライザーの機能を解除する機構。当初はイルムシャーに標準装備。イルムシャー廃止後は、プレジール系にスポーツパッケージとしてセットオプション。
- リアLSD : 全車にオプション。
- シフトオンザフライ : 走行中に2Hと4Hを切り換えできる機構。100km/h以下で切り換えを推奨。
- リアセンター4リンク式コイルサスペンション : オンロードの走行性能とオフロードでの走破性を両立した。伸びないフロントサスペンションを補う。