たそがれ清兵衛
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『たそがれ清兵衛』(たそがれせいべえ)は、藤沢周平原作の小説、及びそれを原作とする日本映画。
本項では映画版を中心に記述する。
目次 |
[編集] 解説
映画『男はつらいよ』シリーズで全国的に知名度の高い山田洋次監督が10年にわたる構想の末、初めて挑んだ本格時代劇である。多くの人から愛されながらも再現することの難しさから映画化が敬遠されてきた藤沢周平作品の、しかも写真や文章といった映画化に欠かせない資料もほぼ皆無に近い幕末の庄内地方を舞台にした時代劇ということで、山田曰く「まさに制約だらけの世界」の中での挑戦となった。
しかし、徹底したリアリズムに拘った山田は家屋や城内の様子、さらには髷に至るまで従来の時代劇とは異なったアプローチを展開。苦心の末それらが見事に結実し、時代劇のファン、更には映画ファンまでをも唸らせる結果となった。
時代劇に於いて頻繁に見られるダイナミズムの欠乏やラストシーンの存在意義など、議論の対象とされる箇所も見受けられるものの近年低迷する時代劇および日本映画の中で突出して高い評価を得た作品である。
2002年度(第26回)日本アカデミー賞では『Shall we ダンス?』に続き史上2度目の全部門優秀賞受賞を果たし、助演女優賞を除く全ての部門で最優秀賞を獲得する圧倒的な強さを見せた。また、国内において群を抜く数の映画賞を受賞したほか、2003年(第76回)アカデミー賞において外国語映画賞にノミネートされるなど海外でも高い評価を受けた。(詳細は後述)
[編集] ストーリー
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
幕末時代の庄内地方。海坂藩の下級藩士である井口清兵衛は労咳により妻を亡くした後、重度の痴呆症を抱える母と幼い二人の娘の世話、そして妻の葬儀などで嵩んだ借金を返済するために、「たそがれ時」に御蔵役の仕事を終えると真っ直ぐ自宅に帰ることから「たそがれ清兵衛」と同僚から揶揄されていた。
そんなある日、かつて清兵衛が思いを寄せていた幼馴染の朋江が酒乱の夫・甲田豊太郎に度々暴力を振るわれ、離縁したことを朋江の兄で清兵衛の親友である倫之丞から聞かされる。
その後帰宅した清兵衛が、普段とは違う「お帰りなさいませ」という声を聞いて振り返るとそこには朋江の姿があった。機織ばかりさせられて退屈だからと飯沼家を抜け出し清兵衛の家を訪ねていたのだ。楽しそうに幼少時代を懐古したり娘たちと遊んだりする様子を見た清兵衛は再び朋江に淡い恋心を抱くようになる。
その晩、朋江を見送りに行った飯沼家では酒に酔った甲田が、朋江と離縁させられたことに腹を立て、倫之丞に決闘を申し込んでいた。諌めようとする朋江に再び暴力を振るった甲田を取り押さえた清兵衛は、自分が倫之丞に代わり決闘の相手をすると宣言してしまう。翌朝、般若寺の裏で甲田に対して清兵衛は辛くも勝利を収める。
しばらくは穏やかな日々が続いていたが、海坂藩の藩主が若くして亡くなったことで後継者争いが勃発し、藩内に暗雲が立ち込める。京へ出向く可能性が生じ命の危険をも感じた倫之丞は清兵衛に対し、妹の朋江を親友である清兵衛の元へ嫁がせたいとの縁談を申し出る。しかし、清兵衛は自らの身分の低さと貧しさを理由にその申し出を断る。
ある日、藩命に逆らい、切腹を命じられながらも藩から逃げ延びた一刀流の使い手・余吾善右衛門を仕留める者を求めていた海坂藩は、若かりし頃に道場の師範代を務め、般若寺裏の決闘でも甲田を倒した清兵衛の剣の腕を見込みその任を命ずる。清兵衛は一度その任務を断るものの、下級藩士であることを理由に藩主から半ば強引にその任務を命じられる。
翌朝、清兵衛は決闘を前に飯沼家に使いをよこし、身支度の手伝いを理由に朋江を自宅に呼ぶ。一刀流の名手である余吾との果し合いで自分は命を落とすかもしれないと思った清兵衛は先日の縁談こそ断ったものの、耐え切れず「もし果し合いに打ち勝ったら井口家に嫁に来てほしい」と長年秘めていた想いをついに打ち明ける。しかし朋江は清兵衛に縁談を断られた後に、会津の有力な家中との縁談を受けてしまっていた。
余吾との壮絶な果たし合いの末に打ち勝った清兵衛は傷だらけの体のまま自宅に着く。そんな清兵衛を待っていたのは、二人の娘と朋江だった。清兵衛の一途な思いに心を打たれた朋江は会津の家中との縁談を断り、清兵衛の妻となることを決心したのであった。
しかし、その幸せな生活も長くは続かなかった。数年後に勃発した戊辰戦争で賊軍として扱われた清兵衛は官軍の銃に撃たれてあっけなく命を落とすのであったと、かつての父の姿を懐述する娘が父の墓参りを終え、馬車に乗り去っていくところで劇終する。ラストシーンでの娘(もう壮齢ではあるが)の登場で冒頭のナレーションが彼女によるものであった事が判る。
[編集] キャスト
[編集] 井口家
- 岸惠子・・・晩年の以登
[編集] 飯沼家
[編集] 受賞
[編集] 第26回日本アカデミー賞
[編集] 第45回ブルーリボン賞
- 作品賞
- 助演女優賞・・・宮沢りえ
[編集] 第76回キネマ旬報ベスト・テン
[編集] 第57回毎日映画コンクール
[編集] 第27回報知映画賞
- 最優秀作品賞
- 最優秀監督賞・・・山田洋次
- 最優秀主演女優賞・・・宮沢りえ
[編集] 第15回日刊スポーツ映画大賞
- 作品賞
- 監督賞・・・山田洋次
- 主演男優賞・・・真田広之
- 助演女優賞・・・宮沢りえ
[編集] 海外の映画賞
米アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート
[編集] 関連項目
- 『隠し剣 鬼の爪』 (藤沢周平原作・山田洋次監督作品時代劇第2作目)
[編集] 外部リンク
- 映画版公式ホームページ (フォトギャラリー・掲示板の他、「殺陣日誌」も設置)