アストロラーベ
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アストロラーベ(Astrolabe)は平面アストロラーベとも呼ばれ、古代の天文学者や占星術者が用いた天体観測用の機器であり、アナログコンピュータでもある。用途は多岐にわたり、太陽、月、惑星、恒星の位置測定および予測、ある経度と現地時刻の変換、測量、三角測量に使われた。イスラムとヨーロッパの天文学では天宮図を作成するのに用いられた。
[編集] 歴史
アストロラーベの発明者は知られていないが、16世紀に六分儀が発明されるまでは航海における主要な測定機器であった。アストロラーベの発明者としてヒッパルコスやヒュパティアを挙げる歴史学者もいる。
真鍮製のアストロラーベはイスラム世界の各地で発達し、主にキブラを見つけるために使われた。最初の例は315年(ヒジュラ暦で927-8CE)のものである。イスラムで最初にアストロラーベを作った人物はペルシア人のファザーリ (Mohammad al-Fazari) であることが知られている(リチャード・ネルソン・フライ (Richard Nelson Frye) 『ペルシアの黄金時代』 163ページ)。
アストロラーベは11世紀にイスラムに占領されたスペインを通し、再びヨーロッパにもたらされた。キリスト教圏にアラブ天文学を導入した人物として、シルウェステル2世やヘルマヌス・コントラクトゥス (Hermannus Contractus) らが知られる。数学的背景はバッターニーの論文 Kitab az-Zij (920年頃)により確立され、プラトー (Plato Tiburtinus) の手でラテン語に翻訳された (De Motu Stellarum)。
英語版としては、ジェフリー・チョーサーが『アストロラーベに関する論文』を彼の息子のため、主にメッシャーラー (Mashallah) に基づいて編纂した。またメッシャーラーはプルッセ (Pelerin de Prusse) らによってフランス語にも翻訳された。アストロラーベに関する最初の書籍はプラカティッツ (Cristannus de Prachaticz) による『アストロラーベの構造と使用法』である。これもメッシャーラーを基にしたものであったが、比較的独自性が高い。
ヨーロッパにおける最初の金属製アストロラーベは15世紀にリスボンのアブラハム・ザクート (Abraham Zacuto) によって作られた。金属製アストロラーベは木製のものに比べ、より高い正確さを持つ。15世紀には、フランスの測定機器技師ジャン・フソリス(Jean Fusoris, 1365頃-1436年)が、パリの彼の店で日時計や他の科学機械などとともにアストロラーベを販売し始めた。
16世紀にヨハネス・シュテッフラー (Johannes Stöffler) がアストロラーベの製作法と使用法の解説書である Elucidatio fabricae ususque astrolabii を出版した。
1990年代後半、スイスの時計メーカー、ルートヴィヒ・エークスリン (Ludwig Oechslin) がウリュッセ・ナルディン (Ulysse Nardin) と共同でアストロラーベ腕時計を作った。
[編集] 構造
アストロラーベはメーター (mater) と呼ばれる中空の円盤と、その中にはめ込まれた1個以上のティンパン (tympans) または クライメータ (climates) と呼ばれる平らな板からなる。ティンパンは特定の緯度ごとに作られ、天球の一部分を表わすための方位角と高さの投影法による線が等間隔で刻まれている。これが地平線の上に置かれている。メーターのふちには、一般的に時間または弧の角度、もしくはその両方が刻まれている。メーターとティンパンの上にリート (rete) と呼ばれる、黄道の投影線と星の位置を示すいくつかの指針を持った枠がついている。リートの上で回転する、赤緯の目盛りがついた細いルーラ (rule) を持つアストロラーベもある。
リートが回転するのに従って、星と黄道がティンパン上の空座標の投影図上を動いていく。1周は1日に対応する。ゆえに、アストロラーベは現代における星座早見表の原型といえる。
メーターの裏にはアストロラーベの多岐にわたる応用に役立つ比率などの数値が刻まれていることが多い。それらの数値は製作者によって異なるが、時間を換算するための曲線、特定の月の日にちを黄道上の太陽の位置に変換するカレンダー、三角法の比、裏面を1周する360度の目盛りなどが見られる。裏面にはアリデード (alidade) と呼ばれるもう1つのルーラが取り付けられている。アストロラーベを垂直に持ったとき、アリデードが回転し、その長さに従って星に照準が合わされ、アストロラーベのふちの目盛りから星の高度が得られる(取る)。星 (astro) を 取る (labe) のでアストロラーベ (astrolabe) である。