クレーム
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クレーム(英:Claim )とは、原義では「要求」やその要求の正当性を主張する事を指すが、他の意味では契約違反における損害賠償に関しても同語が用いられる。日本語に於ける和製英語としてのクレームでは、しばしばごり押しによる不当な強迫行為と混同されるケースも見られる。
- なお1979年(日本では1980年)に公開されヒットした映画の『クレイマー、クレイマー』は、本項の「クレームを付ける人」の意味で使用されている「クレーマー」とは何等関係は無い。映画のほうは原題をKramer vs. Kramer という。自己探求のために家族を捨てたMis.Kramer(元妻)と、妻に逃げられ息子の世話に苦慮するMr.Kramer(夫)との確執、そして間に挟まれた子供の物語である。
[編集] 概要
本来のクレームでは、自身の被った損害を説明して、その損害に対して責任のある相手に、損害の補償を要求する事が挙げられる。例としては機能上で不備のある商品を購入してしまった際に、その製品を製造・販売しているメーカーに不良品を正常な製品と交換してもらうために交渉する行為などが挙げられる。企業間では、契約に違反した際の損害賠償請求を含む。
だが日本国内では、前記のとおり不当な請求をしてくる顧客という位置付けもあるため、しばしば一種の蔑称と目される。特にこれを常習的に行う好訴訟的な常習的クレーマーの存在も指摘されており、一部企業ではそのような顧客に対する専門対策班を設ける所も見られ、これらの対策班では法的な妥当性も含めて、対処を検討するとされる。
[編集] クレーム問題
同語が日本国内に於いて広く一般に知られたのは、1999年に発生した東芝クレーマー事件である。同事件では報道を見た一般の視聴者に「要求者=クレーマー」ではなく、「理不尽な要求をも辞さない請求者」であると認識させてしまった。なお「クレーマー=理不尽な請求者」という認識は、東芝側の通常対応不能な総会屋などを主に担当する「渉外監理室(警察OBなどからなる)」という部署の担当者による発言の中にみられ、同担当者の認識がそのような形であったとみられている。これに関しては報道側の取り上げ方にも問題があったと思われるが、この録音の一部がテレビでも放送され、視聴者が威圧的な態度の東芝担当者側の横柄な態度が感じられる声に反発、同社への非難や不買運動に走った点も問題視されている。また同事件では、関係者らの応酬で常識から逸脱した対応が行われたとする報道も見られ、今日でも「ごね得(しつこく要求を繰り返せば、少々の無茶も通る・大企業をも屈服させられる)」といった認識を世間に与えてしまった感も否めない。同事件報道以降、暫くは消費者による「インターネット上のウェブサイトで企業を告発する」という活動が目立つようになり、この中には多額の金銭を要求するものや関係者を論う(消費者側の不利な情報は伏せて、企業側の欠点を並べ立てるなど)ケースも発生、逆に名誉毀損で訴えられたサイト設置者まで見られた。
しかしその一方で、一見不当と思われる請求にも、よくよく話を聞けば、少なくとも請求者自身はもとより、企業側でも妥当だと考える妥協点が存在すると共に、それらの人々が発見し、また一般にはまだ表面化していない製品の問題点に関する情報が含まれるとみなされるようになってきている。一概にクレーマー(不当な請求者)であると無下に扱わず、責任の取れる担当者がきちんと対応することで、消費者の視点ではかろうじて問題提起できるが、メーカー側には全く見えていなかったビジネスチャンスが発見できると考える人もある。
往々にして人は不利益を被ると、感情的に成りやすい。このため企業のサポート側では感情的な電話が掛かる率が非常に高いと言える。他方、本当に不当な請求をしてくる人もこの中には含まれる。この場合、無条件に相手の提示した妥協案に応じるべきではない。もし応じてしまった場合には、他の顧客が不当に差別されている状態を作り出してしまう。そのためにも、関係部署には冷静に人の話に耳を傾ける事の出来る、また公正な判断を下せ、その判断を他の部署と折衝して、適切に推し進められる人を配する必要があるだろう。
そのような理由により企業の顧客相談窓口の部署では、適切な人員の選択に注意を払うと共に、一定の企業内に於ける発言権が確保されている。