ジョン・マッケンロー
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ジョン・マッケンロー(John McEnroe, 1959年2月16日 - )は、アメリカの男子プロテニス選手である。左利き。父親の軍務地であったドイツ・ヴィースバーデンで生まれる。父親は著名な弁護士で、弟のパトリック・マッケンローはプロテニス選手。
彼は試合中に審判の判定が気に入らないとすぐ暴言を発し、マナーが非常に悪いことから“悪童マッケンロー”と呼ばれた。しかしテニスでは4大大会シングルス通算「7勝」(ウィンブルドン3勝、全米オープン4勝)を挙げた実力者であり、とりわけボレーの華麗なボールタッチは天才的だった。またダブルスの名手として、旧友ピーター・フレミングと組んで数多くのタイトルを獲得した。ライバルであるビョルン・ボルグとは対照的に、ラケットのガットをぎりぎりまで緩く張っていた。ウッド・ラケットと金属ラケットとの交替時期に活躍した選手である。
1979年、わずか20歳の若さで全米オープン初優勝を果たした。1980年にウィンブルドン選手権で初の決勝進出。ビョルン・ボルグとの「3時間55分」に及ぶ大激戦はテニス史上に残る名勝負として知られる。この試合では 6-1, 5-7, 3-6, 7-6, 6-8 でボルグに敗れた。(とりわけ第4セットのタイブレークは長時間を要し、マッケンローが 18-16 で取って最終第5セットに持ち込んだ。)しかし同年の全米オープン決勝ではボルグに 7-6, 6-1, 6-7, 5-7, 6-4 のフルセットで勝ち、大会2連覇を達成した。1981年のウィンブルドン選手権で大会初優勝を成し遂げ、ボルグの大会6連覇を阻止した。同年の全米オープン決勝でもボルグを破り、大会3連覇を達成する。1982年のウィンブルドン選手権決勝ではジミー・コナーズに敗れたが、1983年と1984年に同大会連覇を果たし、通算3勝を挙げた。しかし全仏オープンとの相性は悪く、1984年の決勝でイワン・レンドルに敗れた準優勝が自己最高成績である。絶頂期の1984年は4大大会決勝に3連続進出を果たしたが(全仏で準優勝、ウィンブルドンと全米で優勝)、1985年以降、ボリス・ベッカーなどの新勢力の台頭により4大大会の優勝から遠ざかった。
マッケンローの“悪童”ぶりが度を過ぎた試合の最たる例として、1990年全豪オープン4回戦での珍事があった。この時マッケンローはミカエル・ペルンフォルス(スウェーデン)との対戦中に審判への暴言をやめなかったため、第4セットの途中(マッケンローのスコア:6-1, 4-6, 7-5, 2-4 / すなわち、マッケンローがセットカウント 2-1 とリード中)で主審から「失格」を言い渡されたのである。これに観客は憤り、試合会場を立ち去ってしまった。
マッケンローが活躍した時期は衛星放送などの普及により、海外のテニス選手権を中継で見る機会が増えた時期とも重なっている。このため、彼の日本での知名度が高く、企業のイメージ宣伝などに起用されることもあった。
1992年に33歳で現役を引退した後は、テレビ解説者として活躍している。1999年に国際テニス殿堂入りを果たした。2004年7月4日からアメリカ・CNBCでトークショー「マッケンロー」のホストを務めたが、視聴率が0%の回が続き、わずか3ヶ月で終了した。 私生活では、女優のテータム・オニールと結婚し三児をもうけたものの離婚、後に薬物使用を暴露される。1997年にロックシンガーのパティ・スミスと再婚、現在六児の父親である。
[編集] 4大大会優勝
年 | 大会 | 対戦相手 | スコア |
---|---|---|---|
1979年 | 全米オープン | ビタス・ゲルレイティス | 7-5, 6-3, 6-3 |
1980年 | 全米オープン | ビョルン・ボルグ | 7-6, 6-1, 6-7, 5-7, 6-4 |
1981年 | ウィンブルドン | ビョルン・ボルグ | 4-6, 7-6, 7-6, 6-4 |
1981年 | 全米オープン | ビョルン・ボルグ | 4-6, 6-2, 6-4, 6-3 |
1983年 | ウィンブルドン | クリス・ルイス | 6-2, 6-2, 6-2 |
1984年 | ウィンブルドン | ジミー・コナーズ | 6-1, 6-1, 6-2 |
1984年 | 全米オープン | イワン・レンドル | 6-3, 6-4, 6-1 |
[編集] 4大大会男子シングルス優勝記録
- 1位:14勝 ピート・サンプラス(アメリカ)
- 2位:12勝 ロイ・エマーソン(オーストラリア)
- 3位タイ:11勝 ロッド・レーバー(オーストラリア)、ビョルン・ボルグ(スウェーデン)
- 5位:10勝 ビル・チルデン(アメリカ)
- 6位:9勝 * ロジャー・フェデラー(スイス)
- 7位タイ:8勝 フレッド・ペリー(イギリス)、ケン・ローズウォール(オーストラリア)、ジミー・コナーズ(アメリカ)、イワン・レンドル(チェコスロバキア)、アンドレ・アガシ(アメリカ)
- 12位タイ:7勝 ルネ・ラコステ(フランス)、アンリ・コシェ(フランス)、ジョン・ニューカム(オーストラリア)、ジョン・マッケンロー(アメリカ)、マッツ・ビランデル(スウェーデン)
- *は現役選手。
[編集] 関連項目
男子テニス世界ランキング1位 | |
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アンドレ・アガシ | ステファン・エドベリ | エフゲニー・カフェルニコフ | ジム・クーリエ | グスタボ・クエルテン | ジミー・コナーズ | マラト・サフィン | ピート・サンプラス | イリ・ナスターゼ | ジョン・ニューカム | レイトン・ヒューイット | マッツ・ビランデル | ロジャー・フェデラー | ファン・カルロス・フェレーロ | ボリス・ベッカー | ビョルン・ボルグ | ジョン・マッケンロー | トーマス・ムスター | カルロス・モヤ | パトリック・ラフター | マルセロ・リオス | イワン・レンドル | アンディ・ロディック | |
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