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ゼニガタアザラシはアザラシ科ゴマフアザラシ属に属する海棲ほ乳類。日本沿岸に定住する唯一のアザラシ。環境省・水産庁により絶滅危惧種に指定されている
[編集] 分布
- 太平洋~大西洋まで広く分布し、生息地域に応じて5亜種に分けられている。うち1亜種は陸封型。日本に定住する亜種はアリューシャン列島・千島列島・北海道に生息する亜種である。我が国に定住する唯一のアザラシであり北海道東部の襟裳岬や大黒島・歯舞諸島等に生息する。
- 個体数は全世界で40-50万頭。日本には600頭ほどが生息する。
[編集] 形態
- 体長・体重はメスの成獣で120-170cm・50-150kg オスの成獣で150-200cm・70-170kgになる。
- 黒地に白い穴あき銭のような斑紋を持つのでこの名前が付けられた。体の色には暗色型と明色型があるが、我が国に生息している個体はほとんどが暗色型である。
- 新生児の産毛は母の胎内で白い産毛が抜けてしまうので、大人と同じ銭型模様で生まれてくる。これは他のゴマフアザラシ属のアザラシが氷上で出産するのに対し、ゼニガタアザラシは岩場で出産するので大人と同じ銭型模様であるほうが天敵に狙われにくいという利点がある。
[編集] 成熟と繁殖
- 性成熟年齢はメスで4-6歳。岩場で出産し子供は大人と同じ模様で産まれてくる。出産は5-6月。寿命は30年前後。
ゼニガタアザラシの分布
(注:正確には日本では北海道東部のみに分布している)
[編集] 生態
- 日本に生息する亜種は嫌氷性で海氷、流氷の来ない岩場で定住生活をする。北海道の太平洋側のいくつかの岩礁に定住している個体群もある。
[編集] 食物
[編集] 日本人との関係
- 過去に北海道で乱獲されたことがあり、一時期個体数が急減した。現在は狩猟は行われておらず、やや増加傾向にあるが環境省・水産庁の絶滅危惧種に指定されている。
- かつて天然記念物に指定する動きがあったが、魚網に入った魚を食害してしまう、魚網を破ってしまう等の漁業被害を与えており漁業関係者から指定が反対され見送られた。なおゴマフアザラシと同様に漁業の定置網に迷い込み、溺死する個体がいることが報告されている。
- ゼニガタアザラシは日本沿岸で繁殖し住みついている唯一のアザラシである。ゆえに近年観光資源としても着目されウォッチングツアーも行われるようになってきた。
[編集] 日本で見られる施設
[編集] 参考文献
- Ronald M. Nowak " Walker's Mammals of the World (Walker's Mammals of the World)" Baltimore : Johns Hopkins University Press (1999). ISBN 0801857899
- 和田一雄・伊藤徹魯 『鰭脚類 : アシカ・アザラシの自然史』東京 : 東京大学出版会 、1999年、284頁。 ISBN 4130601733
- 和田一雄編著 『海のけもの達の物語 : オットセイ・トド・アザラシ・ラッコ』東京 : 成山堂書店、2004年 172頁。 ISBN 4425981316
- 斜里町立知床博物館編 『知床のほ乳類』斜里町 : 斜里町教育委員会、 2000年。 ISBN 4894530813