デ・ロイテル (軽巡洋艦・初代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

デ・ロイテル(De Ruyter)

本級は「ジャワ」（Java）級に引き続き、オランダ海軍が第二次世界大戦前に東インド植民地艦隊の旗艦として竣工させた軽巡洋艦である。船体デザインは設計に亡命ドイツ設計士官が携わっているために、同世代のドイッチュラント級装甲艦に似ている。太平洋戦争初期、東南アジアで日本軍と戦い1942年2月28日スラバヤ沖海戦で撃沈された。

[編集] 艦形について

艦形状は典型的な長船首楼型船体で、鋭いナイフのような船体をしている。工業デザインの重厚さでは定評のあるドイツ人の設計らしく、質実剛健さとエレガントさを見事に両立させつつまとめられている。艦首形状はクリッパー・バウを採用しており、艦首に連装砲塔一基、その後方に単装砲架、細身の塔型の艦橋があり、構成は航海艦橋・戦闘艦橋・測距儀の順である。航海艦橋の外側には船体幅一杯までの船橋があり、狭い湾内を航行する時に船橋の端から艦長が、障害物を操舵員に指示するための物である。その上に二段の探照灯台、戦闘艦橋と続くのは他国の巡洋艦と一緒である。煙突の両脇には「くの字」型のクレーンが生え、艦橋と煙突の間の艦載艇スペースから海上に艦載艇を下す役割である。煙突の後方にはカタパルトが一基、水上機2機が置けるスペースが有り、格納庫は無く露天であった。その後方には後部測距儀を中心として4cm(70口径)連装機関砲が五角形状に集中配置された。そして後ろ向きに連装主砲塔2基が背負い式で配置された。

[編集] 火砲等

主砲は新設計の「1938年型15cm（50口径）砲」を採用した。スウェーデンのバフォーズ社設計のこの砲は自由装填方式を採用しており、どの角度からでも装填が出来た。仰角は対空戦闘を考慮され最大60度から－10度までであった。旋回角度は艦首方向を零度として左右共に150度に旋回でき、動力は電動、非常用に人力が選択出来た。揚弾薬機は電動式である。重量46,7kgの徹甲弾を仰角45度で最大射程27,400mまで飛ばせた。元設計では連装砲塔三基を前1基、後2基の予定であったが、速力増大の目的から船体を延長したついでに、途中で単装砲架方式（砲塔形式でなく、旋回も装填も人力）で1門を追加した。他に、対空砲として同じくボフォーズ社の「1936年型4cm（56口径）機関砲」を採用した。この砲は重量2,1kgの機関砲弾を高度10,180 m先まで飛ばす事が出来た。他には12,7mm機銃を単装砲架で8丁装備した。なお、本級は魚雷を装備していない。

[編集] 機関

ボイラーはヤーロー式重油専焼缶6基でパーソンズ式ギヤードタービンと組み合わせて機関出力60,000馬力、速力32ノットを達成した（公試時は33,7ノット）。燃料は満載1300トンで12ノット/6800海里の航続性能を得た。

[編集] 艦歴

デ・ロイテルは1933年9月16日に起工され、1935年5月11日に進水、1936年10月3日就役した。デ・ロイテルは東南アジアに派遣され太平洋戦争に参加した。1942年2月4日米重巡洋艦ヒューストン、軽巡洋艦2隻、駆逐艦7隻とマカッサル海峡を航行中、日本軍機の攻撃を受けてデ・ロイテルは至近弾により小破した（ジャワ沖海戦）。2月20日、デ・ロイテルはバリ島沖海戦に参加した。

1942年2月27日、28日デ・ロイテルは軽巡洋艦ジャワ、米重巡洋艦ヒューストン、英重巡洋艦エクゼター、豪軽巡洋艦パース、駆逐艦9隻と共に日本軍のジャワ島攻略部隊の護衛艦隊と交戦した（スラバヤ沖海戦）。この海戦でデ・ロイテルは日本の重巡洋艦那智、羽黒の発射した魚雷2本が命中し沈没した。

[編集] データ

[編集] 竣工時

水線長：-m
全長：170,92m
全幅：15.7m
吃水：5.0m
基準排水量：6,642トン
常備排水量：-トン
満載排水量：7,822トン
兵装：15cm（50口径）速射砲3基+同単装砲1基、1936年型4cm（60口径）単装機関砲10基、12,7mm単装砲機銃8基
機関：ヤーロー重油専焼缶6基＋パーソンズ・ギヤードタービン2基2軸推進
最大出力：60,000hp
航続性能：12ノット/6,800海里　
最大速力：32ノット（公試時：33.7ノット）
装甲
- 舷側装甲：50mm（水線面主装甲）、30mm（艦首尾部）
- 甲板装甲：50～30mm
- 主砲塔装甲：100mm（前盾）、30mm（側盾）、30mm（後盾）、30mm（天蓋）
- パーペット部：50mm
- 司令塔：30mm
航空兵装：2機、カタパルト一基
乗員：438名（水兵）、35名（士官）
同型艦：デ・ロイテル