ドミノ理論
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ドミノ理論(-りろん)は、ある一国の政体変更を許せば、ドミノ倒しのように近隣諸国が次々と政体変更してしまうという外交政策の考え方である。実際に起こった現象についてはドミノ現象と呼ぶ。
「ドミノ」はひとつが倒れれば隣が倒れ、さらにその隣も倒れる……というように、すべてが連鎖的に倒れてしまうので、倒れる前に食い止めなければならない。冷戦期アメリカの外交政策決定に関る人々の間では支配的な考え方であった。アメリカによるベトナム戦争への介入に際してこの理論が用いられた。1975年の南ベトナムの共産化の後に新たに共産化した東南アジアの国はないため、東南アジアにおけるドミノ理論は西側陣営にとって杞憂であったとする見方がある。一方、北ベトナムの軍事圧力でラオスおよびカンボジアが共産化したことがドミノ理論の裏付けであるとし、軍事介入で10年間持ちこたえたからこそ東南アジア全体の共産化が阻止されたとする見方もある。
またハンガリーやポーランドにおける「民主化」がチェコスロバキアや東ドイツへ波及し最終的にはすべての東欧社会主義国が体制変更した東欧革命はドミノ理論が現実化したケースとされ、東欧ドミノ現象などと呼ばれることが多い。
ドミノ現象という捉え方はあまり一般的ではないが、欧州各国における連鎖的な国民主義の勃興によるウィーン体制の崩壊や、戦間期から第二次世界大戦初期にかけて欧州諸国の多くが相次いで独裁体制化し日本にまで影響が波及した現象や、1960年以降アフリカを中心とする植民地が相次いで独立した現象も類似の現象である。(アフリカの年)
いずれにせよ、各国一斉に体制変更がなされる場合はそれなりの共通の下地があるため、近隣諸国からの影響が体制変更を促進することは否定できないがそれがどれほど決定的なものであるかについては定説はない。
転じて、「本当にドミノが倒れる」確率に言及することなく、「風が吹けば桶屋が儲かる」式の理論を展開することもドミノ理論という。
カテゴリ: 冷戦 | アメリカ合衆国の政治史