ヌーリスターン語派

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ヌーリスターン語派（ヌーリスタン語派、カーフィル語派）とは、パキスタンからアフガニスタンにかけて分布する言語のグループで、インド・ヨーロッパ語族のインド・イラン語派に属する。

[編集] 概説

ヌーリスターン語派の話者は、パキスタン北西部からアフガニスタン東部のヒンドゥークシュ山脈奥部に孤立して散在する村々に分布している。これら村落は近代国家の中央政府からの統制をいまだ受けておらず、欧米の言語学者の調査が及んでいなかった。従って文献に初めて現れたのは19世紀と比較的遅い。推定によれば話者人口は非常に少なく、危機言語に数えられる。

比較言語学的な位置づけについては、近年ではインド・イラン語派内の独立した一グループとする見解が主流であるが、一方で支持は少ないながらも、インド語派に含める説や、イラン語派に属するがインド語派に属するダルド語派から多大な影響を受けて変容したとする説もある。いずれにせよ、ヌーリスターン語派の諸民族が現住地に落ち着いたのは相当の過去のことであり、またインド語派とは異なりパンジャーブ地方へは入らなかったという点に争いはない。ちなみにインド・イラン語派には以前からインド語派とイラン語派の2語派が想定されてきたが、その名称は既に定着しており、ヌーリスターン語派を第三の語派として認知するにしても名称の変更は難しいだろう。

ヌーリスターンはかつて「不信仰者の地」を意味するカフィリスタンと呼ばれていた。これは当地の住民が独自の多神教を信仰していたためで、言語もこれに倣ってカーフィル語派とされていた。しかし住民の一部がイスラームを受容すると、異教の民がイスラームの光に照らされたとしてヌーリスターン（光の地）と呼ばれるようになり、カーフィル語派の名も差別的だとしてヌーリスターン語派に改められた。

ストランドは、ヌーリスタン語派には大別して5言語が存在し、それぞれ数種類の方言をもつとしている。主な方言にはカタヴァリ語、カンヴィリ語、ヴァイアラ語などがあり、パキスタン側のヌーリスタンではカンヴィリ語話者が大多数である。これら方言とはダルド語派との関連が指摘されているが、言語学的というよりは地理的な関連であろう。

ノルウェー人言語学者のモルゲンスチェルネによれば、チトラルは言語の多様性という意味で世界一豊かな地域である。主要言語はコワール語であるが、その他にカラーシャ語、パルーラ語、ダメーリー語、ガワール・バティ語、ヌーリスターン語派、イドガ語、ブルシャスキー語、グジャーリー語、ワヒー語、キルギス語、ペルシア語、パシュトー語などが話されている。上にあげた言語は表記法が確立していないため、手紙などにはウルドゥー語やペルシア語が用いられる。

[編集] 下位分類

アシュク語　話者数2000人
カティ語　　話者数24200人（カタヴァリ語、カンヴィリ語、ムンヴィリ語を含む）
プラスニ語　話者数2000人
トレガミ語　話者数1000人
ワイガル語　話者数2000人

[編集] 参考文献

Khowar English Dictionary (by Mohammad Ismail Sloan, 1981) (published in Pakistan)
Decker, Kendall D. (1992) Languages of Chitral http://www.ethnologue.com/show_work.asp?id=32850
Morgenstierne, Georg (1926) Report on a Linguistic Mission to Afghanistan. Instituttet for Sammenlignende Kulturforskning, Serie C I-2. Oslo.
Jettmar, Karl (1985) Religions of the Hindu Kush ISBN 0856681636
J. P. Mallory, In Search of the Indo-Europeans: Language, Archaeology and Myth, Thames and Hudson, 1989.
James P. Mallory & Douglas Q. Adams, "Indo-Iranian Languages", Encyclopedia of Indo-European Culture, Fitzroy Dearborn, 1997.
エスノローグ（全て英語）