ビブリオテーク・ナショナル
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ビブリオテーク・ナショナル(Bibliothèque Nationale de France、フランス国立図書館)は、フランスのパリにある国立図書館。1367年にシャルル5世によって創立されたビブリオテーク・ド・ロワ(王立図書館)を起源とする。2区のリシュリュー通りにある旧館と、13区のベルシー地区(トルビアック地区)にある本館(フランソワ・ミッテラン図書館)からなっている。このほか、世界中から閲覧できる電子図書館『Gallica』[1]も運営している。
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[編集] 概要
1926年までは、18世紀にド・ポルミー侯爵がアンリ4世の重臣で兵器宜(アルスナル)を任されていたシュリーの屋敷跡に造った文学を中心としたアルスナル図書館や、オペラ座図書館、国立高等音楽院(コンセルバトアール)図書館と並ぶ国立図書館であったが、同年これらをまとめ「国立図書館連合」として文部省の管轄下に置かれた。
1981年にこの4図書館はビブリオテーク・ナショナルに統一され、文化省に属することになったが、それぞれ「デパルトマン」と呼ばれる12のセクションに分けられる。そのうち印刷物のデパルトマンは収書部 Entrées、印刷本部 Imprimés(1741年)、政府刊行物部(1950年)、定期刊行物部(1945年)、アルスナル図書館部の五つで、ほかに地図部(1828年)、版画・写真部(1667年)、写本部、古銭部(1741年)、楽譜部(1935年)、録音・視聴覚部(1963年)、演劇部(1976年)の特殊デパルトマン7がある(括弧内は開設年)。写本部は西欧セクションと東洋セクションに分かれ、古写本から現代作家や学者の原稿や手紙もここに受け入れられる。1994年にビブリオテーク・ド・フランスと合併、ビブリオテーク・ナショナル・ド・フランスが正式名称となった。
1537年の法令で(現在も有効)、フランス国内で出版される全ての印刷物は、必ず1部この図書館に保存されることになっている。図書館には1000万を超える書籍と35万束の原稿・写本に加え、地図、コイン、文書、版画、レコードなどが所蔵されている。
[編集] 歴史
フランス王室の図書室はルイ9世(聖王)まで遡ることができ、それ以前のカール大帝の息子、ルイ敬虔王所蔵の写本もビブリオテーク・ナショナルに現存するが、一般にはシャルル5世の収書が起源とされる。国の内外から善本を集め、ブルボン家が2世紀間に集めた蔵書を1523年に没収し、祖父ジャン・ル・ボンと父シャルル・ダングーレームの蔵書に加え、フォンテンブロー宮殿に特にギリシア語写本を集めさせたフランソワ1世は、さらに1544年ブロア城から1890冊の図書をフォンテンブローに運ばせて、ヨーロッパ随一の図書館を造った。ギリシア学者ギョーム・ビュデを司書長にE.ロッフェを製本師長に任命したフランソワ1世は、1573年モンペリエの勅令で印刷本の納本制度を作って領土内で印刷された本を集め、ビブリオテーク・ナショナルの基礎を確立した。
フランソワ1世の嗣子アンリ2世も立派な装丁を愛する集書家であった。続くシャルル9世、アンリ3世は集書に関心を示さなかったが、シャルル9世はフォンテンブロー宮殿の図書をパリに移した。アンリ4世はカトリーヌ・ド・メディシスの古写本の収集を王室図書館に加え、サン・ドニ修道院からカール禿頭王所蔵であった聖書を買っている。ルイ14世とジャン=バティスト・コルベールも集書に努力し東洋の写本、文献も集まるようになった。J.deテブノ、リュカ、『千夜一夜物語』の翻訳で知られる アントワーヌ・ガランらの蔵書も王室図書館に入った。1684年から1718年に死ぬまで図書館を管理したルーボア神父は写本300冊を遺贈し、1719年にはC.ソーメーズのノートと写本630、B.バリューズの集めた写本957、古文書700、原稿7笥が購入された。1721年には現在の場所に写本部印刷本部、証書部、版画部が置かれた。コルベールの造った東インド会社は1723年中国から漢籍1800部を7箱に詰めて贈ったという。
フランス革命で修道院や亡命貴族の蔵書が没収され、パリで9ヵ所ほど設けられた場所に集められ、その膨大な写本、図書が王立から国立となったビブリオテーク・ナショナルに入ったが、1792年家系図を含む文書はヴァンドーム広場で焼かれ、3500箱のうち残ったのは1500箱であったといわれる。東洋学者シルベストル・ド・サシはポアリエ師と協力しサン・ジェルマン・デ・プレ教会の蔵書から東洋語写本880、ギリシア語写本400、ラテン語写本1800を含む9000点とベネディクト会修道士の原稿や使った文献をビブリオテーク・ナショナルに入れた。革命後、学士院はベネディクト会のサン・モール会の学僧の仕事を継続しようとして専門家の不足に気づき、集まった膨大な古文書の整理をするためもあり、専門家の養成のため古文書学校を開くことをナポレオンに願い出た。1807年の勅令がモスクワ遠征途上から出されたが、政治の混乱で実現は1821年の王令を待たねばならなかった。設立された「古文書学校、École des Chartes」からは多くの書誌学者、歴史家、文献学者が育ち、ビブリオテーク・ナショナルの整備も進んだ。
印刷本と写本のカタログはニコラ・リゴー、ソーメーズ、ユタンが1622年に作ったが、写本カタログは1645年にデュピュイ兄弟が増補改定し、N.クレマンがその後の基礎となる分類を作った。クレマンの番号では1から1636が東洋語写本、1801~3538がギリシア語写本、3561~6700がラテン語写本、6701~10542がフランス語および近代ヨーロッパ語写本で、P.パリスの著名な『王室図書館写本解題』をはじめ、多くの19世紀の研究書はクレマンの整理番号を使っている。これは19世紀末に新しい番号に再整理された。パリス、メオン、オモン、レオポルト・ドリールら、多くの学者はビブリオテーク・ナショナルの司書であった。
[編集] 施設
リシュリュー通りの旧館は、アンリ・ラブルーストとジャン=ルイ・パスカルの設計で1854年に着工し1875年に完成した。
連続する丸天井で印象的な現在の印刷本閲覧室は、1868年に公開されたものである。印刷本カタログは1897年から刊行されている。毎年増える蔵書のためベルサイユに別館が置かれ、種々の改革が1930年代に J.カンが作った改革案を基礎に進められている。
現在、旧館にはビブリオテーク・ナショナルのうち版画・貨幣などのデパルトマンと、古文書学校附属図書館、国立美術史研究所の3館が入居している。
[編集] 新図書館の建築
1980年代、フランソワ・ミッテラン大統領はルーブル美術館大改造、新オペラ座建設(オペラ・バスティーユ)、グラン・アルシェ建設など、巨大な文化施設を複数建設しパリの面目を一新するパリ改造計画、「グラン・プロジェ」を立ち上げた。1988年7月14日、フランス革命記念日の演説で、ミッテランはルーブルやオペラ座など先行する事業に続き、手狭になったフランス国立図書館を新築して世界最大の規模に拡大しする計画を発表した。
新しいビブリオテーク建設にあたっては、複数の建築に分散していた部門をすべて入居させあらゆる分野の知識を集めること、あらゆる人々が立ち寄りやすいようにすること、当時の先端の通信技術を使用することで遠隔地からでもデータにアクセスできるようにすること、国内や欧州の他の図書館とも連携することが意図された。1989年7月、244チームが参加した建築設計競技(コンペ)の結果、イギリスのフューチャー・システムズ、イギリスのジェームズ・スターリング、フランスのドミニク・ペロー、フランスのフィリップ・シェとジャン・ピエール・モレルの4案が優秀賞、ジャン・ヌーヴェル案とレム・コールハース案が特別賞となった。英仏対決の様相を呈したコンペは、ミッテラン大統領の採決によりドミニク・ペローの案が採用される結果となった。美術におけるミニマリズムの影響を強く受けたペローの設計案の勝利は、装飾の復活や過去の建築様式の引用などにぎやかな外観を呈したポストモダン建築の流行を終わらせるインパクトがあった。
ビブリオテーク・ナショナルの新館建物は1994年に完成したが、リシュリュー通りの旧館などからの一千万冊を超える書籍や資料の移転作業が続き、一般に公開されたのは1996年12月20日である。
新しい図書館は長方形の敷地の片側に「本を開いて立てたような」L字型の、高さ100mのガラス張り超高層ビルが4棟向かい合い、4棟の総延長は400mに達する。中央に長方形の中庭が掘り込まれ、周囲を地下閲覧室が囲んでいる。また敷地の残りの部分は大きなエスプラネードとなって来館者を迎え入れている。4棟の高層ビルの内部はほとんど書庫であり、一部は各部門の事務所に使用されている。書籍や資料を日光から守るため、各窓には木製の開閉式のボードが取り付けられている。
この建築に対する評価は賛否両論である。セーヌ川に面したクールな姿を評価し、さびれたベルシー地区の様相を一変させたという声もある一方、建築費が掛かりすぎたうえに書籍の保存には適さない建築だという声も多い。
[編集] 交通
- フランソワ・ミッテラン図書館 : メトロ14号線Bibliothèque François Mitterrand下車
[編集] 外部リンク
- BnF Web site (公式サイト)
- Gallica, BnF's digital library(ビブリオテーク・ナショナルの運営する電子図書館『Gallica』のサイト)
- フランスの図書館訪問記(神戸大学附属図書館)