プラント (機動戦士ガンダムSEED)
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プラント (P.L.A.N.T.) は、アニメ『機動戦士ガンダムSEED』及び『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する、架空のスペースコロニー群あるいは国家の呼称。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 概要
コーディネイターが居住する "P.L.A.N.T." は、国家としてのプラントを指す場合は "Peoples Liberation Acting Nation of Technology" (テクノロジーに立脚した民族解放国家)の、コロニー群そのものを指す場合は "Production Location Ally on Nexas Technology" (新世代コロニー)の略語である。
プラントはコーディネイターが中心となって作り上げた。コロニー1基を1区、10区を1市としており、プラント全体で12市、L5に存在している。そのため、プラントのコロニーは少なくとも100基以上と推測される。本来は資金を提供した宗主国による『プラント運営会議』の支配下にあるはずのものだが、開戦後はコーディネイターによる独立国となった。
ナチュラルが中心の地球連合軍とは敵対関係にあり、地球連合軍のムルタ・アズラエルはプラントに存在するコロニーの形が砂時計に似ている事から、プラントの事を「忌々しい砂時計」とも呼んでいた。
ヘリオポリスのような密閉型ではなく、上記のように砂時計のような景観のコロニーの両端に居住地帯を設けたタイプとなっている。その為、太陽光が取り入れやすく、巨大な湖など地球によく似た自然環境を再現できる。反面、ザフトの技術で耐久度があるとはいえ地面以外は分厚く張られたガラス張りなので、密閉型より耐久度などがやや劣る。
ジョージ・グレンがコーディネイターを「新たな種」と定義して以来、地上のナチュラル系国家群によるコーディネイターへの偏見や差別もあり急速に宇宙への移民が増している。他にもシン・アスカなど戦乱に巻き込まれて家族を失った難民が流入しているようである。この辺りは新天地を目指し、世界中の移民が集まり誕生したアメリカ合衆国に似ている。
[編集] プラント最高評議会
プラント最高評議会 (PLANT Supreme Council) とは、プラントの最高意思決定機関。プラントの首都、アプリリウス市に議事堂を持つ。
政体は共和制。評議会の構成員は互選制によって12の市から1人ずつ選ばれる。互選制とは、政治に適性のある成人(15歳以上)から住民投票で選ばれる制度。適性は本人の意思とは関係なく、能力や実績からコンピューターが判断する。C.E.71の代表は以下に記す。
- ユニウス市
- 基礎農林水産学、応用農水工学、社会工学
- 代表:ルイーズ・ライトナー
- クィンティリス市
- 基礎化学、応用化学
- 代表:ジェレミー・マクスウェル
- セプテンベル市
- 電子工学、情報工学、人工知能工学、総合情報学
- 代表:アイリーン・カナーパ
- ノウェンベル市
- 多目的実用生産工学
- 代表:パーネル・ジュゼック
- ヤヌアリウス市
- 基礎微細工学、応用微細工学
- 代表:アリー・カシム
- マティウス市
- 航空宇宙工学、造船工学
- 代表:エザリア・ジュール
プラントは事実上革命政党である自由条約黄道同盟(ZAFT)が政権を独占し、党と政府、そして軍が一体化している。ZAFTは現在にいたるもプラント連合史上唯一の政権政党であり、当然の事ながら一党独裁が常態なのであった。従って、「ザフトはプラントの軍の名前」というラクス・クラインの言葉は嘘とも見えるが、ラクスは軍属でも党員でもないのでZAFTではない(プラント国民だから政治家や軍人とは限らない)と見れば正しいともいえる。これに沿うならば、ラクスは、党幹部の実娘であり、党の広告塔であり、党組織内で非常に自由な行動を許されているにも関わらず、党員ではない、というかなり奇妙な立場にあったことになる。
[編集] ザフト
ザフト(Z.A.F.T:Zodiac Alliance of Freedom Treaty=自由条約黄道同盟)は、コーディネイターを主国民とするプラント連合が、事実上の国軍として保有する武装組織。ただし、建前上は軍隊ではなく、政治団体(結社)である。
ザフトの前身はプラントの政治結社で「黄道同盟」といい、パトリック・ザラをはじめとする当時のタカ派評議会議員らが有志となって結成した。本格的軍備を整え、現在のような事実上の国軍の体裁となるのは、C.E.65年のことである。従って、ザフト兵が士気を鼓舞する際叫ぶ「ザフトのために」は、軍への忠誠の自己目的化ではなく、そういった政治的同志意識の確認の意味合いが強いものである。
ザフトは、アメリカ海兵隊のように一部隊が陸海空すべてに対応できる。一方、兵士は別の仕事を持つものが義勇兵として参加している。そのためザフト軍には階級は無く構成員は肩書きのみで呼ばれている。また、各部隊は指揮官の名前で呼ばれ(例えばラウ・ル・クルーゼ隊長のクルーゼ隊、アンドリュー・バルトフェルド隊長のバルトフェルド隊など)、直接評議会の指揮下に置かれている。この他、FAITHと呼ばれる特務隊が存在する。コズミック・イラ(CE)70年以降、地球に侵攻を開始し、制圧したカーペンタリアやジブラルタルに基地を設けている。なお、アスラン達の世代では志願制になっており、士官学校を経て入隊する。階級が無い、ということは、自ずと「兵」「下士官」「士官」の区別も無いことになるが、なぜかこの「士官学校」は存在しており、この矛盾に関する説明は劇中、関連メディアを問わず全くされていない。
[編集] 軍としての情報管理の甘さ
ザフト軍は階級が無い為、作戦の指揮等は容易に出来たり、人材登用に融通が利くというメリットがあるが、それと引き換えに情報の管理やセキュリティーシステムの杜撰さが目立っている。
SEEDでのフリーダム強奪事件やDESTINYでのカオス・アビス・ガイアの強奪事件など、軍人ではない無許可の人間が容易に潜入でき、かつコックピットのレイアウトを知りえた等、極秘情報に関する管理の甘さが見受けられる(フリーダムは前議長の娘ラクス・クラインが、3機強奪事件の時はザフト軍兵士が協力をしていたが、政治家の娘や普通の一般兵が入れる事自体に問題がある)。しかし、開発が遅れていたセイバーは別としても強奪側がインパルスの情報を入手できていなかった事等微妙な疑問も残っている(セイバーを除くセカンドステージモビルスーツ4機は一般のマスコミにも大々的に知られていた)。後に機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAYで、強奪側がインパルスの情報を手に入れられなかったのはケナフ・ルキーニまたは、マティアスによる情報操作の仕業だった事が明かされている。強奪側を操るマティスはデータの世界からの情報のみを信じた為にインパルスは強奪を免れた。 また、エターナル奪取事件でも内部の手引きがあったとはいえ、当時指名手配されていたはずのラクス・クラインが悠々と侵入している事からもセキュリティー管理の甘さを窺い知れる。(またはクライン派の人間の多数がエターナルの開発に携わっていたか情報を漏らしていたかザフト軍の中にも支援者が多数いたのかもしれない)
[編集] 軍服
ザフトでは士官学校の成績又は役職によって軍服の色が変化する。大雑把には士官学校の成績優秀者トップ10には赤服(通称、ザフトレッド)が授与されそれ以外は緑である。また、艦長クラス及び司令官クラスは黒、大きな隊の隊長クラスは白である。なお、隊長クラスに限り戦艦の艦長を兼任している者が多い。国防委員会などの政治色の強い者達は紫の軍服を着用する。
[編集] 開発した兵器
- 戦前より開発されたモビルスーツ
- 戦時中に開発されたモビルスーツ
- ニュートロンジャマーキャンセラーモビルスーツシリーズ
[編集] 略史
- コズミック・イラ38年
- コズミック・イラ44年
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- 新型のL5コロニー群の第一陣10基(後のアプリリウス市)完成。
- 大規模生産基地としての意味から、「プラント」と呼称される。
- コズミック・イラ45年
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- コーディネイターの人口、推定で一千万を突破。
- プラントへの投資は継続され、そこに従事するにはコーディネイターでなければ無理という図式は崩れず、プラントは拡大を続ける。やがて、「プラントで作れないものはない」とまで言われるようになったが、食料、特に穀物の生産は厳重に禁じられ、ほぼ100%を地上からの輸入に頼るという状況であった。
- このころから、反コーディネイターを訴える組織によるテロ事件が発生。しかし、自治権がなく、非武装が徹底されているプラント側には対抗手段はなく、コーディネイターの間に不満が高まる。
- コズミック・イラ50年
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- シーゲル・クライン、パトリック・ザラ、自治権や貿易自由権の獲得を訴えザフトの前身である「黄道同盟」を設立。
- 理事国は、黄道同盟の活動を圧殺し、コーディネイターたちの反感を買う。
- 黄道同盟は地下に潜り、プラント内で一つの勢力を築き始める。
- コズミック・イラ53年
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- プラントの運営を、各市の代表による「プラント評議会」が行うこととなる。
- コズミック・イラ55年
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- プラント、フェブラリウス市にてS2型のワクチン開発に成功。増産、地上への供給開始。
- コズミック・イラ57年
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- 大西洋連邦宇宙軍(FSF)、ユーラシア宇宙軍、東アジア共和国航空宇宙軍の合同軍が、プラント宙域に駐留開始(のちの地球連合軍の前身となる)。
- コズミック・イラ60年~
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- プラントの、地球へのエネルギー・工業製品供給地化が進む。
- 理事会は、プラントに重いノルマを化すようになる。
- コズミック・イラ61年
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- ザラ委員、プラント内で反コーディネイターの組織によるテロに遭うが、一命を取り留める。
- コズミック・イラ63年
- コズミック・イラ65年
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- モビルスーツの実用第一号機、秘密裏にロールアウト。
- 黄道同盟が活発化し、名称を「自由条約黄道同盟: ZAFT」に変更。
- コズミック・イラ67年
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- モビルスーツの実用第一号機ジン完成。マイウス市の一部を極秘裏に改造し、モビルスーツの増産を開始。
- コズミック・イラ68年
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- シーゲル・クライン、プラント評議会議長に選出される。
- ZAFT所属議員が評議会の多数派を占め、自治獲得、貿易自主権獲得を最優先とする決議が行われる。
- 翌月の理事会とのプラント運営会議にて表明。
- プラントの表明に対し、理事国は大反発。武力による示威行動に出るが、プラント側も軍備拡張で応じ、にらみ合いになる。
- クライン議長、極秘裏に南アメリカ合衆国、大洋州連合と取引し、プラントと両国間で、食料輸入及び、工業製品輸出が取り決められる。
- 理事国側は、クライン議長の解任と議会の解体、プラントの自治権完全放棄を要求するも、プラント側が反発。それに対し、理事国側はプラントへの食料輸出の制限を行う。
- 「マンデルブロー号事件」
- 南アメリカから食料輸入を行おうとしたプラント籍の貨物船団を理事国側が撃沈。
- 「マンデルブロー号事件」を機にパトリック・ザラは「ZAFT」を解体・再編成しプラント内の警察的保安組織と合併、モビルスーツを装備した軍事的組織となる。
- コズミック・イラ69年
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- シーゲル・クラインはプラント内での食料生産を開始し、ユニウス市の7~10区が穀物生産プラントに改装。
- プラントの食料生産開始に伴い、理事国側は実力を行使してもこれを排除すると勧告。
- 理事国側、プラントに対し威嚇行動に出るが、このとき初めて軍事組織「ZAFT」とモビルスーツ「ジン」の存在が公開される。モビルスーツ部隊は初の軍事行動であり、圧倒的少数でありながら地球側のモビルアーマー部隊を翻弄。宙域に駐留していた理事国の宇宙軍を排除する事に成功。
- クライン議長、完全自治権の獲得及び対等貿易を理事国側に要求。プラント理事会において交渉が何度か行われるが、平行線。
- 70年1月1日までに回答が得られない場合、プラント側は資源の地球への輸出を停止することを明示。これにより、理事国とプラントの緊張が激化。
- コズミック・イラ70年
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- 1月1日
- プラント側からの要求への回答期限である理事会(「未開理事会」と呼ばれる)へ向かう評議委員へのテロ行為。議員一名が死亡。
- 「ブルーコスモス」による犯行声明が出るが、背後に理事国の存在が明らかになり、プラントは物資の輸出を停止。生産のほとんどをプラントに頼っていた理事国家群は窮乏。
- 2月11日 - 地球連合、プラントに宣戦布告。月面のプトレマイオス基地より侵攻開始。
- 2月14日 - 「血のバレンタイン」
- プラント側、モビルスーツ部隊をもって、連合の攻撃を殲滅。
- だが、ユニウス市のコロニーの一つ(食料生産コロニー/ユニウス・セブン)に被害を受け、24万3721名の犠牲者を出す。(この時パトリック・ザラ国防委員長の妻レノア、ユニウス・セブンにいたため、死亡)。
- 地球側は、プラントの自爆作戦と批判。これによりザフト・地球連合の本格的闘争が始まる。
- 2月18日 - 「黒衣の独立宣言」
- クライン議長、「血のバレンタイン」での犠牲者を弔う国葬の際、独立宣言と「地球連合」への徹底抗戦を明言。
- 1月1日
- コズミック・イラ71年
-
- 4月1日
- プラント評議会議長選挙。パトリック・ザラ、議長就任。
- ザラ議長、強硬路線を明示し、オペレーション・ウロボロスの強化策として「オペレーション・スピットブレイク」を議会に提出。即日可決される。(※ただし、このとき提出された作戦目標はパナマ。)
- 9月23日
- プラント防衛要塞ボアズ、地球軍の核攻撃により陥落。
- 9月26~27日
- 第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦。パトリック・ザラ議長死亡。地球連合と停戦。
- 4月1日
- コズミック・イラ72年
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- 2月頃
- ユニウス条約発効。
- 2月頃
- コズミック・イラ73年
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- 10月2日
- アーモーリーワンでザフトセカンドシリーズガンダム3機が強奪される。
- ?月
- 地球連合が宣戦布告する。
- 10月2日
[編集] 各コロニー
- アプリリウス
- アプリリウス市に所属するプラントの首都。
- 『機動戦士ガンダムSEED』ではアスラン・ザラとシーゲル・クラインの会話時に登場した。
- 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では地球連合軍の月面兵器、レクイエムの攻撃を受ける。しかし、イザーク・ジュール率いるジュール隊の奮闘によりゲシュマイデッヒ・パンツァーの射線がずれ、直撃を免れた。
- ユニウスセブン
- ユニウス市の農業用スペースコロニー。コズミック・イラ70年に血のバレンタインと呼ばれる核攻撃事件が起こり、プラントと地球連合の全面戦争が、地球圏全土へと拡大していく切っ掛けとなった因縁の場所でもある。なお、その戦争の停戦条約もユニウスセブン跡で結ばれた。
- なお、ユニウスセブン跡で条約締結が行われた日、ザフト軍脱走兵達のテロ組織が偽装した武装の式典用MSによる奇襲攻撃をかけようとしたが、サーペントテールやジャン・キャリーによって阻止されている
- コズミック・イラ73年、サトーら3人のパトリック・ザラ派のテロリストによってユニウスセブンは地球への落下軌道に乗せられた。それを阻止しようとジュール隊とミネルバがユニウスセブンの破壊作戦を敢行。『メテオブレイカー』とミネルバの艦首砲『タンホイザー』によって破壊は成功したが、その破片が地球の各地に落下し、甚大な被害が出てしまったのだった(ブレイク・ザ・ワールド事件)。
- アーモリーワン
- アーモリー市(Armory 1~Armory 10から成る)を構成するコロニーの1つ。『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の物語の出発点というべき場所でもある。またArmoryは兵器工廠の意。
- コズミック・イラ73年、アーモリーワンには、進宙式を控えていたミネルバが停泊していた他、インパルス、カオス、ガイア、アビスなどセカンドステージシリーズを始めユニウス条約締結後に開発されたザクウォーリア、ザクファントムなどのモビルスーツが製造されており、軍事工廠としての側面が強い。しかし、潜入していたスティング・オークレー、ステラ・ルーシェ、アウル・ニーダの3人によってカオス、ガイア、アビスを奪取され、また彼らの攻撃で大きな被害を受けてしまう。
- なお、小説では、大戦後に建設された工業用プラントとなっている。
[編集] 関連項目
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