ローマ法大全
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ローマ法大全(ろーまほうたいぜん)とは、東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌス1世(ユスティニアヌス大帝)が、ローマ法を編纂した法典のこと。正式名称は、市民法大全(Corpus Iuris Civilis)。ローマ法大全の名前は、後世の歴史家ゴトフレドゥス(1549-1622)によって命名された。ユスティニアヌス帝の名をとって「ユスティニアヌス法典」と呼ばれることもあり、またハンムラビ法典、ナポレオン法典と並ぶ世界三大法典の一つとされることもある。
この法典は古代ローマ時代からの自然法および人定法(執政官法、法務官法、帝政になってからの勅令)を、東ローマ帝国初期の皇帝ユスティニアヌス1世(ユスティニアヌス大帝)が法務長官トリボニアヌス(500-547)をはじめとする10名に編纂させたもので、以後東ローマ帝国の基本法典として用いられ、後には西欧の各国の法典(特に民法典)の規範となった。ローマ法大全の代表的な編纂学者はトリボニアヌスである。
ユスティニアヌス帝は、529年4月7日に勅令を持ってこの法典の旧勅法彙纂を発布した。
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[編集] 構成
ローマ法大全は、学説彙纂(がくせついさん)、法学提要(ほうがくていよう)、新旧勅法彙纂(ちょくほういさん)からなる。
[編集] 学説彙纂(Digesta又はPandectae)
施行年月日:533年12月16日
帝政初期から500年代までの著名な法学者の学説を編纂させたもの。学説を収集された学者(これらを古法学者veteresという)は40名に上り、帝政初期の学者が最も多い。Digestaはダイジェストの意、Pandectaeはそのギリシア語表記。ドイツ語のPandektenはこれに由来し、その編纂方式が「パンデクテン方式」として、日本法まで影響を及ぼしている。
[編集] 法学提要(Institutiones)
施行年月日:533年11月21日
法学を志す初学者のために、ユスティニアヌス帝が編集せしめた書物。法学校での教科書としての内容を持つ。 その内容は、ガーイウス(Gaius)の法学提要とほぼ同一であるとされるが、修正・加筆により一部異なる部分がある。ガーイウス版の法学提要はかなりの部分が失われている。
[編集] 勅法彙纂(Codex Justiniani , Codex Vetus & Codex Repetitae praelectionis)
施行年月日:529年4月7日 / 534年11月16日
帝政初期から編纂している時代までの勅令をまとめさせた。ユスティニアヌス帝が始めに勅令を出し編纂させたのが、旧勅法彙纂。その後、改訂版の勅法彙纂を発布した。
なお、勅法彙纂完成後の534年以降にユスティニアヌスによって出された勅令を『新勅法』と呼ぶ。他の法典が当時の帝国の公用語であったラテン語で書かれているのに対して、この『新勅法』の大半はギリシャ語で書かれている。これは東ローマ帝国領の大半はギリシャ語圏であり、一般市民にはラテン語は理解できなかったためである。
[編集] 内容
ローマ法大全はあくまで当時の現行法の集大成である。したがって、古い書物を編集する際、古い時代の法制が当時の情勢にそぐわなければ法制度を当時の情勢にみあったものにするために修正・加筆(悪く言えば原文・原学説の改竄)が行われた。これをInterpolatioと呼ぶ。