久石譲
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久石 譲(ひさいし じょう、Joe Hisaishi、本名:藤澤 守、1950年12月6日 - )は、日本の作曲家。長野県中野市出身。長野県須坂高等学校、国立音楽大学作曲科卒。宮崎駿監督や、北野武監督作の音楽を担当していることで有名。
所属事務所は株式会社ワンダーシティ(東京都渋谷区)。 関連会社として久石の作曲活動の場であるスタジオ、株式会社ワンダーステーション(同)がある。
「久石譲」の名前は、クインシー・ジョーンズに由来する。在学中に、音楽家として活動する以上、それなりの名前が必要ということで、友人と話し合った結果、好きだったクインシー・ジョーンズから名付けることとした。
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[編集] 略歴
5歳の時にバイオリンを習い始める。幼少から、高校教師であった父に連れられて沢山の映画を見ていた。その事が現在の仕事に強く影響を与えていると後に語っている
印象に残る甘美なメロディーなど、わかりやすく誰にでも親しみやすい音楽性をもっていることで人気の高い久石であるが、元々の音楽スタイルは、ミニマル・ミュージックと呼ばれる、音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽であった。この影響で高校時代からテリー・ライリーやスティーブ・ライヒ等の世界的なミニマルミュージック奏者の楽譜の分析を始める。後に、ミニマルを基本としたアルバム「ムクワジュ」を発表。はじめの頃の人気はさっぱりであったが、1982年にリリースされたファーストアルバム「INFORMATION」と1984年にリリースされたセカンドアルバム「α-BET-CITY」がニューヨークでヒットし、話題となった。
作曲家としてテレビ音楽に彼が初めて登場したのは、テレビアニメ「はじめ人間ギャートルズ」からで、宮崎駿監督の劇場用アニメ作品の音楽としては『風の谷のナウシカ』(1984年)から。当初、『風の谷のナウシカ』の本編の作曲は別の大御所作曲家が手掛ける予定だったが、久石が過去に発表したアルバムを、宮崎駿、高畑勲両氏が聞き気に入ったため、久石に決定した。それまで有名ではなかった久石が、このことによって一躍脚光を浴びることになる。
『ナウシカ』以後、沢山の映画に楽曲提供を行っている。宮崎駿監督作品が一番多く有名だが、北野武監督作品や大林宣彦監督作品にも多く携わっており、その集大成として「WORKS・I」(1997年)を発表した。
1992年より3年連続で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞、1997年にはベネチア国際映画祭で北野武監督作品『HANA-BI』が金獅子賞(グランプリ)を獲得、1998年には1997年年度芸術選奨<大衆芸能>新人賞を受賞した。長野パラリンピック冬季競技大会」では総合演出を手がけ、テーマソングも作曲した。
2001年、宮崎駿監督作『千と千尋の神隠し』や北野武監督作『BROTHER』、フランス映画『Le Petit Poucet』などの音楽の作曲を務めるほか、自身の初監督となる映画『Quartet』を発表した。
2004年、『ハウルの動く城』の音楽の作曲を担当するほか、第57回カンヌ国際映画祭において、日本の作曲家としては初となるオープニングセレモニーの作曲と指揮を担当、注目を集めた。
2005年、『LA批評家協会賞』音楽賞を受賞。また、佐藤純彌監督作『男たちの大和/YAMATO』の音楽の作曲を担当する。
意外なところでは、ピアノだけでなく自らボーカルとなり、シングル(1988年12月21日発売の「冬の旅人」など)・アルバムも発売している。だが、ヴォーカル作品のほうの人気はさっぱりであった。また、広島県の私立如水館高等学校の校歌「水のように」、長野県の公立中野西高等学校の校歌「イヌワシの歌」の作曲も手掛けている。
[編集] 演奏活動
演奏活動も毎年行っており、ピアノ、アンサンブル、オーケストラなど様々なスタイルで活動している。 2003年にはピアノ+チェロ9本という異色のコンサートを行い注目を集めた。 このツアーの東京公演を収録したDVDがユニバーサルミュージックよりリリースされている。(久石譲、初のライブDVDリリースである)
2004年には「新日本フィルハーモニー交響楽団」が新たに結成した「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」の音楽監督に就任。自身の楽曲だけではなく「007のテーマ」、「ミッション・インポッシブルのテーマ」、「スターウォーズ」と云った有名な映画音楽からラベルの「ボレロ」のようなクラシック曲などジャンルにとらわれないスタイルでコンサートを行っている。
コンサートでは主にピアノを担当するが、2000年の「地下鉄サリン事件被害者支援コンサート」では指揮者の金洪才に代わり、数曲の指揮を担当。久石譲の指揮者としてのデビューである。2001年のコンサートツアー「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」では同様に楽曲「Student Quartet」の指揮を担当している。
その後、2003年の「新日本フィル・ペンションファンドコンサート」や「Symphonic Special 2003」では指揮を担当する楽曲数も増え、指揮者としての姿が目立ってきた。そして2004年の「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」ツアーでは音楽監督として全曲を指揮した。なお、ステージにはピアノも設置され、機会は少なかったもののピアノと指揮を同時にこなす「弾き振り」の姿も見られた。本人曰く「ピアノはあまり得意ではない」らしい。 このコンサート以来、指揮は久石のみで行っている。 (ソロパートなど弾き振りが可能な部分は指揮台前に置かれたピアノで久石が、不可能な部分はステージ脇に設置されたピアノを楽団員が演奏)
また、2005年のコンサートツアー「Symphonic Special 2005」ではステージに大スクリーンを設置しバスター・キートンの無声映画「The General」(邦題「キートンの大列車強盗」)の映像に合わせてオーケストラを指揮するといった難しい試みにも挑戦。 元々は2004年の第57回カンヌ国際映画祭のイベントで久石が行ったものであるが、日本でも大成功を収め脚光を浴びた。
[編集] 主なコンサート
- 2000年:音楽、生命、そして希望 - 地下鉄サリン事件被害者支援チャリティーコンサート(オーケストラ)
- 2000年:PIANO STORIES 2000 Pf Solo & Quintet(ピアノ+アンサンブル)
- 2001年:SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001
- 2002年:Symphonic Special 2002 - 子供たちとかつて子供であった人たちへ(ゲスト:石井竜也(朗読・東京公演のみ))
- 2003年:Piano Stories 2003 - a Wish to the Moon(ピアノ+チェロ9本)
- 2003年:新日本フィルハーモニー交響楽団ペンションファンドコンサート
- 2003年:Symphonic Special 2003 - 子供たちとかつて子供であった人たちへ
- 2004年:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ - WORLD DREAMS(ゲスト:ティム・モリソン(Tp))
- 2005年:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ - Symphonic Special 2005
- 2005年:Freedom ~PIANO STORIES 2004(ピアノ+弦楽アンサンブル/ゲスト:Angel Dubeau and La Pieta)
- 2005年:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ - 12月の恋人たち(ゲスト:レディ・キム(Vo))
- 2006年:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ - 真夏の夜の悪夢~サイコホラーナイト
- 2006年:PIANO STORIES 2006 Asian X.T.C (ゲスト:バラネクス・カルテット他)
[編集] 作品
- MKWAJU(1981/8/21)
- INFORMATION(1982/10/25)
- α-BET-CITY(1985/6/25)
- CURVED MUSIC(1986/9/25)
- Piano Stories(1988/7/21)
- illusion(1988/12/21)
- PRETENDER(1989/9/21)
- I am(1991/2/22)
- My Lost City(1992/2/12)
- Symphonic Best Selection(1992/9/9)
- B+1(1992/10/21)
- 地上の楽園(1994/7/27)
- MELODY Blvd.(1995/1/25)
- 銀河鉄道の夜(1996/7/20)
- PIANO STORIES II~The Wind of Life~(1996/10/25)
- WORKS I(1997/10/15)
- NOSTALGIA PIANO STORIES III(1998/10/14)
- HOPE(1998/2/25)
- WORKS II(1999/9/22)
- Shoot The Violist~ヴィオリストを撃て~(2000/5/17)
- joe hisaishi meets kitano films(2001/6/21)
- ENCORE(2002/3/6)
- SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001(2002/7/26)
- 風の盆(2002/11/23)
- CURVED MUSIC II(2003/1/29)
- ETUDE(2003/3/12)
- 空想美術館(2003/10/22)
- PRIVATE(2004/1/21)
- WORLD DREAMS(2004/6/16)
- FREEDOM PIANO STORIES 4(2005/1/26)
- WORKS III(2005/7/27)
- パリのアメリカ人(2005/11/30)
- THE BEST COLLECTION(2006/6/7)
- ASIAN X.T.C.(2006/10/4)
[編集] 音楽を手がけた映画
- 風の谷のナウシカ(1984年)
- Wの悲劇(1984年)
- 早春物語(1985年)
- 春の鐘(1985年)
- グリーン・レクイエム(1985年)
- 天空の城ラピュタ(1986年)
- アリオン(1986年)
- 熱海殺人事件(1986年)
- めぞん一刻(1986年、実写版)
- 恋人たちの時刻(1986年)
- 漂流教室(1987年)
- この愛の物語(1987年)
- ドン松五郎の冒険(1987年)
- となりのトトロ(1988年)
- 極道渡世の素敵な面々(1988年)
- 魔女の宅急便(1989年)
- ヴイナス戦記(1989年)
- 釣りバカ日誌2(1989年)
- カンバック(1990年)
- ペエスケ/ガタピシ物語(1990年)
- タスマニア物語(1990年)
- あの夏、いちばん静かな海(1991年)
- 仔鹿物語(1991年)
- ふたり(1991年)
- 福沢諭吉(1991年)
- 青春デンデケデケデケ(1992年)
- 紅の豚(1992年)
- はるか、ノスタルジィ(1992年)
- ソナチネ(1993年)
- 水の旅人/侍KIDS(1993年)
- 女ざかり(1994年)
- キッズ・リターン(1996年)
- もののけ姫(1997年)
- パラサイト・イヴ(1997年)
- HANA-BI(1998年)
- 時雨の記(1998年)
- 菊次郎の夏(1999年)
- 川の流れのように(2000年)
- はつ恋(2000年)
- 千と千尋の神隠し(2001年)
- BROTHER(2001年)
- Quartet(2001年)
- Le Petit Poucet(2001年、仏)
- Dolls(2002年)
- Castle in the sky(2003年)(天空の城ラピュタの音楽を外国向けの映画のためにアレンジしたもの)
- 壬生義士伝(2003年)
- ハウルの動く城(2004年)
- the general(2004年)
- 男たちの大和/YAMATO(2005年)
- トンマッコルへようこそ(2005年、韓国)
- 情癲大聖 (A Chinese Tall Story) (2005年、香港)
- おばさんのポストモダン生活 (2006年、中国)
[編集] 音楽を手がけたテレビ番組
- 東海テレビ放送昼ドラマ 「華の別れ」(主題歌「冬の旅人」を自ら歌っている)
- 金曜ロードショー (cinema nostalgia)
- 世にも奇妙な物語「さよなら6年2組」
- 大人は判ってくれない
- NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体
- NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体2 脳と心
- NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体3 遺伝子
- 連続テレビ小説『ぴあの』(純名里沙など様々な人がカバー)
- めざましテレビ/めざましどようび(テレビスタジオBGM)
- NHKBS「アートエンターテインメント 迷宮美術館」
- TBSテレビ50年 戦後60年特別企画「ヒロシマ」(平原綾香とともにテーマ曲「いのちの名前」を製作、『千と千尋の神隠し』のBGM「あの夏へ」に歌詞を付けて編曲したもの。作詞は覚和歌子。本来は2001年にリリースされた映画『千と千尋の神隠し』の主題歌CD「いつも何度でも」に木村弓のボーカルで収録されていたが、この特別番組の為に久石のピアノと平原綾香の歌声でカバーされた。)
- MBS 美の京都遺産 (Legend)
- NHK シリーズ世界遺産100(世界遺産100のテーマ)
- 韓国ドラマ「太王四神記」(日本では07年春放送予定)
[編集] 音楽を手がけたアニメ
- ろぼっ子ビートン
- はじめ人間ギャートルズ
- 銀河疾風サスライガー
- さすがの猿飛
- BIRTH
- 機甲創世記モスピーダ
- 吉祥天女
- 炎のアルペンローゼ
- リングにかけろ
- 王家の紋章
- まんが日本昔ばなしエンディング“にんげんっていいな(編曲)”
- ふたり鷹
[編集] 音楽が使われたCM
- 「Ballet au lait」 ~ 全国牛乳普及協会
- 「Silence」 ~ ダンロップ『VEURO』(久石本人もCMに登場した)
- 「セラミック・ビート」 〜『日産・フェアレディZ』(Z31型)
- 「a Wish to the Moon」 ~ 麒麟麦酒『キリン一番搾り生ビール』
- 「Ikaros」 ~ 東ハト『キャラメルコーン』
- 「Spring」 ~ ベネッセコーポレーション『進研ゼミ』
- 「Summer」「Asian Dream Song」 ~ 『トヨタ・カローラ』(9代目)
- 「Oriental Wind」 ~ サントリー『京都 福寿園 伊右衛門』(製造:㈱福寿園、宇治の露製茶㈱) ペットボトル ([1])
- 「お母さんの写真」 ~ ハウス食品
- 「Venuses」 ~ カネボウ『いち髪』
- 「Woman ~Next Stage~」 ~ レリアン
- オリジナル曲(ボーカル:麻衣)~ 日産・スカイライン「幕開け・イチロー篇」、「幕開け・渡辺謙篇」
[編集] 音楽を手がけたゲームソフト
[編集] 著書
- 『I am - 遥かなる音楽の道へ』(株式会社メディアファクトリー,1992)ISBN 4889912649
- 『パラダイス・ロスト』(株式会社パロル舎,1996)ISBN 4-89419-115-6
- 『感動をつくれますか?』(角川書店,2006/8/10)ISBN 4-04-710061-7
- その他
- 月刊宝島にてコラム『35mmダイヤリーズ』を連載中