人間工学
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人間工学(にんげんこうがく)、あるいはエルゴノミックスは、物を人が自然な動きや状態で使えるように設計する工学。
英語の名称、Ergonomicsはギリシャ語のergon(働く)とnomoi(自然な状態、自然法)から作られた造語である。人間工学の考えに基づいて設計された物の例としては、正しく座ると背筋が伸び、負担がかかりにくい椅子や使用者の高さによって、キーボードの高さを調節できるトレイがある机などが挙げられる。
[編集] 歴史と内容
人間工学という概念が広まったのは、パソコンが一般家庭に広まった時期に近いため、コンピュータ機器と関連付けて語られることが多いが、人間が道具を扱う全ての分野に影響を与える工学である。また、人間の生理学的、解剖学的側面のみならず、心理学的側面に対する探求を行っている。労働中に発生した事故を検証し、それが使用した器具の単純な設計ミスなのか、それとも人間の認識や認知の問題にあるか分析し、そして再発をどのようにして防ぐかという問題も人間工学の学問で研究する範囲にある。例えば、医療ミスの1つである輸血ミスを防ぐためには、研修を定期的に行い注意を徹底するというのが従来の対策であった。しかし、人間工学を取り入れることで、文字を大きくし、血液型ごとに違う色のシールを貼り付けた袋を使うなど、注意力が低下している時でも間違わないような対策が採られるようになってきている。
[編集] IT分野
コンピュータ関連では、ソフトウェアに関する人間工学の研究が進んでいる。 ソフトウェアの使いやすさは、使用する人間に関する知見なくしては開発できないからである。 パソコン関連企業の中では、アップルコンピュータ社が特に早い時期からソフトウェア人間工学に関心を寄せ、ユーザビリティに関する研究成果をマッキントッシュに結実させたことは有名である。