債権
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債権(さいけん)とは、ある者(債権者)が特定の相手方(債務者)に対して一定の行為(給付)をするよう要求できる権利をいう。
債権の効力として、給付請求力、給付保持力及び貫徹力があるとされる。もっとも、給付保持力以外はなくてもかまわないともされる。 民法第3編債権は、発生原因として、契約、事務管理、不当利得及び不法行為の4つを規定している。
物を支配する権利である物権とは異なり、特定の債権者・債務者間でのみ効力を有する権利であるため、排他性を有しない。
多数当事者の債権として、連帯債務、保証債務がある。
目次 |
[編集] 債権の目的
第3編第1章総則第1節で規定される。
- 特定物債権(とくていぶつさいけん)(b:民法第400条)
物の個性を重視した特定物の給付を内容とする債権。例えば土地の引渡し債務や中古品の引渡し債務などである。目的物の保管につき債務者には善管注意義務が課される。反面その履行は現状でその物を引き渡せばよいとされる(民法第483条)。
また、双務契約における危険負担においても不特定物債権との差異を生じる(民法第534条1項)。
さらに、瑕疵担保責任(民法第570条・第566条)の解釈につき、売買の目的物が特定物であることを要すると解する法定責任説とこれに限られないとする債務不履行説との対立にも関連する。
その他、弁済の場所(民法第484条)。
- 種類債権(しゅるいさいけん)(b:民法第401条)
目的物(不特定物)を種類と数量だけで指示した債権。履行までには特定(民法第401条2項)を生じて目的物が具体的に定まり、以降は原則として特定物債権と同じ扱いとなる。市場に種類物が存在する限り履行不能を生じないし、特定を生じない限りは調達義務を負う。
その他、双務契約における危険負担(民法第534条2項、第536条)、弁済の場所(民法第484条)。
- 制限種類債権(せいげんしゅるいさいけん)
目的物の範囲に限定のある種類債権。例えば特定タンク内のタール5000トンのうち2000トンの引渡し債務などである。この場合に特定タンク内のタールの全てが滅失すれば履行不能となる。その他は種類債権に準じる。
- 金銭債権(b:民法第402条)
- 選択債権(民法第406条)
[編集] 債権の効力
第3編第1章総則第2節で規定される
[編集] 多数当事者の債権及び債務
第3編第1章総則第3節で規定される
- 分割債権及び分割債務(第427条)
多数当事者の債権関係における原則的形態。1つの可分な給付を目的とする債権を複数の債権者が有する場合を分割債権とよび、1つの可分な給付を目的とする債務を複数の債務者が負う場合を分割債務とよぶ。
例えば、金銭債権が共同相続された場合(分割債権)や共同売却代金(分割債権)などが考えられる。
分割された債権や債務は相互に独立したものと扱われる。また、債権者や債務者の1人に生じた事由は他の債権者や債務者に影響しない。
分割債務とされると債権の効力が弱まることから、学説上分割債務の成立を限定して解する見解がある。例えば金銭債務の共同相続の場合や共同購入者の負う代金支払債務などにつき争いがある。
[編集] 債権の譲渡
第3編第1章総則第4節で規定される
[編集] 債権の消滅
第3編第1章総則第5節で規定される 第5節 債権の消滅
- 債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同じである
[編集] 用語
- 指名債権
- 債権者が特定している一般の債権。指図債権・無記名債権に対する。預金通帳等。
- 指図債権
- 無記名債権
- 証券的債権
- 指図債権・無記名債権・記名式所持人払債権のこと。
- 記名式所持人払債権
- 例:記名式持参人払小切手
- 作為債権
- 不作為債権