北村薫
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北村薫(きたむら かおる、1949年12月28日 - )は日本の小説家、推理作家。埼玉県生まれ。本名は宮本和男。早稲田大学第一文学部卒。
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[編集] 経歴
早稲田大学在学中はワセダ・ミステリ・クラブに所属。卒業後、母校である埼玉県立春日部高等学校の国語教師をしながら、1989年覆面作家として『空飛ぶ馬』でデビュー。1991年に『夜の蝉』で第44回日本推理作家協会賞(連作短篇集賞)を、2006年に『ニッポン硬貨の謎』で第6回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)・2006年版バカミス大賞を受賞する。が、代表作「スキップ」等で、直木賞最終候補作に三度選ばれるも、未だ受賞せず。また、本格ミステリ作家クラブ設立時の発起人の一人であり、初代事務局長を務める。2005年、同クラブの会長に就任する。
国語教師時代の教え子にラーメンズの片桐仁がいる。片桐は偶然『スキップ』を読み、自分が受けた授業が描かれていて感動した、と語っている
推理小説の執筆だけではなく、推理小説に関する評論やエッセイも多い。また、鮎川哲也の短編集の編集を行なったり、自らアンソロジーを編んだりと、編集の分野でも活動している。 また、現在は早稲田大学文学部において創作指導もしている。
また、高校、大学を通しての後輩である、同じく推理作家の折原一との親交が深く、北村薫のデビューも、折原一に刺激されてのものだった。
[編集] 覆面作家時代
覆面作家としてデビューし、当初はその正体が色々と推理された。デビュー作『空飛ぶ馬』から始まる一連の円紫さんシリーズの主人公である「私」(名前は明かされていない)が女子大生であり、文章や視点なども女子大生を髣髴とさせるものがあるという事で、作者もまた女子大生なのではないかという説が有力視されていたが、『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞した際に、自らの素性を明らかにした。
[編集] 評価と位置づけ
北村薫のミステリには、「日常の謎」派の作品といわれるものが多い。これは、日常の些細な謎や疑問を明快な論理で解決するという種類のもので、北村薫のデビュー作『空飛ぶ馬』で初めて登場した形態である。この作品により、殺人事件の解決だけが推理小説ではないという認識が広まった。この分野の作品を書く他の作家に加納朋子、若竹七海らがいる。
[編集] 作品
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 円紫さんシリーズ
- 空飛ぶ馬(東京創元社、1989年) - デビュー作
- 織部の霊/砂糖合戦/胡桃の中の鳥/赤頭巾/空飛ぶ馬
- 夜の蝉(東京創元社、1990年)
- 朧夜の底/六月の花嫁/夜の蝉
- 秋の花(東京創元社、1991年) - 初の長編作品
- 六の宮の姫君(東京創元社、1992年)
- 朝霧(東京創元社、1998年)
- 山眠る/走り来るもの/朝霧
- 大学で日本文学を学ぶ《私》は、恩師が同じであるという縁からファンであった落語家・春桜亭円紫と知遇を得る。知り合った席で話に出た恩師の不思議な体験について明快で合理的な説明を付けた円紫に対し、《私》はそれからもたびたび自らの身の回りで起こった疑問・謎を円紫に示す。円紫は、時に自らそれを解決し、時に《私》にヒントを与えて《私》自身による解決を促す。シリーズ開始当初は大学2年生である《私》が進行とともに時を重ね、成長していく成長小説の要素もあわせ持つシリーズである。
『六の宮の姫君』は、主人公が芥川龍之介の短編「六の宮の姫君」の創作の意図を解き明かすために、芥川の交友関係を探っていく文学推理もので、番外編ともいえる作品。
[編集] 覆面作家シリーズ
- 覆面作家は二人いる(角川書店、1991年)
- 覆面作家のクリスマス/眠る覆面作家/覆面作家は二人いる
- 覆面作家の愛の歌(角川書店、1995年)
- 覆面作家のお茶の会/覆面作家と溶ける男/覆面作家の愛の歌
- 覆面作家の夢の家(角川書店、1997年)
- 覆面作家と謎の写真/覆面作家、目白を呼ぶ/覆面作家の夢の家
- 出版社で推理小説雑誌の編集部に勤める岡部良介は、覆面作家としてデビューした新人作家を担当することになる。その新人作家である新妻千秋は大富豪の一人娘で、家では内向的でおとなしい性格だが、一歩家の外へ出ると社交的で活発な人格に変わるという別の一面があった。岡部良介が持ち込む身の回りの事件を、新妻千秋が解決するシリーズである。1994年には、角川書店アスカコミックスより漫画化され、1998年に『お嬢様は名探偵』というタイトルでTVドラマ化された(NHK・主演:ともさかりえ)。
[編集] 時と人 三部作
- スキップ(新潮社、1995年)
- 17歳、高校2年生の一ノ瀬真理子は、文化祭の日の夕方、昼寝から目覚めると自分が25年後の世界にいて、夫も子どももいる境遇におかれている事を知る。失われた年月の大きさを思いながら、それでも前向きに生きていこうと真理子は決意していく。
- ターン(新潮社、1997年)
- リセット(新潮社、2001年)
- 太平洋戦争の末期、芦屋に暮らす水原真澄は、友人の従兄の結城修一に恋をするが、戦時下であるという状況から、お互いに想い合っていたにも関わらず、恋は実らず、修一は空襲により死亡する。戦後、東京で出版社に勤めるようになった真澄は、そこで修一の面影を残す村上和彦という少年に出会う。
[編集] その他の小説
- 冬のオペラ(中央公論社、1993年)
- 三角の水/蘭と韋駄天/冬のオペラ
- 水に眠る(文藝春秋、1994年) - 短編集
- 月の砂漠をさばさばと(新潮社、1999年)
- おーなり由子との共著。北村が物語を書き、それにおーなりが絵をつけた。
- 盤上の敵(講談社、1999年)
- 街の灯(文藝春秋、2003年)
- 虚栄の市/銀座八丁/街の灯
- 語り女たち(新潮社、2004年)
- ニッポン硬貨の謎(東京創元社、2005年)
- 紙魚家崩壊-九つの謎(講談社、2006年)
- 溶けていく/紙魚家崩壊/死と密室/白い朝/サイコロ、コロコロ/おにぎり、ぎりぎり/蝶/俺の席/新釈おとぎばなし
- ひとがた流し(朝日新聞社、2006年)
[編集] 評論・エッセイ
- 謎物語 -あるいは物語の謎-(中央公論社、1996年)
- 謎のギャラリー(マガジンハウス、1998年)
- ミステリは万華鏡(集英社、1999年)
- 詩歌の待ち伏せ(文藝春秋、2002年)
- 続・詩歌の待ち伏せ(文藝春秋、2005年)
- ミステリ十二か月(中央公論新社、2004年)
[編集] アンソロジー(選者として)
- 謎のギャラリーシリーズ
- 北村薫の本格ミステリ・ライブラリー(角川文庫、2001年)
- 北村薫のミステリー館(新潮文庫、2005年)