基数
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- 基数:0から9までの整数。
- 桁の基数(radix,base number):数値を表現する際、何倍毎に桁を繰り上げるかを示す自然数。例えば十進数の基数は十、二進数の基数は二である。N進数を参照。
- 集合の基数(cardinal number):個数を拡張した概念。本稿で詳述する。
- 単位の基数。単位において、基礎となる数値。平面の四、立体の六、時間の三十や十二など。広義では、基礎となる数値の倍数も含めて云う。
- 累乗の基数。n乗に対して、その根になっている数。例えば、六十四の基数は八(平方根)、四(立方根)、二(素因数分解すると二の六乗)の三通りである。
数学でいう基数(きすう、cardinal number)とは、素朴に言うと、「物の数」を表す概念であり、例えば、一つのリンゴ、十個のミカンというときの一や十は基数である。この反対の概念として、順序数というものがある。第一、第二という時の一、二がそうであり、例えば英語では“one”と“first”の違いが基数と順序数の違いである。
有限個の話であれば、例えば
- 一個と二個は違う
- 一個よりも二個の方が多い
- 「リンゴが一個」でも「みかんが一個」でも、一個は一個である
ということを考えることができるが、このような議論を無限個のものに対して行うためには、 いわゆる個数の概念では不足であり、それを拡張した濃度あるいは基数という概念が必要となる。その結論として得られる「同じ無限でも、『大きい無限』と『小さい無限』がある」という 話は興味深い。
有限集合の基数はその集合に含まれる元の個数と同一視してよい。
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定義
集合Aから集合Bへの全単射があるとき、AとBは基数(濃度、cardinality, power, potency)が等しいと言われる。
Aの基数(cardinal number)とは、Aと基数(cardinality)が等しい順序数のうち最も小さなものというふうにして普通は定義される。しかし、この定義では全ての集合が基数を持つことを言うためには選択公理を必要とする。(cardinalityを濃度と呼び、cardinal numberを基数と呼ぶのはなかなかよい知恵だと思われる。しかし区別することにはあまり意味がないかも知れない)
選択公理を仮定せず、正則性公理を使って濃度を定義できることも知られている。 その方法は、発見者の名から「スコットのトリック」と呼ばれる。
次に、基数に大小関係を定義したい。今、Aの基数を|A|と表すことにする。AからBに単射があるとき、|A| ≤ |B| と定義する。|A| ≤ |B| かつ|B| ≤ |A| ならば|A| = |B| とする。これが上の定義と一致するということを保証するのが、(カントール=)ベルンシュタインの定理である。
ベルンシュタインの定理
集合Aから集合Bへの単射があり、BからAへも単射があれば、AからBへの全単射がある。
言っていることは、直観的には当たり前であるが、証明をするとなると、それほど簡単ではない。
可算・連続体
可算濃度とは自然数の濃度である。通常、 あるいは と表記される。
定義より自然数との間に1 対 1 の対応を付けることができ、これによって 1, 2, 3, ... と順番に数えていくことができるため「可算」と言う。自然数、整数、偶数、奇数、有理数はいずれも可算個である。
連続体濃度とは実数の全体の濃度である。 あるいは と表記される。 両者の間には、カントールの対角線論法によって が成り立つことが証明される。
可算基数には以下のような性質がある。
- は極小な無限濃度である。すなわち、κ が より小さい濃度ならば、κ は有限濃度である。
- 選択公理を仮定すると、 は最小な無限基数である。すなわち、全ての無限基数 κ に対して、 が成り立つ。
後続基数と極限基数
全ての基数κに対して、それより大きい基数λでその二つの基数の間には他の基数が存在しないようなものが存在する。つまり、λはκの次の基数であると言える。このような基数をκの後続基数(successor cardinal)という。どの基数の後続基数にもならないような基数を極限基数(limit cardinal)という。
後続基数は常に正則基数になるなど、後続基数と極限基数の間には大きな性質の違いが見られる。