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大和型戦艦 - Wikipedia

大和型戦艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大和型戦艦

レイテ沖海戦直前、ブルネイ泊地に集合した日本戦艦群。手前が戦艦 長門、その奥の駆逐艦を挟んで大和武蔵。どちらがどちらかは未だ不明である。
艦級概観
艦種 戦艦
艦名 旧国名
前型 長門型戦艦
次型 -
同型艦: 大和武蔵信濃、111号艦
竣工: 1941年12月16日(大和)
1942年8月5日(武蔵)
1944年11月19日(信濃)
開戦後建造中止、解体(111号艦)
沈没: 1945年4月7日(大和)
1944年10月24日(武蔵)
1944年11月29日(信濃)
性能諸元(新造時)
排水量: 65,000トン
全長: 263.0m
全幅: 38.9m
主機: 蒸気タービン4基4軸150,000馬力
最大速力: 27ノット
航続距離: 16ノットで10,000(実測)
乗員: 約2,300名
兵装: 3連装45口径46cm砲3基
3連装60口径15.5cm砲4基
連装40口径12.7cm高角砲6基
25mm3連装機銃8基
13mm連装機銃2基
カタパルト2基
零式水上偵察機・零式水上観測機他、最大7機 (数値はいずれも竣工時)
装甲: 舷側 410mm
甲板 230mm
主砲防盾 650mm
(数値はいずれも最大)

大和型戦艦(やまとがたせんかん)は、大日本帝国海軍(以下海軍)が建造した戦艦の艦型。海軍が建造した戦艦の最高傑作として知られ、現在に到るまでこれを超える排水量を持つ戦艦は建造されていない。

その勇姿と一番艦大和の悲劇的な最期への郷愁や憧れからか、数々の映画、アニメ・漫画や、プラモデルなどで幅広い年代によく知られている。特に『宇宙戦艦ヤマト』は知名度の上昇や一般化に大きな役割を担った。今でこそ「大和」は日本国民に最も知られる軍艦と言っても過言ではないが、太平洋戦争中はその存在自体が軍事機密とされ、一般国民にはほとんど知られていなかった。当時の国民には長門型戦艦長門陸奥が海軍の中心として知られていた。

目次

[編集] 概要

ワシントン海軍軍縮条約明けに際し、艦艇数で勝る米英を質で凌ぐため、第三次補充計画の際に海軍の持てる建艦技術の粋を集めて建造された。当時欧米諸国(特にアメリカ)はワシントン海軍軍縮条約で規定された35,000t前後の戦艦を建造していたが、これらの国の保有艦の搭載砲を大きく引き離す46cm砲を装備した結果、基準排水量65,000tの世界最大の戦艦として建造され、大艦巨砲主義の最高傑作といわれている。海軍は戦艦に対し日本各地の旧国名をその名としたが、「大和」とは奈良県の旧国名(大和)というばかりでなく、「日本」を象徴する意味合いもあったと思われる。大和型は、まさに海軍の願いの象徴であった。すなわち、「わが身に迫るいかなる敵の攻撃にも耐えて永遠に沈まず、日本に仇なすいかなる敵をも撃砕する」という願いである。同様の命名として扶桑がある。

[編集] 主要諸元

[編集] 船体形状

  • 球状艦首(バルバス・バウ)を日本の戦艦では初めて採用した。
    球状艦首は艦(船)体が水を押しのける時に出来る波と球状艦首が作った波が相互に干渉して、造波抵抗を減衰させる装置である。これを採用した事で、有効馬力で速力27ノット時で8.2%程度の抵抗を減らし、排水量換算で約300t、水線長で3m艦体を短くする効果を得た。これは、軸馬力に換算すると11,000馬力出力が小さい機関を搭載したのと、同じ効果をもたらした。さらに、シャフトブラケットの船体取付角度、ビルジキールの船体取付位置と角度を検討した結果、バルバスバウの効果と併せて15,820馬力の節約となった。これは排水量に換算すると1,900トンの節約となり、大型駆逐艦1隻の排水量に匹敵した。*:同時期に設計された翔鶴型空母と大きさでかなり異なるが、これは翔鶴型が34ノット、大和型が27ノットにおいて造波抵抗が最小になるよう最適化されているためである。
  • 主副舵の構成
    通常の2枚舵は平行に設置されているが、これでは戦艦ビスマルクのように魚雷1本を被雷しても操舵不能に陥る可能性がある。これを避けるため、当初は舵の1枚を艦首に装備する案(実験結果は不良)もあったが、結局艦の中心線上に前後に15mの間隔を開けて主舵と副舵を設置した。
    両舵を同時に使用した成績は良好であった。しかし、副舵だけで旋回は可能だが、大和型の惰力は予想以上に大きく、副舵だけでは当舵が全く利かないので旋回する艦を直進に戻すことができず、副舵だけでは操艦は不能であった。対応策が考えられたが、開戦により対処はされなかった。
  • 運動性能
    大和型は巨大でずんぐりした船体からは想像もつかない程良好な運動性能を発揮した。海軍では旋回性能の標準を「旋回直径÷艦の水線長」で現している。この数値には縦と横で若干の違いがあり、横の旋回性能標準は戦艦3、大型巡洋艦4、軽巡洋艦5、駆逐艦6、縦で戦艦3、大型巡洋艦3.5、軽巡洋艦4、駆逐艦4.5とされていた。大和型の旋回性能は、横で2.43、縦で2.23と優れたものだった(一般に、同一排水量の場合、細長い船体のほうが旋回性能は悪化するとされている)。
    また、旋回半径自体も他の戦艦より優れていた。大和型の旋回直径は26ノットで横640m、縦589m(横2.43、縦2.23)である。長門型戦艦は横530m、縦631m(横2.36、縦2.81)、金剛型戦艦は横826m、縦871m(横3.7、縦3.91)だから、船体の大きさを考えるなら、非常にコンパクトな旋回性能を持っていた。さらに、旋回時の船体の傾きも大和9度、長門10.5度、金剛11.5度であり、安定性も優れていた(他国戦艦の旋回圏はノースカロライナ級526m(2.36)、キングジョージ5世級850m(3.74))。
    回避運動中の大和を上空からとらえた写真をみると、周囲の海面が盛り上がっているのが分かる。巨艦の小回りの効きの良さを裏付ける写真である。マリアナ沖海戦レイテ沖海戦、呉軍港空襲で大和は米軍機の投下する魚雷、爆弾の多くをかわす事に成功している。ただしこれほどの大きな艦では舵をきってから実際に回頭を始めるまで数十秒必要であり、回頭すると速力は急激に落ちる。
  • 最上甲板
    最上甲板を真横から見ると、第一主砲塔前を底とするなだらかな波型をしているのが見てとれる(いわゆる「大和坂」)。これは艦上構造物で最も重量のある砲塔の位置を下げ、艦首部に大きなシア(甲板の反り)をつけることで、艦の重心降下と良好な凌波性という相反する性質を上手く両立させるためである。
  • 復元性
    大和型は復元性、凌波性共に優れていた。この為強風や荒波での戦闘は特に有利だったと思われる。
  • 艦橋
    ここは艦の神経中枢である。これまでの日本戦艦と異なり塔型であることが特徴、コンパクトで頑丈な造りになっている。この塔は13階建てで、中心に三菱製の3人乗りエレベーターが通っている。

[編集] 副砲

  • 配置
    60口径15.5cm三連装砲塔を(完成当初は)2番主砲塔後方及び3番主砲塔前方と左右両舷に1基づつ、計4基12門が装備され、うち9門を片舷に指向できる配置となっていた。
    戦局が航空戦に傾倒するに及んでレイテ沖海戦直前に左右の二・三番副砲塔は撤去され、大和は12.7cm連装高角砲6基に取り替えられた。武蔵は高角砲の搭載工事がレイテ沖海戦までに間に合わず、25mm3連装機銃6基が追加されたと言うのが通説になっている(現在に至るも正確であるかは不明。噴進砲が搭載されたと言う説もある)。大和型の艤装改良は幾度も行われているが、最も外観が変化したのはこの左右副砲の撤去前と撤去後といえる。
    この副砲は条約型巡洋艦、駆逐艦などの突撃に対処するためのものだが、対空射撃には有効とは言い難く(諸説あり)、副砲を全廃して両用砲に転換したノースカロライナ級キングジョージV世級の方が設計に先進性があったという意見が幅広く見られる。しかし、大和型と同時期に仏独伊が建造した戦艦でも副砲と高角砲は分離されている。特にフランス海軍では、ダンケルク級で一旦両用砲を採用したが、両用砲は平射砲としても対空砲としても能力不足という判定から、次のリシュリュー級で、再び高角砲と副砲に分離しているという事実はあまり認知されていない。実際キングジョージV世級戦艦の両用砲は、装填機構や砲の追従性の問題で対空射撃が困難であったと判定されているし、ノースカロライナ級の両用砲は、対水上砲として考えた場合、有効射程が短すぎて、駆逐艦の雷撃を阻止できない可能性が多分にあった。誰が見ても合理的な両用砲だが、多くの海軍が採用しなかったのは理由があるのである。大和型の副砲は、充分な数の護衛艦を持てない劣勢な海軍(米英以外の全て)が、敵の水雷戦隊を「魚雷を放つ以前の距離で迎撃する」ための兵装である。つまり12.7センチ程度の小口径高角砲では、水雷戦隊阻止に充分な有効射程を持てないため、より大口径の副砲が必要という観点に立つものだ(高角砲の大口径化は、発射速度、砲の追従性など肝心の対空砲力を低下させるため、本末転倒になりやすい)。主砲を水雷戦隊の迎撃に使用する愚を考えるなら(その間、敵戦艦は妨害なく砲撃してくる)、分離は一理あるという意見もある。
  • 性能
    軽巡洋艦最上重巡洋艦に改装された際に撤去された主砲塔を改造して使用している。ドレッドノート以降の近代的な戦艦の副砲としては破壊力・射程共に最高クラスであった(他にリシュリュー、ヴィットリオ・ヴェネト、ビスマルク級など、新型戦艦でも6インチ(15.2㎝)副砲搭載艦は見られるので、類を見ないというわけではないが)。対空射撃も可能であり、レイテ沖海戦では、副砲は主砲と共に高角砲の射程外にある敵機編隊に対する長距離対空戦闘用として使用された。昭和19年10月24日の対空戦闘では、武蔵の副砲は203発もの対空射撃を行っており、これは同じ日に大和が行った高角砲射撃の頻度を上回るものであった(武蔵の副砲が1門辺り、33.8発(203発/6門)、大和の高角砲が1門辺り32.6発(784発/24門)。大和型の副砲は、搭載時に対空見張り用として使用できるよう、砲塔容積を増して、対空揚弾筒や信管秒時調定機の装備、砲塔測距儀の改修が行われていたという説もある。実際、レイテ沖海戦後の戦闘詳報で他艦で見られる「砲塔測距儀(もしくは観測窓)の最大見張り可能仰角が足りないため、対空射撃に不適」という指摘は、大和型副砲には見られないからである。同海戦で行われた大和型戦艦副砲の対空射撃は、計586発にも及んでおり、海戦後に対空用砲弾として用いられる零式通常弾の搭載定数が、50発から100発に増加されている。大和型戦艦の副砲は、砲の俯仰・旋回速度に優れていたため、編隊を分離して攻撃態勢に入った敵航空機に追従できた。このことから、近距離で副砲を対空射撃に使用した結果、その爆風により、特設機銃に被害を与えた形跡もある。

[編集] 対空兵装

大和型の対空兵装は、実の所最終時においては確実な証拠となる資料が一切発見されていない。戦後公式に存在した大和型に関する資料が全て焼却されたことによりこのような問題が起きている。唯一判明しているのは、大和・武蔵ともに損傷修理等の際ドック入りしたときに艦中央部両舷に配した第2・第3副砲を撤去し、代わりに対空兵装を増設したということだけである。

大和に関しては、昭和20年4月5日に停泊中の姿を米軍偵察機から上空撮影した比較的鮮明な写真が先ごろ発見され、その解析結果如何によっては最終時の対空装備が確定する可能性がある。

  • 高角砲
副砲撤去の部分に、大和は12.7cm高角砲を両舷に各3基計6基増設したことが明らかとなっているが、武蔵に関しては工事が間に合わなかったという説が多い。しかし、その代わりに25mm機銃を載せたという説や、多連装噴進砲を載せたという説、何も載せなかったという説等今の所確定はしていない。また大和の高角砲も、増設側はシェルター付き、既存の側はシェルター無しであるがこの理由も(一般的には「生産が間に合わなかった」と言われているが)はっきりしない。
  • 搭載機銃
機銃の数に至っては、諸説入り乱れていて全く正確な数字がわかっていないといっていい。大和最終時には13mm機銃を艦橋両舷に配備していたという説や、単装機銃を配備していたという説があるもののそれがどの位の門数だったのか、どういう配置だったのか等正確な所は不明であり、ただ総門数が100門を超えていたということだけは確かなようである。今のところ、写真解析により判明した「25mm三連装機銃52基(156門)、同単装機銃6基(6門)、13mm連装機銃2基(4門)」というものが有力視されている。
機銃群指揮用の機銃射撃指揮装置に関しても、増設されたのは確実であるものの、その正確な数(特に最終時)については不明である。
  • 3・4番艦
大和型3番艦「信濃」、4番艦"111号艦"に関しては、高角砲に秋月級で採用した長10cm高角砲を搭載する予定だったとする説は多い。但し、空母として竣工した信濃には、回航時に12.7cm高角砲が搭載されていたといわれ、真偽の程は不明である。搭載されなかったとの説もあり、信濃自体の最終的な対空装備そのものがどのようなものであったか未だ不明である。

[編集] 爆風対策

46cm主砲発砲時の風圧は、甲板上にいる人間や搭載する航空機等に甚大な被害を与えるため、その対策が実施された。その衝撃波は凄まじく、実験では航空機が粉々に砕けるほどであったと言われている。なお、主砲発射時には甲板上にいる者に対してブザーが鳴り警告をしていた。1回目で甲板乗員は艦内に退去、2回目で発射するという手段を執っていた。

  • シェルター付き高角砲、機銃
    機銃手の衝撃波避けのためにシェルターが付けられたが、増設された機銃の一部には施されていない(増設高角砲及び一部の機銃には、新造時に装備されていたものを移設)。むき出しの機銃員は上記のように、ブザーで艦内に待避させていた。そのため、対空戦闘では主砲発射に伴う要員の待避、再配備の空白の時間が出来てしまう弱点になっている。
  • 艦載艇の設置場所として、甲板上を避け、艦内に通船格納庫を設けた。
  • カタパルトと航空機格納庫
    大和型戦艦は主砲発砲時の爆風対策として、艦内に航空機格納庫を設け、6から7機の水上機が搭載可能だった。

[編集] 防御

  • 集中防御
    大和型戦艦は一般には空前の巨大な戦艦というイメージが濃いが、技術的洗練度が非常に高いため、世界最大の装備と防御力を持つわりには小さく作られた艦である。
    八八艦隊の主要艦の設計者である平賀譲造船官の防御思想を受け継ぎ、主要防御区画(ヴァイタルパート)をできるだけ小さくするという基本理念で設計されている。これはアメリカのサウスダコタ級やフランスのダンケルク級と同じ設計思想で、横から見たシルエットは前者に、内部構造は後者にかなり似ている。その設計思想によりヴァイタルパートは全長の53%に抑制され、防御の冗長化を回避している。主要防御区画の防御力は、砲戦距離2万~3万mで自身の46cm砲に耐え得るものとされた。
    米国のアイオワ級モンタナ級(未成)、英国のヴァンガードなどは推進軸4軸のうち内側と外側の各2軸に対応する機関室とタービンを各々前後に分離するシフト配置を採用し、大被害を受けた時にも航海能力を失わないように配慮されている。そのため少し間を置いた直立二本煙突を有し、その周囲に巨大な艦上構造物が積み上げられており、視認性、被弾率、小型軽量化という点では一歩譲る(シフト配置はその性質上、艦の全長が長くなりやすい)。また、マレー沖海戦プリンス・オブ・ウェールズのように内側推進軸にダメージを負った場合、長大な推進軸にそって大量の浸水が発生する事もあるため、この両者の構想のどちらが優位であるかは、おおいに議論のあるところである。
    とはいっても、この集中防御によって武蔵は魚雷20本、急降下爆弾10発以上受けても沈まず、その後の非防御区画の浸水によってゆっくりと沈んでいった事を見ると、効果はあったと思われる。
    ただし、大和型戦艦の水中防御区画の横幅自体は約5.2mと、米新型戦艦と比較しても決して広くはない。伊勢型戦艦・長門型戦艦でも約9m、テネシー型戦艦でも改装後は7m取っていることを考えると、水中防御では余裕が少ない設計と見ることもできる。
  • 水中防御
    日本海軍は水中弾の効果を重視していた。このため水面下に至るまで装甲板を伸ばした。これは米国の新型戦艦も同様であるが、大和型ではさらに主砲下部にまで装甲を及ぼした。艦底での水中爆発に対処したのである。但し、これは一方で魚雷に対する無防御区画の範囲を広げた結果ともなり、米国の水中防御の思想と比べた時、一長一短あると指摘されている。
    水中弾を含め対弾防御を重視した大和型の集中防御の設計は、結果的に米空軍の集中的な魚雷攻撃によってその弱点を突かれた。もっとも10本以上に及ぶ多数の被雷は設計の想定外であった。但し、この件に関しては水密鋼管を艦首部艦尾部の倉庫に充填することが建造にもかかわった大和艦長より進言されたが、艦政本部は速力低下と、予算と資材がないという理由で採用しなかった。
    また1943年に大和に潜水艦の放った魚雷が命中した際、大量浸水という予想外の被害を受けた。直後の原因調査で舷側装甲板の継手構造に設計上の問題があると判明した。大和に関しては補強工事が行われたと言われるが、武蔵に関しては確実に行われていない。戦後、米国の調査団は大和型の徹底的な解剖を試みたが、この点に関しては「大和型のアキレス腱」と言われている。
  • 予備浮力
    大和型の艦体は多数の水密区画に区切られ、その一部に浸水しても浮力を失わないようになっていた。また、自動注水装置が搭載されており、魚雷などの攻撃を受け艦に浸水があった場合、対舷側にある注水タンクに浸水したのと同じ量の海水を注水し傾斜を防ぐようになっていた。
    しかし、第二次世界大戦末期に大和が沖縄に向け出撃した時は、大和への魚雷攻撃が1本を除いて片舷に集中したため、ついには反対側の注水タンクが満杯になってしまい傾斜、その後横転して沈没に至った。
    また、水密区画数は長門型戦艦の1089区画に対し1147区画しかなく、満載排水量で4割増にも拘らず区画数は少なめでこれも実戦闘で傾斜復元に悪影響を与えたことは否めない。
  • 装甲
    大和型戦艦の船体は、舷側上部410mmVH甲鉄、舷側下部50mm~200mmNVNC甲鉄、甲板は200mm~230mmMNC甲鉄で覆われていた。また砲塔は最大650mmVH甲鉄(560mm説もある)で覆われている。当時の軍艦としてはもっとも強固ものである。
    VH甲鉄は長門型まで用いられてきたクルップ式浸炭(炭和)甲鉄(KC)にかわって採用されたもので、炭素ではなく窒素を使って甲鉄の表面を硬化させている。浸炭甲鉄より撃力に対して優れているとされ、ヴィッカース式硬化甲鉄の頭文字をとってVHと呼ばれる。
  • 集合煙突の採用
    前述の小型化成功の一因には、煙突を傾斜させて一本にまとめた集合煙突の採用がある。
    もっとも、集合煙突は排煙能力が低く、艦に強制排煙装置を設置しなければならなかったため、日本とフランス海軍以外はあまり採用には熱心でなかった。
  • 水線下甲鉄の採用
    従来水線下は砲弾による損害の少ない部分と言われてきたが、未成戦艦土佐を使った実験により砲弾による水線下の被害が大きいことが予想された。そこで大和型は、重要部分の通常の水線甲鉄の下に50mm~200mmの装甲を艦底まで実装している。これにより実戦において相当数の被雷に耐えられたといえる(諸説あり)。
  • 煙路防御
    蜂の巣状に180mm(諸説あり)の穴をあけた厚さ380mmの蜂の巣装甲板を煙突内部、装甲甲板の高さに設置することで、それまで不可能とされた煙路の防御を可能にした。
    注)煙突の装甲化自体は世界的に長門型と同世代の戦艦から行われている。
  • 独特な機関配置
    各ボイラーが1基ずつ防水区画を持つという、他に例をみない独特の配置をしている。これは一つの罐が損害を被っても、他の罐に損害をあたえないために一基一室としたためである。

[編集] その他

  • 建造費は当時の国家予算の3%に及ぶ1億3780万円。現在の価値で東海道新幹線の建設金額にほぼ等しいとされる。
  • 当時の一般的艦艇と同じく、木甲板には海水に浸っても腐りにくいチーク材が使用された。
  • 日本戦艦初の試みも多数なされた一方で、装甲内にあり簡単に交換が利かない動力部分は失敗が許されないため、すべて中圧力の重油専焼ボイラーという保守的な設計がなされた。ディーゼル機関の搭載も当初計画されてはいたが、当時の技術力では失敗例(給油艦剣埼など)が多く、信頼性も薄いことから回避された。
  • 艦尾の第三主砲塔周りには設計ミスがあり、三門同時に発砲すると、衝撃により砲塔自体がずれて回転できなくなる可能性があったという説もある。とはいえ大和型の三連装砲塔は、衝撃対策のため、3門同時に発砲する機構とはなっていない(2門発砲した後、やや置いて1門が撃つ)ため、このような事態は起こりえない。
  • 大和型はこの当時の日本の軍艦としては居住性が高く、太平洋戦争中は主要な戦闘に参加せず泊地に留まったままの様子と相俟って「大和ホテル」や「武蔵御殿」と呼ばれる事もあった。
    • 兵員一人あたりの居住面積が広く、また寝台を装備している(その他艦艇は、もっぱら居住区にはハンモックだった)。
    • 後述の弾薬庫用冷却機を利用した冷暖房設備(エアコン)の完備、および冷蔵庫(東京芝浦電気製)を利用できることによる備蓄食糧の多彩さ・豊富さ。また、厨房に関しては料亭・レストランなどで働いていた人間を優先的に配属していた。
    • また、冷房装置の完備によってアイスクリーム製造室があったことも確認されている。
    • 艦内に消火用の炭酸ガスを利用したラムネの製造設備があった。ただし、大和型のみというわけではなく、この時代の巡洋艦以上の大型艦には搭載されている施設である。
    • その他、生活区には大型の洗濯機が備わっており、これも専門の担当員(実際に洗濯屋をやっていた人を海軍が雇っていた)が作業を行っていた。
  • 大和型の設計図面などは全て終戦直後に艦政本部の庭で焼却された。現存する図面は戦後米軍によって設計者が集められ記憶を下に引きなおしたものであり、それも概略図で風呂、トイレの位置などは現在も不明になっている。

[編集] 46センチ砲

大和型の46センチ砲弾。靖国神社にて展示。ただし模型であり実物とは先端部分その他が異なる
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大和型の46センチ砲弾。靖国神社にて展示。ただし模型であり実物とは先端部分その他が異なる

大和型最大の特徴と言える46センチ砲は、完成に至るまで海軍の要求や海外の情報から様々な案が検討されている。

[編集] 搭載の経緯

ワシントン海軍軍縮条約で大日本帝国海軍の主力艦の保有数が対米英比6割に抑えられたため、量より質を重視した海軍がアメリカ海軍の戦艦を凌駕すべく開発された、口径46cmの世界最大の三連装主砲3基9門を搭載されることとなった(ただし秘匿のため40サンチと呼称)。

[編集] 特徴

[編集] 射程距離

アイオワ級などの米戦艦が装備する40.6cm砲の射程距離が約38kmであるのに対して、46センチ砲の最大射程は約42kmで、初速780m/秒(2,808km/h) で発射される。つまり理論上は、敵艦が射撃を開始する前から一方的に攻撃をしかけることができるのである。 大和型戦艦は敵戦艦に向けて主砲を発射したことはない。だが、もし戦艦同士の艦隊戦になった場合、命中箇所によっては、いかなる敵戦艦をも、ただの一発で撃沈もしくは大破しえる可能性があったといわれている。ただし、46センチ砲は「大口径だから42km先まで弾が届く」ということであって、実際に42kmの距離から敵を攻撃することを念頭においているわけではない(届くだけなら、イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の1934年式38.1センチ50口径砲は42,800mの射程を持つ。大口径だけでなく、装薬や砲身長により、射程を伸ばすことは可能だが、砲の寿命や命中精度の悪化などで実用的とは言えないだけである)。砲の命中精度については、砲の性能や砲手の技量のほか、気温や風向風圧などの諸条件により、必ず誤差が生じる。その誤差は、当時の技術の限界で射程距離の約1パーセント程度。

つまり、46センチ砲で42km先の目標を狙うなら、目標を中心として最大1km弱程度の着弾散布は免れなかった。42km先の物に撃っても当たらないし、狙うだけほとんど無駄なのである。また、帝国海軍の思想上、「敵と戦はするが、自分は安全な場所にいる」ということは前提としない。限界まで敵を自分に引き付けて、確実な距離にて決戦を行うのである。日本海海戦もその思想で戦われた。そのために、大和自身にも、万一敵が46センチ砲を装備したとしても、その攻撃に耐えうることを目標とした防御力を与えている。

地球の外周を4万km、艦橋の高さを40mとして計算すると、艦橋から目視で確認できる水平線までの距離は22.6kmであり、実際の天候等を考えると有効射程距離は15km~20km程度であったという説もある。大和の生き残りの将校が語っているように(NHK・『その時歴史が動いた』にて)、約20,000メートルの距離での砲撃戦において、敵を粉砕するために作られた砲なのである。

このように、世界最強の艦載砲と言っていい46センチ砲だが、サマール沖海戦後の戦闘詳報によれば、それまでは「平素1門あたり4~5発の教練射撃でも、故障が絶無なることは希なるを常とする」という状態であった。同詳報はサマール沖海戦について「今回は海戦期間中、一度の小故障も起こさずに使用できた」と記載していることから、信頼性に問題があると認識されていたようである(もっとも英仏独と、新型戦艦の主砲塔で故障皆無という艦艇はほとんどないので、これをもって重大な欠陥とする、というのは誤りであろう)。

[編集] 九一式徹甲弾

帝国海軍の秘密兵器。敵艦の手前で海中に落下した場合でも魚雷のように海中を直進し、敵艦に当たるようにできている。弾頭のキャップが水中にはいると外れ、平頭に特殊加工された弾頭が現れる。約200m水中を進むため、魚雷のように喫水下への攻撃が可能である。これは未成戦艦土佐を使った実験により偶然発見された水中弾効果を利用したものである。

とはいえ、実戦での水中弾発生確率は通常弾と大差なく、また水中弾発生時に有効となる大遅動信管の装着により、非装甲部分での命中弾が炸裂せずに貫通するという問題を抱えていた。このことにより、砲弾命中時に爆煙が視認できないため、砲戦指揮上問題があるとの指摘もある(このことは、砲術の権威である黛治夫大佐が著書で、命中弾が少ないという指摘に対して、視認できないだけで、実際にはもっと命中しているはずだと語っている)。

さらに、日本海軍の徹甲弾は弾体の強度が不足しているため、命中時に砲弾が破砕されてしまうという欠陥があった。具体的には砲弾径の9割以上の厚みがある表面硬化装甲に対し、撃角25度以上で命中した場合に見られる欠点であった。こうしたことから、大和型戦艦ではこの原因である被帽の取り付け方法を是正している。

九一式徹甲弾の更新用として、1941年に採用された一式徹甲弾では、上記の被帽取り付け方法の改善に加え、弾頭部への着色剤充填を行ったとされている(弾着観測をしやすくする改正である)。このほかに、一式徹甲弾では弾体強度を合わせて強化したという説もあるが、定かではない。

[編集] 照準機構

日本光學製の、艦載用としては世界最大の15.5メートル測距儀を搭載し、これによって得られた敵艦までの距離や、その他の情報を九八式射撃盤(歯車式計算機)に入力して照準をつけていた。

[編集] 冷却設備

大和型はその巨砲相応に巨大な弾庫、火薬庫を持つため、その冷却用に大出力の冷却機を搭載していたが、この余力を使用して冷蔵庫や艦内空調設備を動かしている。

[編集] 主砲配置

巨砲配置に際し様々な案が検討された。大別すると

  • ネルソン級戦艦のような前方集中配置
  • 従来通りの連装による前後配置
  • アメリカ戦艦のような三連装配置

の三種類である。

前方集中の場合、装甲を集中配置できて重量的に有利と考えられたが、実際は前方に重量物が集中するため艦のバランスが取りにくい上、後方射撃時に艦橋にダメージを与えたネルソン級の報告もあり廃案となった。連装では、重量バランスが良くなる代わりに1基ごとの必要装甲を持たせた場合、重量が3連装より重くなるとの報告がありこれも破棄された。最終的に3連装3基9門となった。

[編集] 主砲口径

搭載砲を45口径砲(砲身の長さが口径の45倍)とするか50口径砲(同50倍)とするかでも議論がされている。単純に言って、口径を大きくする(砲身を長くする)ほど砲弾の初速は大きくなり射程や威力が増すこととなる。しかし、むやみに長くすると重力により先端部が垂れ下がり、発射時にブレを生じて命中精度が著しく悪化する。当時の日本には50口径の強靭な砲身を作りうる製鋼技術がない上に砲塔の重量増加を招くため、45口径で砲撃力は十分と判断されて50口径は廃案となった。

[編集] パナマ運河

海軍には新戦艦に45口径46センチ砲を搭載させる案の他に、40センチ砲搭載案もあった。46センチ砲と決定したのは、アメリカ軍が40センチ砲搭載艦を建造することを察知した結果と共に、パナマ運河が影響を与えている。

アメリカは太平洋大西洋という二つの大洋に挟まれているが、軍艦建造の造船所は大西洋側に集中しており、建造された新造艦は通常パナマ運河を通って太平洋側に出る。そのため、艦幅をパナマ運河を通行可能な寸法である110フィート以内に納めなければならなかった(大戦中には、バルジ装着でパナマ運河通行を断念したテネシー級戦艦や、対日戦専用として当初から通行を断念したモンタナ級戦艦(未成)も存在するので、絶対的なものではない)。その制約下で46センチ砲を建造した場合、9門搭載の艦で最大排水量5万トンで23ノット、10門で6万トン。40センチ砲で5万トンで33ノットと大和型より劣る戦艦になると海軍は試算し、その結果から現在の大和型の設計が許可されることとなった。

[編集] 機密保持

艤装中の大和
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艤装中の大和

大和型戦艦の機密保持は後年語られているように非常に徹底している(詳細は各艦の項目参照)。建造の工員達は徹底的な身元調査の上機密を漏らさないことを約束させられた。艦の設計図は持ち帰らないことを徹底させ、保管は二重の金庫にしまうほどであった。

また、主砲が46センチ砲であることを隠匿するために制式名称を「九四式四十糎(サンチ)砲」とし、主砲製造設備のある呉海軍工廠から2番艦武蔵を建造している三菱長崎造船所まで砲塔一式を輸送するためだけに砲運搬専用の艦「樫野」を建造したほどである。

予算確保の際は、1隻あたりの予算額を大きくすると諸外国にそれだけで規模が察知されてしまう恐れがあることから、大和、武蔵の2隻分の建造費として35,000t級戦艦4隻(ワシントン海軍軍縮条約の新規製造戦艦の排水量上限が35,000tだった)を建造するということで国会に予算要求すると共に、陽炎型駆逐艦3隻と伊号潜水艦1隻を架空計上している。

完成後も秘密徹底の方針は貫かれた。大和型乗員は自分が何という艦に配属になったかは漏らさないことを徹底されていた(他の艦ではそれほど徹底されていない)。そのため、アメリカ軍は「大和型」の存在を確認してはいたが、(有名なところでは)搭載砲は16インチと判断していたなど詳細は終戦までつかめなかった。

[編集] 同型艦

同型艦は大和武蔵。続く第四次補充計画で110号艦、111号艦建造が決定する。110号・111号艦は過大と判断された舷側装甲厚、甲板装甲厚を減じ、その重量で艦底を三重化しているため、準同型艦として扱われる。なお110号艦は太平洋戦争開戦と共に完成を断念され、ドックを空けるための工事中に計画変更となり航空母艦信濃となり、111号艦(紀伊もしくは尾張との名称と言われている。ただし、紀伊は空母信濃となった3番艦の予定名称であり、何らかの事情で変更されたという説もある。また、尾張は「終わり」を連想させ、縁起が悪いので使われないという説もある)は開戦と共に建造中止・解体となる。また、更に防御などを改良した797号艦(改大和型戦艦)や主砲を51cm(20.1インチ)連装砲塔に変更した798号艦、799号艦(超大和型戦艦)も計画されたが、起工には至っていない。

[編集] 略歴

建造時から海軍の官僚や源田実ら航空派将校の中には、これからは戦闘機の時代であって戦艦は時代遅れであり、大和型戦艦はピラミッドないしはスフィンクス、それに万里の長城とあわせて「世界三大馬鹿」だというものがあったと言われる。事実、太平洋戦争時の戦闘は確実に航空機主体の戦術に移っており、その力を十分発揮できるような運用はなされなかった。

大和型の初陣はミッドウェー海戦であるが、これも旗艦として機動部隊の遙か後方を進撃したのみであり、そのため空母全滅の電文を受けただけだった。

続くガダルカナル島をめぐるソロモン海戦において、アメリカ軍は新鋭戦艦であったノースカロライナ級戦艦を始めとするありとあらゆる軍艦を投入したのに比べ、海軍は高速ではあるが旧式の金剛型戦艦のみを投入し、新鋭戦艦たる大和型は温存された(動かす燃料が確保できなかったという事実もある)。大きな艦体の豪華さや高い居住性を誇る大和と武蔵は、ソロモン海で激戦が繰り広げられている最中にも泊地から動かない様を揶揄して、他の艦の乗組員からは「大和ホテル」「武蔵御殿」と呼ばれた。

艦首を大きく沈下させた武蔵
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艦首を大きく沈下させた武蔵

大和型戦艦による砲撃が初めておこなわれたのはマリアナ沖海戦での対空防御のための弾幕であり、続くレイテ沖海戦でも対空防御のための砲撃をおこなったが、その海戦で武蔵は撃沈された。この際武蔵が示した驚くべき耐久力(被雷20本以上、被爆10発以上)は大和型の防御力の面目躍如(通常の戦艦の計画耐久被雷数は精々4~6本)というべきであったが、初期の攻撃で艦首無防御区画に被雷したため速力が落ち艦隊から落伍し敵艦載機に袋叩きにあったことと、またその被雷の振動で艦橋トップの主砲射撃方位盤が故障し、統一射撃ができなくなるなど後年大和型の弱点といわれた部分を次々と露呈する戦闘ともなった。

その後発生したサマール沖海戦で大和が護衛空母に対しおこなった砲撃が、大和型が敵艦に対しおこなった最初で最後の砲撃である。

レイテ沖海戦の翌月、突貫工事の末ようやく竣工した信濃も、横須賀から呉への回送のための航海途中に潮岬沖で米潜水艦の雷撃をうけ、数々の欠陥工事により満足な応急措置もできぬまま、わずか10日という短い生涯を終える。

被雷により左舷に大きく傾いた大和
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被雷により左舷に大きく傾いた大和

残った大和も、最後には天一号作戦に投入され撃沈されてしまう。武蔵に比べ比較的あっけなく沈んだ(被雷9本以上、被爆10発以上)のは武蔵撃沈までに多大な手間がかかったという結果から、片舷に雷撃を集めさせたからである。それでも左舷に8本以上(右舷に1本)も食らってまだ浮いていた防御力(旧式ではあるが戦艦扶桑は被雷4本で弾薬庫に引火、全乗組員と共に轟沈している)は驚嘆に値する。しかし結局は航空機による攻撃の前に大艦巨砲はもろくも崩れ去り、大和と武蔵はその主砲の威力を十分に発揮することなく撃沈された。


[編集] 大和型にまつわる話

ここでは大和型について言われる俗説について、その周辺の状況を解説し、誤解を防ぎ、より正確な情報を提供する目的で記す。

[編集] 搭載砲

[編集] 46センチ砲について

大和型に搭載された46センチ砲は「世界初にして最大の艦砲である」と言われる。

この「世界初」という言葉自体は厳密に言えば間違いではないが、46センチに極めて近い18インチ(45.7センチ)砲を搭載した艦はそれ以前にも存在している。それはイギリス海軍が第一次世界大戦時にドイツ上陸作戦の為に秘密裏に建造した3隻のハッシュハッシュクルーザーの1隻、大型軽巡洋艦フューリアスで、35口径18インチ単装砲2基を搭載していた。 しかしこの砲は横向きに撃つと反動で艦の向きが変わるほど艦と砲のバランスが取れておらず、実戦では使い物にならなかったであろうと言われる(後にこの艦は改装され、英国海軍最初の空母となる)。

また、「最大の艦砲」については、八八艦隊計画時48センチ砲を試作・試射までおこなっており、試射時に尾栓が破壊され放置された後、大和の46センチ砲設計に先立ちデータ採取のため修理、再度試射された。しかし亀ケ首試射場から移設し艦艇に搭載された事は無く、搭載、運用された艦砲としての最大の物は大和の46cm砲で間違いは無い。また、同時期にアメリカはダニエルズ・プラン艦用に18インチ砲を試作している。

[編集] 副砲について

主砲塔直後に配置された副砲は大和型の防御の一大欠点でもあるという説はよく言われている。「副砲塔は弾片防御程度の装甲しか施されておらず、爆弾や大角度の落下砲弾がここに命中した場合、砲爆弾は容易に副砲弾庫に達して炸裂し、これが直ちに主砲弾火薬庫を誘爆させて轟沈する可能性を秘めていた。手直し程度の改善はあったものの、この欠点は最後まで解消されなかった。あきらかに両舷への指向が可能という利点にこだわりすぎた設計のまずさであった」というのである。

一方で、「どの角度で放たれた砲弾や爆弾なら、弾薬庫に飛び込むのか」という考察までされている欠点説における記述は少ない。副砲弾薬庫に直接入るような角度の敵戦艦の主砲弾は、後述する大和型が意図した決戦距離ではまず発生しない。決戦距離で被弾する敵戦艦の主砲弾角度では、大和型の強靱な水平装甲を貫かない限りは、副砲弾薬庫には入れないのである。大角度の落下砲弾が副砲自体に命中しても、副砲を破壊するだけで、直下の弾薬庫に影響は及ばない可能性が高い(射距離にも因るがかなりの角度で命中しなければ問題ない)。爆弾についても同様であり、直接弾薬庫に入るような角度での命中は、ほとんど考えられない(一般に日本軍急降下爆撃機の突入角度は大戦後期で50~60°程度、米艦載機の場合は45~50°程度の一斉急降下爆撃で生存率は高いものの、命中率は比較的低かった)。更に、この急降下爆撃対策も兼ねて支塔の装甲強化を大和、武蔵とも行なっているので急降下爆撃程度では貫通はまず不可能と考えられる。

また、副砲弾薬庫の誘爆は副砲の口径から言っても誘爆する1缶あたりの装薬(発砲火薬)の量がそれほどの量ではないため、装薬自体が小分けにされて金属缶に密封保管されていた弾薬庫の性質上、余程のことがない限り一斉誘爆するとは考えにくい。サボ島沖海戦で無装甲の第3砲塔に敵弾の直撃を食らって装填中の零式弾と装薬が誘爆した重巡「青葉」が適切な弾薬庫注水により、それ以上の被害拡大を免れたのがいい例であろう。「陸奥」や「フッド」のように主砲弾薬庫に火が回らない限り(戦艦の主砲クラスになると流石に1缶あたりの火薬量が多いため)爆沈に至るような誘爆は起きないと考えてしかるべきであろう。

副砲防御に関する指摘に対して、支塔の装甲強化と防焔対策の強化はダメージコントロールでの対処を念頭においたもので、妥当な対策と考えられる(命中時の爆風や直上で破壊された副砲の断片を防ぐのである)という説もある。ただし、どちらにしろ艦中心線上への副砲装備は「主要防御区画の縦方面での長さを伸ばし、艦型の拡大を招いた」という、別の批判もある。

[編集] 最大速力

[編集] 運用

大和型が機関の開発に失敗し、最大速力を27ノットしたのに対し、「その低速のため、機動部隊護衛等に使用できず失敗である」との意見がある。この根拠には、

  • 初期の計画書に30ノットの速力が要求されている。
  • 大戦中活躍したアイオワ級の33ノットとの比較。

からより正論のように聞こえるが、大和型が対象にしたアメリカ戦艦との比較で言えば誤りである。

建造当時のアメリカ戦艦の速力は20から22ノットであった。日本海軍は改装によって、長門型/伊勢型/扶桑型戦艦を25ノット、金剛型を30ノットに向上させていたため、部隊単位で優速であった。大和型の27ノットは、米新型戦艦が25ノットと見積もられていたために、これを上回る速力として承認されたものである。

実際にはノースカロライナ級戦艦サウスダコタ級戦艦で、約28ノットであり、ほぼ同速であった。なお、戦艦同士の砲戦において、数ノット程度の優速はほとんど影響しないことから、27ノット級は必要充分と考えられる(日本海軍では、速力の優越で恒常的に戦闘を優位に進められる指針として、敵より50%の優越が必要だと判断していた。米新型戦艦が27ノット級であることが判明した後で、40ノットの速力を要求された島風型駆逐艦がその一例である)。

また、機動部隊と随伴できないというのも、大和型が艦隊決戦のため海軍で温存する方針であったのを考慮しない意見である。米軍では、大和型とほぼ同一速度であるノースカロライナ級やサウスダコタ級が、速力不足を指摘されながらも、機動部隊の護衛任務を実際に果たしており。こうしたことからも、大和型が空母護衛に使用できない、という論拠は成立しにくい。また、護衛される空母の方も、加賀(28.1ノット)、飛鷹型(25.5ノット)、瑞鳳型(28.3ノット)と、大和型の護衛で差し支えない速度のものが数多い。

しかし、実際に機動部隊の護衛とした場合、大和型を含む日本戦艦の対空火力はそれほど強力というわけではないため、単に護衛艦として用いたなら大した活躍は期待できない。また、6,300トンという膨大な燃料消費(大和がもし30ノット超の高速戦艦だったなら、より膨大な燃料消費が見込まれる)により、恒常的に燃料問題に悩む日本海軍のお荷物になったであろうことは疑いない。戦艦の使用は主砲火力の発揮できる決戦局面で行うべき、とした史実の日本海軍は現実的な判断をした。しかし、これらの判断がたたってミッドウェー海戦では機動部隊に敵方の動静情報(旗艦ゆえに通信能力も長けていた)が伝わらず敗北の一因にもなった。

だが、マリアナ沖海戦やレイテ沖海戦がそうであったように攻撃側にしてみれば主砲の(威嚇を含む)射撃を行う戦艦は戦場における存在感が大きく、アメリカ軍偵察機のパイロットが過大報告したケースもある。日本海軍の山口多聞提督が奨励した輪形陣は戦艦を含んでおり、その他に元戦闘機パイロットの源田実は戦艦不要とした航空主兵論を主張していたが、攻撃機パイロット淵田美津雄は戦艦は空母の盾になりうるとする考えがあった。

[編集] 実際

一般的には27ノット程度が定説であるが、艦首のバルバス・バウ等により29ノットまで出せたとの説もある。これは、かつていくつかのテレビ番組で大和搭乗員がそう語ったほか、『真相・戦艦大和ノ最期』(昭和17年6月22日に愛媛県佐田岬標柱間で行われた公試時に、167,310馬力で28.5ノットを発揮)『戦艦大和・武蔵』(昭和16年11月30日に、同じく佐田岬標柱で行われた終末公試運転で、5.1mの逆風(追潮)時に28.33ノットを発揮)でも定説以上の速度が記載されている。また、武蔵が過負荷全力166,520馬力で28.1ノットを出した記録もある。ただ、大和型戦艦は基準排水量64,000トンにも関わらず、機関出力は150,000馬力と他国35,000トン型と大差ないため、これと同程度である28ノット台の速力が出せたことを訝しむ向きもある。だが、バルバスバウの採用や船体形状の研究などで15,820馬力節約したという記録が残っている。大和の過負荷全力である167,310馬力+15,820馬力=183,130馬力であり、当初計画が20万馬力30~31ノットであるから、28ノット台は別段おかしな数値というわけではない。また、日本の軍艦は燃料・弾薬・水・食糧などの消耗物資を満載した状態で出撃し、一定距離を航海して戦闘に入る直前を想定した状態(いわゆる公試排水量)で出せる最大速力をカタログデータとするが、物資の搭載量が少なければこれより大きな速度を出せる事はいうまでもない。例えば駆逐艦島風は公試試験の際、燃料・水等を2/3ではなく半分しか搭載せず出した数値である40.9ノットが最高値となっている。なお大和はレイテ沖海戦時には、第五戦速26ノットで2時間39分走っているが、これを上回る最大戦速で1分間、一杯で9分間走っている。つまり、この時点では28~29ノットを発揮していた可能性は充分ある。ただし、機関部の通風能力が不足していたため、特に南方での作戦での高速発揮時は、機関部内が耐え難いほどの高温になっていたとされている。なお他国でもドイツのビスマルクの一般的な速力は29ノットと言われるが、機関過負荷120~128パーセントで30.8ノットを出したほか、イギリス戦艦ヴァンガードも130,000馬力/30ノットの計画に対し、過負荷全力で136,000馬力/31,57ノット、キングジョージⅤ世級戦艦も27.5ノットの計画に対し、29ノットを発揮した記録が残っている。

[編集] 対空防御

建造時に航空攻撃を考慮していなかったので撃沈された、という説も見られるが、同時期に建造された空母・空母艦載機や陸上攻撃機の想定戦術から見ても事実無根である。当時、戦艦の使用は制空権下で行うことを前提としており、全体の性能バランスを崩すような過剰な水中防御を要求しなかったことを不当とは言い切れない。 日本海軍の対空射撃に関する取り組みは、駆逐艦・巡洋艦主砲の対空射撃への考慮開始年度や戦艦主砲での対空弾の開発などを考えても、他国に劣るものではなかった。

[編集] 造船技術

「大和型」は実験艦ではなく、あくまで連合艦隊旗艦として耐えうる“実用艦”として建造された。旗艦である以上、故障・不調は許されない。「石橋を叩いて造った戦艦」というべきものである。溶接適用範囲の縮小、主機械のディーゼルから蒸気タービンへの変更もそれゆえであった。 「大和型」は、昭和10年代の日本がもっていた確実な建艦技術が投入されたと言える。 「大和型」建艦に携わった技術陣の多くは戦後、活躍の場を民間に移し、戦後高度経済成長期の巨大タンカー建造など諸方面に腕を振るうこととなる。西島式ともいわれる呉工廠における「大和」建造時の膨大な工数管理などは、今日の大型船舶建造の基礎ともなり、造船王国日本の復活を下支えすることとなった。詳細は、前間孝則氏著『戦艦大和の遺産』(上・下)を参照されたい。 なお、「大和」建造に関する溶接は、近年明らかとなった資料「船体構造ニ艤装品機関及兵器関係金物ヲ取付ケル熔接適用範囲其一」(昭和14年2月22日、呉海軍工廠造船部製図)と「船体構造電気熔接使用方針並要領」(昭和13年4月9日、呉海軍工廠造船部製図)から、強度が必要とされる箇所は鋲(リベット)接合が用いられ、「大和型」建造当時の溶接技術では信頼性のある材質の溶接棒が日本では製造できなかった(開発できなかった)事に因る(いずれも呉市大和ミュージアム所蔵)。これはそれまでの「八重山」や「最上」など実験的溶接を多用した艦における船体変形などの失敗をふまえての措置である。ただし「大和型」では、上部構造物など可能な限り溶接を使用することにより、船体重量を抑えようとしていたことも設計図面の溶接を示す長体「S」マークから証明されている。 現在に通じる溶接によるブロック工法は戦時量産の戦時標準船や海防艦などに多数使用されていた。

[編集] 竣工時期

一番艦大和の竣工が開戦8日後であることから、「海軍は大和の完成を待って開戦を決意した」とも言われるがこれは全くの誤解である。当時の12月8日(日本時間)は月齢19日で真珠湾攻撃に最適であったこと、その日は日曜日で艦隊が停泊している可能性が最も高かったから選ばれたのであり、むしろ大和の竣工が開戦に合わせて繰り上げられたのが真相である。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 松本喜太郎『戦艦大和・武蔵 設計と建造』 芳賀書房、1961年
  • 松本喜太郎 著・戸高一成 編『戦艦大和 設計と建造-大和型戦艦主要全写真+大型図面』 アテネ書房、2000年、ISBN 4871522091
  • アテネ書房編集部 編『戦艦大和・武蔵戦闘記録』 アテネ書房、2002年、ISBN 4871522105
  • 雑誌「丸」編集部 編『ハンディ判日本海軍艦艇写真集 戦艦大和・武蔵・長門・陸奥』 光人社、2003年新装版、ISBN 4769807716
  • 呉市海事歴史科学館 編・戸高一成 監修『呉市海事歴史科学館図録-日本海軍艦艇写真集・別巻 戦艦大和・武蔵』 ダイヤモンド社、2005年、ISBN 4478950547

[編集] 外部リンク

大日本帝国海軍戦艦
創設から日露戦争終結まで
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