必殺橋掛人
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『必殺橋掛人』(ひっさつはしかけにん)は、必殺シリーズの第24弾として、朝日放送と京都映画撮影所(現・松竹京都映画株式会社)が制作し、1985年8月2日から11月8日にかけてテレビ朝日系列で放映された時代劇。全13回。
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[編集] 作品内容
物語は、江戸の裏稼業の元締・暗闇の多助が、ある悪人一味に抹殺され、多助の娘の尼僧・お光(春光尼)が、元締として跡を継ぐ所から始まる。
多助は死ぬ前に、密かに江戸の要所、十三箇所に印を付けた地図を作っており、それをお光に託す。その地図は、弱者の晴らせぬ恨みの内容と、標的を書き記した物であり、ある仕掛けを施す事によって、地図上に浮かび上がる仕組みになっていた。
お光は父の後を継ぎ、多助の配下であった三人の「橋掛人」-屋根瓦職人のおくら(萬田久子)・松(斉藤清六)夫婦と、鳥刺し(捕餅付きの竿で、小鳥を捕まえ、売る仕事)を商売にする青年・新吉(宅麻伸)を従え、地図の謎を解いて行く。
そこに、地図に記した最初の依頼に、ふとした事から係わる形で、かつては闇の世界でその名を轟かしていた凄腕の橋掛人であり、現在は一人娘のために足を洗っていた、呉服の行商人・柳次(津川雅彦)が助っ人として、お光たちのチームに参加し、ここに新たな混成「橋掛人」チームが誕生。
地図に記してある、「十三件の仕事」の依頼の一件一件を調査し、隠された悪事を突き止め、悪人たちを闇に裁いて行く。
[編集] 制作の背景
「必殺シリーズ」第24作の本作は、まず最初に意外なキャスティングで、従来のファンや、一般視聴者層たちに、驚きと期待を持たせた。
それは、第1作『必殺仕掛人』~第7作『必殺仕業人』の各歴代シリーズにゲスト出演し、個性的な悪人を演じて視聴者を楽しませた津川雅彦が、初のレギュラー出演を果たした事であった。津川は歴代各作品で見せた、アクの強い二枚目の悪人とは一味違った、正道の殺し屋像を本作にて好演。一癖も二癖もある凄腕の橋掛人として、この当時、バラエティー路線が続いていた「必殺シリーズ」において、久々の堅実かつ重厚な作りに、一役買う形となった。
他のキャスティングとしては、屋根瓦職人のおくら・松夫婦に、萬田久子・斉藤清六をそれぞれ起用。前作『必殺仕事人V』第8話で、ゲスト出演した二人は、そのまま本作でも夫婦役を演じ(ただしキャラクターは全く異なる)、美人で強気な女房と、気弱で情けないがどこか憎めないという亭主を演じた。
「必殺仕事人シリーズ」の秀(三田村邦彦)・政(村上弘明)の系譜を組む青年殺し屋の新吉役には、 この後、数々のテレビドラマに、主演・出演していく宅麻伸。元締役に、第16作『必殺仕舞人』~第22作『必殺仕切人』の各「非主水シリーズ」を経て、本作で、5作品連続出演を果たした、西崎みどりが演じた。 西崎は『仕舞人』~『仕切人』までは、一貫して密偵役だったが、本作では念願の元締役に出世。この事は、西崎の役柄の変換と相成って、非常に興味深い物となっている。
この他、当時の人気テレビ番組『欽ちゃんのどこまでやるの!?』(テレビ朝日)で、人気を博した高部知子(ちなみに、松役の斉藤清六も『欽どこ』から人気を得た一人である)。柳次の娘役に、テレビドラマ『池中玄太80キロ』(日本テレビ)で注目された子役、安孫子里香。第9話より登場する、お光に惚れて追い掛け回す岡っ引き・伊太郎役に、1980年に巻き起こった漫才ブームの立役者の一つである、お笑いコンビ「ザ・ぼんち」のオサム(現・ぼんちおさむ)と曲者揃いである。
作品内容としては、本作は前述通り、江戸の要所、十三箇所に印を付けた地図を巡り、橋掛人チームが趣向を凝らしながら、事件の真相を突き止めて行くという展開がなされた。
そして第1話の時点で、急場凌ぎとも言うべきな混成裏稼業チームであるため、橋掛人の各メンバーたちは、仕事の時以外の交流が普段はほとんど無いのが特徴で、その分、殺し屋としてのプロ意識や、プライドのぶつかりあいといった描写に、重きが置かれている。また柳次の若い後妻と、先妻との間に出来た一人娘に囲まれた、毎回騒がしくも可笑しいホームドラマとしての描写も、本作の特徴である。
本作は「必殺シリーズ」、とりわけ「中村主水シリーズ」との狭間にあるが、小粒ながらも、決して侮る事の出来ない、異色の作品である。
[編集] 殺し技
- 柳次…「餓鬼」の刺繍が施された反物を拡げ、その中に仕込まれた金色の糸を引き出して、右手で糸を振り回した後、悪人の首に巻き付け、絞め殺す。
- 第1話の冒頭では、例外的に、濡れ手拭いを使い、悪人の首を絞め殺した。
- これは、第12作『江戸プロフェッショナル・必殺商売人』第1話、冒頭の殺しのシーンをリメイクした物である(柳次の台詞回しまで、全く同じ)。
- 殺し技の師匠であったが、現在は外道の橋掛人に身を窶した悪人との対決時は、予備の金糸を予め用意して、仕置に挑んだ(第4話)。
- 悪人たちを惑わすために、多数の金糸を一度に投げ付ける変則技を披露した事もある(第12話)。
- 新吉…表稼業に使う、鳥寄せの笛を吹き矢として使う。
- 針を発射し、悪人の首筋や額に打ち込み、その後、相手の背後や目前に近付き、体内に突き刺す。
- おくら…鋭く研いだ瓦を、悪人目掛けて投げ、相手の首筋を斬り裂く。
- その際、亭主の松が、悪人を攻撃しやすい様に設定。
- 標的の誘導や、目印を付けるサポートという、夫婦二人三脚により、技が炸裂する。
- これは劇場用映画・第1作『必殺! THE HISSATSU』(1984年6月16日公開)で、仕事人・政(芦屋雁之助)・およね(研ナオコ)夫婦が使用した、鋭く研いだ瓦を投げ、悪人の首筋を斬り裂く技と同様のものだが、この時は夫婦の役割が逆転し、夫が殺し、妻がサポートという形であった。
[編集] キャスト
※第1~5話は、呉服屋番頭、第6~9話は、呉服問屋の番頭と表記。
- ナレーション
[編集] 主題歌
- 挿入歌
- 「もどり道」
- 作詞:只野菜摘 作曲:宇崎竜童 編曲:入江純 歌:西崎みどり
- 発売:CBSソニー(現・ソニーミュージックエンタテインメント)
[編集] 放映リスト
- 江戸地図の謎を探ります
- 佃島のおとめ魚を探ります
- 神田のゆうれい坂を探ります
- 小伝馬町の怪奇牢を探ります
- 六本木の朝顔を探ります
- 本所の七不思議を探ります
- 湯島天神の紅梅を探ります
- 浅草の(秘)(まるひ)ドクロを探ります
- 柴又帝釈天のトラを探ります
- 日本橋の地獄火を探ります
- 板橋のウラ仕掛けを探ります
- 四谷の忍者寺を探ります
- 子連れ刺客の魔剣を探ります
[編集] 関連項目
テレビ朝日系 金曜22時台 | ||
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