旭富士正也

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旭富士正也（あさひふじせいや、1960年 7月6日 - ）は大相撲力士で、第63代横綱。本名杉野森正也。青森県西津軽郡木造町（現つがる市）出身、近畿大学中退。

[編集] 来歴

五所川原商業高校在学中に長野県で行われた国民体育大会で、少年の部の団体優勝に貢献。その後近畿大学に入学したが、相撲部の合宿所での生活に馴染めず、中退（その後通信課程で卒業）。

青森に戻り漁業に従事していたが、スカウトを受けて大島部屋に入門。昭和56年1月初土俵。前相撲から取ったが格の違いを見せた。新十両まで7場所、昭和58年3月新入幕。昭和62年9月場所後に大関昇進。大関昇進後は次期横綱候補にふさわしい安定した成績を収め、昭和63年1月に千秋楽では千代の富士に勝ち、14勝1敗で初優勝。平成元年には1月場所から5月場所の連続3場所で40勝5敗、優勝同点2回の好成績を収めながら、直前に優勝経験なしで横綱となった双羽黒光司が廃業したことから昇進基準厳格化の声が高まっており、そのあおりで昇進が見送られた。その後、持病の膵臓炎が再発し勝ち越すのがやっとの状態が続いたが、平成2年5月に14勝1敗で2度目の優勝。翌7月は千秋楽で千代の富士に勝って、14勝1敗で3度目の優勝を連覇で果たし、場所後に横綱昇進。平成3年5月に14勝1敗で4度目の優勝。4度目の優勝以降は膵臓炎が再発し、成績が下降。平成4年1月に引退した。

懐の深さを生かした柔軟な体つきが持ち味で新入幕当時から将来の大関候補と期待されていたが、千代の富士には全く相性が悪く、対戦成績は旭富士の6勝30敗、横綱同士とは思えない対戦成績である。千代の富士の53連勝目の相手が旭富士で、この相撲では千代の富士に豪快につり出された。

旭富士の名は、師匠大島の現役時の四股名「旭國｣と、入門当時に頭角を現した「千代の富士」に因んで名づけられた。もっともこれは若名乗りの名で、大島は幕内に昇進したら二代目旭國を名乗らせる予定でいたが、本人が「自分の名前を大きくしたいから」と断り最後まで旭富士で通した。現役時の体格は身長189cm、体重143kg。

非常にユーモアのある性格で、正月の歌番組に出演したときはいつも笑わせる芸を行ってファンを喜ばせた。27代木村庄之助の最後の土俵になった平成2年11月場所千秋楽結びの一番に勝つと、懸賞金を庄之助への餞別にし、「いつも力士に懸賞を渡してばかりだが、一度くらい自分がもらってみたいもんだ」と言っていた庄之助を喜ばせた。

しかし何故かマスコミには評判が悪く、「稽古をしない」などとさんざんに書き立てられ憤慨していた。また下積み時代に部屋を脱走したことがあると報道されたこともある。

長身で身体が柔らかいことから懐が非常に深く、強烈な印象を持つ決め技がないのにいつの間にか勝ち星を挙げるという、一種の天才的な力士と見る向きもあった。この点、同じ青森出身の先輩横綱である若乃花幹士（二代目若乃花、現在の間垣親方）と似たタイプと言えるかも知れない。稽古嫌いという風説や、一見厳しさに欠けるかのような取り口、あるいは強烈な強さの印象が薄いことなどからか、「津軽なまこ」（柔らかくて捕らえ所のないことの形容と思われる）というあだ名もあった。

引退後、現役名旭富士で5年期限の年寄を襲名。その後、同じ青森県出身で同門の元関脇陸奥嵐から年寄安治川と部屋を継承し、現在は安治川部屋の師匠として後進の指導にあたっている。スーツ姿での指導で話題となった貴乃花親方とは対照的に、「廻しの切り方などを実際にやって見せられるから」と40代半ばに入っても廻しを締めて稽古場に出るそうだ。なお部屋継承後の直弟子で現役幕内力士の安美錦、その兄安壮富士は、彼のいとこの息子である。