死亡遊戯
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死亡遊戯(英語題名:GAME OF DEATH)は、1978年公開のブルース・リー主演映画。ゴールデン・ハーベスト(香港)作品。
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[編集] 解説
ブルース・リーが1972年から1973年にかけてアクション・シーンのみを撮影後、急逝により未完となっていたフィルムを、プロデューサーのレイモンド・チョウが『燃えよドラゴン』の監督だったロバート・クローズを起用、ハリウッドの豪華キャストにソックリさん数名を使ってドラマ・シーンを追加撮影し、作品として完成させた。 日本では大ヒットしたが、本国香港を含め世界的にはそれほど大きなヒットにはならなかった。
『死亡遊戯』製作中断から再スタートまでにはこのような話が残されている。 『燃えよドラゴン』の日本を含めた世界的大ヒットで他社に先んじて香港「ゴールデン・ハーベスト社」と残る3つの「ブルース・リー」作品の日本での映画配給権を獲得すべく動いたのは「東宝東和」だった。『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』と次々と「リー」映画の日本での配給権を獲得、順調に劇場公開にこぎつけた「東宝東和」だったが、残った1作品「ドラゴンへの道」の配給権をこともあろうに横入りしてきた「東映洋画部」に突如強奪されてしまった。それに激怒した「東宝東和」は「ゴールデン・ハーべスト」社にどういう事かと詰め寄ったが、そこで「ゴールデン・ハーベスト社」は「この罪滅ぼしに残った遺作『死亡遊戯』を完成させますから、その時は東宝東和に日本での配給はお任せします」と説得し、これをきっかけに「リー」の死の前より製作が完全にストップしていた本映画の製作が本格的に再スタートしたといわれている。
[編集] ストーリー
ドクター・ランド率いる巨大国際シンジケート組織は有能なスポーツ選手や俳優などを終身契約にし暴利をあげていた。ドクター・ランドは、世界的なアクション映画スター、ビリー・ローと、彼の恋人であり歌手でもあるアン・モリスに終身契約を迫る。ビリー・ローは「ドラゴンへの道」撮影中に天井から照明が落下してくるなどの脅しを受けるが、かたくなに契約を拒否する。ついにしびれを切らしたドクター・ランドはビリー・ローを暗殺するように命ずる。「ドラゴン怒りの鉄拳」のラストシーンの撮影中にビリー・ローは顔を撃たれて暗殺されてしまう。ビリー・ローの葬儀が盛大にとりおこなわれたが、実はビリー・ローは一命を取りとめ自分を死んだことにしていたのだ。アンの安否を気づかいながら、ドクター・ランドへの復讐を決意するビリー・ロー。ビリー・ローと国際シンジケートの戦いがはじまったのである。
[編集] スタッフ
- プロデューサー:レイモンド・チョウ
- 監督:ロバート・クローズ
- 音楽:ジョン・バリー
- 武術指導:サモ・ハン・キンポー
[編集] 共演
- ギグ・ヤング
- ディーン・ジャガー
- ヒュー・オブライエン
- コーリン・キャンプ
- ボブ・ウォール
- カリーム・アブドゥル・ジャバー
- ダニー・イノサント
- メル・ノバック
- 池漢載
- サモ・ハン・キンポー
- ロイ・チャオ
- ジム・ユン・ピョウ
[編集] 特記
- ビリー・ローを映画スターとすることによって、ブルース・リーの過去の映画のシーンをうまく利用しながらストーリーを進めている。例えば、ビリー・ローが暗殺されるシーンは、「ドラゴン怒りの鉄拳」のラストシーンの撮影時という設定になっている。
- 随所にブルース・リーの過去の映画のワンシーンからのカットが挿入されている。最後の戦闘シーン以外でのブルース・リーの顔のアップは他の映画からもってきたものである。冒頭のシーンでスタイナー役のヒュー・オブライエンが鏡越しにビリー・ローを脅迫するシーンは、鏡にブルース・リーの写真を貼り付けて撮影している。じっくり見ていると、このような編集が随所に見られる。
- 「塔を登って行き、各階に待ち構える格闘家と対戦する」という漠然としたアイデアを元に撮影を始め、並行して台本の執筆も行っていたと言われる。『燃えよドラゴン』撮影終了直後に最終的な台本が完成したとされるが現在もその台本の所在は明らかにされていない。
- 映画最大の見せ場である長身のハキムとの死闘。そのハキムを演じるカリーム・アブドゥル・ジャバーはNBAのレイカーズで活躍していた名選手であるが、リーがアメリカ時代に拳法を教えていた弟子でもあり、たまたま香港に休暇の為に滞在中、リーからの出演の依頼を受けた。
- 棒術の達人として出演したダニー・イノサントはリーが編み出した拳法である截拳道(ジークンドー)の弟子でもあり、フィリピン棒術をリーに教えた師匠でもある。リーの死後、截拳道の正式な継承者となった。
- 池漢載は韓国空手の猛者で、撮影中「倒されて絶命する」という設定に、本人と韓国空手のプライドゆえか猛烈な異議を唱えた。結局倒されるものの絶命まではハッキリと描写されなかった。
- コーリン・キャンプはフランシス・コッポラ監督の「地獄の黙示録」の中で、米兵の慰問にベトナムを訪れたダンサーの役をしていた。
- 英語版のセリフ及び「怪鳥音」はアメリカ人のクリス・ケントが担当している。「怪鳥音」は似てる・似てないの論議は別にしても、本人のものと比べると迫力不足である事は否めない。
- とにかく謎の多い映画で、劇中で使用されていないシーンの写真(リーが野原で大勢の相手と闘っている場面、ソックリさんと思われる俳優が『燃えよドラゴン』のリーの服装でボブ・ウォールと闘っている場面等)が幾つか存在している。
- コアなブルース・リー・ファンは本作を「ロバート・クローズ版」として、いつの日か(希望的観測として)完成が待たれる「完全版」とは区別している。アクション・シーンのみは近年、現存する未使用フィルムからほぼ完全な形で編集され『GOD』として公開された。
- ジョン・バリー作曲のテーマ曲は、ボクシングの元WBC世界バンタム級チャンピオン辰吉丈一郎が入場曲として使っていることでも有名。
- ソックリさんの一人で、特にアクション・シーンを演じた韓国出身の俳優タン・ロンは後に『死亡の塔』にも出演。