法例
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通称・略称 | なし |
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法令番号 | 明治31年法律第10号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 法令通則、国際私法 |
主な内容 | 法律の適用関係 |
関連法令 | 扶養義務の準拠法に関する法律、遺言の方式の準拠法に関する法律など |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
法例(ほうれい)とは、法の適用関係に関する事項を規定する日本の法律(明治31年法律第10号)の名称であるとともに、一つの法律内においてその法律の適用関係を定める内容を有する規定のことをいう。
1898年(明治31年)6月15日に天皇の裁可(直署)及び国務大臣(内閣総理大臣を含む)の副署がなされたあと、同年6月21日の官報に公布され、同年7月16日に施行された。これにより、それまでの法例(明治23年法律第97号。旧・法例)は廃止された。
目次 |
[編集] 法律の名称としての法例
法例という題名を持つこの法律は、法の適用関係に関する事項を規定することを目的とした法律である。もっとも、その内容はほとんどが準拠法の指定を目的とした国際私法に関する規定であり、日本においては、法例≒国際私法と言っても過言ではない面がある。
なお、法例中の国際私法に関する規定に関する見直しのため、法例を全部改正する法案が第164回国会に提出され成立、2006年6月21日に公布された(平成18年法律第78号)。この法律が2007年1月1日に施行されると、法律の適用関係を定める法律は「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)となる。
以下の解説は、原則として「法例」の規定内容に依拠したものである。
[編集] 法律の施行期日
第1条本文は、法律の施行期日につき、公布の日より起算して20日を経過した日に施行することを原則とする旨定めている。つまり、原則として、法律が公布された日を含め20日を経過した日(例:公布が4月1日であれば施行は4月21日午前0時)以降に発生した事実につき、公布された法律が適用されることになる。もっとも、現在の法制執務では、法律の附則に施行期日に関する定めを置くことになっている(施行期日が公布の日から起算して20日を経過した日である場合を含む)ため、本条本文の適用が問題となることはまずない。
平成元年法律第27号による改正前には、往時の運輸通信基盤の未整備による遠隔地への公文書の送達遅延等を考慮し第1条に第2項として「台湾(※1)、北海道、沖縄県、その他の島地については勅令(※2)により施行時期を別途定めることができる」旨の地域別・段階的施行の規定があったが、1989年(平成元年)時点の評価としてそのような遅延の実例・可能性はもはやないとして、同項は同改正で削除された。
なお、本条はあくまで法律の施行期日に関する規定であり、政令や省令など下位命令の施行期日については適用されない。
- ※1 台湾は1952年(昭和27年)4月28日の日本国との平和条約の発効により正式に日本の領土でなくなったため、この第1条第2項の「台湾」部分は当然に失効したものとして扱われ、平成元年法律第27号による大幅改正前の小規模改正ではその削除が特段取り上げられず文言としてはそのまま存置していた。
- ※2 日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和22年法律第72号)第2項第1項により、日本国憲法施行後は「政令」と読み替えられる。
[編集] 慣習法の効力
第2条は、法令の規定により認められた慣習や、法令に規定のない事項に関する慣習について、法律としての効力を認めた規定である。ただし、慣習の効力に関する規定が民法第92条などにも存在するため、両者の関係が問題とされる(詳細については、慣習法の項目を参照)。
[編集] 国際私法
第3条から第34条までは、渉外的私法関係に適用する準拠法を指定することを目的とする法である国際私法に関する規定である。そのうち、第3条から第27条までは国際私法各論と講学上呼ばれている部分の一部を構成し、第28条から第33条までは国際私法総論と講学上呼ばれている部分の一部を構成する(第34条は、条約に基づき制定された扶養義務の準拠法に関する法律や遺言の方式の準拠法に関する法律との間の調整規定)。
講学上の各論に関する条文が総論に関する条文より前に置かれているのはやや異質であるが、これは原則として準拠法決定のプロセスの順に条文が配列されていることによる。つまり、法律関係の性質決定(第3条から第27条)→連結点の確定(第28条から第30条)→準拠法の特定(第31条、第32条)→準拠法の適用(第33条)のプロセスにより準拠法が定まることを踏まえた結果である。
[編集] 一法律内の用語としての法例
法例という語は、法律の名称としてだけではなく単に法律の適用関係に関する規定という意味でも使われ、特に、一つの法律内においてその法律の適用関係や適用範囲を定める内容を有する部分を「法例」という章節名の下にまとめることがある。
例えば、商法は、その第1編第1章の章名を「法例」とし、商法の適用関係に関する通則をまとめている。また刑法は、その第1編第1章が刑法の適用関係に関する通則をまとめており、その章名が「通則」になっているが、1995年に条文が口語化される前は「法例」という章名であった。
穂積陳重によると、もともと「法例」という語は、晋において刑罰法規としての法律適用の例則という意味で用いられたことに由来するとされている。その後はこの用語を使うことはなくなったが、1880年に日本で刑法(旧刑法)を制定する際、刑法の適用に関する通則をまとめた第1編第1章に「法例」という章名を付け、晋以来の用法を復活させたとされる。その後、1890年に旧民法(いわゆるボアソナード民法)の公布の際に併せて公布された、法律の適用に関する規定をまとめた法典の題名を「法例」としたことにより、刑法の適用に関する法規範に関する語が、法律の適用一般に関する法規範に関する語となった。
もっとも、先に掲げた商法内の「法例」という語についても、会社法(平成17年法律第86号)の制定に伴う改正により「通則」と改まる。その結果、法律中の「法例」という語は、少年法第40条の見出し部分(準拠法例)に残るにとどまることになる。