生ビール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
生ビール(なまびーる)とは、殺菌のための熱処理(パストリゼーション)を行っていないビールのことである。ビールは高温や長期保存などの条件下では、残留した酵母により意図しない発酵が進んだり雑菌が生じて品質が変わることがあり、以前は市販品のほとんどが殺菌のために熱処理されていた。
なお樽出しビールを指して特に生ビールと呼ぶ場合があるが、これは本来誤用である。逆にドラフトビールは本来樽出しビールを指す言葉であるが、「樽出しの風味を残した」という意味で非熱処理の瓶商品や缶商品にも使われるようになり、現在日本ではビールの表示に関する公正競争規約第四条により、生ビールと同義とされている。しかし一般に生ビールの英訳だとされているdraft beerが海外で必ずしも日本における生ビールと同義とは限らないので注意が必要である(参考:[1])。特に非熱処理のビールを指す場合はtap beerを使う。
こうした日本における生ビールと樽出しビールの混同は、近年まで生ビールは樽出しでしか飲めなかったことに由来する。
その後、衛生管理や管理輸送の技術が発達し、またろ過によって酵母や雑菌を排除する技術が確立したため、市販品にも生ビールが急速に広まっていった。
日本で初めて生ビールが全国販売されたのは1967年。サントリーの「純生」(現在の発泡酒の「純生」とは異なる。)である。それ以前には1960年にオリオンビールが「びん詰め生ビール」を発売している。当時同社のある沖縄県はアメリカの施政権下であった。
(より正確には、1877年に開拓使麦酒醸造所(現:サッポロビール)が発売した「冷製札幌ビール」も、熱処理されておらず、生ビールであった。当時、瓶詰めと樽詰めがあった。ただし、開拓使麦酒醸造所のものは、生産地(札幌)から消費地(東京)があまりに遠く、輸送途中で製品中の酵母が発酵してしまい、品質の点で問題があり、輸送にあたり船に氷を積むなど、苦心したという。オリオンビールのものも、当初は酵母入りであったが、オリオンビールによれば、生産地と消費地が極めて近く、主に飲食店向けに出荷され、出荷後ただちに消費されていたため、そのような問題は生じなかったという)
2004年現在、日本で発売されているビールのほとんどが生ビールである。他方、現在でも熱処理して売られているビールにキリンビールの「クラシック・ラガー」、サッポロビールの「サッポロラガー」(料飲店向けで一般には出回っていない)、オリオンビールの「オリオンラガービール」などがある。
カテゴリ: ビール | 食文化関連のスタブ項目