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破産 - Wikipedia

破産

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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破産(はさん)とは、広義には債務者が経済的に破綻して、総債権者に対して債務を完済することができない状態にあること、又は裁判所(破産裁判所)がそのような状態にある債務者の財産を包括的に管理・換価して総債権者に公平な弁済を得させるためになす手続(破産手続)をいう。破産法は平成16年に大幅な改正が行なわれた(平成16年法律代75号)。

  • 破産手続の倒産処理法制における位置付けは、倒産処理手続を参照。
  • 破産事件の動向は、裁判所のWeb Siteの「司法統計」コーナーに掲載されている「司法統計年報」の「民事・行政事件編」を参照。

目次

[編集] 概要

狭義の破産とは、債務者が裁判所に破産手続開始の申立てを行い、裁判所が、当該債務者に破産原因があると認められる場合に破産手続開始決定して破産手続きを行うことをいう。2004年6月2日に新しい破産法(平成16年法律第75号)が公布され、2005年1月1日に施行された。これにより、破産法改正前の破産宣告破産手続開始決定に改められた。

狭義の破産のうち、債務者自身の申立てにより破産手続開始決定を受ける場合を自己破産、会社役員が自分の会社の破産手続開始の申し立てを行って破産手続開始決定を受ける場合を準自己破産といい、債権者の申立てにより破産手続開始決定を受ける場合を債権者破産という。

本来の破産手続は、上記のとおり債務者の財産を管理・換価して、総債権者に公平な弁済を受けさせるための手続であるが、現在、ほとんどの自己破産の申立ては、債務者の財産を換価しないまま免責を得るための手段として利用されており、各地の裁判所が作成している定型申立書も、1通で破産及び免責の両者の申立てをなすものになっていることが多い。しかし、現行破産法上、両者はあくまで別個の手続であり、区別する必要がある(Web上の法律相談掲示板等では、両者を混同した投稿が頻繁に見られる)。

以下、自己破産・同時廃止・免責申立てにあたり、留意しておくべき事項を中心に説明する。

[編集] 申立て

[編集] 破産原因(破産手続開始決定の実質的要件)

破産手続開始決定は、債務者が一定の経済的破綻に陥ったときになされる。これを破産原因といい、その主なものが支払不能である(破産法第15条、16条、222条)。詳細は、破産原因を参照。

[編集] 申立て

破産手続開始決定は、原則として、破産手続開始の申立があってはじめてなされる(破産法第30条1項)。

債務者が個人である場合、破産の申立ては、債務者の営業所、住所、居所又は財産を有する時に限り、法人その他の社団又は財団である場合には日本国内に営業所、事務所又は財産を有する時に限り、することができる(同法4条1項)。

破産事件は、債務者が営業者であるときはその主たる営業所の所在地、外国に主たる営業所を有するときは日本における主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する(破産法第5条1項)。

多くの裁判所が、自己破産・同時廃止・免責の申立ての定型申立書を作成し、申立てを希望する者に配布している。

自己破産を申し立てる際には、申立てと同時に、財産の概況を示すべき書面並びに債権者及び債務者の一覧表を提出することを要する(同法20条)。前記の定型申立書においては、申立書のほかに陳述書も作成することになっているが、この陳述書が上記の「財産の概況を示すべき書面並びに債権者及び債務者の一覧表」である。この陳述書は、免責不許可事由の存否に関する証拠としても用いられる。

多くの裁判所においては、自己破産・同時廃止・免責を申し立てる際に、破産手続の費用を予納するよう要求される。この予納金は主として官報公告の費用に充てられ、具体的な金額は裁判所によって異なるが、基本的には、同時廃止の場合20,000円程度、管財人が選任される場合は200,000円程度(債権者が多い時には多くなる。)であることが多い。また、これとは別に、破産及び免責の各申立ての手数料として合計1,500円(破産手続開始申立につき1,000円(債権者申立の場合は20,000円)、免責につき500円)の収入印紙を申立書に貼り、郵便物の料金に充てるための費用として、裁判所が定める金額の郵便切手を予納しなければならない(民事訴訟費用等に関する法律)。さらに、破産申立代理人を弁護士に依頼する時は、弁護士報酬として20万円以上、司法書士に破産申立書類作成を依頼する時は、15万円以上の報酬を支払う必要があるが、各事務所によって報酬額に差がある。

[編集] 他の手続きの中止命令等

  1. 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続の中止を命ずることができる。ただし、第1号に掲げる手続についてはその手続の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限り、第5号に掲げる責任制限手続については責任制限手続開始の決定がされていない場合に限る(破産法第24条第1項)。
    1. 債務者の財産に対して既にされている強制執行仮差押え仮処分又は一般の先取特権の実行若しくは留置権商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この節において「強制執行等」という。)の手続で、債務者につき破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権若しくは財団債権となるべきもの(以下この項及び次条第8項において「破産債権等」という。)に基づくもの又は破産債権等を被担保債権とするもの
    2. 債務者の財産に対して既にされている企業担保権の実行手続で、破産債権等に基づくもの
    3. 債務者の財産関係の訴訟手続
    4. 債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
    5. 債務者の責任制限手続(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和五十年法律第九十四号)第三章又は船舶油濁損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号)第五章の規定による責任制限手続をいう。第263条及び第264条第1項において同じ。)
  2. 裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる(破産法第24条第2項)。
  3. 裁判所は、第91条第2項に規定する保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理及び処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、第1項の規定により中止した強制執行等の手続の取消しを命ずることができる(破産法第24条第3項)。
  4. 第1項の規定による中止の命令、第2項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる(破産法第24条第4項)。
  5. 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない(破産法第24条第5項)。
  6. 第4項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない(破産法第24条第6項)。

[編集] 包括的禁止命令

破産法第25条~第27条

(包括的禁止命令)

  1. 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産法第24条第1項第1号の規定による中止の命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての債権者に対し、債務者の財産に対する強制執行等及び国税滞納処分(国税滞納処分の例による処分を含み、交付要求を除く。以下同じ。)の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、債務者の主要な財産に関し第28条第1項の規定による保全処分をした場合又は第91条第2項に規定する保全管理命令をした場合に限る(破産法第25条第1項)。これを「包括的禁止命令」という。
  2. 包括的禁止命令を発する場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する強制執行等又は国税滞納処分を包括的禁止命令の対象から除外することができる(破産法第25条第2項)。
  3. 包括的禁止命令が発せられた場合には、債務者の財産に対して既にされている強制執行等の手続(当該包括的禁止命令により禁止されることとなるものに限る。)は、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する(破産法第25条第3項)。
  4. 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる(破産法第25条第4項)。
  5. 裁判所は、第91条第2項に規定する保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理及び処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、破産法第25条第3項の規定により中止した強制執行等の手続の取消しを命ずることができる(破産法第25条第5項)。
  6. 包括的禁止命令、第4項の規定による包括的禁止命令変更、又は取消決定及び第5項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる(破産法第25条第6項)。
  7. この即時抗告は、執行停止の効力を有しない(破産法第25条第7項)。
  8. 包括的禁止命令が発せられたときは、破産債権等(当該包括的禁止命令により強制執行等又は国税滞納処分が禁止されているものに限る。)については、当該包括的禁止命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない(破産法第25条第8項)。

(包括的禁止命令に関する公告及び送達等)

  1. 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その裁判書を債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。次項において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている債権者及び債務者(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならない(破産法第26条第1項)。
  2. 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、債務者に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる(破産法第26条第2項)。
  3. 破産法第25条第6項の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない(破産法第26条第3項)。

(包括的禁止命令の解除)

  1. 裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、強制執行等の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該債権者の申立てにより、当該債権者に限り当該包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。この場合において、当該債権者は、債務者の財産に対する強制執行等をすることができ、当該包括的禁止命令が発せられる前に当該債権者がした強制執行等の手続で第25条第3項の規定により中止されていたものは、続行する(破産法第27条第1項)。
  2. この規定は、裁判所が国税滞納処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認める場合について準用する(破産法第27条第2項)。
  3. 包括的禁止命令の解除の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる(破産法第27条第4項)。
  4. この即時抗告は、執行停止の効力を有しない(破産法第27条第5項)。
  5. 包括的禁止命令の解除の申立てについての裁判及びこれに対する即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、破産法第10条第3項本文の規定は、適用しない(破産法第27条第6項)。

[編集] 債務者の財産に関する保全処分

破産法第28条

  1. 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、その財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる(破産法第28条第1項)。
  2. 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる(破産法第28条第2項)。
  3. この保全処分及び保全処分の変更、又は取消の決定に対しては、即時抗告をすることができる(破産法第28条第3項)。
  4. この即時抗告は、執行停止の効力を有しない(破産法第28条第4項)。
  5. この保全処分及び保全処分の変更、又は取消の決定の裁判及びその決定に対する即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、破産法第10条第3項本文の規定は、適用しない(破産法第28条第5項)。
  6. 裁判所が破産法第28条第1項の規定により債務者が債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、債権者は、破産手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る(破産法第28条第6項)。

[編集] 破産手続き開始の申立ての取下げの制限

破産法第29条

破産手続開始の申立てをした者は、破産手続開始の決定前に限り、当該申立てを取り下げることができる。この場合において、第24条第1項の規定による中止の命令包括的禁止命令、第28条第1項の規定による保全処分、第91条第2項に規定する保全管理命令又は第171条第1項の規定による保全処分がされた後は、裁判所の許可を得なければならない(破産法第29条)。

[編集] 破産手続開始決定

破産法の改正により、破産宣告から破産手続開始決定に変更された。

個人少額管財手続の進行要領 (宣告手続に関する注意事項)

[編集] 破産原因の審理

破産手続開始の申立てがあると、裁判所は、申立書その他の提出書類の記載から破産原因の存在を認定することができるか、これらの書類の記載に十分な裏付資料が存在するかという観点から審理をし、訂正補充を債務者に指示する。

書類や資料が調うと、債務者審尋あるいは債務者審問と称して、債務者を個別に裁判所に呼び出し、裁判官が、申立書その他の提出書類の記載内容に誤りがないかを確認し、破産原因及び同時廃止の要件の存否を認定するために必要な事項を聴取する。なお、こうした期日を開かないで審理を進める事案もある。また、免責の申立てもなされている事案であって、免責不許可事由の存在が疑われるものについては、その際に、裁判官が必要と認める訓戒を加えたり反省文の提出を指示したりすることもある。

審理の結果、破産原因の存在が証明されれば、裁判所は破産手続開始決定をなす。

[編集] 同時廃止

本来の破産手続では、裁判所が破産管財人を選任し(同法74条1項)、破産管財人が破産財団(破産手続開始決定時に破産者が有する一切の財産)を管理処分して、これを換価し(同法184条)、債権者に分配する(同法193条~215条)。しかし、裁判所が、破産財団が破産手続の費用(少なくとも、破産管財人の報酬相当額が必要である。)にも足りないと認めるときは、破産手続開始決定と同時に破産手続を終了させる決定をする(同法216条1項)。これを同時廃止といい、この場合、破産管財人は選任されない。現在裁判所に申し立てられる破産手続のほとんどは、同時廃止で終了している。

同時廃止をするのにわざわざ破産手続開始決定をするのは、免責を申し立てることができるのは個人である破産者だけだからである(同法248条)。

破産財団が破産手続の費用に足りないものの数十万円程度に上ると見込まれる場合には、裁判所は、債務者に破産財団相当額を積み立てさせ、債権者に分配させたうえで、破産手続開始決定・同時廃止をなすことがあり、これを同時廃止のための任意配当という。

[編集] 少額管財

東京地方裁判所民事第20部の例(一部修正:破産宣告→破産手続開始決定、印紙代改定)

(個人の少額管財)

1.この手続は、個人の自己破産申立事件について、破産法の範囲内で、できる限り手続の簡素化と迅速化を図ることにより、管財事件にかかる時間と費用に関する問題を少しでも解決しようとする運用です。

2.対象は、自己破産申立事件で、最低予納金である50万円を納付することが困難な事情にあるけれども、4の類型に該当するような管財人を付する必要のある事件です。負債総額の多寡、不動産所有の有無は問いません。ただし、代理人申立事件に限ります。

3.手続費用は20万円です。なお、印紙1,500円(1,000円+500円)、郵券4,000円(400円×5枚、80円×25枚)、官報公告費用(16,413円)は裁判所に別途納付してください。

4.これまで次のような類型の事件を少額管財事件として取り扱いました。

① 差押解除型 給料等が天引き(公務員)または(仮)差押えを受けている場合
② 差押回避型 給料等が(仮)差押えを受ける可能性がある場合
③ 偏頗弁済型 偏頗弁済行為があり否認権の行使により金銭その他の財産を取り戻す必要がある場合、または否認権の行使が可能か否かを管財人により調査する必要がある場合
④ 不当利得型 利息の再計算による不当利得返還請求権の行使により、特定の債権者から金銭を取り戻す必要がある場合
⑤ 免責調査型 免責不許可事由の存在が明らかで、裁量免責を受けるためには誠実な破産者であることが必要であるが、その評価につき管財人の調査が必要な場合
⑥ 生保等清算型 生命保険解約返戻金等の換価容易な財産が20万円を超える場合
⑦ 調査型 不動産を所有している場合、負債総額が5,000万円以上の場合、債権者多数の場合などその他管財人による調査が必要と判断される場合

5.管財事件ですが、同時廃止事件と同様な運用で管財業務を行っていただくよう、管財人に要請しています。具体的には、通常の生活に必要な家財道具の処分及び電話加入権の換価は必要ありません。また、現金、預貯金、生命保険の解約返戻金、退職金見込額の8分の1相当分がそれぞれ20万円に満たない場合は原則として財団を形成しないと考えています。詳しくは金融法務事情1584号6頁以下を参照してください。

6.次のような取扱いについて、申立代理人のご協力をお願いします。

① 破産手続開始決定は、原則として、移行した日の翌週の水曜日午後5時付けで決定します。決定正本等は後日送付しますので、裁判所への来庁は必要ありません。
② 少額管財手続に移行後、裁判所が管財人候補者を選任した上、債権者集会及び免責審尋期日を決めて連絡しますので、速やかに次の手続をお願いします。
a 早急に申立書(追完書類も含め、裁判所に提出したすべての書類)の副本を作成し、管財人候補者の事務所に直送してください。
b 破産手続開始決定日以降、破産者本人と申立代理人が管財人事務所に出向いて打合せをしていただきますので、その期日を直接管財人候補者と調整してください。
③ 官報公告費用以外に裁判所から指示された費用については、破産手続開始決定後に管財人が開設する管財人口座に振り込む等の方法で引き継いでください(引継現金扱い)。遅くとも債権者集会の2週間前までに管財人口座に振り込んでください。
④ 破産手続開始決定後、裁判所から申立代理人に破産手続開始決定正本等の書面を送付します。申立代理人から、この書面に基づいて、破産者に注意事項を指示してください。原則として2ヵ月後にしてする債権者集会で終結する予定です。免責審尋期日も兼ねますので、必ず本人も出頭させてください。正当な理由により出頭できない場合は、免責審尋期日当日にその事由を記載した報告書を提出してください。裁判所への事前の連絡は特に必要ありません。なお、異議申立期間は、免責審尋期日から1ヶ月間です。

7.法人の少額管財手続については「法人少額管財手続の進行要領」をご覧ください。

(法人少額管財手続の進行要領) 東京地方裁判所民事第20部

1.この手続は、法人及び代表者の自己破産申立事件について、少額管財手続の趣旨(破産法の範囲内で、できる限り手続の簡素化と迅速化を図ることにより、管財事件にかかる時間と費用に関する負担を少しでも軽減しようとする試み)を生かしながら、より適正な運用を図ろうとする手続です。なお、原則として、法人の同時廃止は行いません。

2.対象は、法人及び代表者(その親族も含む。)の自己破産申立事件で、ほとんど資産がないか、若干の換価業務が予想されるけれども、最低予納金(法人70万円、個人50万円)を納付することが困難な事情にある事件です。ただし、代理人申立事件に限ります。これまでの少額管財手続では、①個人と同視できる法人で、個人とともに法的清算をする必要がある場合(法人併存型)と②ほとんど資産のない法人で、代表者とは別に法的清算をする必要がある場合(法人単独型)を対象としていましたが、法人少額管財手続の創設により、①、②に加え、若干の換価業務が予想される法人にも対象を拡大することとしました。代表者等の破産申し立ての有無は問いませんが、同時に申立てを行えば、後記3の手続費用で足りることになります。

3.手続費用は、法人と個人を合わせて20万円です。なお、法人申立てについては、印紙(1,000円)、郵券(400円×5枚、80円×25枚)、官報公告費用(1万3457円)は裁判所に別途納付してください。

4.法人の破産申立てに必要な書類等は次のとおりです。

(1)申立書
(2)資格証明書
(3)債権者一覧表
(4)取締役会議事録
(5)資産目録(簡単なものでよい・下記参照)
(6)委任状

5.法人の管財手続ですが、これまでの少額管財手続と同時に、原則として3ヶ月後に指定する債権者集会までに換価を終えて事件を終局させていただくよう、管財人に要請しています。

6.次のような取扱いについて、申立代理人のご協力をお願いします。

① 破産手続開始決定は、原則として、移行した日の翌週の水曜日午後5時付けで決定します。決定正本等は後日送付しますので、裁判所への来庁は必要ありません。
② 少額管財手続に移行後、裁判所が管財人候補者を選任した上、債権者集会及び免責審尋期日を決めて連絡しますので、速やかに次の手続をお願いします。
a 早急に申立書(追完書類も含め、裁判所に提出したすべての書類)の副本を作成し、管財人候補者の事務所に直送してください。
b 破産手続開始決定日以降、破産者本人と申立代理人が管財人事務所に出向いて打合せをしていただきますので、その期日を直接管財人候補者と調整してください。
③ 官報公告費用以外に裁判所から指示された費用については、破産手続開始決定後に管財人が開設する管財人口座に振り込む等の方法で引き継いでください(引継現金扱い)。
④ 決定正本とともに、破産者に対する注意事項を送付しますので、申立代理人から、破産者に注意事項を指示してください。また、少額管財手続の債権者集会は、代表者の免責審尋期日も兼ねますので、必ず本人を出席させてください。

(資産目録の例)

資 産 目 録
I 流動資産
(1) 預金、貯金        有 ・ 無
(2) 受取手形         有 ・ 無
(3) 売掛金、貸付金等     有 ・ 無
(4) 商品、在庫等       有 ・ 無
(5) その他(       ) 有 ・ 無
II 固定資産
(1) 土地・建物        有 ・ 無
(2) 機会設備         有 ・ 無
(3) 車両           有 ・ 無
(4) 保証金・敷金       有 ・ 無
(5) 有価証券         有 ・ 無
(6) その他(       ) 有 ・ 無

[編集] 破産債権

破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権を、破産債権という(同法2条5項)。

[編集] 破産財団の管理及び換価

[編集] 配当

[編集] 破産手続廃止

[編集] 破産手続終結の決定

  1. 裁判所は、最後配当簡易配当又は同意配当が終了した後、第88条第4項の債権者集会が終結したとき、又は第89条第2項に規定する期間が経過したときは、破産手続終結の決定をしなければならない(破産法第220条第1項)。
  2. 裁判所は、前項の規定により破産手続終結の決定をしたときは、直ちに、その主文及び理由の要旨を公告し、かつ、これを破産者に通知しなければならない(破産法第220条第2項)。

[編集] 破産手続廃止後又は破産手続終結後の破産債権者表の記載の効力

破産手続廃止の決定が確定したとき、又は破産手続終結の決定があったときは、確定した破産債権については、破産債権者表の記載は、破産者に対し、確定判決と同一の効力を有する。この場合において、破産債権者は、確定した破産債権について、当該破産者に対し、破産債権者表の記載により強制執行をすることができる(破産法第221条第1項)。

この規定は、破産者(代理人を含む。)が異議を述べた場合には、適用しない。

[編集] 相続財産の破産等

[編集] 相続財産の破産

破産法第222条~第237条

[編集] 相続人の破産

破産法第238条~第244条

[編集] 外国倒産処理手続がある場合の特則

破産法第245条~第247条

[編集] 免責及び復権

[編集] 免責申立て

  • 免責の申立
  1. 個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては、破産者。第四項を除き、以下この節において同じ。)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる(破産法248条第1項)。
  2. 前項の債務者(以下この節において「債務者」という。)は、その責めに帰することができない事由により同項に規定する期間内に免責許可の申立てをすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、当該申立てをすることができる(破産法248条第2項)。
  3. 免責許可の申立てをするには、最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者名簿を提出しなければならない。ただし、当該申立てと同時に債権者名簿を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる(破産法248条第3項)。
  4. 債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし、当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでない(破産法248条第4項)。
  5. 前項本文の規定により免責許可の申立てをしたものとみなされたときは、第20条第2項の債権者一覧表を第3項本文の債権者名簿とみなす(破産法248条第5項)。
  6. 債務者は、免責許可の申立てをしたときは、第218条第1項(破産債権者の同意による破産手続廃止)の申立て又は再生手続開始の申立てをすることができない(破産法248条第6項)。
  7. 債務者は、次の各号に掲げる申立てをしたときは、第1項及び第2項の規定にかかわらず、当該各号に定める決定が確定した後でなければ、免責許可の申立てをすることができない(破産法248条第7項)。
    1. 第218条第1項(破産債権者の同意による破産手続廃止)の申立て 当該申立ての棄却の決定
    2. 再生手続開始の申立て 当該申立ての棄却、再生手続廃止又は再生計画不認可の決定

[編集] 免責についての調査及び報告

  1. 裁判所は、破産管財人に、第二百五十二条第一項各号に掲げる事由の有無又は同条第二項の規定による免責許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情についての調査をさせ、その結果を書面で報告させることができる(破産法250条第1項)。
  2. 破産者は、前項に規定する事項について裁判所が行う調査又は同項の規定により破産管財人が行う調査に協力しなければならない(破産法250条第2項)。

裁判所が行う調査には、審尋も含まれる。

[編集] 免責についての意見申述

  1. 裁判所は、免責許可の申立てがあったときは、破産手続開始の決定があった時以後、破産者につき免責許可の決定をすることの当否について、破産管財人及び破産債権者(第二百五十三条第一項各号に掲げる請求権を有する者を除く。次項、次条第3項及び第254条において同じ。)が裁判所に対し意見を述べることができる期間を定めなければならない(破産法251条第1項)。
  2. 裁判所は、前項の期間を定める決定をしたときは、その期間を公告し、かつ、破産管財人及び知れている破産債権者にその期間を通知しなければならない(破産法251条第2項)。
  3. 第1項の期間は、前項の規定による公告が効力を生じた日から起算して一月以上でなければならない(破産法251条第3項)。

[編集] 免責許可の決定の要件等(免責不許可事由)

  1. 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする(破産法252条第1項)。
    1. 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
    2. 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
    3. 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
    4. 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
    5. 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
    6. 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
    7. 虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。
    8. 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
    9. 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
    10. 次の1から3までに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれ1から3までに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと(法改正前は10年以内であったものが7年に短縮された。)。
      1. 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
      2. 民事再生法第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
      3. 民事再生法第235条第1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
    11. 第40条第1項第1号、第41条又は第250条第2項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
  2. 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる(破産法252条第2項)。
  3. 裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第10条第3項本文の規定は、適用しない(破産法252条第3項)。
  4. 裁判所は、免責不許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない(破産法252条第4項)。
  5. 免責許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる(破産法252条第5項)。
  6. 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない(破産法252条第6項)。
  7. 免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない(破産法252条第7項)。


ここにいう信用取引による財産取得には、金銭消費貸借契約の締結(借金)も含まれる。支払不能について黙秘して借入をすることがここにいう詐術にあたるかについては、決定例が分かれている(大阪高等裁判所昭和59年9月20日決定(判例タイムズ541号156頁)は否定、仙台高等裁判所平成4年10月21日決定(同誌806号218頁)は肯定)。
裁判所は、これらの免責不許可事由がある場合でも、免責の決定をなすことができると解されており、これを裁量免責という。例えば、裁判所は、破産者に浪費(破産法第252条第1項第4号。懈怠破産行為にあたる。)や詐術(破産法第252条第1項第5号)がある場合でも、比較的軽微なものにとどまるときは、前記の訓戒を受けたことや反省文を提出したことなどを考慮して、免責の決定がなされることもある。なお、一時期、破産者に一定額を積み立てさせて、債権者に分配させたうえで免責の決定をする運用がされていたことがあるが(免責のための任意配当)、個人再生手続が導入されたこともあり、現在では行われていない庁がほとんどである。

[編集] 免責許可の決定の効力等

  1. 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない(破産法253条第1項)。
    1. 租税等の請求権
    2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
    3. 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
    4. 次に掲げる義務に係る請求権(破産法253条第2項)。
      1. 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
      2. 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
      3. 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
      4. 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
      5. 1から4までに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
    5. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
    6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
    7. 罰金等の請求権
  2. 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない(破産法253条第2項)。
  3. 免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない(破産法253条第3項)。

[編集] 免責取消しの決定

  1. 第265条(詐欺破産)の罪について破産者に対する有罪の判決が確定したときは、裁判所は、破産債権者の申立てにより又は職権で、免責取消しの決定をすることができる。破産者の不正の方法によって免責許可の決定がされた場合において、破産債権者が当該免責許可の決定があった後一年以内に免責取消しの申立てをしたときも、同様とする(破産法254条第1項)。
  2. 裁判所は、免責取消しの決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び申立人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第10条第3項本文の規定は、適用しない(破産法254条第2項)。
  3. 第1項の申立てについての裁判及び職権による免責取消しの決定に対しては、即時抗告をすることができる(破産法254条第3項)。
  4. 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない(破産法254条第4項)。
  5. 免責取消しの決定が確定したときは、免責許可の決定は、その効力を失う(破産法254条第5項)。
  6. 免責取消しの決定が確定した場合において、免責許可の決定の確定後免責取消しの決定が確定するまでの間に生じた原因に基づいて破産者に対する債権を有するに至った者があるときは、その者は、新たな破産手続において、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する(破産法254条第6項)。
  7. 前条第3項の規定は、免責取消しの決定が確定した場合について準用する(破産法254条第7項)。

[編集] 復権

  1. 破産者は、免責許可の決定が確定したときなどにおいては、復権(破産手続開始決定に伴う破産者に対する法律上の制限が包括的に解除されること)する(破産法255条第1項)。
    1. 免責許可の決定が確定したとき。
    2. 第218条第1項の規定による破産手続廃止(破産債権者の同意による破産手続廃止)の決定が確定したとき。
    3. 再生計画認可の決定が確定したとき。
    4. 破産者が、破産手続開始の決定後、第265条の罪(詐欺破産罪)について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。
  2. 破産法255条第1項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
  3. 免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、免責許可の決定が確定したとき又は再生計画認可の決定が確定したときの規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。

[編集] 罰則

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