要約筆記
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要約筆記(ようやくひっき)とは、聴覚障害者(とりわけ中途失聴者など、第1言語を手話としない方向け)への 情報保障手段の一つで、話している内容を要約し、文字として伝えることをいう。 要約筆記作業に従事する通訳者のことを要約筆記奉仕員と呼ぶ。 あくまで「要約し、通訳する」事であり、速記とは内容が異なる。
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[編集] 概要
[編集] 種類
つかう機材や運用する場所、情報保障内容により、使う手段が異なる。
- 筆談(ノート、ホワイトボード)
- 屋外イベント(遠足)等、電源の確保がむずかしく、機材の運用が難しい場合は主に筆談が用いられる。筆談はノートテイクと呼ばれ、ノートや小型ホワイトボードを用い、文字を書いて情報を伝える。この手法の場合、文字の大きさで感情を表すことが可能であるが、逆に書き手が常に意識して筆記する必要がある。
- OHP (オーバヘッドプロジェクタ)
- OHC (オーバーヘットカメラ)
- PC (パソコン)
- 近年普及してきた通訳方法。パソコンを複数台つなぎ、プロジェクタにて投影する方法。Wordなどのワープロソフトで書いた物を映すほか、IPtalkなどの要約筆記専用のプログラムを用いて映し出す方法がある。複数人による連携入力と、漢字変換(FEP/IME)の単語登録機能により効率的な入力が可能で、その結果、ほかの手段に比べ圧倒的に多くの情報を通訳できる。ただし、情報量は多いものの、通訳者には一般的な要約能力のほか、確実なタッチタイピング能力、他人との連携能力、パソコンや専門ソフトに対する知識を要求されるため、養成に時間がかかる。
- さらに、情報の伝達スピードが早いメリットがある反面、誤変換等による問題が発生することも少なくなく、正確ですばやい連携が必須とされる。また、最近ではインターネットとテレビ会議システムを応用し、遠隔地からの要約筆記を試みる例もある。
- 原稿が用意できる物(たとえば式典など)については、前ロール(送信テンプレート)を作成しておくことで正確な表示をおこなうことができる機能をそなえた要約筆記用プログラムもある。近年の全国障害者スポーツ大会では、大型スクリーンの表示にパソコン要約筆記が適用されるケースが増えている。
[編集] 要約筆記の必要性
一般的に、聴覚障害者は手話で会話ができるとの認識が多いが、実際には手話で完全なコミュニケーションをとれる人の数は多くはない。とりわけ中途失聴者や難聴者は、第1言語を母国語としている場合が多く、積極的なコミュニケーション手段として手話を覚える事が難しい。
逆に、聴覚障害者は手話を習得しなくても、日本語を文字として理解することは可能であるため情報保障手段として要約筆記を用いるケースが増えてきている。
[編集] 要約筆記の基本
要約筆記には「速く、正確に、読みやすく、私感を含めず、秘密を守る」という原則がある。
- 速く
- 正確に
- 間違った情報は、情報の理解やその後の行動に大きな影響を与える。(例えば、会議の集合時間など。)「間違った情報であれば 与えてもらわないほうが確実に行動できる」という考え方が有り、要約筆記を情報保障として活用するためには、正確な情報伝達が要求される。
- 読みやすく
- 手書きする場合は、文字の大きさや崩れ具合などにより 文字を読みとれない事が有る。パソコンでは文字の流し方や大きさ、配置、文字色、1行の文字列とその配置を工夫しないと読みづらい事が有る。
- 私感を含めず
- 秘密を守る
[編集] 参考文献
- 厚生労働省推薦・カリキュラム準拠 要約筆記奉仕員養成講座テキスト(基礎過程)