B-CAS
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B-CAS(ビーキャス)は、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(BS Conditional Access Systems Co.,Ltd.)の略称、もしくはこの会社が提供する限定受信方式(B-CAS方式)のことを指す。また、同機能を実現するために受信機に設置するカード(B-CASカード)のことを指す。
日本のBSデジタル放送の有料放送受信者を対象とする狭義の限定受信システム(CAS)としてスタートしたが、BSデジタル放送以外にも利用され、デジタル放送におけるデジタル著作権管理(DRM)の一部として、正規の機器を認証する広義の限定受信方式として利用される。
なお、B-CAS方式以外を用いた限定受信システムについては、限定受信システムを参照のこと。
種類 | 株式会社 |
市場情報 | 非上場・非公開 |
略称 | B-CAS・ビーキャス |
本社所在地 | 日本 150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目23番17号 |
電話番号 | 0570-000250 (カスタマーセンター) 代表電話番号は公表されていない |
設立 | 2000年2月22日 |
業種 | 情報・通信業 |
事業内容 |
|
代表者 | 浦崎 宏 |
資本金 | 15億円 |
売上高 | (公表されていないため不明) |
従業員数 | (公表されていないため不明) |
決算期 | (公表されていないため不明) |
主要株主 | 出資比率 出資額 出資者 18.40% 27,630 日本放送協会 17.70% 26,560 WOWOW 12.25% 18,375 東芝 12.25% 18,375 松下電器産業 12.25% 18,375 日立製作所 12.25% 18,375 NTT東日本 *6.50% *9,810 スター・チャンネル *1.70% *2,500 BS日本 *1.70% *2,500 ビーエス・アイ *1.70% *2,500 BSフジ *1.70% *2,500 ビーエス朝日 *1.70% *2,500 BSジャパン (出資額の単位は万円) |
主要子会社 | (公表されていないため不明) |
関係する人物 | 設立時代表 久保田 芳彦 ●2006年6月末現在 役員一覧 代表取締役社長 浦崎 宏 代表取締役専務 吉永 弘幸 取締役 藤森 敏充 取締役(非常勤) 緒方 徹 取締役(非常勤) 田中 豊 取締役(非常勤) 新見 博英 取締役(非常勤) 山根 聡 取締役(非常勤) 佐藤 光一 取締役(非常勤) 北林 由孝 監査役 久木 保 監査役(非常勤) 廣瀬 敏雄 監査役(非常勤) 丸山 竜司 |
外部リンク | http://www.b-cas.co.jp/ |
特記事項: 役員一覧はB-CAS公式サイトの情報である。本店は登記簿上の記載である。それ以外は、総務省 電波監理審議会(第860回)会長会見資料より抜粋した情報である。現況とは相違がある可能性がある。 |
目次 |
概要
- 株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS社)は、2000年2月22日に、BSデジタル放送用の限定受信システムを運用管理維持することを目的として設立された。日本放送協会(NHK)などBSデジタルテレビ事業者の他に、東芝、松下電器産業、日立製作所、NTT東日本が出資している。
- B-CAS社の限定受信システムは、2000年12月1日、BSデジタル放送が開始された際にBSデジタル放送の有料放送契約者を対象として開始され、2002年に開始された110度CSデジタル放送の有料放送にも採用された。
- 2004年、BSデジタル放送の無料放送に著作権保護が目的とされるコピー制御が導入された際、コピー制御信号(CCI・コピーワンスが原則とされる)とともに、CCIの実効性を担保する限定受信方式として、デジタル著作権管理(DRM)の一部の形でBSデジタル放送・地上デジタル放送・110度CSデジタル放送に広く採用されることとなった。
- この限定受信の方式はB-CAS方式と呼ばれ、日本のデジタル放送における著作権保護に利用されている。
B-CAS方式
- 2000年12月1日にBSデジタル放送、2002年3月1日に110度CSデジタル放送、そして2003年に地上デジタル放送がそれぞれ開始された。
- 開始当初、限定受信は有料放送が対象であり、コピー制御も一部を除いて行われていなかったが、「BSデジタル放送を録画したビデオテープがインターネットオークションに出品される著作権侵害があった」とする放送業界の主張により問題視され(著作権者からの苦情ではなく、あくまでも放送局の主張である)、2004年4月5日からは有料放送・無料放送を問わず著作権保護が目的であるとするコピー制御が開始された。この制御の実効性を担保する手段としてB-CASの限定受信が応用され、これらはDRMとして機能することとなった。
- B-CAS方式によるデジタル放送は、動画データにコピー制御信号(CCI)を加えた上で暗号化(MULTI2暗号・日立製作所開発)して送信される。視聴する際は、B-CASカードに格納されている暗号鍵を用いて復号し、復号されたデータはCCIに忠実に取り扱われる。これにより、B-CAS方式の限定受信の行われている放送・番組では、社団法人電波産業会(ARIB)とB-CAS社に認証され、B-CASカードが発行されたチューナー(コピー制御対応チューナー)にB-CASカードを挿入することが必須になり、それ以外の手段では視聴不可能になった。
- B-CASカードを使用する受信機には、特定条件に一致した場合に放送局からのお知らせを目的とした文言を画面に表示する「自動表示メッセージ」と呼ばれる機能がある。NHKの放送においては、ユーザー登録を行わないままBSデジタル放送を視聴し、一定期間が経過すると、この機能を利用した「ユーザー登録のお知らせ」が表示される。地上デジタル放送では、ユーザー登録をしなくとも画面上に「ユーザー登録のお知らせ」は表示されない[1]。
- デジタルテレビ放送については、ほぼ全面的にB-CAS方式によるコピー制御が行われているが、ラジオ放送の一部では行われていない場合もある。また、110度CSデジタル放送での無料番組の一部では、コピー制御・限定受信の一方又は両方が行われない番組もある(主に広告を目的とした通販番組)。
- B-CAS方式による放送では、デジタル技術を用いた録画機器(一部アナログ機器も含む)での番組の録画(暗号化はされていないが録音にも)に様々な制限が掛かる。後述:B-CASとコピーワンス DVDレコーダー#DVDレコーダーとコピー制御の関係の項などを参照。
B-CASカード
- B-CASカードは、B-CAS社が発行する接触式ICカードで、ARIBとB-CAS社に認証されたデジタル放送受信機に同梱して配布され、受信機(チューナー、セットトップボックス、また、デジタル放送対応テレビや、DVDレコーダー等)に挿入して使用する。B-CASカードのICチップ内部には、カード毎に固有のID番号と暗号鍵が格納されている。
- B-CASカードは、赤カード・青カード・CATV専用カード(オレンジ色)の3種類が一般的に知られている。
- 赤カードは、BS・CS110度・地上のデジタル放送3波共用カードである(BSデジタル専用と書かれていても3波利用可能である)。
- 青カードは地上デジタル放送専用カードである(B-CAS社へのライセンス料の支払軽減が目的とされている)。
- CATV専用カードは、デジタルCATV(統合デジタルシステム)向けに赤カードとセットで発行される。赤カードはBS・CS110度・地上の再送信用、オレンジ色のCATV専用カードはCATV専用で用いられる。
- その他、白カード(店頭展示テレビ専用)・黄カード(用途限定カード)・黒カード(業務用)など、限られた用途のB-CASカードも存在するとみられるが、一般視聴者が目にすることはあまりない(これらのカードはネットオークションに出品されることもあるが、同社は契約違反であるとして問題視している)。
B-CASに対する批判
B-CAS方式に限った話ではないが、DRMは自社の競争力を優位に立たせることを目的とした囲い込みに悪用することも可能であり、公共の電波にて同技術を運用するB-CAS社および同カードに対する批判もある。
独占事業に対する批判
- テレビ放送の日本のほぼ全世帯での視聴の可・不可を物理的に制御可能であるようなB-CASおよび同カードが、一民間企業であるB-CAS社によって独占的に管理されていることに対し、独占禁止法や個人情報保護上の問題、さらには報道の自由の一部である放送の自由の反射的対象である「放送の視聴の自由」をも侵害しかねないと批判する向きもある。
- しかし、特許権の管理事業は独占禁止法の適用除外となっており、これにより違反にはならないという意見もある。が、仮のその主張を通してしまうと「適当な理由を口実に市場を囲い込んだ上で、本来なら経済的価値のない特許の利用を談合により強制する」といった形の脱法行為がまかり通る事態となるため、許容される法的根拠はないと考えられる。(ただし、このように悪質な囲い込み事例は他に存在せず、この種の脱法行為に対する判例等がないため、司法判断が待たれる状態でもある)
- 事実上、日本においてデジタル放送受信機を製造・販売するにはB-CASカード発行審査に合格することが必須条件となる。結果的にはB-CAS社が一家電製品の市場を囲い込む事が可能となり(実際に、受信機を製造しているのは限られたメーカーであるため「可能性」ではなく「事例」となっている)、独占禁止法違反の疑いが指摘されている。
- しかし、B-CAS社の事業ジャンルは一家電製品製造ではなく限定受信システム事業であるので、この指摘は的を得ていないという意見もある。が、この主張を認めるなら「結果的に特定市場を囲い込んでしまったが、本来は別の事業によるものであるので正当だ」とする悪質な主張を許し、独禁法の趣旨を骨抜きにされかねないため、やはり許容される根拠はないと考えられる。
- また、信頼できるメーカー以外チューナーを提供しないとする取り決めが行われているとも言われ、やはり独占禁止法違反の疑いが指摘されている。更には正式な認証プロセスすら用意されていないなど、恣意的な運用を疑われてもやむを得ない面があり、国内外から批判が絶えない状況である[2]。
公益性を根拠とする批判
- B-CAS社にNHKが出資していること、B-CASカードが無いとNHKの番組を視聴できないことについても公共放送の中立性との兼ね合いから批判する向きもある。
- 地上放送・BS放送・CS110度放送といった日本の放送全てといっても過言ではないインフラにおいて有料放送の管理・著作権保護の実現を建前とした全面採用が行われ、かつ広範に個人情報を収集し、全ての国民に対し少なからぬ影響を与える非常に公益性の高い事業を行う企業にも関わらず、株式を非公開とし資産状況・収支状況・役員報酬・諸々のライセンス供与で徴収している費用・さらには活動実態や本店所在地すら公開しておらず、同社の姿勢は公益企業らしからぬ徹底した秘密主義であるとして批判する向きもある。
- デジタル化の投資だけで経営を揺るがしかねない地方放送局に対し、放送の本質とは無関係なB-CAS関連への投資まで強要するのはいかがなものかと批判する向きもある[3]
- 公共財である電波を大規模に占有し営業する放送局の特徴から、いわゆる公道(電波帯域)をB-CAS方式で暗号化し囲い込むのはいかがなものかと批判する向きもある。
- 諸外国では、公共性の高い地上放送・無料放送をDRM等にて暗号化している事例は皆無であり、B-CASによる全面的な暗号放送は世界的な非常識であるとして批判する向きもある。
- B-CASを利用したコピー制御の導入を一番強く要請したのは「ハリウッドなどの映画業界」とされているが、ハリウッドを抱えるアメリカ合衆国において暗号放送は予定すらされておらず、導入理由について疑問の声が上げられているとともに、真の導入理由は別にあるのではないかと勘繰る向きもある。
- ただし、アメリカ合衆国においても不正コピーは問題となっており、特に影響が大きいインターネットへの動画流出は阻止するため「ブロードキャストフラグ」と呼ばれるコピー保護技術の導入が進んでいた。ただし、これは日本のコピーワンスとは違って暗号が抱き合わされたものではなく、また、DVD-Rなどの物理媒体への録画やダビングは自由といった極めて軽いコピー制御である。
- しかし裁判での争いの結果、このブロードキャストフラグによる軽い制限ですら違法であるとされ、行政当局より排除命令を受ける結果となった。
- また、この「ブロードキャストフラグ」はメーカー間の紳士協定によるフラグであり、B-CAS暗号のように公共の電波を私物化してしまうものでもなければ、特定企業に莫大な利益がもたらされるなど利権化する技術ではないことに留意する必要がある。
運用方法などに関する批判
- B-CASカードの所有権は株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズにあるとされる事から、デジタル放送対応の受信機器の売買に伴う煩雑さなどについても批判する向きもある。(後述:B-CASカードの所有権問題)
- BSデジタル放送・CS110度デジタル放送・地上デジタル放送を視聴するためには否応無くB-CASカードが必要であり、受信機は同カードの発行審査を受け合格するようコンテンツ保護機能を実装しなければならないことから、審査費用・ライセンス費用・更に複雑化する設計による製造コスト増による関連機器の低価格化の阻害や、視聴者に同カードを配布する際のシュリンクラップ契約の妥当性についての批判する向きもある。
- また、「テレビを視聴するためにカードを入れる」という、今までの一般家庭にはなかった概念とシステムのために、普及に従ってさまざまな混乱も予想される。一例として、カードの汚損やエラー、カードを破損・紛失した場合等の再発行手続きの煩雑さ、および空き巣などによるカードの盗難などが考えられ、さらに紛失・盗難時の責任は不正利用による損害も含め視聴者(B-CASにユーザ登録された者)に帰属するとされるが、これらの問題は現状ではほとんど議論されていない。
- また、上記B-CASカード発行審査は汎用バスに生のデジタルデータを流すことを禁じているが、一般的な視聴スタイルとなりつつあるパソコンでのテレビ視聴や録画、それらの製品開発を著しく阻害しているとの指摘もある。これが原因で完全デジタル化後、現状のアナログ放送のキャプチャ環境と同等な環境を確保すべく、不正な製品(あくまでもARIB技術資料の要件に対して不正ということであり、技術資料を強制することの正当性が否定されるなら、正当な製品である)が多く出回る可能性も高いと考えられる。
- オープンアーキテクチャを採用するパソコンは、低層レイヤーを安価な汎用ハードウェアで組み合わせ機能実現をソフトウェアが担うため、ハードウェア同士を連絡する汎用バスには当然生データが流れる。故に汎用バスに生データを流させない審査条件はパソコンの本質を否定することに繋がり、実現には非常な困難を伴うか不可能である。現在製品化されているデジタル放送対応パソコンでは大規模な専用ハードウェアを搭載する形を取っており、パソコンとして受信や録画を実現しているとは到底言い難い。それ故かアプリケーションごとに操作体系が違うなど使い手には理解に苦しむ仕様となり、また構造的に高額商品となるため、消費者に受け入れられているとは考えられない状況にある。
- 一方で、B-CAS等のDRMが無いワンセグ放送対応としたPC機器は出始めている。であるが、ワンセグまでB-CAS暗号で囲い込まれることへの警戒感のためか過剰なまでに著作権保護を意識した仕様となっており、利便性はアナログ放送の視聴環境とは比較にならないほど低い。また、画質面においても遠く及ばない状態である。(仕様自体がフレーム数や解像度の面で劣っているので当然である)
- ただ、ワンセグ放送の圧縮方式は画質をより良くしようとH.264が採用され、モバイル時の受信安定性は勝るものであるが、狭い帯域のためアナログ放送との画質差は埋め難い状態である。それでも「B-CASの存在しないデジタルチューナ」は非常に安価であり、発売と同時に欠品になるなど、それなりに支持される状態である。
B-CASカードの所有権とシュリンクラップ契約
シュリンクラップ契約にて締結される使用許諾契約約款では、B-CASカードの所有権は株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズに帰属するとされるが、デジタル放送受信機購入時にB-CASカードの存在や所有権について販売店から説明を受けることは極めて希であり、数々の問題点が指摘されている。
- 受信機売買契約時にB-CASカードは民法192条によって即時取得されると解釈し、シュリンクラップ開封で契約成立するまでの間、所有権は占有者である受信機購入者にあるのではないか。よって、未開封のB-CASカードに対し同社は使用許諾約款を根拠に権利主張することはできないのではないかとする見解がある。
- B-CASカードの所有権は常に同社にあると解釈するが、受信機購入者は売買契約締結前にB-CASカードやその所有権について知ることは困難であり、売買契約の錯誤を主張し販売店相手に争えるのではないかとの見解もある。
- 中古受信機の購入に伴ったB-CASカードの入手や販売店が受信機設置を行い引き渡した等、購入者がシュリンクラップを開封することなく占有を開始した場合、B-CAS社との契約は成立しておらずカードの即時取得となるのではないかとする見解もある。
- シュリンクラップ契約自体が無効であるとする立場から使用許諾契約約款の全部が無効であるとする向きもあるが、シュリンクラップ契約の法的有効性は司法判断が待たれる状態である。また、シュリンクラップ契約は慣習的にソフトウェアの著作物で利用されており、B-CASカードに適用することは商慣習の面からも合理的と言えないとの指摘もある。
- 同社は使用許諾契約約款に記される所有権を根拠に、インターネットオークション等によるカード転売には厳しい対応を行っている事が推察されるが、これらの指摘が正しいとするなら甚だ不当な要求であり、さらには業務妨害ではないかとの批判がある。
B-CASと個人情報
個人情報保護の観点からもB-CASに対し少なからず批判がある。
- B-CASのユーザー登録は全世帯が対象になりうる規模であり、単体の個人情報データベースとしては国内最大となることが予想され、これを一民間企業が独占的に管理することについて批判する向きがある(同等のデータベースを保有していると考えられるNHKは、国会の影響を強く受ける特殊法人である)。
- 大規模な個人情報を取り扱う企業であるB-CAS社が、プライバシーマークすら取得していないことを問題視する向きもある。
- 約款上、ユーザー登録が強制されていた件について批判する向きもある。現在は任意登録とされているが、NHKや有料放送との契約の際は自動的にB-CASへも連絡され登録されることから、強制登録同然であると批判する向きもある。
- B-CASにユーザー登録する際、他企業への個人情報提供を同意を求められることについて批判する向きもある。同意しなければNHKにも連絡されないためBSデジタル放送におけるNHKのテロップが消えない等の不都合を生じ、一方、同意した場合は視聴を望まない有料放送事業者からも視聴案内等を受けることから問題視する声もある。
- B-CASが個人情報を提供する先としている企業は2006年4月現在28社にも及び、今後も追加される方向であることから、その必要性や妥当性が疑問視されている。
B-CASとコピーワンス
デジタル放送のコピー制御として採用され、一般的に「コピーワンス」と呼ばれるB-CAS方式のDRMは、これ以上厳しい運用は例外無しの録画禁止しか存在しないと指摘されるほどの重DRMである。(コピーフリー以外にも利用者の利便に配慮して支持を得られてるDRMならいくらでもあるが、B-CAS方式は利用者の利便はほとんど考慮されていない。これはB-CAS方式DRMが集中砲火の如き批判を浴びてる最大要因でもある。) さらには機器の不具合により録画情報を失う事故が多く、また安価なため録画メディアでは最も出荷数の多いDVD-Rでは単純な録画すら禁止されるなど視聴者が目に見える形で大きな不利益を蒙ることもあり、各方面から批判を浴びている状態である。
利権化への批判
- コピーワンスはコピー制御フラグ(CCI)でありB-CASの利用は限定受信・暗号技術であるため、両者には直接的関連性がなく、同時適用される必然性はないと指摘する向きもある。事実、NHKの災害報道はB-CAS方式ではない(B-CASカードの不要な)コピーワンスで放送を行っている。
- 著作権保護を建前としているが、著作権の主張できない報道番組などを含め、一律にB-CAS方式のDRMが適用されていることを批判する向きもある。仮に権利者がコピーワンス以外で放送したいと主張しても、それが不可能であることを問題視する向きもある(例えば、テレビでコマーシャルを放送するスポンサーの中には、自社の広告がコピーワンスで放送される事を望まない企業も実際に存在する。また、視聴者から寄せられたビデオ映像などが番組で紹介される場合があるが、実際には、その視聴者自身がコピーワンスを望んでいるとは限らない)。
- デジタル放送・それに伴うコピーワンス放送は全国で実施されることが決定しており、併せて運用されるDRMによりB-CAS社は日本全国津々浦々から確実な定期収入を得ることから、同社が利権化するのではないかと批判する向きもある。
- B-CASを利用しない純粋なコピーワンス(CCIのみのDRM)とした場合、暗号技術のような特許に囲い込まれた技術は利用しなくても実現できると見られ、不必要な組織の利権化は排除できるとの指摘もある。
- 消費者の激しい批判を浴び、相次いで廃止に追い込まれたコピーコントロールCD(CCCD)を引き合いに出し、「CCCDは買わないことで消費者が拒否の意思を示すことが可能であった。一方B-CAS方式のDRMは公共性の高いテレビ放送を質に取っており(アナログ放送は停止されるため)、非常に悪質である」と批判する向きもある。
- ただ、近年は、インターネットなどテレビ放送以外のメディアも人気が高く、テレビ放送全体の視聴率低下などが問題になっている。仮に、現状のB-CAS方式によるDRMがこのまま続くようであれば、アナログ放送が終了する2011年(平成23年)7月24日を境に、日本全国で視聴者のテレビ離れに拍車がかかる可能性があると指摘され、本末転倒であるとする向きもある。
- B-CAS方式のDRMはもちろん、CCIも採用していなかったCS110度のハイビジョン無料放送局イーピー放送が突如B-CAS方式による放送となったことに取り上げ、その事情を疑問視する向きもある。
- アナログ放送には存在せず、かつ筋違いな負担とも揶揄される「B-CAS方式のDRMに掛かる費用」を誰が負担させられているかについても様々な議論がある。視聴者から少なからず反発を招くほど厳しい割には海賊版防止の実効性に疑問がある同技術に支払われる費用を、著作権料の減額などで著作権者に負担させているなら迷惑な押し売りであり、放映との抱き合わせ販売である。スポンサーに負担させているとするなら商品価格を通じて間接的に視聴者の負担となり、被害を受ける側に負担させることに繋がり筋違いな負担である。放送局が身銭を切って負担しているのであれば問題ないように考えられるが、結果的に従業員の報酬が減額される可能性があり、番組の質低下に繋がる問題である。費用捻出のためCM枠を増やすようなことがあれば、これも番組の質低下といえ本末転倒である。崇高な目的を掲げるなら、営利目的ではなく手弁当持参のボランティアで運営しろと揶揄する向きもある。
- 3波共用の赤CASカードと地上波専用の青CASカードの再発行費用が同じ3000円であることを疑問視する向きもある。赤CASの場合は有料放送が前提であり高いコストが予想されるが、青CASは低コストを目的としたものであり、同価格であることの正当な理由が見当たらないためである。
- メーカー向けB-CASカード供給価格(当然非公開である)の問題を指摘する向きもある。B-CASのシステムは有料放送の視聴管理を前提としており、端末たるB-CASカードの供給価格は高額と考えられるが、現実には専らコピーワンス実現に用いられコストの低い運用となっている。故にB-CASカード発行枚数分全てを管理できる設備投資を行っているとは考えづらく、余剰に受け取ったB-CASカード発行費用がどこに消えているのか勘繰る向きもある。
- これらのことから、B-CAS方式を用いた(B-CAS社に金銭が流れる形での)著作権保護に対しては批判や疑問の声が絶えず、さまざまな憶測が飛び交う状態である。
技術的問題への批判
技術面からコピーワンスを批判する向きもある。
- 海賊版の防止が目的であるとされているが、そのような効果は期待できないと指摘する向きもある。海賊版は往々にして画質が低いことから、海賊版製造業者はコピー制御の解除が容易なアナログコピーを利用するとの見解からである(注:アナログコピーにおいてもDVD並みの画質であり、決して低画質ではない)。
- インターネットにデジタル放送の生データ(MPEG2-TS)が流出していることを指摘する向きもある。B-CAS方式によるDRMが完全に機能しているならば、そのようなものは放送局以外に存在しないはずであり、B-CAS方式の著作権保護には何らかの欠陥が推測されるためである。
- 時代遅れの規制手段であると批判する向きもある。インターネットを通じた海賊行為の特徴として瞬時に数多のコピーが作られることを挙げ、世界中のたった1人に破られただけでも全てが無意味となる著作権保護の費用対効果を疑問視する見解からである(B-CAS方式の全国適用の理由は「1社でも抜け落ちるとそこからコピーが出回る」とされているため、これは放送局の主張とも一致する指摘である)。
- B-CASカードそのものを悪用した(不正機器にB-CASカードを挿入した)不正コピーには対応できない可能性を指摘する向きもある。このようなことが可能であれば、B-CAS方式のように暗号技術を併用せずともCCIのみで十分とされるが、現時点では不明である。
- B-CAS方式による放送の結果として、悪意による著作権侵害の抑止効果は期待できない一方、著作権法で認められた私的利用のみを厳しく制限していると批判する向きもある。視聴者のみならず放送局にも掛かるB-CAS方式の多大なコストを正当化できないと批判する向きもある。
- また、著作権法上問題なしとされている私的複製を、放送業界だけで決めたルール(私法とも揶揄される)で取り締まることに対し、問題視する向きもある。
- さらには、本来は問題のない私的複製を行うためにコピーワンス制御を解除してしまうと、これは違法行為となってしまうことを問題視する向きもある。どこにも存在しなかった著作権侵害を、コピーワンス制御によって作り出してしまう構造になるためである。
- コンポジット端子やS端子など、旧来のアナログ端子にまでコピー制御信号が載せられていることを批判する向きもある。これもコピーワンス導入の口実と矛盾することに加え、DVDレコーダー等と並べて公然と市販されている機材で制御信号を除去できることから「正直にルールを守るものだけがバカを見る」状態からである。
- 制御信号除去に関わる半導体チップを供給しているとして、B-CAS社のメーカー系株主を批判する向きもある。B-CAS側では著作権保護で収益を上げる反面、著作権侵害でも収益を上げているとされ、まるで武器商人だと揶揄する向きもある。(ただし、広く市場に供給されている一般的なNTSC処理部品などについては、利用目的によって供給先を制限することがむしろ不当な商行為とも考えられるとする向きもある。が、アナログレコーダーの高級機が絶滅に近い現在、これらを対象としたTBC等のデジタル補正回路がコピーガード除去以外のどのような目的に使われるのかは議論を呼ぶ問題でもある。)
- また、コピーガード除去装置が広く普及したのはコピーワンス実施以降であることを問題視する向きもある。もともとはマニア向け商品であり大衆たる消費者はレンタルビデオやセルビデオ、レンタルDVDやセルDVDを気軽に複製する手段はなく、パッケージ品の安易なコピーは防止できていたと考えられるが、同装置が広く普及した結果、簡単にコピーされる状態となってしまったためである。また、同装置の製造企業に大きな利益をもたらしたのはコピーワンス実施であると指摘する向きもある。
- 日本において私的利用の複製は著作権主張の例外とされ、著作権者・隣接権者が阻止することは認められていない。一方、フェアユース規定のような強制力を伴ったものでもないため、行き過ぎた著作権保護をビジネスにする者がいると批判する向きもある。
運用方法などに対する批判
誤解を招きやすい広報内容や、厳しすぎる運用ルールの面でも少なからぬ批判を受けている。 B-CAS社は実務者としてカードの発行や暗号運用など業務委託を受けて実施する立場であるが、コピーワンス実施で少なからぬ利益に与ることはほぼ明白であり、同社を批判する声は少なくない。
- 一般の人がニュースなどでインタビューに答えたり、特集などで取材を受ける事もあるだろう。また、NHKの「のど自慢」や朝日放送の「探偵!ナイトスクープ」、フジテレビの「クイズ$ミリオネア」など、人気番組に視聴者が出演する場合があるが、例えば、自分や家族、あるいは親族、親しい友人などが登場するシーンを、ハイビジョンの高精細映像のままパソコンで一括管理したいと思っても、現状のB-CAS方式によるDRMのもとでは、そんな思いは叶わない。肖像権は出演者にあるのに、出演者本人や家族までもが、趣味における保存や編集に対しても著しく制限を受ける事になるので、「がんじがらめの規制はおかしい!」と、反発の声もある。(出演者が著作権を持っているとは限らないと指摘する向きもある。ただし著作権と比べて肖像権が軽視される権利ではない。)
- 本来「コピーワンス」(通称:コピワン)は、「一世代のみ複製許可」とするDRM運用方法の1つであるが、現在はもっぱらB-CAS方式によるDRMの代名詞と認識されている現実がある。これには周知活動や広報内容が少なからず影響していると考えられ、確信犯的に消費者の誤解を狙っているとの批判がある。(広報については、主にJEITAやD-paが行っている。また運用方式を定めるのはD-paであり、電波産業会(ARIB)が審査と配布を行っている。)
- B-CAS方式によるDRMがコピーワンスとされる根拠は「放送ストリームのCCIにコピーワンスフラグを立てる」ことである。受信機はこの情報に基づき、録画されたデータを複製として扱い、「コピー禁止」フラグを立てる。また、コピー禁止とすることが出来ない場合(著作権保護に対応しないなど)は、録画を許可しない(但し、Windows3.1の時代に発売された旧式のビデオキャプチャーボードなど、年式の古いデジタル映像機器の場合は、コピー制御信号そのものが認識出来ない製品が存在するので、コピー禁止であるにも関わらず録画が可能な場合がある)。
- よって、デジタル放送で要求されるルールの原則は「録画禁止」である。リムーバブルメディアの場合は、媒体を規定する各団体からの申請に基づき認可される手順となっている。例えばDVDに録画する場合にはDVDフォーラムからの申請に基づき、「CPRMに対応する」「VRモードで記録する」の両方、または「旧世代のアナログ方式で記録する」という条件を満たす場合に限って、例外的に録画が許可されるに過ぎない。なお現状はこのほか、Blue-Ray Disc、HD-DVD、SDメモリーカード、メモリースティックなどが認可されている状態であるが、現在、もっとも普及している「(CPRM非対応の)DVD-Rによる録画」は禁止しており、コピーワンス規制による不満の要因となっている。
- 一部にはデジタル放送のコピー制御運用そのものとCPRMなどの一部媒体のDRM方式を混同されて批判されているとする向きがあるが、混乱を招く広報を行う側に少なからず問題があると考えられる。
- 「コピーワンス規制」の実態を正直に周知すれば視聴者の強い反発を受けることが確実であるために、誤解を招く表現である「コピーワンス」を積極的に用い、実態を偽っているのではないかとして批判する向きもある。
- 放送業界各社は、「番組の録画とは、放送局側にあるマスターをコピーする事であり、“コピーワンス”と呼称することに何ら問題はない!」と主張している。
- 一方、「コピーワンス」の語感や、一般的に録画はコピーと呼ばないことから、視聴者の多くは「録画物を一世代コピーが可能である」と勘違いするのが当然であり、「不当景品類及び不当表示防止法」で禁止されている不当表示であると考えられる。場合によっては、訴訟問題に発展しかねないとする向きもある。
- VRモードやCPRMの低い互換性、また対応していない機器は全て排除するという基本ルールを問題視する向きもある。DVD再生専用機は廉価なものはもちろんだが、実売価格が10万円以上の高級機でも非対応が主流であり、対応しない場合は再生できない。次世代規格のBlu-ray DiscやHD DVDレコーダでも規格化されておらず、普及率の低い同方式はコストダウンを目指した結果対応されないのが実情であり、結果的にコピーワンス番組は録画物を再生できる環境すら厳しく制限され、消費者に著しい不利益を強いるものとなっている。(一部には再生対応を行っているものもある)
- 録画されたデータはコピー禁止のCCIが付加されるが、別のメディアにコピーした後、元データは逐次消去すること(ムーブと呼ばれる)はコピーではないとされ可能である。が、ムーブに関するルールがあまりにも厳しすぎる(非常識であり非現実的である)として批判する向きもある。
- 特に槍玉に上がっているのは、「ムーブにおける逐次消去(再生可能な情報が60秒以上同時に存在してはならない)を定めたARIB技術資料によるルール」である。メディア不良の可能性などに加え、全てがDRMで構成された複雑な環境でストリーム処理を行うことはエラーリスクが高い反面、エラー補償を行うことを不可能に等しい状態とすることからである。
- ただし、バックアップデータなど一定のエラー補償についての規定も存在している。が、「再生可能な情報が同時に存在してはならないルール」のため再生不可能とすべく更なる暗号を掛けたデータを1つ限り保存可能(バックアップストリームと称される)というものであり、2回以上のエラーには対応できない。また、HDDの容量を2倍消費する上にメーカにとっては難易度が高く対応コストもかかることには変わりなく、一部の機器を除いて実装されていない。
- 現実問題としてムーブ失敗による苦情は殺到しており、レコーダーメーカーを悩ませる最大要因となっている。
- そもそも録画データに対して一定の保護が求められている状況において、ムーブ時に元データを秒単位で消去させる必要性は全くないと批判する向きもある。
- DVD-RW/RAM・D-VHSなど、記録媒体にムーブした場合は、以降のムーブが行えないことを批判する向きもある。これは「メディアからのムーブを許可すれは、複製が可能なセキュリティホールになりかねない」とする放送業界の主張によりARIB技術資料によって規制されているものであるが、極めて非常識な主張であるとする向きもある。また、ムーブ失敗に関する苦情をこれ以上増やしたくないメーカーが実装断念している面もあると考えられる。
- 高解像度の録画物から低解像度の媒体にムーブした場合でも、高解像度のデータは消去しなければならないルールを問題視する向きもある。コピーワンス規制の導入理由として放送局が挙げていた「高画質のハイビジョン映像が…・」と、矛盾しているとする指摘もある。
- コピー制御信号を除去することが著作権法違反となる可能性を問題視する向きもある。私的録画・私的複製はもちろん合法であるが意図した複製防止技術の除去は違法であると判断されるため、コピーワンス規制が権利侵害に繋がる行為を多発させているとして批判する向きもある。(ちなみに複製防止技術の除去が直ちに権利侵害になるわけではない。著作権侵害は親告罪であるためである。)
- 一方、安価であり最も普及しているDVD-Rが、コピーワンス番組を録画できないことを指摘する向きもある。画質を向上させることを名目としたコピーガード除去装置が家電量販店で簡単に入手できる状況となり、一般消費者レベルまでコピー制御の除去が公然化したのは件の苦情が殺到した結果であると指摘する向きもある。
- 現実には遵守不能なまでに厳しい規制により日常的に技術的保護を破られる状況や、規制が利権を生んでみたり、ともすれば権力による弱者いじめにも映りかねないコピーワンス規制を破ることが勧善懲悪的な立場から正当化されかねない(法で禁じられてる以上、法治国家で認められる主張ではないが)状況は、結果的に著作権軽視にも繋がりかねず、より悪質な著作権侵害への誘因になっていると指摘する向きもある。
- 更に、コピーワンス規制は著作権者が望んだものとは限らない(むしろ、著作権者の側からDRM不要論が出る状態)とも指摘されており、B-CAS方式のDRM利用に掛かる負担に加え、消費者からの少なからぬ反発ゆえに守るべき著作権者がコピーワンスの被害者になりかねないと批判する向きもある。
- 放送業界各社に勤める従業員といえども、その人個人的には、B-CAS方式のDRMに反対という考えの者が中にはいるという。
- 日本の著作権法は、親告罪なので、殺人や放火、恐喝、誘拐などの刑法犯罪とは異なり、被害者による告訴がなければ触法行為でも罪に問われる事はない件を指摘する向きもある。例えば、ダビングなどの際にコピー制御信号を除去する事で、デジタル放送を録画したメディアのコピーを作成したり、また、DVDの規格上、本来なら認められていないビデオモードによるコピーワンス番組の録画を、コピー制御信号除去により行ったりしたとしても、それが私的目的の範囲内であれば、著作権者等の告訴を受けることはないと考えられている。家電量販店でデジタルレコーダーの売り場で「画像安定装置」などと称してコピーガード除去装置が公然と併売されている現実もあり、数多くのテレビ番組やコマーシャルなどを集めることを趣味とするマニアに限らず、一般消費者レベルでもデジタル放送の録画用として、制御信号を除去できる装置等が広く普及している事が推測される。
- 型番の古いVHSビデオデッキなど、1990年代までに発売された旧型の製品の中には、制御信号を除去できる装置と同等の働きをしてしまう製品もあると言われている。
- 音楽CDの海賊行為を防止するとして導入され、消費者の猛反発を受け更に深刻な事態に陥ったコピーコントロールCD(CCCD)との類似性を指摘する向きもある。
- 一方で、DRMで保護しつつも緩い規制により支持を集めたiTunesなどに採用されるDRMであるFairPlayと比較し、消費者の立場を無視した厳し過ぎるB-CAS方式によるDRMを批判する向きもある。
- コピーワンスを定めたARIBの運用規定(TR-B14,15)が、標準規格ではなく技術資料に過ぎないことを問題視する向きもある。ARIB標準規格とするには利用者を含めた利害関係者の総意を得ねばならず到底無理であると考えられ、一部の利害関係者が確信犯的に身勝手を技術資料としてねじ込んでいると指摘する向きもある。
- この件には、以下のような指摘もあるが、仮にそうであるなら業界側の広報不足である。
- ARIB自身が規定する標準規格と、D-paなど運用団体で規定されてARIBが審査・交付する運用規格の違いについての認識不足に基づくものだと思われる。双方の規格ともそれぞれの手順に基づいて、同程度の審査を受ける必要があるため、一部の利害関係者が確信犯的に身勝手を技術資料としてねじ込んでいるとの指摘は誤りである。
- この件には、以下のような指摘もあるが、仮にそうであるなら業界側の広報不足である。
- 根本的な話であるが、電波に関わる約束事を決めるARIBがコピーワンスだのEPNだのと録画の方法にまで介入しているのは越権行為であるとして問題視する向きもある。
- これについては、各種規格規定の性格や実際の記述内容、各種団体の位置付けに対しての理解不足に基づくものであるとする向きもあるが、そうであるならやはり広報不足である。
関係機関の動き
相次ぐ批判に対して、行政当局や業界団体などからの動きもある。
- 視聴者からの苦情を受け、監督官庁である総務省の情報通信審議会・第2次中間答申は「2011年の地上デジタル放送の全面移行に向けた受信機の普及に際して大きな障害」「考え方の原点は、複製は私的録画の範囲内である」と批判した上で、「コピーワンスの現行の運用を固定化する必然性はなく、私的利用の範囲で視聴者の利便性を考慮して運用の改善に、関係者が一体で対応することが必要だ」として、関係者には見直しを検討し2005年末までに結論を出すよう指示した。が、現在まで具体的な結論は出されていない。
- 知的財産戦略本部・コンテンツ専門調査会が発表したコンテンツ振興戦略は、「全てのユーザーの利便に一律に重大な影響を与えるもの」と定義し、その設定に関しては「ユーザーやメーカー、関係事業者など幅広い関係者の参加を得、そのプロセスを公開して、透明化を図ることでシステム間の競争を促進。利便性と著作権保護の双方の観点からバランスの取れたシステム策定を促進する」と提案した。これは、バランスを欠き不透明な企業を中心に運用され、消費者の批判を浴びるB-CAS方式のコピーワンスを非難するものであると指摘される。
- 電子情報技術産業協会(JEITA)は、暗号化により出力データは保護するが、コピー回数は無制限(EPN)にするよう提案している。これに対し放送業界は「コピーが可能ではコンテンツホルダーが納得しない」として猛反発している。
- 一方、公共財である電波をDRMで囲い込むことが問題とする向きは、全ての元凶は独占的に必要とされるB-CASでありJEITA案では何の解決にもなっていないと批判的である。B-CAS社の株主のうち家電メーカーはJEITAの会員でもあることから、利害関係を指摘する向きもある。
- JEITA案の対案として放送業界は、現行規定内にある「バックアップストリーム」を用いてムーブ失敗に備えるよう提案している。バックアップストリームとは、同一の録画機器内に録画と同時に1つだけ記録が許されている暗号済データである。いつでも再生可能なDRMによる暗号データとは違い、再生に用いることができないよう更なる暗号化が施されたデータであるが、録画データがムーブ失敗により消失した場合、このバックアップストリームを1度限りデコードし失敗に備えることが可能とするものである。
- しかしバックアップストリームではムーブ失敗を1回しか補償できず、根本的な解決になっていないと批判する向きが多数を占める状況である。また、バックアップストリームの記録はハードディスクの容量を食い潰すばかりか「同一機器で1つしか持てない」など録画データ以上に厳しい制限が行われるものである。「コピーワンスはカジュアルコピーが阻止であり、優秀なクラッカーには突破されることは予想している」とする放送局の主張を取り上げ、カジュアルコピー阻止が目的でそこまでやる必要性が全く理解できないと批判する向きもある。
- デジタル放送を推進する立場である政府関係者からまで「あのようなものを採用するからデジタル放送は使いにくいものになったのだ」との批判が絶えないとする向きもある。
- 2006年08月01日、総務省の情報通信審議会はEPNを指定した上でコピーワンス見直しを指示した。同様の指示は1年も前に同審議会が行っているが放送業界の猛反発により未だに結論が出ていないため、身勝手な放送業界に対し激怒しているのではないかとする向きもある。また、EPN導入となった場合既に売った機器での互換性などは確保されるのか、また、利便性がより低下しないのかを疑問視する向きもある。
- 他方、如何なる犠牲を払ってでも著作権は保護しなければならないとする立場から、コピーワンスやB-CASを批判することに対し批判する向きもあるが、B-CASを支持しなければならない理由を持つ者は限られていると考えられることから、その主張には自身の利害が影響しているのではないかと指摘する向きもある。
暗号(DRM)放送の是非を巡って
B-CAS方式によるDRMに限った話ではないが、暗号通信はその性質上、第三者が監視することは困難である。
暗号は、破ろうとすれば、優秀な技術者等によって破られる可能性があるが、B-CASのように著作権保護を標榜する暗号を破った場合、技術的保護の解除を禁じた著作権法違反に問われる可能性がある。デジタルミレニアム著作権法(DMCA)においてもDRM破りは禁じており、歴史的な悪法と批判されるものでもある。また、DMCA施行後は米国においてもDRMを盾に独禁法違反逃れを始めとした様々な形での悪用が絶えず非難される状況である。昨今では消費者の権利意識とともに悪用されることを問題視しDRM自体に対する反対運動が起こっている。
放送に暗号を用いた場合の問題可能性
これらはあくまでも技術的可能性の話であり架空の話である。テレビ放送で暗号を悪用すると、多くの視聴者から放送業界全体の根幹に関わるほどの反発を招くのは必至であり、B-CAS社や報道各局がDRMを悪用した(もしくはする予定がある)ことがあるということではないということを理解した上で、以下の説明を読んでいただきたい。
- 極論となるが、B-CAS方式の暗号放送下にてB-CAS社が全く信用できない、または放送局が信用できないと仮定した場合、第四の権力であるマスコミの監視や暴走を止める手段を失うことに繋がりかねないとされる。
- これは国家の存亡にも関わりかねない波乱要因になると考え問題視する向きもあるが、公的な場で議論された様子はない。
- また、放送業界の「著作権を口実にすれば何だって許される」とする傲慢な風潮を危険視し、使い方によっては凶器になりかねない暗号による放送を安易に許すべきではないと考える向きもある。また、著作権法上問題のない引用に対し、著作権を主張する事例もあり問題視されている。
偏向報道を、証拠を残さず行える可能性
- 誰でも放送内容を監視できる場合、偏向報道を行えば世界中の誰かに録画され、その録画物は証拠となり批判を免れない。であるがDRMにより暗号化され監視できない場合は局側が意図しない形で証拠を残すことが難しく、偏向報道の歯止めを失うとする説である。
- しかし、目撃証言でも証拠になるので杞憂に過ぎないと指摘する向きもある。が、莫大な個人情報を元にターゲットを厳選することが可能なB-CAS社の場合、杞憂では済まされないと考えられる。
偏向報道を、ピンポイントで行われる可能性
- より確実に悪意ある報道で世論形成などの目的をを達成するためには、「ターゲットだけに悪意報道を見せる」、もしくは「ターゲットだけには悪意報道を見せない」とする方が賢いと考えられる。
- DRMで囲い込んでしまえば経路は全て暗号であり誰かに監視される心配はなく、悪意のある報道を見せる相手を的確に選択すれば最大限の効果を得つつ批判を受ける心配もしなくて済むと考えられる。
- ターゲット選定にあたってはB-CASのユーザー登録による巨大な個人情報データベースがあり、これを悪用することで十分に可能と考えられる。
悪意を「テロップ」で見せられる可能性
- 「登録されていないB-CAS IDに対しては、連絡をするようテロップで表示している」NHKの実例があることから、容易に想像可能な悪用である。
周辺国から危険視される可能性
- 隣国の公共性の高い放送(もっぱら地上放送)で何が放送されているかは近隣諸国とっては興味の対象であり、自国の安全保障にも関わるので当然の話である(日本においても朝鮮中央放送等の報道内容は頻繁に取り上げられる)。しかしながら、B-CASというシステムの実際は暗号放送そのものであり、視聴には「B-CASカード」が必要である。ところがB-CASカードは国外持ち出しを禁じており、近隣各国は日本で何が放送されているのかを現実的に知る術を失うこととなる(※現実にはB-CASの約款も他の国家には無視されると予想されるが、著作権保護を口実とした厳格な送信制御などもあり、アナログ放送傍受のように容易ではないことが予想される)。そのため、周辺国には日本のテレビ番組を見ることができず、何を放送しているか分からない国に対して周辺国が疑心暗鬼になってしまうのは当然と考えられるとする向きもある。
- 反面、日本には各国の大使館やそれに代わるものがあり、これは考え過ぎといわざるをえないとする向きもあるが、大使館等では人員も限られており、B-CASの存在が監視活動に対し大きな障壁となることは言うまでもない。
- 上記のことから、日本に対して敵対意識を持つ国から、B-CASの存在を盾に知らないふりをして攻撃の口実にされてしまうことも懸念されかねない。特に歴史的経緯から日本を危険視している周辺国を抱える我が国にとって、B-CASによる囲い込みは安全保障にすら影響を及ぼしかねない重大な問題であると考える向きもある。
- また、何者かが意図的にB-CASに関わる技術情報を諸外国に漏らすような事があれば、傍受以上の問題が発生する可能性を指摘する向きもある。B-CASに関わる技術情報は厳重に管理されているとはいえ、管理しているのは人間である限り、決して万全とは言えない。近年、個人情報などが外部へ流出するなどのトラブルも相次いでいるので、B-CASに関わる技術情報が諸外国を含む外部へ流出する可能性も決してゼロではない。さらに、国外持ち出しを禁じているB-CASカードを、諸外国へ密輸する業者が現れる可能性も絶対に無いとは言い切れない。
- B-CASに掛かる企業秘密が国外に流出した場合、同カードとともに解析され、ひいては「タダ見チューナ」のような「タダ見カード」のようなものを開発されかねないとする向きもある。外国には日本の法権力が及ばず、ましてB-CAS社との約款が尊重されることも考えられないため、解析に掛かる摘発リスクは存在せず安心して解析できると考えられる。B-CAS方式に対する視聴者の不満の高さゆえか、B-CASに掛かる不正商品はネットオークションでも人気商品であり、市場性を持つものと指摘する向きもある。市場性の大きさ故、利益目的で解析を試みるものは少なからず存在すると見られ、結果的には無料放送を囲い込むために行ったコピーワンス規制が有料放送の屋台骨すら揺るがしかねないと指摘する向きもある。
これらはいずれ問題になると考えられうる事例だが、現時点で議論されている様子はあまりない。これらの懸念を払拭し、諸外国からの猜疑心を低減するためにも、公共性の高い報道番組をDRMなどにて暗号化することは避けるべきだという意見もある。 仮に、放送をDRMで暗号化することが禁じられていれば常に衆人環視による抑止力が働くと考えられ、放送局が暴挙に及ぶことは相応の覚悟が必要となる。
B-CASとNHK受信料問題
数々のコストが掛かるDRMや独占による受信機価格の高止まり、更にはコピーワンスへの不満からその存在に対して否定的な向きが多いB-CASであるが、NHKの受信料問題が絡むと肯定する向きもある。
- NHK受信料は特殊な負担金とされているが、事実上は視聴料の性質を持つものである。現在は数々の問題が噴出し、かつ定義の曖昧な公共放送から有料放送へと移行すべきと指摘する向きもある。
- 昨今相次ぐ受信料不払いの影響から、受信料を払う者も払わない者も同じようにNHKが視聴できることから不公平感が高まっており、NHKはB-CASカードにより視聴制限を行うべきとする向きもある。
- これに対しNHKは、B-CASを活用した有料化(契約者には視聴させない形)には猛反発している。根拠は「公共性が失われる」「経済弱者に対し情報格差を生じさせる」としているが、最近は一部放送(衛星放送)に限って有料放送とすることを容認する姿勢も見せている。
- 一方、不払い者への罰則適用の議論も進められており、これに対してはNHKは積極的な姿勢である。罰則適用はNHK受信料を払わなければ民放も見せないことを意味するが、前述の主張(口実)とは著しく矛盾するとして批判されている。
- 市場にはB-CASのあるNHKも受信可能なチューナーと、無料民放のみ受信可能なB-CAS無しチューナーが併売されることが前提であるとする向きもある。NHKへのB-CAS活用を推進する立場でも、全ての受信機をB-CASで囲い込むことは容認すべきではないと考えている向きが多いようである。
- 仮に、NHKはB-CAS必須とした上でB-CAS非対応チューナが広く売られるようなことになれば、今以上にNHK契約者は減少することが予想され、NHKという組織の存続にも関わりかねないことから実現までには紆余曲折が多いと指摘する向きもある。
事業所の所在に関して
以上のような批判が非常に多いためか、本社・その他の事業所の所在地は公式サイト上に一切書かれていなかったが、掲載しないこと自体が批判の対象となってしまい、登記上の本店所在地に限り最近(2006年10月11日とみられる)掲載された。[4]
- 批判を受けなければ掲載しないようでは公益事業を行う者として相応しくないとは考えられ、また、登記上本店というものは同地で業務が行われていることを保証するものではない。(これはB-CASに限ったものではない)
- しかし、同社の本店所在地は批判的なサイトや掲示板などで頻繁に掲載されており、公然の秘密化した情報を掲載したに過ぎず、新たな情報ではないことに留意する必要がある。
- 未だに暴露されていない情報(代表電話番号・本店以外の事業所所在地・売上高・従業員数など、一般的な企業は公開している情報)は、一切掲載されていない。
- 看板は掲げられているものの、同地には事業の実体が無い可能性は十分考えられる(B-CAS社からの郵便物の消印や料金後納印は、登記上本店とは全く別地域の郵便局のものである)。
- 所在地は公式サイトには書かれたが、B-CASカードや使用許諾契約約款など、テレビ購入者が確認できる書類等には一切記されていないことは相変わらずと考えられる(連絡先は私書箱・またはカスタマーセンターになっている)。
- 大衆たる消費者が、いちいちB-CAS社の公式サイトを訪問して所在を確かめる必要に迫られる状況は早々に是正すべきである。契約において双方が自身の住所を明らかにするのは当然であることから、B-CASカード使用許諾契約の正常性を疑問視する向きもある。
- 真っ当な企業であれば上場・非上場・企業規模の大小などに関係無く、本店所在地を(更に事業所の所在地も)表示するのが当然であるが、まるでブラック企業のような所在地の隠蔽は、B-CAS社の企業倫理が問われる問題でもある。
脚注
関連項目
- 総務省
- 限定受信システム
- ICカード
- デジタルテレビ (ISDB)
- 地上デジタルテレビジョン放送
- ワンセグ
- 衛星放送
- コピーガード
- DVDレコーダー
- D-VHS
- ブルーレイディスク
- HD DVD
- 独占禁止法
- 個人情報保護法
- 著作権
- 著作権法
- 私的録音録画補償金制度
- フェアユース
- BRO
- テレビ離れ
- 既得権益
外部リンク
- 公式サイト(ウェブサイト上でもユーザー登録ができる)
- 放送倫理・番組向上機構(BPO)
- 電波法
- 放送法
- 有線テレビジョン放送法