FUJIC
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
FUJICは、日本で初めて開発に成功した電子式コンピュータ(1956年完成)。
日本での真空管を使用したコンピュータは製品として販売された例は無く、FUJIC以外に完成を見た例としては東京大学と東芝の共同開発によるTACしかない(1959年完成)。 また、同時期の他のコンピュータとしては、通産省工業技術院電気試験所(現在の産業技術総合研究所)が日本初のデジタル式コンピュータとしてリレー式のETL Mark Iを1952年に、日本初のトランジスタ・コンピュータとして ETL Mark III を1956年にそれぞれ完成させている。
目次 |
[編集] 開発の経緯
富士写真フイルムに勤務していた岡崎文次によって、カメラレンズの設計用に開発された。
開発費用は会社から出ていたものの、設計・部品調達などはほぼ岡崎独力で行われた。ただし最終的な組み上げの段階では数人のスタッフに手伝ってもらったらしい。
[編集] システム構成
- 真空管:2極管約500本、3極管など約1200本
- メインメモリ:水銀遅延管、容量255word(1word=33bit)
- 入力装置:カードリーダ
- 出力装置:電動タイプライター
- 動作周波数:30kHz。加算時間は0.1ms、乗算時間は1.6ms。
FUJICはストアドプログラム方式(プログラム内蔵方式)で動作しており、プログラムは3アドレス方式の機械語でパンチカードにコーディングする。用意されている命令は17種類であった。
[編集] FUJICの生涯
完成したFUJICはさっそくレンズ設計の現場に投入された。FUJICの登場により、計算速度は人手でやっていたときに比べ1000~2000倍ほど上昇したという。
しかし完成から2年半後、会社がレンズの自主設計中止を決定。これにより富士写真フイルムでのFUJICの任務は終了し、その後は早稲田大学に寄贈された。
現在は国立科学博物館が所蔵している。
[編集] 参考文献
- 遠藤諭『計算機屋かく戦えり』アスキー出版局 1996 ISBN 4-7561-0607-2