かばん語
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かばん語(portmanteau)とは、2語以上の単語の音と意味を組み合わせて作られた語である。ただし単にくっつけた合成語ではなく、完全に1つの単語のような形となったものを指す。別名フランケン語(frankenword:フランケンシュタインから)。言語学においては、混成語(blend)と呼ばれる。
[編集] 語源
この単語は、『鏡の国のアリス』の作中において、旅行カバンと関連付ける形で作成された、ルイス・キャロルによる造語である。キャロルはハンプティ・ダンプティに以下の様に発言させている。「さよう、粘滑(slithy)とは、滑らかで粘っこい(lithe and slimy)様子じゃ。この言葉は
英語においては、 これらの単語を示す本来の用語は(1990年代初頭に出版された辞書に記載されている通り)“Portmanteau word”であったが、かばん語という用語と、かばん語が指し示す用語の形式が広く一般に用いられるようになり、この用語は単純に“Portmanteau”と省略されるようになった。この形式の旅行カバンが廃れたことにより、現在の英語で“Portmanteau”という用語が本来の意味で使用される事は滅多にない。
ジェイムズ・ジョイスは『フィネガンズ・ウェイク』において、広くかばん語を使用した。多くのブランド名や登録商標、イニシアティヴは、それらの言葉を使用する企業および組織の名前と同様に、かばん語である。例を挙げれば、「ウィキペディア」は「ウィキ」と「エンサイクロペディア(百科事典)」から作られたかばん語であり、ウィキペディアの姉妹プロジェクトである「ウィクショナリー」は、「ウィキ」と「ディクショナリー(辞書)」から作られたかばん語である。
日本語でかなり古くから用いられた例として、「とらまえる」(「とらえる」と「つかまえる」の合成)がある。
[編集] 構成
ほぼ全てのかばん語は、以下の手法の内のいずれかにより作成される。
- 上記の例「粘滑」の様に、原型となる各単語成分の発音の一部が、各単語の意味のほとんどを保存したまま、“創造的”手法により混合される。この手法はルイス・キャロルの好むところであり、他の手法はほとんど使用していない。
- 「ブレックファスト(breakfast、朝食)」と「ランチ(lunch、昼食)」で「ブランチ(brunch)」のように、ある単語の末尾が他の単語の冒頭へ連結される。多くの場合、2つの単語成分の境界に位置する文字や発音は共通である(例:「スモーク(smoke、煙)」+「フォッグ(fog、霧)」=「スモッグ(smog)」)。この手法はかばん語を作成する最も基本的な手法である。
- 両方の単語成分が共通する文字や発音の配列を有している。作成されるかばん語は、第1の単語の最初の部分と共通部分、第2の単語の最後の部分から構成される。この手法で生成されるかばん語は少数である。例を挙げれば、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのアルバムにより知られた単語「カリフォルニケイション(Californication)」は、「カリフォルニア(California)」と「フォルニケイション(fornication、姦通)」を組み合わせた単語のようである。
単語“giraffiti”は、綴りによってなら1番目の、発音によってなら3番目の種類のかばん語として分類し得る。
かばん語の形式上の定義は存在しない。しかしながら、かばん語以外の用語で定義される2語以上の単語から構成された言葉は、一般にかばん語とは見做されない。したがって、下記の例はかばん語ではない。