さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち
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『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(さらばうちゅうせんかんヤマト あいのせんしたち)は、アニメ『宇宙戦艦ヤマトシリーズ』の劇場用アニメ映画作品。1978年8月5日に東映系で公開。
人気を博した劇場用アニメ映画『宇宙戦艦ヤマト』の後を受けて作られた。地球と白色彗星帝国ガトランティスとの戦いを描く。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
ガミラスの侵略をしりぞけ、復興を遂げる地球。都市は活気づき平和に満ちていた。そんな中古代進は偶然宇宙の危機だという謎のメッセージを受信した。古代進らは地球政府に調査を進言するが、情報があまりに不正確という理由で、その程度では動けないと一蹴されてしまう。ただ自分たちだけが平和ならそれでよい、危機が迫ってきたところで最新鋭艦を装備した地球が簡単に片付けてやるという地球政府の態度に我慢のならないヤマトのクルーは命令を無視して、退役・記念艦化処分が決まっていたヤマトを発進させて旅立ってゆく。
そんな中、地球防衛艦隊の第11艦隊が消息を絶つ。偶然近くを通り過ぎたヤマトは救助に向かい司令の土方竜を救出し、ヤマト艦長就任を依頼する。ヤマトはその後、謎のメッセージの発信源を突き止め、テレザート星に上陸し、そこでテレサと出会い危機の内容を知らされる。強大な白色彗星帝国が宇宙の星々を侵略している。今度狙われるのは地球だと。テレサは反物質世界の人間で、この世界の物質と触れれば対消滅する。それを恐れた白色彗星帝国がテレサを幽閉していたのである。
ヤマトは地球へと針路を向ける。途中、かつて死んだはずのデスラーに襲われるが、なんとかこれを撃破し、最期にデスラーから白色彗星の弱点を知らされる。
一方、地球に迫りつつあった白色彗星を撃滅するために、地球防衛軍も拡散波動砲を二門搭載した最新鋭戦艦アンドロメダを旗艦とし、地球艦隊が結集しつつあった。しかし、白色彗星帝国のバルゼーの率いる地球制圧艦隊は打ち破るも、白色彗星には最新装備である拡散波動砲が全く通用せず地球防衛艦隊は全滅。地球は生存か破滅かの選択を迫られる。
しかし「そうだ、我々にはまだヤマトがあるぞ」の一言をきっかけに、ヤマトに望みを託すことになる。ここから、ヤマトは白色彗星帝国との壮烈な戦いに入っていく。前作とは違い、これより主要人物は数名を残してほとんど死亡してしまう。エンジンルームと救護室の被弾により、徳川彦左衛門と佐渡酒造が死亡。艦首被弾により次元羅針盤がパンクして、土方竜、デスラー艦での攻防で重傷を負っていた森雪が戦死。彗星都市内部侵入における空中戦・白兵戦で山本明が、内部で真田志郎、斎藤始、加藤三郎が戦死する。
多大な犠牲の上でやっと彗星都市は撃破できたものの、その中から彗星都市と一体化していた超弩級巨大戦艦が出現してくる。最後は万策尽きた古代進が、刀折れ矢尽きた状態のヤマトを自ら操舵して突撃させ、テレザートより現れたテレサとともに、超巨大戦艦に突き進み、もろとも爆発した。これにより白色彗星帝国の侵略は阻止された。
[編集] 反響
興行収入43億円、配給収入21億円という日本映画史上記録的な大ヒットとなり、この数字は劇場用アニメ映画において宮崎駿監督の『魔女の宅急便』まで破られることは無かった。
ちなみに同1978年は、映画『スター・ウォーズ』(配給収入43億円)と『未知との遭遇』(配給収入32億円)が日本で公開されており、全世界で大ヒットしたこの2つの超大作に、他の公開作品が押され気味であった中で記録した数字でもあり、まだまだ劇場用アニメ映画が一般的に認められていなかった時代としては驚異的なヒット作品であったといえる。
この作品で、劇場用アニメ映画は「単に子供向けの映画」という枠を超え、一般に受け入れられることとなった。この作品の後劇場用アニメ映画は数多く製作されることとなり、後に大ヒットする宮崎駿監督の作品等が誕生してきている。前作と本作は、今日の日本映画の中軸にまで飛躍した劇場用アニメ映画というものの礎を築いたとも言える。
- 「劇場用アニメ映画」の項目も参照。
[編集] 備考
原作者の松本零士は、戦争の記憶の残る時期に発表された前作では「目的を果たし、生還する」というメッセージ性を強く意識しており、ゆえに彼は本作の結末が特攻を美化するとして良しとせず、「生き残って再建の苦しみを描くべき」と主張した。そのため、後に本作品をリメイクしたTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト2』が製作されるが、そこでは結末やストーリーが大きく変更された。この変更についてはファンの間でも、未だに駄作か否かで賛否両論がある。
また、この関連で本編の最後に表示される観客向けのテロップの字句が、初公開時とその後のテレビ放映や映像ソフトでは異なっている(初公開時には「もう二度と会うことはない」という意味の内容であった)。初公開時のテロップはDVD版に収録されている。なお、本作は後の再上映版制作の際に零号フィルムから28分もの映像がカットされてしまい2006年現在においても完全な形での劇場公開版はソフト化されていないばかりか、オリジナル原版(零号フィルム)そのものが行方知れずとなっているために、完全な形ではもう二度と見られないといわれている。
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