エリザベス1世 (イングランド女王)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エリザベス1世(Elizabeth I,ユリウス暦1533年9月7日 - 1603年3月24日)、別名グロリアーナ(Gloriana)は、イングランドとアイルランドの女王、テューダー朝最後(4代目)の女王(在位:1558年 - 1603年)。当時弱小国家であったイングランドの独立を維持し、「よき女王ベス」と慕われた。
目次 |
[編集] 概要
1534年9月、ヘンリー8世と2番目の王妃アン・ブーリンの間に生まれた。父ヘンリー8世はアン・ブーリンと結婚するため、最初の王妃キャサリン・オブ・アラゴンとの離婚をローマ教皇庁に要請したが、キャサリンの甥であった神聖ローマ皇帝カール5世が横槍を入れたため、許可がおりなかった。ヘンリー8世はこれを契機に教皇庁と断絶、イングランドが「独立したエンパイア」であることを宣言して、新たに英国国教会を樹立した。そして国王至上法によって、イングランド国内においては、国王こそが政治的・宗教的に至高の存在であると位置づけた。
エリザベスは、ヘンリー8世の死後に過激なプロテスタント優遇政策をとったエドワード6世、カトリックへの回帰を宣言してプロテスタントを迫害したメアリー1世の後を継いで、1558年11月17日に即位した。エリザベスは父の政策を踏襲して再び「国王至上法」を発令、「礼拝統一法」によって英国国教会を国家の主柱として位置づけた。1569年にはカトリックを信仰する北部諸侯の乱を鎮圧し、1570年に教皇ピウス5世から正式に破門宣告された。以後エリザベスは何度となく、国内のカトリック勢力による暗殺の危険にさらされた。一方、この時代にはフランシス・ドレークやホーキンスなど優れた航海士が生まれた。
1568年、フランス育ちでかつてフランス王フランソワ2世の妃でもあったスコットランド女王メアリーが、スコットランドの内紛でエリザベスの国へ逃げ込んでいた。始めは賓客扱いであったが、メアリーはイングランドに18年半滞在した後、北イングランドで処刑される。エリザベスはメアリーを処刑したがらなかったが、側近達が生かしておくには余りに危険な存在であると主張したのである。メアリーは伯母マーガレット・テューダーの孫であり、イングランド王位継承権を持っていたためである。
カトリック教徒だったメアリーの死後、スペインとの対立が深刻化、1588年スペイン無敵艦隊の侵攻を受けた(英西戦争)。イングランドの艦隊は必ずしも盤石ではなかったが、軽快な小型艦と威力ある大砲を操り、大勝利を収めた。スペイン海軍は嵐にも巻込まれ、スペインに戻ることができた軍艦はほとんどなかったと言う。このアルマダの海戦での大勝利以後、スペインに代わりイングランドが世界貿易を一手に握るようになっていく。
晩年は「囲い込み」によって発生した大量の難民に対処しきれず、発布した「エリザベス救貧法」も効果がなかった。また、対スペイン戦やアイルランドの反乱鎮圧のために軍事費が増大して、社会不安が増加した。逼迫した財政立て直しのため独占許可状を乱発するも、議会の猛反対にあい、やむなく撤回するはめとなった。
文化的にはエリザベスの時代、ウィリアム・シェイクスピアを始めとする文筆家を多数輩出して一大文化を築いた。
1603年3月、後継者にスコットランド王ジェームス6世(メアリーの息子)を指名し、崩御した。
生涯独身であったため処女王(the Virgin Queen)と呼ばれるが、レスター伯ロバート・ダドリー、エセックス伯ロバート・デヴァルー(しかもこの2人は義理の親子)などの愛人を持っていた。特にダドリーとは、一時は結婚まで考えたが、その妻エイミーが階段から落ちて死亡する事件が起こり、ダドリーとの共謀説が流れたため、結婚を断念した。エセックス伯は1601年2月、エリザベスに対して反乱を起こし、処刑されている。
[編集] 参考文献
- Weir, Alison. Elizabeth, the Queen, London: Pimlico, 1999, ISBN 0712673121
- Weir, Alison. The Life of Elizabeth I, New York: Ballantine Books, 1999, ISBN 0345425502
[編集] 関連
- エリザベス(1998年/イギリス/映画/監督:シェカール・カプール/主演:ケイト・ブランシェット)
- エリザベス1世 ~愛と陰謀の王宮~(2005年/イギリス・アメリカ/ミニシリーズ/主演:ヘレン・ミレン)
[編集] 関連書
- 青木道彦 『エリザベスI世 大英帝国の幕あけ』 講談社 講談社現代新書1486 ISBN 4061494864
- イングランド女王
アイルランド女王 - 1558 - 1603
-
- 先代:
- メアリー1世
- 次代:
- ジェームズ1世