カシミール効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カシミール効果(-こうか)は、非常に小さい距離を隔てて設置された二枚の平面金属板が、真空中でたがいに引き合う現象。
目次 |
[編集] 歴史
1948年、オランダのフィリップス研究所の物理学者のヘンドリック・カシミール( Hendrik BG Casimir )は、平行におかれた二つの無帯電状態の金属板の間に吸引力が働くことを予想した。この力は、二面間の原子間距離の数倍というふうに、距離が極めて近い場合にのみ計測できる大きさである。この引力を「カシミール効果」と呼ぶ。
板の間が狭いとその間に真空のエネルギーの小さな波長部分だけしか入り込めないため、外側から圧力を受けるために引力が発生する。
わかりやすく言うと、電子と反電子が対生成したとき、その対生成したペアが電子双極子のようになるので、両側の金属板と電磁的に引き合うのである。
カシミール効果は1997年、ロスアラモス研究所のラモロー(Steve K. Lamoreaux)らによって、実験的に計測された。
[編集] 意義
カシミール効果によって判明したことは、「真空中において、たえず電子と反電子が発生している」ということだ。つまり、真空は何もない空間ではなくて、電子と反電子がたくさんあふれているわけだ。
真空中では絶えず粒子と反粒子が発生と消滅を繰り返す。この発生は「対生成」と呼ばれる。また、このとき発生する粒子と反粒子は、「仮想粒子」とも呼ばれる。
カシミール効果で判明したことは、仮想粒子が単なる計算上のものではなくて、実在の粒子である、ということだ。(詳しくは、仮想粒子の項を参照。)
[編集] 理論
単位面積あたりのカシミール効果Fc / A は
であり極めて小さい値である。