スタンダードミサイル
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スタンダードミサイル(英:Standard Missile)はアメリカ海軍が開発した艦隊防空用の艦対空ミサイルである。開発には複数の企業が関わったが、現在の主契約社はレイセオン。スタンダード艦対空ミサイルは大きくSM-1、SM-2、SM-3の3つに分けられる。派生型として、対レーダーミサイルのスタンダードARMが存在する。また、空対空ミサイルのシークバットや、艦対地ミサイルのSM-4なども開発されていたが、これらは開発中止されている。
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[編集] 開発の経緯
強大な海軍力、こと多数の空母を保有するアメリカ海軍にとって、艦隊防空は常に大きな課題であった。初期のミサイル艦は、ターター、テリア、タロスといった艦対空ミサイル群(通称3T)を装備して艦隊を守っていた。しかしこれらは射程が不足したり、長射程を備えるものにあっては大型化の傾向にあり、それらの質と量では年を追うごとに強大化する対艦ミサイルの脅威に対抗できなくなることは明白であった。ことソ連軍は多数の艦対艦ミサイルや爆撃機などを保有し、米艦隊に対して飽和攻撃をおこなう戦術を前提に軍備を拡大していた。
3Tのうち巨大なタロスを廃し、ターターとテリアの後継となるタイフォンミサイルシステムが開発されたものの、高性能を目指したためコストが高騰し、試射段階で開発中止。かわりにターターを原型とした改良ミサイルを開発することとなった。これがスタンダードミサイルである。
[編集] SM-1シリーズ
SM-1ミサイルは、ミサイルや航空機を迎撃するために使用されるセミアクティブホーミング(発射母機が発したレーダーの反射波を受け取り誘導する方式)であり、発射後は目標に対して連続的にレーダーの照射が必要である。そのためイルミネーター(レーダーを照射する装置)の数しか誘導はできず、せいぜい同時には2目標程度への攻撃しかできなかった。しかし裏を返せば搭載艦にさほど高度な電子機器が必要ないということでもあり、後のSM-2やSM-3と異なり多くの国によって運用された。開発主契約企業はジェネラル・ダイナミックス。
[編集] SM-1MR
RIM-66 SM-MR(Standard Missile Middle Range)は、ターターの後継となる中射程艦対空ミサイルで、ターターに似た外観を持つ。ターターと同様に、Mk.13、Mk.22、Mk.26発射機などにて運用される。射程は約40km。
[編集] SM-1ER
RIM-67 SM-ER(Standard Missile Extended Range)は、テリアの後継となる射程延長型艦対空ミサイルで、SM-1MRにテリアと同様のロケットブースターを追加したものである。テリア同様に全長が長く、テリア用のMk.10発射機を必要とする。射程は約70km。
[編集] SM-2シリーズ
SM-2ミサイルは主にイージス艦で使用され、SM-1と同じようにミサイルや航空機に対して使われる。SM-1と基本的な構造は一緒だが慣性誘導装置とデータリンクを取り入れたことによりレーダーの照射は着弾前の数秒間だけでよくなった。そのため一度に対処できる目標の数が大幅に増え、最大で15程度の目標への同時攻撃が可能となった。また目標まで最適な飛行コースを取るようになったため射程もSM-1の倍程度になった。
[編集] SM-2MR
用途や外観はSM-1MRと同様だが、イージス艦や基隆級(キッド級改装型)など対処能力の高い艦への配備が前提であるため、主としてMk.26発射機またはMk.41VLSなどに装填される。射程は約70km。マイナーチェンジとして、ECCM能力や弾頭を改良したブロックII、加えて終端赤外線誘導機能を加えたブロックIIIが存在する。
[編集] SM-2ER
RIM-67をSM-2規格で能力向上させたものであるが、あくまでテリアの運用を前提とした旧式艦に用いられるミサイルであるため、そのぶん運用は制限される。射程は約120km。やはりマイナーチェンジのブロックII、ブロックIIIが存在する。
[編集] SM-2ERブロックIV
テリア艦専用のRIM-67シリーズは、テリア艦の退役とともに存在意義を失った。そこでイージス艦のVLSからも発射可能なように、ブースターのコンパクトなRIM-156 SM-2ERブロックIVがスタンダードMCによって開発された。ブースターなどの改良により、小型ながら射程は約160kmに達した。
派生型として、ミサイル防衛にも使用可能なブロックIVAも計画された。これによって慣性飛行段階の弾道ミサイルを撃ち落とし、撃ち漏らしたものをパトリオットミサイル PAC-3で撃ち落とす計画であったが、航空機などの撃墜を前提とした破片効果弾頭で大気圏外を高速飛行するミサイルを破壊することは困難であり、開発は中止された。
[編集] SM-3
RIM-161 SM-3は、弾道ミサイル迎撃(弾道ミサイル防衛/BMD)専用として再開発されたものであり、スタンダードMCが主契約者となっている。開発に失敗したSM-2ERブロックIVAを反省し、弾頭は直接ミサイルに体当たりするhit-to-kill方式に変えられた。アメリカ海軍はこれをミサイル巡洋艦レイク・エリーから試射して、弾道ミサイルの迎撃実験に成功した。
[編集] SM-3 ブロックII
現在、改良型のSM-3ブロックIIが日米共同で開発されている。日本は防衛庁技術研究本部(技本)により、弾頭防護用ノーズコーンの開発を担当している。日本製ノーズコーンを使用した機体は2006年3月9日に初飛行。日本版BMDで海上自衛隊の護衛艦(イージス艦)に主として配備される形式となる。2006年6月23日にはブロックIIAの共同開発に合意した。
[編集] 現在開発中のもの
[編集] SM-5
詳細不明 巡航ミサイル追撃用といわれている。
[編集] SM-6
SM-2の本体に空軍にてすでに使用されているAMRAAMのシーカーを付けて従来のセミ・アクティブ・レーダーホーミング誘導からアクティブ・レーダーホーミング誘導に変更したことでSM-2よりも同時に相手にできる目標がかなり増えるものと思われる。現在アメリカ海軍で開発中で射程は400kmほどを目標としている。大量配備が見込まれており、将来的には弾道ミサイル防衛能力も付与する模様。
[編集] AGM-78
AGM-78 スタンダードARMは、SM-1MRの弾体を流用した対レーダーミサイルである。ベトナム戦争ではF-105やF-4Gといった、いわゆるワイルドウィーゼル機に装備され、敵防空網制圧任務に就いた。それまでのAGM-45 シュライクは射程が12kmほどしかなかったが、スタンダードARMはその大柄な弾体を活かし、100km近い射程を誇った。
後に、小型かつ長射程を誇るAGM-88 HARMへと交替している。
[編集] RGM-66
RGM-66 SSM/ARMは、対レーダーミサイルAGM-78 スタンダードARMの艦載型で、Mk.13やMk.26などのSAMランチャー用のRGM-66Dと、ASROCランチャー用のRGM-66Eが存在した。
[編集] 開発中止
[編集] 艦対地ミサイル型 SM-4
RGM-165 SM-4は、SM-3までとさらに違い艦対地ミサイルである。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦への搭載を前提に開発が進められていたが、いわばこれは核弾頭のない弾道ミサイルであり、必要な命中精度を確保することは困難であった。特に移動目標への命中が期待できず、開発は中止された。ズムウォルト級には当面トマホークミサイルが配備される予定である。
[編集] 空対空ミサイル型 XAIM-97
XAIM-97 シークバット(Seekbat)は、SM-1MRの弾体を流用した空対空ミサイルであったが、実用化されなかった。
[編集] 艦対艦ミサイル型 RGM-66F
RGM-66Fはアクティブ・レーダーシーカーを搭載した艦対艦ミサイルであったが、1975年にキャンセルされ実用化されなかった。
[編集] 関連項目
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