ストレージエリアネットワーク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ストレージエリアネットワーク(Storage Area Network,SAN, 「サン」と発音)は、ハードディスク装置や磁気テープ装置などのストレージと、サーバなどのコンピュータを、ファイバチャネルなどのシリアルSCSIプロトコルを用いてネットワーク化したシステムである。膨大な量のデータファイルを保存・活用・一括管理するために使用される。
コンピュータネットワークとしては、TCP/IPを用いたインターネットやLANが身近であるが、SANは、これらTCP/IPネットワークとは独立に構築される。通常SANは、企業や大学のマシン室内で実現されるものであり、一般の人が目にする機会は少ない。
目次 |
[編集] SANの歴史
ストレージとサーバの間でネットワークを構築する構想は、1995年頃、ファイバチャネルの実用化にめどが立ったころから現れはじめ、ストレージエリアネットワーク(SAN)の呼び名が定着したのは1998年頃である。この名称は、ローカルエリアネットワーク(LAN)を意識して名づけられた。SANが実用化したのは、対応する製品が出始めた1999年以降のことである。なお、SANを意識して名付けられたストレージ製品としてNASがある。
[編集] SANで使われるストレージ
SANで用いられるストレージは、主にハードディスク装置と磁気テープ装置である。
ハードディスク装置は、通常、複数のディスクを集めてRAID構成にして使用する。RAIDにすることで、耐障害性を高めることができ、また読み書きを速くすることができる。RAIDには0から5までの種類があり、通常はRAID5が用いられることが多いが、RAID1やRAID4が用いられることもある。また、2つのRAID形態が組み合わされることもあり、RAID4+1やRAID10などと表現される。
磁気テープ装置は、セットされた多数のテープカートリッジの中から適切なカセットテープを選択し、データを読み書きする。小型のものはテープチェンジャと呼ばれ、大型のものはテープライブラリと呼ばれる。テープチェンジャやテープライブラリの中で、テープに対してデータの読み書きするモジュールをテープドライブと呼ぶが、まれに、テープドライブだけを設置し、テープカートリッジの交換を人手で行う場合もある。テープ装置はバックアップ(後述)に用いられる。
[編集] SANにおけるバックアップ
バックアップ(backup)とは、一次ストレージ(例えばハードディスク装置)が万一故障した場合に備えて、二次ストレージ(例えばテープ装置)にデータの複製を取っておくことを言う。バックアップの取り方の種類には、フルバックアップ、差分バックアップ、増分バックアップがある。
フルバックアップ(full backup)とは、バックアップの対象となるデータファイルをすべて二次ストレージにバックアップする方法である。フルバックアップすると、バックアップ対象となるすべてのファイルのアーカイブビット(前回のバックアップからファイルが更新されたことを表わす属性)はクリアされる。
差分バックアップ(differential backup)とは、バックアップの対象となるデータファイルのうちアーカイブビットがセットされたファイルだけをバックアップし、バックアップ後アーカイブビットをクリアしない方法である。すなわち、フルバックアップ後に更新されたファイルだけをバックアップする。これにより、バックアップにかかる時間を減らすことができる。リストア(バックアップからデータを戻すこと)をするときは、フルバックアップと差分バックアップをリストアする。
増分バックアップ(incremental backup)は、バックアップの対象となるデータファイルのうちアーカイブビットがセットされたファイルだけをバックアップし、バックアップ後アーカイブビットをクリアする方法である。すなわち、前回の増分バックアップから(初回はフルバックアップから)更新されたファイルだけをバックアップする。バックアップにかかる時間は、差分バックアップより短い。しかしリストアする場合は、フルバックアップをリストアした後、増分バックアップをすべてリストアしなければならないので、差分バックアップより時間がかかる。
[編集] ファイバチャネルのトポロジー
SANのネットワークを構成するファイバチャネルのトポロジー(ネットワーク形態)には、ポイントツーポイント型、FC-AL型、ファブリック型がある(図1)。
ポイントツーポイント(point-to-point)型は、サーバとストレージが1対1で直結している形である(図1(a))。
FC-AL(Fibre Channel Arbitrated Loop)型は、サーバとストレージをループ状に接続する(図1(b))。LANでリング型と呼ばれるトポロジーに相当する。なお、FC-ALは、「エフキャル」「エフカル」と発音されることが多いが、日本では「エフシーエーエル」とそのまま発音されることも多い。
ファブリック(fabric)型は、スイッチ(図1(c)の■)を中心に、サーバとストレージが放射状に配置される。LANでスター型と呼ばれるトポロジーに相当する。SANにおいて主流のトポロジーとなっている。
[編集] IP-SAN
SANのネットワーク部分はファイバチャネルを用いることが多いが、最近開発されたiSCSIを用いることもできる。iSCSIはIPネットワークの上に載るため、iSCSIを用いたSANはIP-SANと呼ばれることもある。また、IP-SANの新しいプロトコルとして、ファイバチャネルをIP上に載せるためのプロトコルFCIPやiFCPが開発中である。 (2003年夏現在)
[編集] 関連項目
カテゴリ: 記憶装置 | コンピュータネットワーク