テルミット法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テルミット法(-ほう、thermit process)とは金属アルミニウムで金属酸化物を還元する冶金法の総称である。ギリシャ語の(therm - 熱)に由来する。別称としては、テルミット反応、アルミノテルミー法(aluminothermy process)とも呼ばれ、あるいはこの方法はH.ゴルドシュミットにより発明されたのでゴルドシュミット法とも呼ばれる。
金属酸化物と金属アルミニウムとの粉末混合物に着火すると、アルミニウムは金属酸化物を還元しながら高温を発生する。この還元性と高熱により目的の金属融塊は下部に沈降し、純粋な金属が得られる。また、この方法は炭素燃料を使用しない為、生成金属には炭素が含まれないという特徴もある。現在では、クロム、コバルト、マンガン、バナジウムや特殊な合金鉄の冶金などに利用されている。
また、金属酸化物のアルミニウムとのイオン化傾向の差が大きいほど、大量の熱を発生する。
たとえば、酸化鉄とアルミニウムの反応では、
Fe2O3 + 2Al → Al2O3 + 2Fe + 851.5kJ/mol
で発生する熱は849.8kJ/molだが、酸化銅との反応では
2Al + 3CuO → Al2O3 + 3Cu + 849.8kJ/mol
となる。
古くは鉄の溶接に使用されたので、テルミット溶接とも呼ばれ、その際に使用する酸化鉄とアルミニウムの混合物をさしてテルミット(thermit)とよぶことがある。複雑な設備を必要としない方法なので、かつてドイツでは、大型の機材を持ち込めない線路敷設現場でテルミット溶接が行われた事もある。(満州鉄道でも使用されていた)
テルミット反応は高熱と光を発する特徴があるので、軍事目的においては焼夷爆弾や焼夷手榴弾に用いられている。
なお、1937年5月6日にアメリカで起きた飛行船ヒンデンブルク号の爆発事故の原因は、飛行船の外皮に酸化鉄とアルミニウム粉末を用いていたため、飛行船に溜まった電気が放電して発火したためであることが分かっている。
テルミット反応を利用した合金鉄として、フェロ・モリブデンがある。フェロモリブデンは、三酸化モリブデンと鉄の合金鉄。現在日本でフェロモリブデンを製造しているのは2社のみ。大半は中国とチリから輸入している。用途はステンレスや特殊鋼を作る原料。
カテゴリ: 化学反応 | 金属 | 溶接 | 自然科学関連のスタブ項目