ナイト2000
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ナイト2000はアメリカで放映された特撮番組『ナイトライダー』に登場する架空のドリームカーである。
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[編集] 設定
劇中の組織「ナイト財団」が製作したポンティアック・トランザム(Pontiac Firebird Trans Am)のカスタムカーで、非常に高度な人工知能を搭載し、パイロット(ドライバー)の基本的指示は必要だが、自ら考え会話し行動できる車である。
搭載される人工知能の正式名称はKnight Industries Two Thousand。それぞれの頭文字をとりKITT(キット)と呼んでいる。
パイロットに奉仕すること及び、人命保護を最優先にプログラミングされており、利他的。ナイト2000の悪用をたくらむ人物がキットそのもののシステムを書き換えても、人命最優先という基本プログラムは強固に守られ、人を傷つける事はない。パイロットの人命が危険にさらされそうになれば自らを犠牲にしてそれを守る。会話機能は機械的ではなくスムーズなもの。ユーモアのセンスと人格を有する。その人格はウィルトン・ナイトに近いとされている。自分がナイト2000である事に満足し、事件解決のために人の勘を頼る事もある。一般的な車と同等に扱われる事や、犬をはじめとする動物が嫌い。また高所恐怖症であり、そのため飛行機に乗ることも嫌がる。しかし、時折ほかの車を思いやる発言をしたり、動物に対する優しさを見せたりもする。
キットに言わせると「私には人間のような感情はありません」ということらしいが、十分人間的であり、小さな子供にも好かれる友好的なAI(人工知能)だ。
エンジンは無公害の水素ガスタービン。設定上では時速にして500Km/hを超える速度が出せるともされる。障害物を飛び越えるターボブーストや各種のスキャナー等、数多くの優れた機能を有する。番組後期にはさらに出力を上げて急加速できるスーパー追跡モードやオープンカーに変形するコンバーチブルモード等、様々な機能が追加装備された。オプション次第で水上走行も可能となる。
ボディーは分子結合殻(Molecular Bonded Shell)で覆われており、あらゆる物質より硬く、強靭。ボディーの黒は塗装ではなく、この分子結合を組み込んだことによる。分子結合殻の構造式は極秘事項であり、ウィルトン・ナイトは、その構造式をデボンを含めた信頼の置ける3人の人物に全体の2/3ずつ託した。つまり3人のうち2人が揃えば、分子結合核を無力化してしまうことが可能となる。結果としてその分配が仇となり、ナイト2000を狙う敵に構造式を盗まれ、スーパートラック「ゴライアス」(GOLIATH)や、装甲車「ジャガーノート」(JUGGERNAUT)を生み出した。
キットの声優はウィリアム・ダニエルズ(William Daniels)が、日本語吹替版では野島昭生が、それぞれ担当している。
パイロット版において、ナイト2000はナイト財団がマイケル・ロングの愛車を持ち帰り改造したものとされていたが、後にプロトタイプとして登場したカールも、その機能、外観ともに、パイロット版のキットと全く同じであった。従って、マイケルがナイト財団に参加する半年以上前から、ポンティアック・トランザムを基本コンポーネンツとするナイト2000が存在した事になる。『ナイトライダー』ファンの間でささやかれる面白い矛盾のひとつである。
このトランザムがナイト2000の基本ボディーとなり得たのは、カールの存在もある事から、「ナイト財団の創始者であるウィルトン・ナイトの、車に対する個人的な趣向の現われではないか?」という説が有力だが、定かなところは不明のままである。
[編集] カール
正式名称はKnight-Automated Roving Robot。頭文字をとってK.A.R.R(カール)と呼ばれる。
「自分で走り回れる車の原型モデル」として、キットよりも先に開発された。本人(?)はそのことに強い自負を抱いているようで、自己紹介のセリフにも含んだり、キットのことを「自分をコピーした、粗悪な量産品」と見下したりしていた。
キットと異なり、プログラムの最優先事項は「自己の保存」で、そのためならばパイロットをも躊躇なく犠牲にしてしまう。キットとは真逆の存在といえる。それに危機感を抱いたウィルトンによって処分されたと思われていたが、ひょんなことから復活してしまう。自分を消そうとしたウィルトンやナイト財団に対して激しい憎悪を抱いている。
基本的機能はキットとほぼ同一とされたが、同じボディーでありながら、過去に2度登場するそのいずれも、キットとの対決に敗れている。
カールの声はピーター・カレン(Peter Cullen)によるもの。日本語吹き替えは麦人が担当した。
[編集] 主な特殊機能
- ターボブースト
- 障害物をジャンプして飛び越える機能。作中では最も多用されていた機能の1つ。
- 飛び越える以外にも、車のスクラップ機や土砂からの脱出、体当たり等の際に使用されることもある。
- オートクルーズ
- KITTによるいわゆる自動運転。ドライバー自らハンドルを取って運転するモードはノーマルクルーズと称する。
- スキーモード
- 片輪走行。通常進入できない幅の狭い場所に入って行ける機能。
- 時に、路上の障害物を避ける際にも使用される。
- マイクロロック
- 物理的に物体を固定する装置。理論は不明だが鍵を開けたり機械を停止させたりできる機能。
- マイクロジャム(劇中後半ではマイクロジャマーと呼称)
- 電気的な妨害を行う機能で、特定周波数帯をジャミングしたり、コンピュータを狂わせる機能。ターボブーストに同じく作中に多く登場した機能の一つ。
- シートイジェクション
- ルーフを開いてドライバーシートを跳ね上げる事で乗員を空高くジャンプさせる機能。マイケルが捜査の為に邸宅の外壁を飛び越えたりするのに使用した。また悪人がナイト2000に乗り込んだ時に放り出すのにも使用された。
- オイルスリック
- 路面に向けてオイルを流出させ、後続車等をスリップさせる機能。
- スモークリリース
- 煙幕を発生させる機能。
- ナイト2000には、この他に二酸化炭素をはじめ多くの気体を噴出させる機能が備わっている。
- その他・各種スキャナ
- 赤外線、X線、超音波等、多種多様なスキャナーを装備しており、健康診断から物体の透視、分析まで実に様々な事が行える。これらの機能の組み合わせでサーベイランス(監視)を行う事もできる。また監視モードは、固有の機能としても持っている。
- このほか、熱源を操ったり離れた場所に高圧電流を発生させたりと、実に多くの神憑り的機能の数々を持つ。またマイクロジャムやスキャンは、マイケルが腕に嵌める腕時計付き通信ツール「コムリンク」(Communication Linkageの略)を通じてリモートで用いる事も出来る。
[編集] 主な特徴
- 基本的にはポンティアック・ファイヤーバード・トランザムだが、主にフロントグリル部分が大幅にカスタムされ、ナイトフラッシャー(スキャナーのセンサー部分)が埋め込まれている。この他にもボンネット(ターボボンネットと称する)、ホイール等、部分的にカスタムされている。
- 近年ではトランザムをナイト2000にカスタムする為のパーツを販売するメーカーも登場している(ナイト2000はハンドルが円形ではなく飛行機の操舵輪型なので車検は通らない)。
- インテリアは初期と後期で若干異なるが大幅にカスタムされ、劇中で「まるで宇宙船の様だ」と表現されるほどイルミネーション関連部品が付加されている。
- キットが声を発するとハンドル付近に設置されたボイスインジケータが適宜発光する。
[編集] 関連商品
[編集] ミニチュアモデル
- 国内ではダイキャスト合金のミニモデルが主に青島文化教材社から発売されている。中にはナイトフラッシャーも再現され、日本語吹替を担当した野島昭生の声が録音されたADPCM音声回路も搭載したナイト2000ミニモデルもある。同じく同社からは1/18、1/28、1/43等様々なナイト2000のミニモデルが発売されている。
- このほか海外ではアーテル社から1/16や1/64のスチールモデルや、KENNER社からも1/12の大きなモデルが発売。
- アーテル社製品にはキット、カール、またナイトライダー2000に登場するナイト4000の1/24プラモデルもある。
[編集] プルバックミニカー
- ナイト2000とナイト2000のプロトタイプとされるカールの両モデルが青島文化教材社から発売。こちらは株式会社タカラとのタイアップ商品でチョロQシリーズに含まれる。全長5センチの小スケールながら、ナイトフラッシャーの発光も再現されている。
[編集] ラジコン
- 青島文化教材社からはラジキャラ・ナイト2000をはじめ1/28 R/Cミニッツレーサーシリーズ等にナイト2000のラジコンが発売されており、カールの設定もある。
- このほかタイヨーのラジカンシリーズ等にもナイト2000がある。
[編集] その他
- ナイト2000型の携帯電話置き台(着信にボイスインジケーターが反応する)や、タミヤ製ミニ四駆用ボディー、デフォルメ・プルバックカー等が存在する。
- このほかキット役の野島昭生の声が録音された自動車用セキュリティーシステム等もある。
[編集] ナイトフラッシャー
- ナイトフラッシャーはナイト2000を代表する装備の1つで、俗称としてスキャナー、または番組名をとってナイトライダーとも称されるライトの名称である。
- 赤色、または青色の光源が、およそ40cm前後の範囲を左右に往復する(様に見える)。
- 8個以上(基本は8個)の電球が左右に往復を繰り返すように順次点灯、消灯を繰り返し、若干の残光を残しながら光りつづけるというものである。
- 既製のナイトフラッシャーは残光が無いものや光源がLEDであったり、光源の数が少ないなど様々だったため、PIC-IC等の部品を使ってオリジナルに近い光り方をするナイトフラッシャーを自作する人々も居た。
- 番組放映当時は自動車用品店にもこれによく似た光り方をするナイトフラッシャーが並び、人気商品となっていた。
- このため車種に関わり無く装着している自動車も多かった。
- 自動車用品としてのナイトフラッシャーは、現在でもインターネットなどを通じて数多く売買されている。
- 市販品では5灯の電球タイプで、灯火としての要件を満たす300cdを超える光度を持ち、残光の無いものが一般的である。
- 厳密にはフロントグリル部に装着された300cd以上の光度を持つ赤色灯火器類の公道での点灯は道路運送車両法に抵触する。しかし、有名かつ人気を集めたパーツであるだけに行政的な取締りの上では多くの場合許容されている一面もある。
- 電気的配線だけを切断し点灯しない構造にしてあれば、ナイトフラッシャーがフロントグリル部へ装着されていても問題なく車検を通す事ができる。
- また『ナイトライダー』の放映当時は自転車用のナイトフラッシャーも発売されていた。
- ナイト2000のプラモデルに組み込むためのナイトフラッシャーのユニット基板も発売されている。