ノイズ
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ノイズ(英語のNoiseから)とは、一般に処理対象となる情報以外の不要な情報をいう。情報の形態・分野によりノイズの具体的な定義は様々である。
- 音響分野一般 :うるさい音、騒音、雑音。ホワイトノイズとピンクノイズなどがある。
- 録音技術分野 :音声の録音をする上で障害となる、サウンドの成分以外のうち、上記以外の雑音。代表的なものに、マイクロフォンや電気楽器のピックアップの音が巡回して起こるハウリングノイズ、録音機材が電源や蛍光灯などからも音として拾ってしまう「バズノイズ」などがある。その他録音テープ媒体で録音再生に伴って発生する高域の雑音であるヒスノイズ、歌手の発声時に、マイクロフォンで拾ってしまう音声以外の音であるリップノイズなどが挙げられる。また、吹き替えやアフレコの分野において、台本をめくる音を「ペーパーノイズ」という。
- 映像分野 :電波障害や受信感度が悪いとき、または古いビデオテープを再生した際に発生する画面のちらつき。最近ではデジタルカメラにおけるCCDの画像の荒れ(デジタルノイズ)のことをさすことがある。
- 工学分野(特に電子工学、制御工学など) :機器の動作をさまたげる余計な電気信号。
- 機械学習分野 :学習したいものとは別の余計なデータ。
- 天文分野 :観測をする上で障害となる、人工的あるいは観測目的以外の(自然的理由で発生している)周波数の電磁波。
[編集] 通信におけるS/N
電気通信分野では、処理対象の情報を信号 (Signal) と呼び、雑音(Noise) との量との比率 (S/N) によって通信の品質を表現する。これを信号対雑音比といい、対数表現の dB(デシベル)で表す。S/N、SNR:Signal to Noise Ratio、SN比(エスエヌひ)と略すことが多い。なお、「S/N比」と書くとS/Nという表記そのものが比を表しているため、比が重なることになるので好ましいとは言えないが、実際は「S/N比」と書かれている場合も少なくない。また、Desired Signal to Undesired Signal Ratio、D/U ratioとも呼ばれる。
「信号」を搬送波とした場合は、搬送波対雑音比 (Carrier to Noise ratio) あるいは C/N (シーエヌ、CN比、CNR とも)と呼び、デジタル信号伝送では主にこちらが用いられる。
S/Nは以下の定義式で定義される。
Pは「電力」、Aは振幅の実効値を示す。
多くの信号は非常に広帯域を持つので、通常SNRは対数(自然対数)で表現される。振幅比率の場合は対数の20倍、電力比率の場合は対数の10倍となる。
S/Nが大きいほど通信品質が良好であることを示す。但し、実際の通信では無信号時には雑音のみ (N) であるが信号を受信した際には信号と雑音が重畳されている(すなわち S+N )であるため、測定値は (S+N)/N をもって表現することが多く、このため厳密には両者は区別される。例えば S/Nが 0dB(すなわち信号とノイズの電力が等しい)場合でも (S+N)/N は 6dB になるため、通信方式によっては情報伝達が可能である。
[編集] その他ノイズに関すること
ノイズと見なされるものは「雑音」とは限らない。例えば音楽の演奏中の会話は、それをしている者にとっては必要な情報であるが、音楽を鑑賞する立場からはノイズである。
最近はノイズキャンセリング・ヘッドフォンというものが商品化され、外部のノイズを遮断する事ができる。一般的な仕組みは、ヘッドフォンに内蔵されているマイクから外部の音を拾い、逆位相の音を出して打ち消すようになっている。工事現場や踏切などの近くでは特に有用とされている。同様の原理を用いたものに消音スピーカーがあり、室内の静寂性が重視される高級乗用車に採用事例がある。