パントテン酸
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パントテン酸(pantothenic acid)とは、ビタミンB群に含まれる物質で、D(+)-N-(2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブチリル)-β-アラニンのこと。かつて、ビタミンB5とも呼ばれていた。CoA(補酵素A)の構成成分として、糖代謝や脂肪酸代謝において重要な反応に関わる物質。語源は'どこにでもある酸'と言う意味。水溶性のビタミンで、食品中に広く存在し、通常の食生活を送る上で不足になることはあまりないが、ストレスに強い体をつくり、善玉コレステロールを増やす働きがあるといわれており、多めにとりたい栄養素の一つである。
食品中ではそのほとんどがCoA(補酵素A)として存在するが、消化管内でパンテテインあるいはパントテン酸にまで分解され、体内に吸収される。
図1. パントテン酸の構造式
パントテン酸はパントイン酸にβアラニンが結合したものである。
図2. パンテテインの構造式
パンテテインはパントテン酸にシステアミン(2-メルカプトエチルアミン)が結合したものである。
図3. 補酵素Aの構造式
補酵素Aはパンテテインとアデノシン-3'-リン酸が、ピロリン酸(二リン酸)を介して結合したもの。
補酵素Aはパンテテイン残基の末端にある-SH基を介して生体内でのアシル基転移において、その担体として機能している。
目次 |
[編集] 物性
- 分子量 219.24
- 粘調油状
- 吸湿性
- 水・アルコール・氷酢酸・ジオキサンに易溶、エーテルに難溶、ベンゼン・クロロホルムに不溶
- 比旋光度[α]D25 = +37.5°
- 酸、アルカリ、熱に不安定
[編集] 多く含む食品
たいていの食品に含まれている。 特に多く含まれている食品は、乾燥酵母、卵、牛乳、レバー、糸引き納豆、きな粉、落花生、干し椎茸、さけ、いわしなど。
[編集] 一日の所要量
成人で5mg。通常の食生活で欠乏する可能性は低い。
[編集] 欠乏症
- 成長停止
- 体重減少
- 皮膚炎
- 脱毛
- 頭痛
- 末梢神経の障害(手足の麻痺や焼けるような足の痛み)
- 副腎障害
[編集] 過剰障害
特に知られていない
[編集] 生化学
生体内において、パントテン酸はパントテン酸キナーゼ(EC 2.7.1.33)、ホスホパントテノイルシステインシンテターゼ(EC 6.3.2.5)、ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.36)、デホスホCoAピロホスホリラーゼ(EC 2.7.7.3)、デホスホCoAキナーゼ(EC 2.7.1.24)の作用により補酵素A(CoA)に変換される。
- EC 2.7.1.33 ATP + (R)-pantothenate = ADP + (R)-4'-phosphopantothenate
- EC 6.3.2.5 CTP + (R)-4'-phosphopantothenate + L-cysteine = CMP + PPi + (R)-4'-phosphopantothenoyl-L-cysteine
- EC 4.1.1.36 (R)-4'-phosphopantothenoyl-L-cysteine = pantotheine 4'-phosphate + CO2
- EC 2.7.7.3 ATP + pantetheine 4'-phosphate = diphosphate + 3'-dephospho-CoA
- EC 2.7.1.24 ATP + dephospho-CoA = ADP + CoA
以上