フォトリソグラフィ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フォトリソグラフィ(英:Photolithography)とは、半導体ウェハー上にフォトレジストと呼ばれる感光性有機物質を塗布し、ステッパーと呼ばれる露光装置を用いて、レチクルと呼ばれるフォトマスクに描かれた素子・回路のパターンを焼き付ける工程である。
目次 |
[編集] 工程
フォトリソグラフィの主な工程は、以下のとおりである。
[編集] コート
シリコンウェハー上に、レジストと呼ばれる液体を、スピンコーターや吹きつけによって塗布する。レジストは光によって反応する化学物質を溶媒に溶かしたもので、感光した部分が溶解する「ポジ型」と、感光した部分が残る「ネガ型」がある。パターンの微細化にはポジ型が有利とされ、現在ではポジ型が主流である。また、KrFなどのエキシマレーザーを用いた露光の場合、露光強度が弱い為、化学増幅型フォトレジストが使用される。
[編集] プリベーク
レジストを塗布したウェハーを加熱し、レジストを固化する。
[編集] 露光
レジストに光を照射して反応させる。このとき、回路図の形状を描いたマスクを用い、光を照射する部分を制御することで必要な形状をレジスト上に描く。露光装置はかつてはマスクとウェハーを密着させ露光する等倍露光であったが、要求されるパターンが微細になるとともにマスクの作成が困難になってきたため、近年では実寸よりも大きく作成したマスクパターンをステッパーと呼ばれる装置を用いてウェハー上を移動させながら縮小投影露光する手法に変わってきた。パターンが微細化するほど短波長の光源が必要であり、現在は超高圧水銀ランプのg線(波長 436nm)、i線(波長 365nm)、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)などが主流である。またX線を光源に用いたり、電子線で直接レジスト上に描画する方法(電子線リソグラフィ)も存在する。
[編集] 現像・リンス
露光したウェハーを現像液に浸し、余分な部分のレジストを除去する。この過程ではじめて回路図のパターンがウェハー上に現れる。現像液はレジストを溶解する有機溶媒が使用される。リンス液で数回すすぎ、不要部分を完全に除去する。
[編集] ポストベーク
付着したリンス液を加熱によって除去する。加熱により、ウェハーとの密着性が良くなる。
[編集] パターン成形
レジストで描かれたパターンを利用して、目的とする回路などを作成する。ウェハーに用いたものによって工程が異なり、不要な部分を除去したい場合はエッチングを、必要な回路を追加したい場合は成膜・リフトオフの工程となる。
[編集] エッチング
ウェハーに単に凹凸を付けたい場合、あるいは元々ウェハー上にパターンが作成されていた場合などは、エッチングによって不要な部分を除去する。ドライエッチングとウェットエッチングが存在する。レジストの残っている部分はエッチングによって除去されないため、残したいパターンがウェハー上に形成される。最後に溶剤などによってレジストを完全に除去する。
[編集] 成膜・リフトオフ
ウェハー上に別の金属や酸化物などを付けたい場合は、真空蒸着やスパッタリング、CVDなどの手法によって成膜する。最後に溶剤などでレジストを除去する際に、レジスト上に成膜された材料も同時に除去される(リフトオフという)ため、ウェハー上に好みのパターンを追加することができる。