ペッパーボックスピストル
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ペッパーボックスピストル(Pepper box pistol)とは、回転式弾倉と銃身が一体化した形態を持つ黎明期のリボルバー拳銃の一種が語源の銃種名称で、広義の意味で使う場合、銃身と薬室が一体化した銃身を3本以上束ねて連射を可能とする形態の銃器を意味し、狭義の意味では、1830年代に登場した同様の形態を持つダブルアクションオンリーの雷管打撃式回転拳銃の事を指す。
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[編集] 解説
本銃種「ペッパーボックスピストル」とは、上記の通りその語源を西部開拓時代初期に当時のアメリカで大流行した拳銃の一種である。一般的にこの形態の銃は、薬室が一体化した銃身を複数本束ねたものを回転させて連射させる銃器のことを言うが、特にサミュエル・コルトが特許を持っていた、引き金を引くだけで回転連射が可能な「ダブルアクション機構」を持つ護身用の小型拳銃を意味する物である。この銃は、その形態が調理器具の「コショウ挽き」に似ていることからこの名称が付いた。
日本ではあまり知られていない銃種であるが、米国では1830年代～1850年代には世にあふれかえるほど行きわったった銃として有名である。銃器の歴史として、銃身と薬室が分離した形態の、今日よく見るリボルバー拳銃の形態の祖が登場したのは、1700年代前半ヨーロッパが発祥といわれている。この頃のリボルバー拳銃はいわゆる古式銃に相当する「フリントロック銃」などに回転式薬室をもうけて連射可能とさせる形態の物であった。しかしながら、銃器の技術的問題として当然このようなカラクリをもつ銃は高価この上なく一部の貴族や金持ちのステータスとして所有されていたものがほとんどで、おおよそ実用にはほど遠い物であった。
そして、打管式拳銃（パーカッション式拳銃）が発明されると、拳銃の発射機構はより容易になり、コルト社やレミントン社のアーミー・ネービーモデルに見られるようないわゆる近代リボルバー拳銃に近い形態の物が登場することになるが、それでもまだこういった形式のリボルバー拳銃は高嶺の花でありその用途は軍用が主で、一般庶民は単発式の拳銃を多く所持していた。そういった状況下で単発拳銃を主に生産していた「イーサン・アレン社」という会社が、薬室と銃身を一体化させた複数銃身にパーカション式発火機構を備え、コルトパテントのダブルアクション機構をそなえた簡素な連射可能な拳銃である、後に「ペッパーボックスピストル」と愛称される拳銃を発明した。この拳銃は大ヒットし、当時コルトのリボルバーの3分の1程度の値段で連射拳銃が手にはいるという事で、極めて広く米国全土に行き渡ったのである。（そのおかげで、当の近代リボルバー拳銃発明の祖であるコルト社は、一度倒産している）
[編集] 初期ペッパーボックスピストルの特徴
初期のペッパーボックスピストルの特徴は薬室と一体化した複数銃身のその製法にある。一般的にこのような銃身は、ガトリング砲のそれを発想するかもしれないが、この頃の本銃はレンコンのような複数銃身の塊を鋳造して製造する方法がとられた。この製法のおかげで、頑丈で鋳造が故の安価な発射システムが大量に生産でき、本銃のコストダウンに大いに貢献したといわれている。そして通常のリボルバー拳銃のように銃身と薬室を回転毎に精密に結合させる技術が必要ないため、内部機構に関しても大幅な簡素化がなされたのも安価である要因の一つでもある。更に、当時の通常リボルバー拳銃がシングルアクションがメインであったのに対し、ペッパーボックスはダブルアクションでの連射が可能で、複数弾を一瞬のうちに全弾相手に叩き込むことができる唯一の銃種であった。その利便性も本銃をヒット商品とせしめた要因でもある。
しかしながら本銃は、そのレンコン型の発射システムが故に口径の大型化を行うとフロントヘビーになるのは必然で、それ以上の発展が望めず、更には薬莢式（カートリッジ式）のコルト・シングル・アクション・アーミーにみられるような高性能な拳銃が安価で台頭してきたせいもあって、急速に衰退し、1850年代後半にはそのほとんどがその姿を消す事になる。そういう意味で、このペッパーボックスピストルという拳銃は、単発式拳銃から、近代的な商用リボルバー拳銃に移行するまでの黎明期を立派に埋めた銃種であったということが言える。
[編集] 衰退後から現代までのペッパーボックスピストル
衰退後においても、米国では上記したような歴史もあり、同様の複数銃身を持つ拳銃の事を「ペッパーボックスピストル」とよく呼称する。現代ではすっかり衰退した銃種ではあるが、衰退後も一部で必要性によるものや近代技術を使用したペッパーボックスピストルがなおも製造され、現代でも使用されているのも事実である。以下にその数少ない銃を列記。
- 4連シャープスポケットピストル[1]
アレン社のペッパーボックスピストル衰退後も、小型連発拳銃としての可能性を持つ銃種であることは確かで、超小型の「ポケットピストル」と呼ばれる銃種でその後も残った。シャープスはその代表的な銃である。製造は1860年代と古い銃ではあるが、セレブな婦人が現代でも装飾品がわりに所持することがある銃である。
- COP357[2]
米国のマイナーメーカーCOP社の製造した357マグナム弾を発射できるポケットピストル。4連装銃身を持つ銃で先鋭的なデザインを持つ銃でもある。そのデザインからSF映画などでも使用され、有名な物では「ブレードランナー」「マトリックス2」などで登場している。
ドイツのヘッケラー&コッホ社が開発した水陸両用ピストルで、特殊部隊などで使用する秘密兵器の一種である。その5連発銃身を電気発火させて発射する希有なシステムを持つ銃で、弾倉交換として全弾発射後は、その銃身の束ごとフレームから外して入れ替えするというなんとも豪快な装弾システムを持つ銃である。
- SPP-1M[5]
ロシア軍が開発した4連発水陸両用ピストル。上記P-11と同種のモノである。薬莢の先に異様に長い弾頭を装備した弾薬を使用するのが特徴。いわゆる水中銃の発射ソースを火薬にし、陸上でも使用可能とした銃である。最近まで極秘兵器扱いだったので、現在でもその開発経緯の詳細は充分に知られていない。
[編集] 豆知識
現代でも、上記したアレン社に見られる打管式拳銃は米国で容易に入手可能である。はっきりいえば、この手のペッパーボックスピストルは、いわゆる「ブランド品」というものが存在せず、アレン社自身もその例に漏れない。更には、あまりに当時大ヒットし、超大量生産された銃種であるが故にその残存銃自体が巷にあふれかえっている。アレン社と同年代に造られた同種の銃は、いわゆる「古式銃」に該当するため、米国でもそのカテゴリーでオークションや骨董銃店などで販売されているが、その価格も相当良い品質の1850年代以前の商品でも日本円で6万円程度の物である。ヨーロッパ製はもう少し高額であるが、米国製はとにかく安い。
そしてこれは本項記事筆者自身が自治体教育委員会と会話し、担当者との会話確認事項として書くが、日本でも厳密に法的解釈で考えるには、このパーカッション式ペッパーボックス銃は古式銃として輸入可能である。その際、当時の銘柄の刻印など、古式銃輸入に際する必要事項が必要であるが、（アレン社のペッパーボックスは刻印が打たれていることを確認している）いかんせん日本でこの種の古式銃の輸入実績が皆無に近い事と、アメリカで歴史的価値を持つ銃であっても日本での価値は？という点がある。しかしながら実銃としてはモデルガン以下の今日では実用性の皆無な銃であることも理解しているため、実際は各自治体の税関事務所の個別判断によるのではないか？との事であった。
[編集] ペッパーボックスピストルの登場するメディア作品
- ブレードランナー（映画・COP357）
- マトリックス2（映画・COP357）
- 西部劇・マカロニ・ウエスタン各作品群（映画・TVドラマ・イーサンアレンモデル他多数）
- トゥームレイダー2（映画・H&K P-11）
- 水戸黄門（TV時代劇・作品オリジナルモデル）
[編集] 参考写真
- 1830年代の典型的なペッパーボックスピストル[6]
