ヤード・ポンド法
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ヤード・ポンド法は、英語圏諸国で使用されている単位系である。
「ヤード・ポンド法」という名称は、長さはヤード、質量はポンドを基本となる単位としていることによる日本での名称で、和製英語のようなものである。英語では、イギリスの大英帝国時代に定められたことからImperial unit(帝国単位)と呼んでいる。アメリカ合衆国で使われている単位系はU.S. customary unit(米慣習単位)といい、歴史的経緯により同じ単位名称でも値が異なるものが使用されている。本項では、イギリスの帝国単位とアメリカ合衆国の米慣習単位の両方について説明する。
ヤード・ポンド法は、西洋で古代から使われ変遷してきた単位の延長線上にあるものである。すなわち、イギリス以外のヨーロッパ諸国でも、かつてはヤード・ポンド法と発祥を同じくする、それと似たような単位(ただし名称は言語により異なる)を使用していた。それらの国は早いうちにメートル法へ完全移行したため、20世紀までには、ヤード・ポンド法およびそれに類する単位系を常用する国は、主要国ではイギリスとアメリカ合衆国くらいとなった。
イギリスの帝国単位は1824年の度量衡法(Weights and Measures Act)によって初めて法的に定義され、以降、改正が加えられた。その単位系はイギリスの当時の植民地および英連邦諸国でも使われたが、その時既にアメリカ合衆国はイギリスから独立していた(英連邦にも入っていなかった)ため、イギリスの度量衡法は導入されていない。イギリスとアメリカ合衆国とで基本となる単位の値にわずかな違いがあったため、1958年にメートル法の単位を基準とした同じ値(1ポンド=0.453 592 37キログラム、1ヤード=0.9144メートル)を採用することを協定した。イギリスでは1995年に国際単位系に移行し、ヤード・ポンド法の単位は一部を除いて2000年から使用を禁止しているが、今でもメートル法の使用に反対する人たちがいる(Anti-metric movement)。
アメリカ合衆国は、1875年に締結されたメートル条約の原加盟国であり、以降法律上はメートル法を公式の単位系としている。ヤード・ポンド法をcustomary unit(慣習的な単位)と呼んでいるのはそのためである。しかし、メートル条約加盟から1世紀以上たっているが、今日でもアメリカ合衆国では一般にはヤード・ポンド法の方が広く使用されている。1992年以降、日常的に使用する単位をメートル法(国際単位系)へ移行するための政府の取り組みもあるが、法的にはヤード・ポンド法の使用は禁止されていない。アメリカ合衆国でも、メートル法への移行に反対する運動が起きている。今日、ヤード・ポンド法の使用が禁止されていないのは、アメリカ合衆国のほかミャンマー、リベリアのみである(ただし、後者2か国では民間主導でメートル法への移行が行われ、今日ではヤード・ポンド法はほとんど使用されていない)。
アメリカ合衆国がいまだにヤード・ポンド法を使用しているため、メートル法に移行した国の多くでも、アメリカ合衆国の強い影響下にある分野(航空、宇宙分野など)に限定してヤード・ポンド法の使用を法的に認めざるを得なくなっている。また、それ以外の分野についても、ヤード・ポンド法の単位が使用されていたり、メートル法であってもヤード・ポンド法の単位の整数倍の値が使われていたりする。
日本では、明治42年(1909年)にヤード・ポンド法の使用が認められた。大正10年(1921年)に使用が禁止されたものの、戦後、再び使用が認められた。昭和34年(1959年)1月1日より計量法によりメートル法のみを使用することとなり、尺貫法とともにヤード・ポンド法の使用は禁止された。
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[編集] 単位
[編集] 長さ
ヤードが基本単位とされているが、実際にはフィートを元に組み立てた単位の方が多い。
- 1バーレイコーン(barleycorn) = 1/3インチ = 約8.467 mm
- 1インチ(inch, in) = 1/12フィート = 2.54 cm
- 1フィート(単foot, ft/複feet, ft) = 1/3ヤード = 30.48 cm
- 1ヤード(yard, yd) = 0.9144 m (定義)
- 1ポール(pole) = 5.5ヤード = 5.0292 m
- 1チェーン(chain) = 4ポール = 20.1168 m
- 1ハロン(furlong) = 10チェーン = 201.168 m
- 1マイル(mile) = 8ハロン = 1760ヤード = 1.609344 km
- 1リーグ(league) = 3マイル = 4.828032 km
[編集] 面積
長さの単位の平方(平方フィート、平方マイルなど)が使用されるが、それとは別の定義による以下の単位がある。
- 1ルード(rood) = 1ポール×1ハロン = 1210平方ヤード(yd2) = 1011.7141056 m2
- 1エーカー(acre) = 1チェーン×1ハロン = 4ルード = 4840平方ヤード(yd2) = 4 046.856 422 4 m2
[編集] 容積
ガロンを基本の単位とする。ヤード・ポンド法では、液体用(液量ガロン)と穀物用(乾量ガロン)で異なるガロンを用いている(乾量単位・液量単位を参照)。さらに、イギリスとアメリカではガロンの値が異なる。イギリスでは液体用と穀物用の単位を統一しているので、全部で3種類のガロンがあることになる。さらに、それぞれのガロンの分量・倍量単位として、同じ名前の異なる単位が存在することになる。
以下に示すのは英ガロンによる値である。
- 1液量オンス(fluid ounce, fl oz) = 1/5ジル = 28.413 062 5 mL
- 1ジル(gill) = 1/4パイント = 142.065 312 5 mL
- 1パイント(pint, pt) = 1/2クォート = 20液量オンス = 568.261 25 mL
- 1クォート(quart, qt) = 1/4ガロン = 1.136 522 5 L
- 1ガロン(gallon, gal) = 4.546 09 L(定義)
- 1ペック(peck) = 2ガロン = 9.092 18 L
- 1ケニング(kenning) = 2ペック = 18.184 36 L
- 1ブッシェル(bushel) = 8ガロン= 2ケニング = 36.368 72 L
- 1ファーキン(firkin) = 9ガロン = 40.914 81 L
- 1キルダーキン(kilderkin) = 18ガロン = 81.829 62 L
- 1バレル(barrel) = 36ガロン = 163.659 24 L
- 1ホッグズヘッド(hogshead) = 54ガロン = 245.488 86 L
- 1クォーター(quarter) = 8ブッシェル = 64ガロン = 290.949 76 L
米液量ガロンでは以下のようになる。
- 1液量オンス = 29.573 529 562 5 mL
- 1パイント = 1/2クォート = 16液量オンス = 473.176473 mL
- 1クォート = 1/4ガロン = 946.352 946 mL
- 1ガロン = 3.785 411 784 L(定義)
- 1バレル = 31.5ガロン = 119.240 471 196 L
国際的に原油の計量に用いられるバレルは、42米液量ガロン(158.987 294 928 L)である。
[編集] 質量
ポンドを基本単位とする。質量の単位には常衡・トロイ衡(金衡)・薬衡の3つの系統がある。普段用いられるのは常衡による単位であり、トロイ衡・薬衡については「トロイ」「薬用」を単位名称の前につける(常衡であることを明示する場合には「常用」をつける)。どの系統でもグレーンの値は同じであり、ポンドがその何倍であるかが異なる。薬衡は今日ではほとんど用いられておらず、トロイ衡もトロイオンス以外は用いられていない。
ハンドレッドウェイトは100ポンドであることに由来する名称であるが、イギリスでは間にストーンが挿入されたため、1ハンドレッドウェイトは112ポンドとなっている。アメリカでは今でも100ポンドである。その上のトンの値の違いは、ハンドレッドウェイトの違いによるものである。区別のため、イギリス(英トン)のものはlong/gross、アメリカ(米トン)のものはshort/netが単位名称の前につけられることがある。
- 1グレーン(grain) = 0.064 798 91 mg
- 1ドラム(drachm) = 1/16オンス = 1.7718451953125 g
- 1オンス(ounce, oz) = 1/16ポンド = 28.349 523 125 g
- 1ポンド(pound, lb) = 7000グレーン = 0.453 592 37 kg(定義)
- 1ストーン(英)(stone) = 14ポンド = 6.350 293 18 kg
- 1クォーター(英)(long quarter) = 2ストーン = 28ポンド = 12.700 586 36 kg
- 1クォーター(米)(short quarter) = 25ポンド = 11.339 809 25 kg
- 1ハンドレッドウェイト(英)(long hundredweight) = 4クォーター = 112ポンド = 50.802 345 44 kg
- 1ハンドレッドウェイト(米)(short hundredweight) = 4クォーター = 100ポンド = 45.359 237 kg
- 1トン(英)(long ton) = 20ハンドレッドウェイト = 2240ポンド = 1 016.046 908 8 kg
- 1トン(米)(short ton) = 20ハンドレッドウェイト = 2000ポンド = 907.184 74 kg
[編集] 日本でヤード・ポンド法が使われている分野
※正式には日本国内の商取引でインチやフィートなどの単位は使えないため、テレビ受像機などの商品などへの記載は「○(インチ)型」などという表記をしている。
- IC,LSI、関連電子部品(特に端子間隔でインチを単位としている)
- テレビ受像機、ディスプレイモニタ(ブラウン管や液晶などの表示部の対角寸法でインチ)
- ハードディスク(媒体の直径。3.5インチ(約8センチ)、2.5インチ(約6センチ)など)
- フロッピーディスク、光磁気ディスク(媒体の直径。8インチ(約20センチ)、5インチ(約12センチ)、3.5インチ(約8センチ)など)
- 磁気テープ(媒体幅でインチ。長さの単位ではフィート)
- コンピュータ関連の、コネクタなど多くの構成部品
- アメリカ製自動車の、ネジなど構成部品
- 自転車や自動車のタイヤ(ホイールの直径をインチで表す)
- 一部の食品関係の容量(473、946ミリリットル)※アメリカ占領時代の名残として沖縄に多くみられる。
- 航空交通管制(飛行機の飛行高度をフィートで表現)
- 映画用フィルム(媒体の長さをフィートで表す。幅はミリ)
- 陸上競技のハードルの高さやレーンの幅、砲丸投げ等の重さ。
- 印刷関係(用紙のサイズ、ドットピッチ(dpi)等)。
- ボウリングにおいて、ボールの質量の単位としてポンドが使われる。
- ゴルフやアメリカンフットボールにおいて、距離の単位としてヤードが使われる。
- ルアーフィッシング、フライフィッシングで使われるルアーの重さや長さ、竿(ロッド)の長さ等。
- 等