ラクダ
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ラクダ | ||||||||||||||
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ラクダ(らくだ 駱駝)は、哺乳類・ウシ目(偶蹄目)・ラクダ科・ラクダ属 Camelus の動物の総称。現生では、西アジア原産で背中に1つのこぶをもつヒトコブラクダ Camelus Dromedarius と、中央アジア原産で2つのこぶをもつフタコブラクダ Camelus ferus の2種が生存している。ヒトコブラクダの個体群は完全に家畜個体群に飲み込まれ、野性個体群は残存していない。辛うじてオーストラリアで二次的に野生化した個体群から、野性のヒトコブラクダの生態のありさまを垣間見ることができる。フタコブラクダも家畜個体群が圧倒的に優勢だが、若干の野性個体群が残存している。
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[編集] 体の構造
背中のこぶの中には脂肪が入っており、エネルギーを蓄えるだけでなく、断熱材として働き、汗をほとんどかかないラクダの体温が日射によって上昇しすぎるのを防ぐ役割もある。いわば、皮下脂肪がほとんど背中に集中したような構造になっており、背中からの日射による熱の流入を避けるとともに、背中以外の体表からの放熱を促す構造になっているわけである。こぶの中に水が入っているというのは、長期間乾燥に耐えることから牽強付会された伝説に過ぎない。ただし、水を一度に80リットル程度摂取することが可能である。
ラクダは砂漠のような乾燥した環境に適応しており、水を飲まずに数日間は耐えることができる。 砂塵を避けるため、鼻の穴を閉じることができ、目は長い睫毛(まつげ)で保護されている。
他の偶蹄目の動物と同様、ラクダは側対歩(同じ側面の前後肢を出して歩く)をする。しかし、偶蹄目の特徴が必ずしもすべて当てはまるわけではなく、偶蹄目の他の動物などのように、胴と大腿部の間に皮が張られてはいない。また、偶蹄類の多くは4室の胃をもつが、ラクダには第3の胃と第4の胃の区別がほとんどない。ラクダ科は遺伝子解析による分析では偶蹄目の中でもかなり早い時期に他のグループから分岐しており、同じように反芻をするウシやヒツジ、ヤギなどは、ラクダ科よりもむしろイノシシ科やカバ科、クジラ目の方に近縁であることが明らかになっている。
ラクダの蹄(ひづめ)は小さく、指は2本で、5本あったうちの中指と薬指が残ったものである。
[編集] 酷暑・乾燥に耐える生理機構
ラクダの酷暑や乾燥に対する強い耐久力については様々に言われてきた。特に、長期間にわたって水を飲まずに行動できる点については昔から驚異の的であり、背中のこぶに水を蓄えているという話もそこから出たものである。体内に水を貯蔵する特別な袋があるとも、胃に蓄えているのだとも考えられたが、いずれも研究の結果否定された。
実際には、ラクダは血液中に水分を蓄えていることがわかっている。ラクダは一度に80リットル、最高で114リットルもの水を飲むが、その水は血液中に吸収され、大量の水分を含んだ血液が循環する。ラクダ以外の哺乳類では、血液中に水分が多すぎるとその水が赤血球中に浸透し、その圧力で赤血球が破裂してしまうが、ラクダでは水分を吸収して2倍にも膨れ上がっても破裂しない。また、水の摂取しにくい環境では、通常は34~38度の体温を40度くらいに上げて、極力水分の排泄を防ぐ。また、人間の場合は体重の1割程度の水が失われると生命に危険が起こるが、ラクダは4割が失われても生命を維持できる。
[編集] 人間との関わり
ラクダは『砂漠の舟』とも呼ばれ、アラブ世界では自動車が普及するまで、重要な移動手段であった。ラクダを最初に家畜化したのは古代のアラム人ではないかと考えられている。アラム人はヒトコブラクダを放牧する遊牧民、あるいはラクダを荷物運搬に使って隊商を組む通商民として歴史に登場した。また、肉用、乳用として利用されるほか、皮をなめして用いたり、毛は織物、縄、絵筆などに利用される。特に寒冷な中央アジアのフタコブラクダの毛は織物の素材として優秀である。かつては木材が貴重品である乾燥地帯では、ラクダの糞が貴重な燃料でもあった。
アラブ首長国連邦などでは、ヒトコブラクダのレースである競駝(けいだ)が盛んに行われている。競馬のように、オス、メス、年齢別でレースが行われる。レース距離は5-10kmと、競馬に比べると長距離である。