万有引力
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万有引力(ばんゆういんりょく、Universal gravitation)は、単に重力ともいい、質量を持つ物質・エネルギーなどの間に働く作用。アイザック・ニュートンが発見した。電磁気力では引力と斥力があるのに対し、重力(万有引力)では引力しか存在しないとされている。
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[編集] ニュートン力学と重力
ニュートン力学では万有引力の作用は万有引力の法則(逆2乗の法則)に従い、瞬時すなわち無限大の速度で伝わるとされた。
2つの物体の間には、互いに逆方向の引力が働き、その力の大きさFは次の式で与えられる。 ここで、Gは万有引力定数、物体の質量はM,m、物体間の距離をdとする。
大きな惑星の地上付近での惑星と小さな物体間に働く引力は、dの変化が誤差の範囲とみなせることから、次のように簡略化された式を用いる。
F = mg
ここで、mは惑星にある小さな物体の質量、gは重力加速度である。gは惑星の質量Mと半径d、および万有引力定数Gから
のように計算され、地球表面では約9.8m/s2である。なお、地球の半径は約6400kmであるので、上記の式から地球の質量を
kg
のように求めることができる。
[編集] 一般相対性理論と重力
アルベルト・アインシュタインの重力理論である一般相対性理論(一般相対論)では、重力場の方程式(アインシュタイン方程式)に従い、真空中では光速度で伝わると考えられている。一般相対性理論では、万有引力はもはやニュートン力学的な力ではなく、重力場という時空の歪みであると理解される。
なお、一般相対論の発表当時はハッブルによる膨張宇宙の発見前で、宇宙は静的で安定していると考えられていた。このためアインシュタインは万有引力に拮抗する万有斥力があると想定し、重力場の方程式に宇宙項を導入した。後に彼は宇宙項を「生涯最大の過ち」と悔いるが、このアイデアは現在の宇宙のインフレーション説として復活することになった。
[編集] 素粒子物理学と重力
素粒子物理学では、素粒子間に働く重力相互作用とみなされ、重力子(グラヴィトン)という粒子により媒介するとみなされる。自然界に存在する四つの基本的な相互作用のひとつである。
[編集] 量子重力
近年では、量子力学と一般相対性理論の結合、重力の量子化が試みられ、量子重力と呼ばれている。格子重力などさまざまな試みがあるが、実現は困難である。量子重力を宇宙論に適用する試みは、量子宇宙論と呼ばれる。