人間の盾
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人間の盾(にんげんのたて)(Human Shield)とは、軍事用語であり、一般市民を利用することにより、敵にある目標物(特に軍事的な目標物)の攻撃を思いとどまらせることをいう。
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[編集] 概説
国際法では、人間の盾を使って軍事目標を守ることは、戦争犯罪であるとみなされている。しかし、最近では、一般市民や、標的にされる市民を守るための反戦戦略として、一般市民の志願者(ボランティア)たちが、人間の盾を利用するということが、増えている。
また、兵士たちが攻撃されるのを遮蔽するために、一般市民が、文字通り、人間の盾として使われる場合もあるかもしれない。「人間による波状攻撃」(?)の間、兵士たちの前を、一般市民に歩かせる、といったように。もちろん、一般市民の死傷率も極めて高く、この戦術の使用は、極めて非合法的である。第二次世界大戦中に、ソ連が使用したという実例がいくつかある。イスラエル軍もまた、2002年のジェニンの侵攻で、この戦術を著しく使っていたということが報告されている。
この戦術は、1994年に、ボスニアのセルビア人によって、また、1990年のイラクによっても使われた。反戦活動家の中には、2003年のイラク侵攻の前に、人間の盾になるために、志願して標的区域に入った人がいた。
[編集] 問題点
パレスチナ自治区では、NGOの国際連帯運動(International Solidarity Movement)のメンバーらは「人間の盾」として様々な活動に従事している。パレスチナ人の家々が、イスラエルのブルドーザーで破壊されるのを、身体を張って阻止し、またパレスチナ人の子供たちの通学へ同行したりしている、と主張する。これらの場合、守られた標的は、一般市民であると一般的に考えられている。西洋人のレイチェル・コリー(アメリカ)や、トーマス・ハーンドール(ロンドン)は、そのような活動中に、それぞれ、2003年の3月と4月に死亡した。しかし、ISMのメンバーの中には、彼らの仕事に対して、「人間の盾」という言葉を使うことに反対している人がいる。彼らのように、志願して盾となり、一般市民を守ることと、イスラエル防衛軍(Israel Defense Forces)が、自らの軍事標的を守るために、捕らえられたパレスチナ人を盾として使用することを、同じ人間の盾という言葉を使って表現することは不適切であると主張している。
盾が、個人ではなくて、全住民である場合は、集団的な「人間の盾」として利用される。この場合、普通、非合法の武装集団(テロリスト組織であることはめったにないだろう)が使用する。彼らは、作戦の基礎と本部を、一般市民の集団の中におく。ほとんどの場合、高度に密集した都市環境におく。彼らがそうするのは、軍隊が、彼らを攻撃するのを防ぐためである。戦闘中に、罪のない、迂回している一般市民を、偶発的に殺してしまう恐れがあるからである。
このように実行するもう一つの理由は、世界のメディアを利用するためである。巻き添えを食らって死んだ一般市民の写真やビデオが、彼らの格好の宣伝(プロパガンダ)の対象になるからである。
なお余談ながら人間の盾というのは現在精密攻撃ができるアメリカなどが相手では、簡単に破ることができる。攻撃目標は大抵が軍事施設である。その軍事施設に事前に攻撃する日時を相手側に通告し、実際にその定刻通りに攻撃をする。これにより「事前に日時を知らせて攻撃しているのだから、その攻撃目標に人が市民がいて犠牲になるのはそちらの責任だ」と主張できるため、現在では人間の盾は意味がない。
よって、イラク戦争などでは人間の盾になるため入ってきた人間を、イラク側はスパイ扱いした。もちろん当初の予定の人間の盾という行為も前述の理由からできなく、結局何もできず、傍観して自国に帰り、「イラクではこんなにひどい目にあっています」と講演するなど自己満足に終わっているケースが多い。
なかには人間の盾にはなれないと知りつつ、「イラク戦争を間近で見たいという」という欲求の為に人間の盾に志願して、イラクに入国する者もいた。(これにはジャーナリストも含む)