四次方程式
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四次方程式(よじほうていしき)とは、次数が 4 であるような代数方程式の事である。この項目では主に一変数の四次方程式を扱う。
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[編集] 概要
一変数の四次方程式は
- a4 x4 + a3 x3 + a2 x2 + a1 x + a0 = 0, (a4 ≠ 0)
の形で表現される。 a4 で割り
- x4 + A3 x3 + A2 x2 + A1 x + A0 = 0, ( An = an / a4)
の形にしても根は変わらないのでこの形で論じられることが多い。
一般的な四次方程式の解法は、カルダノの弟子であるルドヴィコ・フェラーリ(Ludovico Ferrari, 1522-1565)によって発見され、カルダノの著書『アルス・マグナ』で概要が述べられた。カルダノは x, x2, x3 を、線分の長さ、一辺の長さが x の正方形の面積、一辺の長さが x の立方体の体積と対応させてとらえ、 4 次以上の方程式には意味がないと考えていたため 三次方程式と違って詳細には述べられていない。
しかし、デカルトは著書『方法序説』において定規とコンパスによる作図を論じ、長さ x の線分、長さ y の線分、長さ 1 の線分から長さ x y の線分が得られることを示している。これによって、長さ x の線分と長さ 1 の線分から長さ xn ( n は任意の自然数)の線分の作図が可能であることが分かるため 4 次以上の方程式を解くことにも幾何学的な意味を与えることは可能であり、カルダノのとらえ方は不十分であることが分かる。
その後、四次方程式は三次方程式と同様に様々な解法が与えられ、五次方程式の代数的解法の探索と合わせて詳しく調べられた。
[編集] 複二次式
四次方程式において奇数次の項が無い
- a4 x4 + a2 x2 + a0 = 0 (a4 ≠ 0)
の形の式は x2 を変数とする二次方程式と見ることができ、複二次方程式 ( biquadratic equation) あるいは単に複二次式と呼ばれる。二次方程式の解法を知っていれば簡単に解くことができる。
y = x2 と変換することで y に関する二次方程式
- a4 y2 + a2 y + a0 = 0
を得ることができ、この二次方程式を解くことによって根を求めることができる。
また、実数を係数とする複二次式
- x4 + A2 x2 + A0 = 0
に対して、次のような二次式の積への因数分解もよく行われる。 x2 の二次方程式とみたときの判別式
- D = A22 − 4 A0
の符号によって
D > 0 であれば x2 について平方完成することにより
D < 0 であれば A0 > 0 であることに注意して
と変形すれば、いずれの場合も因数分解の公式
- α2 − β2 = (α + β) (α − β)
を利用して実数を係数とする二次式の積に因数分解できる。
[編集] フェラーリの方法
フェラーリの方法は、一般的な四次方程式の解法のうちで最初に与えられた解法である。四次方程式
- a4 x4 + a3 x3 + a2 x2 + a1 x + a0 = 0 (a4 ≠ 0)
を a4 で割り
- x4 + A3 x3 + A2 x2 + A1 x + A0 = 0
の形にする。( An = an / a4)
とし
- x = y − B3
によって変数変換を行うと
- y4 + (A2 − 6 B32) y2 + (A1 − 2 A2 B3 + 8 B33) y + (A0 - A1 B3 + A2 B32 − 3 B34) = 0
のように三次の項が消えた方程式が得られる。見やすいように
- y4 + p y2 + q y + r = 0
と書く。 q = 0 の時は、 複二次式として解けばよいので、以後は q ≠ 0 とする。
媒介変数 u ≠ 0 を用い
- y4 + (p + u)y2 + r = u y2 − q y
と変形する。ここで左辺を y2 の二次式、右辺を y の二次式と見てそれぞれ平方完成することによって
ここで u の三次方程式
- u (p + u)2 − 4 r u = q2
を考える。このような補助的な方程式を、与えられた四次方程式に関する三次分解方程式(resolvent cubic equation) という。 q ≠ 0 なので、この分解方程式の解は u ≠ 0 を満たしており、この解の一つを u として取れば、求める四次方程式は
となり、この 2 つの二次方程式から、四次方程式の根を求めることができる。
[編集] デカルトの方法
デカルトは、著書『方法序説』において四次方程式
- y4 + p y2 + q y + r = 0
の解を求めるために、二次式による因数分解
- y4 + p y2 + q y + r = (y2 + c1 y + c0) (y2 + d1 y + d0)
を仮定した方法を奨めた。係数比較によって
- c1 + d1 = 0
- c0 + d0 + c1 d1 = p
- c1 d0 + c0 d1 = q
- c0 d0 = r
が得られる。上の 3 つの式から
- d1 = − c1
- 2 c0 c1 = c13 + p c1 − q
- 2 d0 c1 = c13 + p c1 + q
が得られる。
- 4 c12 r = 4 c12 c0 d0 = (2 c0 c1)(2 d0 c1) = (c13 + p c1 − q)(c13 + p c1 + q)
であるから
- c12( c12 + p)2 - q2 = 4 c12 r
という c1 に関して 6 次の方程式が得られる。偶数次の項しか無いので u = c12 とでもおけば
- u( u + p)2 - q2 = 4 r u
という u に関する三次方程式が得られる。この方程式は、フェラーリの方法で得たのと同じ三次分解方程式であり、これを解くことによって、元の方程式の根を得ることができる。
[編集] オイラーの方法
オイラーは、三次方程式や四次方程式の解法をいくつか与えている。ここに述べる方法もオイラーの方法と呼ばれる解法の一つである。
- (x + a + b + c) (x + a − b − c) (x − a + b − c) (x − a − b + c)
- = ((x + a)2 − (b + c)2) ((x − a)2 − (b − c)2)
- = (x2 − a2)2 + (b2 − c2)2 − (x + a)2 (b − c)2 − (x − a)2 (b + c)2
- = x4 + a4 + b4 + c4 − 2 (x2 a2 + x2 b2 + x2 c2 + a2 b2 + b2 c2 + c2 a2) + 8 x a b c
- = x4 − 2 (a2 + b2 + c2) x2 + 8 a b c x + a4 + b4 + c4 − 2 (a2 b2 + b2 c2 + c2 a2)
という等式を用いると x を変数とする四次方程式
- x4 − 2 (a2 + b2 + c2) x2 + 8 a b c x + a4 + b4 + c4 − 2 (a2 b2 + b2 c2 + c2 a2) = 0
の根は a, b, c を用いて
- − a − b − c, − a + b + c, a − b + c, a + b − c
の 4 つであることが分かる。
この方程式と、 3 次の項の消えた四次方程式
- x4 + p x2 + q x + r = 0
の係数を比べ、 p, q, r から a, b, c を求めることができれば、 3 次の項の消えた四次方程式の根は上にあるように 4 つ求まる。
実際に係数を比べてみれば
- p = − 2 (a2 + b2 + c2)
- q = 8 a b c
- r = a4 + b4 + c4 − 2 (a2 b2 + b2 c2 + c2 a2) = (a2 + b2 + c2)2 − 4 (a2 b2 + b2 c2 + c2 a2)
ここで f0 = (2 a)2, f1 = (2 b)2, f2 = (2 c)2 とおけば
- f0 + f1 + f2 = − 2 p
- f0 f1 + f1 f2 + f2 f0 = p2 − 4 r
- f0 f1 f2 = q2
となり、根と係数の関係により f0, f1, f2 は三次方程式
- u3 + 2 p u2 + (p2 − 4 r) u − q2 = 0
の解であり、これもフェラーリの方法に現れた三次分解方程式である。この三次方程式を解くことによって a, b, c が得られる。
[編集] ラグランジュの方法
ラグランジュは、既に知られていた三次方程式や四次方程式の解法を、いろいろな視点から詳しく調べ上げた。ここで述べるのは、ラグランジュによるフェラーリの方法の解釈であり、現代的に言えば対称群を用いた方法である。
フェラーリの方法において、四次方程式は
- y4 + p y2 + q y + r = 0
の形に変形される。この方程式の 4 つの根を r0, r1, r2, r3 とする。三次分解式を解くことで四次方程式は、 2 つの二次方程式
に分解することができた。
は、元の四次方程式の 4 つの根のうちの 2 つを根とするが、これをとりあえず r0, r1 の 2 つとしたとき、
の根は r2, r3 となり、根と係数の関係から
したがって
- (r0 + r1) (r2 + r3) = − u
便宜上
の根を r0, r1 としたが、根の並び方はいろいろ考えられる。 rm と rn を入れ替える互換を σm,n と書けば、例えば
- σ0,1 (r0 + r1) (r2 + r3) = (r0 + r1) (r2 + r3)
- σ0,2 (r0 + r1) (r2 + r3) = (r2 + r1) (r0 + r3)
など、一般には異なる値を取ることになる。このように調べていくと 4 つの根の並び方は 4! = 24 通りあるが
- (r0 + r1) (r2 + r3) = − u
の値は、最初の根の並べ方によって
- s0 = (r0 + r1) (r2 + r3)
- s1 = (r0 + r2) (r1 + r3)
- s2 = (r0 + r3) (r1 + r2)
の 3 通りとなる。
例えば、互換 σ0,1 を作用させると、
- σ0,1 s0 = s0
- σ0,1 s1 = s2
- σ0,1 s2 = s1
となる。
一般に、互換 σm,n は s0, s1, s2 の並び替えしかしないため s0, s1, s2 に関する基本対称式
- s0 + s1 + s2
- s0 s1 + s1 s2 + s2 s0
- s0 s1 s2
は、互換 σm,n によって不変であり、 r0, r1, r2, r3 の基本対称式で書けることになる。
- すなわち s0, s1, s2 の基本対称式は、最初に考えた四次方程式の係数 p, q, r で書ける。
以上の事から
- u = − (r0 + r1) (r2 + r3)
は、根の並べ方によって 3 つの値 − s0, − s1, − s2 をとり、これらを根とする方程式
- (u + s0) (u + s1) (u + s2) = 0
の左辺は u についての多項式として展開すると、その係数が p, q, r の多項式として書ける式である。この u に関する三次方程式こそ、フェラーリの方法で三次分解方程式として求められた方程式に他ならない。
このようにして、ラグランジュは、四次方程式を解くための補助方程式である三次分解方程式の次数が三次である理由を、根の置換という立場からはっきりと示した。五次以上の代数方程式の代数的解法の存在については、ルフィニ、コーシー、アーベルらの研究によって否定されることになるが、彼らの研究は、このようなラグランジュの研究を源流としている。
[編集] 関連項目
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