地球近傍天体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
地球近傍天体(ちきゅうきんぼうてんたい)とは、地球に接近する軌道を持つ天体(彗星、小惑星、大きい流星体)の総称。英語でNEO (Near Earth Object) と呼ばれることもある。地球に接近することから衝突の危険性を持つ反面、地球からの宇宙船が容易に到達しやすく(月よりはるかに少ない速度増分 (ΔV) で済むものもある)、今後の科学的調査と商業開発において重要になると考えられている。
NASAは1km以上の全ての地球近傍天体をリストに載せる議会命令を公布した。この大きさもしくはそれ以上の大きさのNEOは、地球に衝突すると地球単位の重大な災害を引き起こす。これまでにおよそ500個の危険性があるNEOが発見された。最も広く受け入れられた見積りによると、まだ見つけられていない地球近傍天体が500個以上もあると見られている。アメリカ、EUおよび他の国は現在、地球近傍天体のためにスペースガードという捜索プロジェクトで捜索を続けている。なお、現在調査されていない全天の約30%をカバーするために、オーストラリアで既存の望遠鏡を利用する動きが進められている。
種類とサイズに従った地球近傍天体の分類
[編集] NEOの総数
2004年4月18日現在、2808個が発見されている。このうち彗星が49個、アテン型小惑星が217個、アモール型小惑星が1114個、そしてアポロ型小惑星が1427個である。このうち708個は直径が1km以上ある。
[編集] 衝突の危険性の見積もり
天体が地球に衝突する危険性の見積もりは2つある。
- トリノ・スケール (Torino scale) ……計算が簡単。
- パレルモ・スケール (Palermo Technical Impact Hazard Scale) ……計算が複雑。
2004年12月25日に、小惑星 (99942) アポフィスはこれまでで最大のトリノ・スケール4と認定された。2004年12月27日の時点で、2029年4月13日に2.7%の確率で地球に衝突すると報じられたが、12月28日、さらなる計算の結果、衝撃の危険はおよそゼロまで落ちた(トリノ・スケールも0になった)。 トリノ・スケール1以上の小惑星は2053個あるが、その数は観測の数が増えるにしたがって低下すると予想されている。
現在、パレルモスケールが最大と予想される小惑星は (29075) 1950 DAであり、2880年3月16日に地球と衝突すると予想されている (p≤0.3%)。 この衝突が起こると、1950 DAとの衝突で放出されたエネルギーは地球の生物の大量絶滅を引き起こすであろう。しかし、人類には1950 DAの軌道の見積りを改良し、必要ならばその向きをそらすための時間が800年以上ある。
NASAは、the most significant NEO threatsで今後100年間で地球に衝突する危険性がある小惑星のリストを公開している(1950 DAは含まれない)が、そのうちほとんど全ては軌道計算の確定に伴いリストから外れる公算である。
[編集] NEOのニアミス
2004年3月18日、2004 FH(直径30m)が地球の上空約4万3000km上を通過し、地球近傍天体の地球への接近記録を更新した。天文学者たちは接近の3日前に発見していた。検出から最接近までの時間は一見短いかもしれないが、2004 FHは非常に小さい。このような、地球単位の災害を及ぼす可能性があるNEOははるかに早く見つけられるだろう。
そのわずか2週間後の3月31日、2004 FU162は地球の上空6,500kmを通過し、2004 FHの記録を大幅に塗り替えた。この小惑星が検出されたのは最接近のわずか9時間前だったが、推定直径10mと非常に小さかったので、地球に突入したならば大気圏中で無事に燃え尽きたと予想されている。
これら2つと同じくらい小さい天体は、小惑星というよりむしろ流星体として分類される。