宇宙戦士バルディオス
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『宇宙戦士バルディオス』(うちゅうせんしバルディオス)は、1980年(昭和55年)6月30日から1981年(昭和56年)1月25日まで東京12チャンネル系で毎週月曜日18:45 - 19:15(13話まで)、毎週月曜日19:00 - 19:30(14~18話)、毎週月曜日7:00 - 7:30(19話から)に全31話が放送された、葦プロダクション・国際映画社製作のロボットアニメ。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ストーリー
S-1星は、戦乱の結果、放射能汚染に冒され、最早生活のできない惑星と化していた。皇帝トリノアミス3世は、打開のため軍部と科学者たちに意見を求めるが、軍部は他の惑星への侵略と移住を進言、放射能濾過装置の開発による問題解決を進言する科学者たちと対立する。最早猶予の無い段階にある放射能汚染の中、皇帝を殺害した軍部の指導者・ガットラーは権力を掌握し、自ら総統を名乗る。ガットラーはS-1星住民をことごとく冷凍睡眠装置に封じ込めた上、軍部「アルデバロン」を中心に据え、移動要塞「アルゴル」と共にS-1星を捨てて、移住先の惑星を求めて宇宙の旅へ。ガットラーによって科学者であった父を殺された上、皇帝殺しの濡れ衣を着せられた青年マリン・レイガンは、戦闘機パルサバーンで単身地球へと逃げ延び、防衛組織ブルーフィクサーと出会う。マリンは、ジャック・オリバーらブルーフィクサーの面々との衝突と和解を経て、合体ロボ「バルディオス」で、地球に侵略の手を延ばすガットラーの野望と戦っていくことになる。過酷な運命へと立ち向かっていくマリンの行く先に待ち受けるものとは…。
[編集] 解説
環境破壊に温暖化、軍部の暴走に核兵器、亜空間に合体変形ロボット、人種偏見にロミオとジュリエットと、考え付くプロットを「全部入り」で組み立て、これまたスタンダードSF的なオチを用意していたにも関わらず、どこか全体を包むちぐはぐは雰囲気と、没個性なデザインといっても語弊はないであろう主役ロボット・バルディオスの魅力の無さに、人気が今ひとつ上がらなかった作品。
全39話の放送が予定されていたが、低視聴率と関連商品の売上不振により第31話で打ち切りとなった。放映を続行するか、打ち切るかが二転三転したため製作の方は継続され特にストーリー路線の修正が行われないまま終了が決定してしまった為、ぶつ切りのラストらしからぬラストの形で放映を終了してしまった。完成済み未放映フィルムは3話分もあり、コンテも最終話直前まで完成していた。しかし熱烈なファンの後押しもあり、ストーリーの最終部分は劇場版として1981年12月19日に公開された。だが、劇場版製作に当たってスタッフとキャストの大部分が変更になったために、テレビシリーズからのファンにとってはいささか戸惑いを覚える内容となってしまったという逸話がある。
劇場版については、作画面こそスタジオZ5(亀垣一、平山智)やスタジオナンバーワン(山下将仁、越智一裕)の参加等でテレビシリーズ以上のパワーアップを果たしたものの(特にメカニック作画)、ストーリーの面では必ずしも高い評価が得られなかった。当時は『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム』の劇場化に端を発する空前のアニメブームで、劇場用作品はもとよりテレビシリーズから劇場化される作品も数多かった。アニメ雑誌もそれらの作品を公開前の情報に始まり、公開後に作品分析する等して掲載する事で誌面を充実させていたのだが、本作品の劇場版はその出来に関しては明言が避けられていた雰囲気がある(これは当時発行されていた主要アニメ雑誌の版元である出版社の殆どが「協力」という事でエンディングロールにクレジットされていた事にも関係していると思われる。唯一名前を連ねていなかったアニメックだけは記事を一切掲載しないという方針を貫いており、特に公開後は作品名を明記こそしなかったものの「年末のアレはクズ」「本誌での掲載に値しない」とかなり辛辣な言葉で作品を評していた)。
野村トーイ(現在は米ハスブロ社に吸収)から各種玩具が発売された。メイン商品である「宇宙戦士バルディオス・戦闘合体トリプルクロス」は、本編でのギミックを忠実に再現しているもののプロポーションなどにかなり無理がある内容になってしまった。この作品は、同社がメインスポンサーとなった番組としては唯一のロボットアニメである。
[編集] スタッフ
- 製作:壷田重三
- 企画:佐藤俊彦、壷田重夫
- 監督:広川和之
- 原作構成:酒井あきよし
- 脚本:酒井あきよし、首藤剛志
- キャラクターデザイン:上条修
- メカニックデザイン:佐藤元、亀垣一
- 作画監督:田中保
- 製作:第一放映、国際映画社、葦プロダクション
- 音楽:羽田健太郎
- オープニングテーマ:「あしたに生きろバルディオス」(作詞:保富康午、作曲:羽田健太郎、歌:伊勢功一)
- エンディングテーマ:「マリン・いのちの旅」(作詞:保富康午、作曲:羽田健太郎、歌:伊勢功一)
[編集] キャラクター:キャスト
- キャスト表記は「テレビ版/映画版」。特記がないものは両者共通。
[編集] ブルーフィクサー(地球)
- マリン・レイガン(レーガン):塩沢兼人
- S-1星出身。パルサバーンのパイロット。ガットラーの手により父を失い、地球へと逃亡してきた。その素性から母星からは裏切り者、地球人からはスパイ呼ばわりされるなど苦難の宿命を背負う事になる。クールな容貌の割には青い空と海を汚す者は許さない熱血漢の面も。
- レニア王国皇女。国王である父と反目し王国を飛び出しブルーフィクサー隊員となった。孤独だったマリンの心を開くきっかけを作った。次第にマリンへ想いを寄せるようになる。
- ブルーフィクサー隊員。階級は曹長。バルディ・プライズのパイロット。アフロ金髪の皮肉屋。マリンに疑いの目を向けていたがやがて信頼するようになる。
- 北斗雷太:玄田哲章
- ブルーフィクサー隊員。階級は軍曹。キャタレンジャーのパイロット。最初からジャック以上にマリンを全く信用しておらず殴り合いの喧嘩になることもあったが、信頼をおくようになってからは事あるごとにマリンのことを気にかける男気溢れる人物。普段は士官学校で教鞭をとる教育者の顔も持っている。
- エラ・クィンシュタイン博士:加川三起/此島愛子
- ブルーフィクサー科学部門担当。マリンの能力に注目し彼をチームに引き入れる。パルサバーンらを改造強化したバルディオスを造り上げた。一見、冷静かつ機械的に物事に接してはいるが、心優しい面もありマリンの事を気にかけよき理解者となる。
- ブルーフィクサー長官。周囲の状況に流されがちな面があるが、アルデバロン軍の極氷溶解作戦で家族が犠牲になっても、悲しみをこらえて自分の使命をまっとうしようとする気骨も持つ。
- デビット・ウエイン:井上和彦
- ブルーフィクサーに派遣されてきたクインシュタインの元教え子で、クインシュタインを愛している。テレビ版では一匹狼的な言動と不遜な態度からからジャックや雷太の不興を買ったが、劇場版では彼らとは旧知の間柄という設定に変更された。
- テレビ版ではクインシュタインの為に帰還の叶わない特攻兵器フィクサーワンでの任務を受け入れ、ラストシーンでは「女の為に死ぬなんて、俺もバカだね……」と呟きながら特攻と、最後までニヒルな態度を崩さなかった。
- 劇場版ではS-1星人であるマリンにバルディオスとパルサバーンを任せる事を危惧した世界連邦からマリンのスペアとして派遣されるも、戦闘の際にバルディオスへの合体が行えなかった事で自責の念に駆られブルーフィクサーを去る。その後アルデバロンとの最終決戦に臨むブルーフィクサーを援護すべくフィクサーワンで駆けつけ、激闘の末クインシュタインの名前を叫びながら敵戦艦へ特攻という最期を遂げた。
- テレビシリーズでは1話のみのゲストキャラだったが、脚本の首藤剛志によるキャラクター描写に加えて本橋秀之のデザインとスタジオZ5による美麗な作画がアニメファンの注目を集め、劇場版では大幅に出番を増やしての登場となった。本放送当時アニメージュでこの回が大きくクローズアップされるなどして作品のみならず首藤や本橋&スタジオZ5にも注目が集まった結果、作品は劇場化への大きな足がかりを得て、首藤とスタジオZ5は葦プロの次作『戦国魔神ゴーショーグン』のメインスタッフに抜擢される事となった。なお劇場版では当初千葉繁にデビット役がオファーされていたが結果的にテレビ版同様井上が声をアテており、千葉はミラン役を演じている。
[編集] アルデバロン軍(S-1星)
- S-1星最高権力者で、実質的な支配者。全宇宙掌握の野望に燃え地球への攻撃を開始するが、それは彼なりの考えと正義に基づくものであった。アフロディアに目をかけていたが、マリンへと心が動きつつある彼女に対して苛立ちを覚えるようになる。
- S-1星軍司令官。ガットラーの腹心。マリンによって弟を殺されたため彼に激しい憎しみを抱いていたが、やがて戦いの中で愛憎が入り混じった複雑な関係に。冷徹・冷酷な軍人としての顔と、女性らしい一面を併せ持っている。幼い頃に両親が事故死しガットラーに姉弟で引き取られ成長したが、劇中ガットラーに陵辱されたことがあることを示唆するシーンがある。
- S-1星の科学者。マリンの父。皇帝の命により瀕死のS-1星を救うべく環境改善システムの研究を重ねていたが、最初の実験が成功したところで、環境改善を諦めS-1星1億総人口の他星移住計画を強行した軍司令官アフロディアの弟ミランの凶弾に倒れる。パルサバーンの設計・建造も行った。
- 皇帝:大久保正信/中村武巳
- 環境破壊の末に破滅が間近となってしまったS-1星を救うべく、大規模な科学者チームに環境改善システムの開発を命じていたが、他星移住計画を強行したガットラーの命を受けた軍司令官アフロディアに射殺された。
- ミラン:井上和彦/千葉繁
- アフロディアの弟。マリンの父を殺害したが、逆にマリンに刺し殺されてしまう。
- アラン:田中崇
- エミー・ラティン:増山江威子
- ロイ:三ツ矢雄二
- ナレーター:石森達幸/堀勝之祐
[編集] バルディオス
- ニュー・パルサバーン(改造を受けたパルサバーン)、バルディ・プライズ、キャタレンジャーの3機のメカが合体して生まれる巨大ロボット。合体コードは「バルディオス、チャージ・アップ!」。S-1星よりマリンが乗ってきた亜空間航行機パルサバーンをクインシュタイン博士が改造し、地球製のバルディ・プライズ、キャタレンジャーと合体できるようにしたもの。テレビアニメロボットの中でもかなり特異な合体システムを持つことで知られる。パルサバーンが胴体部、頭、腕を構成し、バルディ・プライズが右足、キャタレンジャーが左足になる。
- 第18話において、第二ブルーフィクサー基地でニュー・バルディプライズ、ニュー・キャタレンジャーが開発されていた事が明かされるが、第二基地ごと攻撃を受け破壊され、その性能等は不明のままに終わった。
- 全長:100.0m
- 重量:900.0t
- 速度:大気圏内ではマッハ25、宇宙空間では光速の30%での飛行が可能で、亜空間航法により超光速での恒星間航行も可能である。
- 主な武器
パルサーベル
- 胸部エンブレムの下から取り出されるバルディオスの主要武器。
亜空間ビーム
- 額のクリスタルから放射される亜空間エネルギーを応用した強力なビーム武器。
ショルダーキャノン
- 両肩のシャッターが開き現われる大砲。戦闘機への攻撃や牽制に用いられる。
バルディミサイル
- 腰の部分から発射されるミサイル。
バルディクラスター
サンダーフラッシュ他
[編集] 放送リスト
- 孤独の追跡者
- パルサバーンの秘密
- スパイの烙印
- 亜空間突入の日
- 甦える復讐者
- 灼熱の決死圏
- 愛の墓標
- ヒマラー山脈の決闘
- めぐり逢い、そして…
- 我が友 亜空間に散る
- 情無用の戒律
- 世界連盟から来た男
- 想い出のリトルジャパン
- さらば愛しの妹よ
- いつわりの平和会議
- 悪夢からの脱出
- 裏切りと暗殺の旅路(前編)
- 裏切りと暗殺の旅路(後編)
- 亜空間に架ける橋
- 甦った悪魔(前編)
- 甦った悪魔(後編)
- 特攻メカ・ブロリラーの挑戦
- マリン、日本を救え!
- バルディオス・パワーアップ!
- ガットラー暗殺計画
- 謎の宇宙生命体
- 私が信じたスパイ
- 決死のランデブー飛行
- 地球氷河期作戦
- 地球不毛の日
- 失われた惑星 *
- 破滅への序曲(前編)
- 破滅への序曲(後編) *
- 地球の長い午後 *
- アフロディアに花束を(前) *
- アフロディアに花束を(後) *
- 亜空間要塞最後の日 *
- 雷太よ 明日を救え *
- 永遠への旅立ち *
* 本放送では1話から30話、32話しか放映されなかったが、実際には34話までが完成しており、完成した話は未放映話も含めてすべてLD、DVDに収録されている。35話以降も脚本と絵コンテは完成していた(未収録)。
[編集] 葦プロ恒例のいたずら背景へのゲスト
- マシンロボシリーズのやられメカにZガンダムが混じっていたり、後年の葦プロ作品にはしばしば遊び背景が登場する。身内ネタではこのバルディオスがナンバー1で、戦国魔神ゴーショーグン等にマリンやクインシュタインと同じデザインの人物が幾度となく一般群集として登場する。
[編集] 二次創作
- アマチュア特撮作品『愛國戰隊大日本』エンディングテーマ「起て!大日本」は、本作の挿入歌「立て!バルディオス」(作詞:保富康午、作曲:羽田健太郎、歌:たいらいさお)の替え歌である。
- 皇帝トリノミアス3世が、ふたばちゃんねるの画像掲示板「二次元裏」でオリジナルのキャラ付けをされ陛下という通称で呼ばれ、深夜早朝頃に「もう寝なさ~い」という言葉と共に画像が貼られる。
[編集] 関連事項
東京12チャンネル 月曜18:45~19:15枠(1980年6月~1980年9月) | ||
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前番組 | 宇宙戦士バルディオス | 次番組 |
ハクション大魔王 | まんが猿飛佐助(再放送) ※18:30-19:00 宇宙戦士バルディオス ※19:00-19:30 |
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東京12チャンネル 月曜19時台前半(1980年9月~1980年10月) | ||
宇宙戦士バルディオス ※18:45-19:15 ふるさとむかしばなし(再放送) ※19:15-19:30 |
第2シリーズ | 月曜スペシャル ※19:00-20:00 |
東京12チャンネル 日曜7時台前半(1980年11月~1981年1月) | ||
合身戦隊メカンダーロボ(再放送) | 第3シリーズ | 恐竜大戦争アイゼンボーグ(再放送) |