山本義隆
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山本 義隆(やまもと よしたか、1941年 - )は、日本の科学史家、自然哲学者、教育者、駿台予備学校物理科講師。元 東大闘争全学共闘会議代表。大阪府出身。大阪市立船場中学校、大阪府立大手前高等学校卒業。東京大学理学部物理学科卒業(1964年)。 同 大学院博士課程中退。 阪神ファン。
1960年代は学生運動の時代である。 東大などでは、新左翼無党派の全学共闘会議(全共闘)が激しく活動を行っていた。 その最後が有名な1969年1月の安田講堂攻防戦である。 結局、大学側の要請による 8000 人を超える機動隊により安田講堂は陥落した。 この時期、東大全共闘の代表者の役割を果たしていたのが、東大全共闘議長・山本義隆であった。 山本は安田講堂陥落後警察の指名手配を受けるが、同年9月の全国全共闘連合結成大会の場に登場し警察当局に逮捕された。山本義隆の名は、日大全共闘議長の秋田明大とともに、全共闘世代には強く記憶されている。
学生時代より秀才でならし、大学では物理学科に進んで素粒子論を専攻していた。山本が当時の国内留学先だった京都大学基礎物理学研究所での研究生活を放り出して全共闘運動のため東京に舞い戻ったことに対し、所長の湯川秀樹が悲嘆に暮れたという逸話もある。物理学者としての将来を嘱望されていたが、学生運動の後、大学を去った。
その後は大学の教員職に就くことを拒否し、予備校教師として、生徒に物理学の本質を教えようと努める傍ら、科学史の研究を行っている。当初エルンスト・カッシーラーの優れた翻訳で知られたが、後に熱学・熱力学や力学など物理学を中心とした自然思想史の研究に従事した。遠隔力概念の発展史についての研究をまとめたものが「磁力と重力の発見」であり、第1回パピルス賞、第57回毎日出版文化賞、第30回大佛次郎賞を受賞して読書界の話題となった。
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[編集] 著書
[編集] 評論集
- 『知性の叛乱―東大解体まで』(前衛社、1969年)
[編集] 物理学関係
- 『重力と力学的世界―古典としての古典力学』(現代数学社、1981年)
- 『演習詳解 力学』(共著。東京図書、1984年)
- 『熱学思想の史的展開―熱とエントロピー』(現代数学社、1987年)
- 『古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ』(日本評論社、1997年)
- 『解析力学Ⅰ、Ⅱ』(共著。朝倉書店、1998年)
- 『磁力と重力の発見』全3巻(みすず書房、2003年)
[編集] 大学受験参考書
- (坂間勇、谷藤祐)『大学入試必修物理(上)』(駿台文庫、1979年)
- (坂間勇、谷藤祐)『大学入試必修物理(下)』(駿台文庫、1980年)
- 『物理入門』(駿台文庫、1982年)
- 『新・物理入門 <物理ⅠB・Ⅱ>』(駿台文庫、1996年)
- 『新・物理入門問題演習 <物理ⅠB・Ⅱ>』(駿台文庫、1997年)
- 『新・物理入門 増補改訂版』(駿台文庫、2004年)
- 『新・物理入門問題演習 改訂版』(駿台文庫、2005年)
[編集] 編訳書
- 『東大闘争資料集』全23巻('68・'69を記録する会編、1992年)
以下は訳者による解説付き。
- エルンスト・カッシーラー著『アインシュタインの相対性理論』(河出書房新社、1976年(改訂版:1996年))
- エルンスト・カッシーラー著『実体概念と関数概念―認識批判の基本的諸問題の研究』(みすず書房、1979年)
- エルンスト・カッシーラー著『現代物理学における決定論と非決定論』(学術書房、1994年)
- エルンスト・カッシーラー著『認識問題4 ヘーゲルの死から現代まで』(共訳。みすず書房、1996年)
- 『ニールス・ボーア論文集1 因果性と相補性』(編訳。岩波文庫、1999年)
- 『ニールス・ボーア論文集2 量子力学の誕生』(編訳。岩波文庫、2000年)
- 『物理学者ランダウ―スターリン体制への叛逆』(共編訳。みすず書房、2004年)
[編集] 論文
- 山本義隆「GeV領域のRegge Pole現象論」 日本物理学会誌 22, 352-355 (1967).
- 江沢洋、中村孔一、山本義隆、素粒子論研究 36-4, 456 (1967).
- H. Ezawa, K. Nakamura, Y. Yamamoto, Nuov. Cim. 54A, 512-515 (1968).
- H. Ezawa, K. Nakamura, Y. Yamamoto, Proc. Japan Acad. 46, 168 (1970).
- 「ケプラー問題の初等的解法と離心ベクトルの保存について」 『駿台フォーラム』 4 (1986) ISSN: 02895579
- 「Retarded Gravitational Potential and the Shift in the Perihelion of Mercury (遅延重力ポテンシャルと水星の近日点移動)」 『駿台フォーラム』 13 (1995)
- "Simon Stevin and the Cultural Revolution in the 16th Century", in a Garden of Quanta, ed. J. Arafune et.al., World Scientific (2003), pp.491-502.
[編集] その他
- 山本義隆 『東京大学新聞』1967年9月25日(第714号)
- 「特集 山本義隆先生『磁力と重力の発見』受賞記念」 『駿台フォーラム』 22 (2004)
- 「幾何光学と変分法」 『数理科学』 2006年5月号 No.515