幾何異性体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
有機化合物や錯体の立体異性体の一種である。有機化合物の場合、正式にはシス-トランス異性体(cis-trans iosmer)であり、幾何異性体(geometrical isomer)(きかいせいたい)という言葉はIUPACでは推奨されていない。だが日本の高校の化学ではまだ使われている。幾何異性体と呼ばれるのは次の3種類である。
- 有機化合物の二重結合への置換によるシス-トランス異性。
- シクロ化合物の環への置換によるシス-トランス異性。
- 錯体配位子の位置の違いによる異性。シス-トランス異性以外も含む。
目次 |
[編集] 二重結合のシス-トランス異性
まず炭素の二重結合に2つずつの異なった基が結合する場合を例に取ると、主鎖(炭素数最多の鎖)となる炭素骨格が同じ側(同じ炭素ではない)につくとシス (cis) 型、反対側につくと トランス (trans) 型の幾何異性体となる。IUPAC では基の優先度(置換基の順位規則)が定められており、その基準で置換基の配置がシス型の時 Z、トランス型のとき E として表す。Z はドイツ語の zusammen (いっしょに)、E は entgegen (逆に)に由来する。
ただし、オキシムの場合は代わりに syn, anti を使用する。
[編集] シクロ化合物のシス-トランス異性
環状化合物で隣接する炭素がどちらも三級炭素の場合、環から飛び出す置換の向きが環平面に対して同じ側か異なるかで cis, trans を使用する(E, Z は使用されない)。
飽和縮合環化合物の場合も同様に、環平面に対して同じ側か異なるかで cis, trans を使用する(E, Z は使用されない)。
環の幾何異性の位置が2つ以上ある複雑な場合は cis, trans 表記よりも、(R), (S) の絶対配置で表記するのが適当である。