張芸謀
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張芸謀(チャン・イーモウ) | |
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各種表記 | |
漢字: | 張藝謀/张艺谋 |
ピンイン: | Zhāng Yìmóu |
平仮名転写(日本語読み仮名): | ちょう げいぼう |
片仮名転写(現地語読み仮名): | ジャン・イーモウ |
ラテン文字転写: | Zhang Yimou |
張 芸謀(ちょう げいぼう、チャン・イーモウ、Zhāng Yìmóu、1950年11月14日 - )は中国の映画監督である。また映画主演の経験もある。繁体字(香港・台湾など)表記は張藝謀、簡体字表記は张艺谋。芸(日本語の音:ウン、Yun)は(「書物の防虫に使用される薬草」をさし転じて、中国では「文学、教養」をイメージさせる文字として人名などに使用される。「藝」を「芸」と略すのは日本の常用漢字だけである。簡体字では「藝」と同音の「乙」を草かんむりの下に置き艺と略す。なお日本語では「芸」(ウン)は石上宅嗣の蔵書「芸亭(うんてい)」くらいしか使用例がない)。
西安に生まれ、北京電影学院撮影学科に年齢制限に引っかかっていたが入学を許され、1982年に卒業し、1985年西安映画製作所に配属されチェン・カイコーのもとで撮影監督を務めた。 1986年には呉天明監督の『古井戸』では映画にも主演している。 1987年に『紅いコーリャン』で監督デビューし、またこの作品でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した。その後、『紅いコーリャン』、『紅夢』、『上海ルージュ』のいわゆる「紅三部作」や『あの子を探して』、『初恋のきた道』、『至福のとき』の「幸せ三部作」、さらに『HERO』・『LOVERS』などの武侠映画などの作品を製作した。そして2006年には日中合作映画で高倉健主演の人情映画『単騎、千里を走る。』を公開した。
張芸謀の作品の特徴は、元々カメラマン出身ということもあり、美しい映像美にあるといえよう。(チェン・カイコー作品の『黄色い大地』(原題『黄土地』)や『大閲兵』では撮影監督だった) 特に『紅いコーリャン』など初期の作品においては特定の色を強調したり、パンの少ないカメラワークが特徴で、その結果独特の世界観を醸し出すことに成功している。このことは、欧米で評価され始めた際に東洋の美として認識されるきっかけになっていたと思われる。この審美眼は文化大革命時代に陝西省に下放されていたときの田舎暮らしの経験が基になっているといえるだろう。 またその他に彼の(もしくは作品の)特徴を挙げるとすれば、女優を上手く活かすことも挙げられるだろう。初期の作品では鞏俐(コン・リー)を多用し、彼女をして世界に通用する俳優となる。(プライベート面でも二人は関係があったとされる。) また『初恋のきた道』(原題『我的父親母親』)ではチャン・ツィイーがメジャーの階段を上るきっかけになっている。一方で演技が絶賛された『あの子を探して』の主演女優(子役)ウェイ・ミンジには田舎に帰るように促すなど、対照的な態度を取っている。
近年はチェン・カイコー同様にワイヤーアクションを多用した武侠映画で商業的にも成功を収めている。但し、「LOVERS」('04)ではアジアの巨匠胡金銓の「侠女」('71/日本未公開)の竹林のアクション場面を特殊撮影で行うという無謀な試みをしており、当然ながらリズム感は失せ品格は遥かに及ばない。本来はチェン・カイコー同様に芸術性とドラマ性を兼ね合わせた作品を得意とする。
最初に配属された西安映画製作所からはチェン・カイコーなど多数の有名な映画監督が輩出されている。これは、撮影所の所長であった呉天明が政府の厳しい検閲のある時代の中にも自由な作品作りを許した為といわれている。いづれにしても張芸謀の現在までの活躍の基盤は、この西安映画製作所にあったのは間違いないだろう。この西安映画製作所は、西安郊外の三蔵法師で有名な玄奘にゆかりのある大雁塔のふもとにあった。
[編集] 主な監督作品
- 『紅いコーリャン』(『紅高梁』、Red Sorghum, 1987)
- 『菊豆』(『菊豆』、Judo, 1990)
- 『紅夢』(『大紅灯篭高高掛』、Raise The Red Lantern, 1991)
- 『秋菊の物語』(『秋菊打官司』、The Story of QIU JU, 1992)
- 『活きる』(『活着』、To Live, 1994)
- 『上海ルージュ』(Shanghai Triad, 1995)
- 『あの子を探して』(『一個都不能少』、Not One Less, 1997)
- 『初恋のきた道』(『我的父親母親』、The Road Home, 1999)
- 『至福のとき』(『幸福時光』、Happy Time, 2000)
- 『HERO』(『英雄』、2002)
- 『LOVERS』(『十面埋伏』、House of Flying Daggers, 2004)
- 『単騎、千里を走る。』(『千里走単騎』、2006)
- 『満城尽帯黄金甲』(2006)