愛という名のもとに
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『愛という名のもとに』(あいというなのもとに)は、1992年1月9日~3月26日にフジテレビ系列で、木曜劇場枠で放送されたテレビドラマである。放送時間は22時00分~22時54分(JST)。全12回で、最終回は人気を受けて、当時としては異例の15分拡大版で放送された。
目次 |
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
大学のボート部で青春時代を共に過ごした7人の仲間が社会に出て3年後、恩師の葬儀、仲間の一人の自殺未遂をきっかけに再会を果たす。それぞれの理想と現実のギャップに悩み、もがき苦しみながらも、前を向いて生きていこうとする彼らの「答え」はどこにあるのだろうか……。
[編集] 概要
- 野島脚本らしいスピーディーな展開、「ダイヤルQ2」「学歴社会」「フィリピーナのジャパゆきさん」「ゴルフ場乱開発による自然破壊」「ボランティア」といった当時の世相を反映した内容、そしてやや気恥ずかしくなるくらいストレートな理想主義的台詞(例:何かというと出て来る「仲間っていいな」)などが独自の世界を形成し、1990年代を代表する友情ドラマと評される。平均視聴率は24.5%、最終回には最高視聴率32.6%を記録。これは夜の10時台としては驚異的な数字である。なお、主役の仲間が7人、ボート部という設定が“『セント・エルモス・ファイアー(ST. ELMO'S FIRE)』(アメリカ、1985年)と同じ”という指摘があった(また、第1回の内容は1年前に放送された『ふぞろいの林檎たちIII』〔1991年〕に酷似していた)。
- 多くの視聴者の記憶に焼きついているのは、しっかり者に描かれている主役級の3人(貴子・健吾・時男)よりむしろチョロ(中野英雄)の存在であろう。証券会社での上司からのいびりは苛烈なもので、証券業界からクレームがついたほどであった。そして自殺発見シーンの静寂の長さ、その後の葬式までの悲しみの連続は一ドラマの範疇を越えて大勢の涙を誘った。それだけに、最終回のラストシーンで、想像の中とはいえ、チョロが復活したのには唖然とした視聴者も少なくなかった。ともあれ、中野英雄はチョロ役のイメージが強すぎていまだに抜け出せずにいるといわれる。
- このドラマでは使用曲の印象も強い。コマーシャリズムを避けたがる浜田省吾とのタイアップに成功し、フォークソングの神様・岡林信康を持ち出したことには驚いた、という声もある。岡林の曲には反響が高く、フォークを知らない世代からの問合せが多く寄せられた。
(参考文献:大多亮『ヒットマン ドラマで夢を売る男』〔角川書店・1996年〕)
[編集] 登場人物
- 藤木貴子(鈴木保奈美) - 高校教師。健吾からプロポーズをされる。
- 高月健吾(唐沢寿明) - 商社マンから転身し、代議士である父の秘書となる。
- 神野時男(江口洋介) - 定職につかず、その日暮らしの生活をしている。
- 飯森則子(洞口依子) - デパートに勤務。あだ名はノリ。
- 塚原純(石橋保) - 区役所に勤務。かつて作家志望だった。
- 斎藤尚美(中島宏海) - 売れっ子のモデル。男女関係のもつれから自殺未遂を起こす。
- 倉田篤(中野英雄) - 証券会社に勤務。あだ名はチョロ。
- 高月健蔵(竜雷太) - 健吾の父。代議士。
- 神園美和(夏川結衣) - 健蔵が決めた健吾の婚約者
- 藤木清絵(佐藤オリヱ) - 貴子の母
- 藤木由美(瀬能あづさ) - 貴子の妹
- 平岡知(山本耕史) - 貴子の生徒。貴子を強姦しようとする。
- 平岡(高畑淳子) - 知の母。
- 梶谷(岡田秀樹) - 貴子の生徒。優等生。
- 高井桐子(深津絵里) - 時男のダイヤルQ2会社のアルバイト
- JJ(ジェイジェイ)(ルビー・モレノ) - バーに勤めるじゃぱゆきさん。チョロが惚れ込む。
- 橋爪五郎(森本レオ) - 尚美の不倫相手
[編集] スタッフ
[編集] 主題歌・挿入歌
- 主題歌
- 浜田省吾『悲しみは雪のように』(このドラマのためのリメイクバージョン)
- 挿入歌
- 浜田省吾『愛という名のもとに』『ラストショー』『J.BOY』 その他、浜田省吾の曲を多数使用
- 岡林信康『友よ』『私たちの望むものは』
- ダイアナ・ロス(Diana Ross)『フォー・フレンズ(THAT'S WHY I CALL YOU MY FRIEND)』
[編集] 劇中引用詩
- ボブ・ディラン(Bob Dylan)『風に吹かれて(Blowin' in the Wind)』の日本語訳
[編集] 各話タイトル・放送日・視聴率
- 第1回「青春の絆」 (1992.1.9)23.1%
- 第2回「夢を追って」 (1992.1.16)23.1%
- 第3回「隠された青春の日」 (1992.1.23)21.9%
- 第4回「涙あふれて」 (1992.1.30)21.9%
- 第5回「決心」 (1992.2.6)22.9%
- 第6回「見失った道で」 (1992.2.13)22.5%
- 第7回「風に吹かれて」 (1992.2.20)22.8%
- 第8回「君が人生の時」 (1992.2.27)21.9%
- 第9回「いつわりの日々」 (1992.3.5)24.4%
- 第10回「友よ」 (1992.3.12)27.9%
- 第11回「生きる」 (1992.3.19)29.0%
- 最終回「私達の望むものは」(1992.3.26)32.6%(15分拡大版)
- 平均視聴率 24.7%
[編集] 野島伸司の分岐点
脚本家・野島伸司は1988年にデビューして以来コンスタントに佳作を発表してきたが、取材というものをほとんどしてこなかった。しかしこのドラマでは代議士秘書や病院関係者、環境保護団体の人、証券会社の人に取材をし、「なんでこんなに面白いこと早く教えてくれなかったのと思いましたよ(笑)。ある部分で深みが出ます、話ももちますし」と漏らすくらいに取材の意義を実感している。野島はこの『愛という名のもとに』で、その後の社会派ドラマ(あるいは「不幸ドラマ」)路線への足がかりを得たと言えるだろう。
(参考文献:シナリオマガジン『ドラマ』1992年2月号〔映人社〕)
[編集] 関連項目
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